【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ

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幼なじみの手料理を、味見させてもらうことになったんだが?

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「これだけ出来りゃ大丈夫だろ。後は明日に備えてゆっくり休もうぜ?」

 逞しい腕をぐっと伸ばしながら、ダンが大きく口を開ける。ちょこっと見えた八重歯が可愛い。

 しっかり俺にもうつったみたいだ。開けた口から眠気に満ちた息が漏れる。あくびって何でうつるんだろうな。

「ありがとう。ダンのお陰で補習にならなくて済みそうだ」

 彼の熱心な指導の元、練習を重ねた結果、最初よりは時間をかけずにスムーズに、光を灯せるようになったんだ。

 当たり前だけど、ダンの大きくて綺麗な赤と比べたら、月とスッポン。豆電球くらいの小さな白だけど、光ればいいんだから問題はないだろう。

「へへっ俺が付いてんだから当然だろ! よし、俺は飯作ってくるからシュンはゆっくりしてろよ」

 照れくさそうに、嬉しそうに笑いながら、大きな手が俺の頭を撫で回す。相変わらず唐突だ。こっちの気も知らないで。まぁ、知る由もないんだけどな。

「あ、ありがとう。でも、俺だけゆっくりしてるのも悪いから、今のうちに風呂入れてくるよ」

「そっか、じゃあそっちは頼む。台所借りるぞ」

「うん、好きに使ってくれていいよ」

 台所へと向かう大きな背中を見届けてから俺は風呂場に向かった。

 推しが入るんだから、滅茶苦茶キレイにしないとな!

 腕まくりをして気合いを入れ、洗剤とスポンジを手にいざお風呂場へ。浴室と浴槽は勿論の事、普段なら見て見ぬふりをしてしまう排水溝もしっかり掃除する。その甲斐もあって、見違えるほどキレイになった。

 こんなに掃除を頑張ったのは年末以来だな。浴槽に栓をし、給湯器にある自動のスイッチを押してから蓋を閉じる。少しの疲労と達成感を感じながら俺は風呂場を後にした。

 部屋に戻ってすぐ、台所の方からパチパチと何かを揚げる音とともにいい匂いが漂ってくる。

 匂いに引き寄せられるように台所に向かうと、エンジ色のエプロンを付けたダンの後ろ姿が見えた。

「何作ってるんだ? めっちゃ、いい匂いしてくるんだけど」

「鶏の胸肉の唐揚げだ。ちょうど揚がったから……味見、してみるか?」

 コンロの火を止め、振り向いたダンがニカッと白い歯を見せる。

「するっ! します!!」

 カッコ可愛い笑顔と美味しそうな匂いに見事に釣られ、思わず即答してしまっていた。

「おうっ」

 笑みを深くしたダンが、油の海でバチバチ泳いでいる唐揚げ達を菜箸で、網とキッチンペーパーを敷いたバットの上へと並べていく。

 その内の1つを摘み、唐揚げが落ちないように手を添えながら、後ろから覗き込んでた俺の口元へと持ってきてくれた。

 醤油とか、にんにくだろうか。こんがりキツネ色に揚げられたお肉から、食欲がそそられる香りが漂っている。

「ほら、口開けろ……熱いから、気を付けろよ」
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