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取り敢えず、神頼みしてみる?

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 最初に異変に気が付いたのは緑山だった。

 皆で夕食を取った後、先生と話したいことがあるから、と食堂で別れた彼。天音レンが待てど暮らせど帰って来ない。

 話し込んでいるだけじゃないか、と静観する皆に対して念の為に、と訪れた黒野の部屋。

 返ってこないノックに不審に思い開けた先、誰も居ない室内に取り残されたレンの端末を見つけたことで発覚したのだ。二人の身に何かが起こったのだと。



 自室へと迫ってくる慌ただしい足音。

 それだけで十分だった。緊急事態だと白花博士が気づくには。

「博士ッ! レンが! 先生が!」

「二人が突然居なくなった! もしかしたらあの鎧兜に……」

「どうしよう!? もし攫われちゃってたら……オレ達がもっと早く気付けてたら……もっと……」

「何か、確認出来る手段は有りませんか!? 防犯カメラとか……何か」

 入ってくるなり心配を、焦りを、後悔を口々に叫ぶ彼等にああ、やはり……と白衣の襟を整える。

 デスクトップパソコンのモニターへ向き直りアプリを起動、自分を含め数人しか知らないパスワードを入力した。

「落ち着いて、手段は有る。こういう時の為に、施設内の部屋には全部隠しカメラが設置されているからね」

 黒野の部屋の録画データを再生した途端に静まり返り、背後に迫る熱と視線。つい緩みそうになった口元を引き締め、画面を注視した。



 また静まり返ったどころか空気が重い。当然だ。信じていた者に裏切られたのだから。

「……成る程ね。確かに邪神を封じられるなら、逆に復活させるくらいの力も有るってことか」

「俺、信じられません……」

「俺もだ……先生は影にされてしまった人々を救おうと熱心だった……なのに……」

「オレ達のこともいつも心配して気遣ってくれてたのに……」

 冷静に事実だけを受け止める博士と異なり、苦しげに瞳を細め打ちひしがれる三人。

 ただ一人、青岩だけが口元に指を当て考えを巡らせていた。はたと目を見開き、口を開く。

「……セレネ」

「あおちゃん? 誰? セレネって」

「鎧兜が言っていたんだ。邪神が復活すればセレネを取り戻せると、もしかしたら先生も」

「その人を取り戻す為にレンに近づいて、愛の輝石を?」

「そうだとして、何故レンを連れて行ったんだ? 輝石さえ手に入れば目的は果たしたんじゃ」

「ボク達に邪魔されたくないからでしょ」

 当然のように答えた博士に視線が集まる。

「センセと違ってキミ達はレン君が居ないと変身出来ない。だから攫った。ってことは乗り込む手段も」

「あるんですね!?」

「多分ね」

 目を輝かせ食いついてきた緑山にあっけらかんと返す博士。

「分かってて言ったんじゃないの!?」

「んーん」

 続けて肩を掴んだ黄川にも首を横に振った彼に、心底呆れた様子で皆が息を吐く。でも、彼は意にも介していなかった。

「だからさ、取り敢えずしてみる? 神頼み」

 なんて、へらりと笑いながら言い放ったのだから。
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