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今度こそ、その手を掴んでみせる
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気が付くと俺は真っ暗な闇の中にいた。
俺の全身を覆っている水色の光。そのお陰で自分の周囲だけは何とか視認することが出来た。
多分、セレストさんの術によるものだろう。流石優秀な魔術士。ケアも完璧だ。
息は普通に出来る。身体も……動くな。少しだけ、水の中に居るような抵抗感はあるけれど。
「ライ! 何処だっ! 返事をしてくれ!」
目印なんか何もない。だから必死に呼び掛けながら進んでいくしかない。
手をかき、足をバタつかせ暗闇の中をひたすらに泳いでいく。
こんな所にずっと一人で閉じ込められていたなんて……
早く、早く助け出さないと……
何の反応も示さない、示してくれない暗黒から聞き覚えのあるか細い声が返ってくる。
「……シュン?」
「ライ!? 何処だ!? 何処に居る!?」
「っ……シュン! こっちだよ! 僕はここに居る!」
声のする方へ必死に足を動かす。しばらくして黒い泡のようなものが見えてきた。中にぼんやりと浮かぶ人の形をした影。
誰か居るのか? ……まさか……
「ライ?」
「シュン!」
膝を抱えていた影が動く。周囲の闇に溶け込むような黒く透明な壁の向こうから、俺を見つけた茶色の瞳が驚きに見開き、微笑んだ。
「良かった! ここに居たんだな」
「どうしてここに? 何で、僕のこと……」
「話は後だ! 早くここから出よう!」
こんな不気味なところに長居は禁物だ。何が起こるか分からない。それに万が一、合図の前にセレストさんの術が解けたりしたら……
イヤな想像を振り払い、泡の中にいるライに向かって手を伸ばす。が、強い力で押し戻されてしまう。
「くそっ何だよこれ!? 待ってろ、すぐに何とかするから!」
全身に力を込めて押し込んだ。なのに、泡の中へと入ったのは指先程度だ。こんなんじゃ、とてもじゃないが助けることなんて……
何でだよ! 目の前に居るんだぞ!?
ほんの薄い膜の先にライがいるのに!
「……もう、いいよ、シュン。ありがとう、ここまで来てくれて。もう、僕のことは」
「諦めるなッ! 今度こそ絶対に、お前の手を掴んでみせる!!」
全身の体重をかけて右腕を泡の中に押し込む。無理矢理力を込めているからだろう。筋肉が悲鳴を上げ、骨が軋む音がする。
「ぐッ……この……っ……」
「っシュン! もう止めて……止めてよ、血が……」
手が、腕が熱い。何かがブチブチと音を立てて切れ、鋭い痛みが身体中を駆け巡る。
それでも、あの時の……ライの手を掴めなかった心の痛みに比べれば、こんなものどうってことはない!!
バツンと何かを裂いたような感触がして俺の右腕が泡の中に入り込む。
「ライ! 来いッ!!」
ライが涙に濡れた顔をくしゃりと歪めて俺の手を掴む。
最後の力を振り絞り、華奢な身体を無理矢理泡から引きずり出した。
「やっと捕まえた……もう絶対に離さない」
細い背に腕を回し抱き締める。細い腕がおずおずと抱き返してきた。
「……シュン……怖、かった……ひとり、ぼっちで……っ……僕……」
ぼろぼろとこぼれ落ちてくる水滴が俺の肩を熱く濡らす。
「もう、大丈夫だ。一緒に帰ろう?」
「うん……!」
光れ……ライを抱き締めたまま、強く石に念じる。瞬く間に俺達の身体が輝き始め、光の粒子になって散った。
俺の全身を覆っている水色の光。そのお陰で自分の周囲だけは何とか視認することが出来た。
多分、セレストさんの術によるものだろう。流石優秀な魔術士。ケアも完璧だ。
息は普通に出来る。身体も……動くな。少しだけ、水の中に居るような抵抗感はあるけれど。
「ライ! 何処だっ! 返事をしてくれ!」
目印なんか何もない。だから必死に呼び掛けながら進んでいくしかない。
手をかき、足をバタつかせ暗闇の中をひたすらに泳いでいく。
こんな所にずっと一人で閉じ込められていたなんて……
早く、早く助け出さないと……
何の反応も示さない、示してくれない暗黒から聞き覚えのあるか細い声が返ってくる。
「……シュン?」
「ライ!? 何処だ!? 何処に居る!?」
「っ……シュン! こっちだよ! 僕はここに居る!」
声のする方へ必死に足を動かす。しばらくして黒い泡のようなものが見えてきた。中にぼんやりと浮かぶ人の形をした影。
誰か居るのか? ……まさか……
「ライ?」
「シュン!」
膝を抱えていた影が動く。周囲の闇に溶け込むような黒く透明な壁の向こうから、俺を見つけた茶色の瞳が驚きに見開き、微笑んだ。
「良かった! ここに居たんだな」
「どうしてここに? 何で、僕のこと……」
「話は後だ! 早くここから出よう!」
こんな不気味なところに長居は禁物だ。何が起こるか分からない。それに万が一、合図の前にセレストさんの術が解けたりしたら……
イヤな想像を振り払い、泡の中にいるライに向かって手を伸ばす。が、強い力で押し戻されてしまう。
「くそっ何だよこれ!? 待ってろ、すぐに何とかするから!」
全身に力を込めて押し込んだ。なのに、泡の中へと入ったのは指先程度だ。こんなんじゃ、とてもじゃないが助けることなんて……
何でだよ! 目の前に居るんだぞ!?
ほんの薄い膜の先にライがいるのに!
「……もう、いいよ、シュン。ありがとう、ここまで来てくれて。もう、僕のことは」
「諦めるなッ! 今度こそ絶対に、お前の手を掴んでみせる!!」
全身の体重をかけて右腕を泡の中に押し込む。無理矢理力を込めているからだろう。筋肉が悲鳴を上げ、骨が軋む音がする。
「ぐッ……この……っ……」
「っシュン! もう止めて……止めてよ、血が……」
手が、腕が熱い。何かがブチブチと音を立てて切れ、鋭い痛みが身体中を駆け巡る。
それでも、あの時の……ライの手を掴めなかった心の痛みに比べれば、こんなものどうってことはない!!
バツンと何かを裂いたような感触がして俺の右腕が泡の中に入り込む。
「ライ! 来いッ!!」
ライが涙に濡れた顔をくしゃりと歪めて俺の手を掴む。
最後の力を振り絞り、華奢な身体を無理矢理泡から引きずり出した。
「やっと捕まえた……もう絶対に離さない」
細い背に腕を回し抱き締める。細い腕がおずおずと抱き返してきた。
「……シュン……怖、かった……ひとり、ぼっちで……っ……僕……」
ぼろぼろとこぼれ落ちてくる水滴が俺の肩を熱く濡らす。
「もう、大丈夫だ。一緒に帰ろう?」
「うん……!」
光れ……ライを抱き締めたまま、強く石に念じる。瞬く間に俺達の身体が輝き始め、光の粒子になって散った。
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