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俺の願いを、皆の想いを……どうか
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やっと話し合うことが出来たのに。これからって時なのに、どうして……
「父上!」
いくら問おうが、悔しがろうが待ってはくれない。悲痛な声を上げ、小さくなっていく漆黒の背中に手を伸ばす彼も。
「……レン、これを」
託されたのは白く輝く輝石。
すぐに分かった。キョウヤさんが何をしたいのか。これから何をするつもりなのか。でも、止めることなんて出来る訳がない。
「……無茶しないで下さいよね」
「ああ、もう君を泣かせたりはしない。約束するよ」
強い決意を秘めた瞳が微笑んだ。黒く輝く翼をはためかせ、ブライさんの元へ飛んでいく。
見送るだけしか出来ないのか? もう、手遅れなのか?
『彼を……あの子を助けて!』
……いや、違う! まだ、やれることがあるハズだ!
「俺達も行きましょう! 二人だけじゃ」
「待って!」
「レン君? どうし」
「愛してる」
「「「「え?」」」」
鳩から豆鉄砲を食らったみたいに固まった皆の中で一人だけ、博士だけが成る程ねぇ、と楽しげに笑っていた。
「ヒスイ」
「は、はい」
逞しい長身がびくんっと姿勢を正す。握った手は白銀を纏っているのに、何だか熱く感じた。
「俺、ヒスイと居る時間が好きだ。スゴく安心出来るんだ……だから、これからも側に居させて欲しい。愛してるよ」
「っ……うん……俺も、レンの側に居たい……愛してる」
震える広い背に腕を回す。
俺達の間で強く輝いていた緑の光、その中心で澄んだ音と共に緑の結晶が生まれた。
「これは……愛の輝石? ……そうか、レンはまだ諦めていないんだね?」
流石ヒスイだ。もう俺の意図を察してくれたみたい。
「うん……ヒスイ、俺……」
あっという間だった。
頬に手を添えられたかと思えばすぐに塞がれていた。穏やかな笑みを浮かべた温もりが軽いリップ音を鳴らしながら離れていく。
「その先は言わないで。嬉しかったんだから。それに、輝石が生まれたってことは両思いってことだよね」
「うんっ……好き、だよ」
それで十分だよ、と微笑んでくれたヒスイをもう一度抱き締めて、見守っていた皆に向き直る。
赤いマントを揺らし、歩み寄ってきたコウイチさんが、俺の手を取り握り締めた。
「愛してるぞ! レン!」
「ちょっ……飲み込みが早すぎません?」
「そうか?」
何でもないことのように見つめてくる、赤い瞳の曇のなさに胸がチクリと痛む。心が広過ぎやしないか。優し過ぎるヒスイと同じで。
「俺もキミと同じ気持ちだ。助けられる可能性が少しでも有るならば、かけてみたい。それに嘘じゃないだろう? だったら堂々としてればいいじゃないか。俺達は想い合っているんだからな! さあ、キミの答えを聞かせてくれ!」
「……俺も、愛してます。コウイチさんのこと」
幸せに満ち溢れた笑顔を赤い輝きが照らす。光が集うように俺達の間でハート型の結晶が生まれた。
「今度はオレの番だね!」
「おわっ」
明るい宣言をされたかと思えば、飛びついてきたダイキさんの長い腕に抱き締められていた。にこやかに微笑んでいた黄色の瞳に熱がこもる。
「……レン、愛してるよ」
「お、俺も……愛してます」
艶のある雰囲気にあっさり呑まれて声が震える。打って変わって、やったぁ! と嬉しそうに笑う彼と俺の間で、煌めいていた黄色が集まり結晶になった。
抱き合う俺達に穏やかな声が呼びかける。
「レン君」
「アサギさん」
「チャンスは一度きりだ。愛の輝石が生まれ次第、僕達も全てをかけた一撃を邪神に打ち込む。出来るだけ弱らせた方がいいだろうからね」
真っ直ぐな青い眼差しが同意を求めるようにヒスイ達を順々に目配せしていく。皆が静かに頷いたのを確認してから再び俺を見つめた。
「だから」
「任せて下さい、必ずやり遂げます。皆で一緒に帰れるように」
少しだけ不安に揺れていた眼差しがふわりと微笑んだ。
「信じてるよ、レン君……愛してる」
「俺も、愛してます」
見つめ合い、手を重ねた俺達の間で生まれた青い結晶。見届け、飛び立っていった皆が託してくれた結晶に祈りを捧げる。
どうか、セレネさんを……皆を助けて下さい。光と影が共に歩める世界を……どうか。
五色の輝きが増していく中、地面から滲み出してきたいくつもの影が、そうはさせぬと阻んでくる。
……例えこの身が影に侵されようと構うものか!
恐怖をねじ伏せ祈り続ける。
迫りくる虚ろな腕達を、白い輝きが貫いた。白衣を纏う背中が身を挺するように俺の前で腕を広げる。
「博士!」
「ボクに構うな! 集中するんだ! 大丈夫、キミくらいボクだけでも守り抜いてみせるさ」
「っ……お願いします」
「オッケー」
頼もしい答えを聞いて再び目を閉じる。身を焼くような熱い輝きに包まれ、溶けてしまいそうだ。
どうか……どうか……俺の願いを、皆の想いを聞き届けて下さい……
激しく高鳴る鼓動が一際大きく全身を揺らす。瞬間、戦いの音が消え、全てが白に染まっていく。
……ありがとう
薄れゆく意識の最中、涙に濡れた喜びの声を聞いた気がした。
「父上!」
いくら問おうが、悔しがろうが待ってはくれない。悲痛な声を上げ、小さくなっていく漆黒の背中に手を伸ばす彼も。
「……レン、これを」
託されたのは白く輝く輝石。
すぐに分かった。キョウヤさんが何をしたいのか。これから何をするつもりなのか。でも、止めることなんて出来る訳がない。
「……無茶しないで下さいよね」
「ああ、もう君を泣かせたりはしない。約束するよ」
強い決意を秘めた瞳が微笑んだ。黒く輝く翼をはためかせ、ブライさんの元へ飛んでいく。
見送るだけしか出来ないのか? もう、手遅れなのか?
