【完結】俺の愛が世界を救うってマジ?

白井のわ

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間際になって、気づいた気持ち

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 祭壇の上にそびえ立つ巨大な杯。重々しい光沢を放つその中で煌々と燃え続ける黒い炎。

 石造りの遺跡内を照らす妖しい輝きは、今も昔も変わることがない。寧ろ激しさを増しているようにも見えた。まるで自身の復活を、世界の終わりを予見しているかのように。

「おお、戻ったか。上手くやったようだな、我が息子よ」

 背後から鳴った重々しい足音に漆黒の鎧を纏う男が振り返る。鋭い角が生えた兜越しでも分かった。愉快に笑うしゃがれ声だけで、彼がどんな顔をしているのかが。

「……はい。輝石も、光の神子もこの手に」

 男と寸分違わぬ鎧を纏う黒野。冷たく黒い金属に覆われた彼の腕の中で、レンは固く目を閉じ力なく四肢を垂らしていた。微かに聞こえる呼吸だけが、彼がまだ生きているのだと教えてくれている。

「さあ、輝石と神子をこちらへ。ようやくだ、これでようやく我々の大望が叶う……」

 口を閉じたまま、物言わぬレンを見下ろす黒野に男が静かに歩み寄り尋ねた。

「どうした? ……ああ、情が湧いたか……ならば致し方ない、世界が終わるまでの最後のひと時を共に過ごすといい。輝石だけでも我らが神の復活には事足りるのだからな」

 傍から見れば勝利を前にした慢心としか取れぬ発言。だが、最大限の譲歩だった。愛する者を失う辛さを痛いほど知る彼にとって、息子に出来る最後の思いやり。

 けれども黒野は憂いを帯びた眼差しでレンを見つめ続けるだけだった。

「誠にどうしたというのだ? 神子は贄には捧げぬと」

「……母上は望んでいるのでしょうか?」

 ようやく口を開いた息子の言葉に男が纏う空気が変わる。

「……なに?」

 耳にするだけで胃の腑が重く沈むような地を這う声。頬がひりつく程に感じる怒りと威圧感。それでも黒野は止めなかった。

「母上は、その身を犠牲にしても世界の均衡を保つことを願いました。ですが私達がしようとしていることは……ッ……」

 対話を望む彼に容赦なく振り下ろされた鎚矛。尖った刃を全方位にぐるりと纏った黒い矛先が、素早く構えた銃剣によって受け流され鈍い音を響かせた。

 レンを抱えたまま片腕で黒く輝く刃を振るう黒野が、後方へと飛び退き距離を取る。

「よもやそこまで絆されておるとはな。そなたは誠にセレネによく似ておる……優し過ぎるのだ……光の末裔共にまで心を砕くとは……」

「父上……」

「案ずるな……殺しはせぬ。そなたもそなたの愛する神子もな……だが、邪魔はさせぬ。私はこの日の為だけに生きてきたのだ……セレネともう一度、会う為だけにな!!」

 轟く悲痛な願いに黒野は苦しげに俯く。そうして目にした腕の中の温もり。自分を愛し、最後まで信じようとしてくれていた愛しい人。

 自分には、もう彼と共に歩む資格はない。けれども、レンが笑顔であの子達と共に生きられるのならば……最後の願いを胸に秘め、奥歯を噛み締め顔を上げた。
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