【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

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友達なんだから

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 細い肩を落とすライの表情が見る見る内に沈んていく。また涙がぶり返してしまいそうだ。

 しょんぼりと俯く小さな頭に、気がつけば手が伸びていた。そのまま撫でていた俺を見上げた瞳が丸くなる。でも、すぐに安心したように細められた。

「……ライも知らなかったんだろ? だから気にするなよ。それに術、さえ解けば戻れるんだからさ」

「……うん、そうだね」

 にこりと微笑んでから目を伏せる。少し俺から背けたような横顔が、何だか儚く消えてしまいそうで……

「あー……俺の方は解決したけどさ、問題はライの方だよな……どうやったら、そこからライを助けられるんだろう?」

 落ち着かない胸のざわめきを、誤魔化すように頭を働かせる。

 セレストさんなら、グレイ先生なら、皆となら、ライを救う方法を見つけられるかもしれない。

 どうにか記憶を失わずに、皆に事情を説明する方法はないだろうか?

「シュンはやっぱり優しいね。こんな僕を助けようとしてくれるなんて」

 頭を捻る俺にライが微笑む。でもその笑顔はどこか自嘲めいているように見えたんだ。

「何言ってるんだよっ? 友達なんだから、当たり前だろ」

「ふふっそうだね。友達を助けるのは当たり前だよね……だから……バイバイ、シュン」

 突然だった。

 目を覆いたくなるような眩い閃光。雷のように降り注いだ激しい光が、俺とライを引き離すように俺達の間に落ちて、弾ける。

「なっ……ライ! お前、まさかっ……」

「たった今、術は解いた。これで君は現実に戻れるよ……本当にありがとう、ずっと大好きだよ。僕の大切な、たった一人の友達」

 白い世界の地面に、宙に亀裂が走り、崩れ始める。

 地震のように揺れる地面に立っていられなくなって、膝をつく。

 術者だからだろうか。崩壊する世界をものともせず、ライはふわりと浮かんでいた。何もない宙を平然と歩き、俺からどんどん離れていってしまう。

「嫌だっ! ライを置いてくなんて、ライのことを忘れるなんて、嫌だよっ!!」

 必死に立ち上がり駆け寄る。彼へと向かって手を伸ばすが届かない。

 ついには俺の足元まで崩壊し始めてしまった。

「大丈夫……君が僕を忘れても、僕はずっと君のことを覚えているよ。さよなら……シュン。ずっと君の幸せを祈っているよ」

「ライっ!!」

 なすすべもなく、俺の身体が地面ごと深い闇へと落ちていく。最後に見えたライの笑顔は、涙に濡れていた。
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