『彼を……あの子を助けて!』
……いや、違う! まだ、やれることがあるハズだ!
「俺達も行きましょう! 二人だけじゃ」
「待って!」
「レン君? どうし」
「愛してる」
「「「「え?」」」」
鳩から豆鉄砲を食らったみたいに固まった皆の中で一人だけ、博士だけが成る程ねぇ、と楽しげに笑っていた。
「ヒスイ」
「は、はい」
逞しい長身がびくんっと姿勢を正す。握った手は白銀を纏っているのに、何だか熱く感じた。
「俺、ヒスイと居る時間が好きだ。スゴく安心出来るんだ……だから、これからも側に居させて欲しい。愛してるよ」
「っ……うん……俺も、レンの側に居たい……愛してる」
震える広い背に腕を回す。
俺達の間で強く輝いていた緑の光、その中心で澄んだ音と共に緑の結晶が生まれた。
「これは……愛の輝石? ……そうか、レンはまだ諦めていないんだね?」
流石ヒスイだ。もう俺の意図を察してくれたみたい。
「うん……ヒスイ、俺……」
あっという間だった。
頬に手を添えられたかと思えばすぐに塞がれていた。穏やかな笑みを浮かべた温もりが軽いリップ音を鳴らしながら離れていく。
「その先は言わないで。嬉しかったんだから。それに、輝石が生まれたってことは両思いってことだよね」
「うんっ……好き、だよ」
それで十分だよ、と微笑んでくれたヒスイをもう一度抱き締めて、見守っていた皆に向き直る。
赤いマントを揺らし、歩み寄ってきたコウイチさんが、俺の手を取り握り締めた。
「愛してるぞ! レン!」
「ちょっ……飲み込みが早すぎません?」
「そうか?」
何でもないことのように見つめてくる、赤い瞳の曇のなさに胸がチクリと痛む。心が広過ぎやしないか。優し過ぎるヒスイと同じで。
「俺もキミと同じ気持ちだ。助けられる可能性が少しでも有るならば、かけてみたい。それに嘘じゃないだろう? だったら堂々としてればいいじゃないか。俺達は想い合っているんだからな! さあ、キミの答えを聞かせてくれ!」
「……俺も、愛してます。コウイチさんのこと」
幸せに満ち溢れた笑顔を赤い輝きが照らす。光が集うように俺達の間でハート型の結晶が生まれた。
「今度はオレの番だね!」
「おわっ」
明るい宣言をされたかと思えば、飛びついてきたダイキさんの長い腕に抱き締められていた。にこやかに微笑んでいた黄色の瞳に熱がこもる。
「……レン、愛してるよ」
「お、俺も……愛してます」
艶のある雰囲気にあっさり呑まれて声が震える。打って変わって、やったぁ! と嬉しそうに笑う彼と俺の間で、煌めいていた黄色が集まり結晶になった。
抱き合う俺達に穏やかな声が呼びかける。
「レン君」
「アサギさん」
「チャンスは一度きりだ。愛の輝石が生まれ次第、僕達も全てをかけた一撃を邪神に打ち込む。出来るだけ弱らせた方がいいだろうからね」
真っ直ぐな青い眼差しが同意を求めるようにヒスイ達を順々に目配せしていく。皆が静かに頷いたのを確認してから再び俺を見つめた。
「だから」
「任せて下さい、必ずやり遂げます。皆で一緒に帰れるように」
少しだけ不安に揺れていた眼差しがふわりと微笑んだ。
「信じてるよ、レン君……愛してる」
「俺も、愛してます」
見つめ合い、手を重ねた俺達の間で生まれた青い結晶。見届け、飛び立っていった皆が託してくれた結晶に祈りを捧げる。
どうか、セレネさんを……皆を助けて下さい。光と影が共に歩める世界を……どうか。
五色の輝きが増していく中、地面から滲み出してきたいくつもの影が、そうはさせぬと阻んでくる。
……例えこの身が影に侵されようと構うものか!
恐怖をねじ伏せ祈り続ける。
迫りくる虚ろな腕達を、白い輝きが貫いた。白衣を纏う背中が身を挺するように俺の前で腕を広げる。
「博士!」
「ボクに構うな! 集中するんだ! 大丈夫、キミくらいボクだけでも守り抜いてみせるさ」
「っ……お願いします」
「オッケー」
頼もしい答えを聞いて再び目を閉じる。身を焼くような熱い輝きに包まれ、溶けてしまいそうだ。
どうか……どうか……俺の願いを、皆の想いを聞き届けて下さい……
激しく高鳴る鼓動が一際大きく全身を揺らす。瞬間、戦いの音が消え、全てが白に染まっていく。
……ありがとう
薄れゆく意識の最中、涙に濡れた喜びの声を聞いた気がした。
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