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大丈夫、可愛いですよ
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「そんな謙遜するなよ。俺達にとっては大恩人なんだからさ」
「ですが……」
「そもそも、誰かに頼ったり、教えてもらったりすることは悪いことじゃないだろう? 下手に無理して一人で全部背負い込もうとして、結果、アンタ自身も仕事もダメになりましたって方が良くないと思うけどな」
「それは……そうですね。良くないです、とても」
ひょこりと上がりかけていた顔がこちらを向いた。そそくさと姿勢を正してからは、また目を伏せてしまったけれども。
「……それにさ、アンタがそれだけ真っ直ぐだから、自然と周りも力になりたいって思うんじゃないかな」
「そう、なんでしょうか?」
「少なくとも、俺はそう思ったよ」
「それは……」
窺うように俺を見つめてきた眼差し。薄っすらと青みがかっていた夜空に、黄昏時のようにオレンジが滲み始めていて。
「私のことを好意的に思って頂けていると……そう受け取っても宜しいのでしょうか?」
「っ、ぇ」
何で? 一瞬、思いはしたが、自分の言ってしまっていたことを思い出してみれば、確かに。
出会って間もない人相手に、自然と力になりたいと思うだなんて……結構な好感度の高さなんじゃ?
「……可愛いですね」
「は?」
唐突な、しかも俺にはご縁がなさすぎる形容詞を耳にしたもんだから、間の抜けた声を上げてしまっていた。けれども、彼は平然とした口調で続けてくる。
「照れていらっしゃるんですよね?」
顔だけじゃない、全身から火が出ていそうだった。心臓が暴れていそうだった。自覚した途端に酷くなってしまうのは、何も痛みだけではないらしい。
「先程の笑顔も素敵でしたが、今の貴方の表情も私は好きですよ。ずっと見ていたい……カイト様?」
すっかり茹だってしまっていた頭では、上手い解決策など思いつく筈もなく。せめてもの抵抗として両腕で顔を隠すのが精一杯だった。
普通ならば、大半の人はここで諦めてくれるだろう。けれども彼は少数精鋭だったらしい。
「あの、折角の可愛らしいお顔が見えないのですが……」
「隠してんだよっ! 見られたくないからっ!」
ウソだろ!? 言わなきゃ分からないとか!!
「大丈夫、可愛いですよ」
「っ、そういう問題じゃないっ!」
何でだよ!? 何で、言ってもムダなんだよ!!
「……これはこれで……可愛らしいですね……少しだけ見えている赤い耳とか」
気にすることなく、耳慣れない形容詞ばかりを口にする声。優しくて、嬉しそうな声を聞いている内に、よく分からない何かが気恥ずかしさを上回った気がした。
「っ、あー……もういいよ、俺の負けだ……好きなだけ見ていいよ」
「良いんですかっ?」
何であんなに頑なに意地を張ってしまっていたんだか。ヤケクソで言った言葉すらも、こうも素直に喜ばれてしまうと余計にそう思ってしまう。
しかも、本当にじっくり見てくるし。めっちゃご機嫌そうだし。
本当に……好き、なんだな……俺のこと。
「……リアム」
「はい」
「アンタの気持ち……その……少しは、分かったよ……でもさ、やっぱり……いきなり……番になりたいってのは、急過ぎるんじゃないか?」
「そうかもしれませんね」
意外だった。てっきり、そんなことはありませんよ、って平然と返されるもんかと。
そこまで考えて、胸の辺りがモヤっとした。自分から言っておいて、何を驚いているんだろう。それどころか、何で。
「ですが、後悔はしたくはないのです」
芯の通った声で紡がれた言葉は、俺の胸にすとんと落ちてきた。
「私にとっては、貴方とこうして過ごせる時間は非常に短い。行動にも移さずに、あーだこーだと悩んでばかりいては、一ヶ月なんてあっという間です」
「……そうだね。一年ですら早いし……気が付いたらもう年末? って毎年言ってるような気がするな」
でしょう?
真一文字にしか見えなかった口元が僅かに綻ぶ。
俺の心臓は平常運転だ。だから、気のせいに決まっている。気のせい、だと思うんだけれども。柔らかな微笑みを向けられた時、胸の奥で軽やかな音が鳴ったような気がしたんだ。
「私にとって、貴方と過ごせる時間が何よりも大切なのです。今、この時ですら……少しでもいい……貴方と楽しい時間を過ごしたい……仲良くなりたい……私のことを、好きになって頂きたいのです」
「……それで……俺に直接聞けばいいって?」
「はい。より確実に貴方の好みに近づけるかと思いまして」
「……俺の好みになれるように努力しても、俺がリアムのことを……そういう意味で好きになるとは限らないのに?」
「構いません。貴方のお気持ちが、何よりも大切ですから」
真っ直ぐな眼差しでリアムは言い切ってみせた。
その気持ちは嬉しい。それに、しっかりとした覚悟のこもった言葉は、男の俺からしてもカッコいいなと思ったのだけれども。
「……寂しい、ですけど」
ぽつりとこぼれた本音に、つい吹き出しそうになってしまう。
そりゃあ、そうだよな。やっぱり、想いが届かないのは寂しいよな。
「ですが……」
「そもそも、誰かに頼ったり、教えてもらったりすることは悪いことじゃないだろう? 下手に無理して一人で全部背負い込もうとして、結果、アンタ自身も仕事もダメになりましたって方が良くないと思うけどな」
「それは……そうですね。良くないです、とても」
ひょこりと上がりかけていた顔がこちらを向いた。そそくさと姿勢を正してからは、また目を伏せてしまったけれども。
「……それにさ、アンタがそれだけ真っ直ぐだから、自然と周りも力になりたいって思うんじゃないかな」
「そう、なんでしょうか?」
「少なくとも、俺はそう思ったよ」
「それは……」
窺うように俺を見つめてきた眼差し。薄っすらと青みがかっていた夜空に、黄昏時のようにオレンジが滲み始めていて。
「私のことを好意的に思って頂けていると……そう受け取っても宜しいのでしょうか?」
「っ、ぇ」
何で? 一瞬、思いはしたが、自分の言ってしまっていたことを思い出してみれば、確かに。
出会って間もない人相手に、自然と力になりたいと思うだなんて……結構な好感度の高さなんじゃ?
「……可愛いですね」
「は?」
唐突な、しかも俺にはご縁がなさすぎる形容詞を耳にしたもんだから、間の抜けた声を上げてしまっていた。けれども、彼は平然とした口調で続けてくる。
「照れていらっしゃるんですよね?」
顔だけじゃない、全身から火が出ていそうだった。心臓が暴れていそうだった。自覚した途端に酷くなってしまうのは、何も痛みだけではないらしい。
「先程の笑顔も素敵でしたが、今の貴方の表情も私は好きですよ。ずっと見ていたい……カイト様?」
すっかり茹だってしまっていた頭では、上手い解決策など思いつく筈もなく。せめてもの抵抗として両腕で顔を隠すのが精一杯だった。
普通ならば、大半の人はここで諦めてくれるだろう。けれども彼は少数精鋭だったらしい。
「あの、折角の可愛らしいお顔が見えないのですが……」
「隠してんだよっ! 見られたくないからっ!」
ウソだろ!? 言わなきゃ分からないとか!!
「大丈夫、可愛いですよ」
「っ、そういう問題じゃないっ!」
何でだよ!? 何で、言ってもムダなんだよ!!
「……これはこれで……可愛らしいですね……少しだけ見えている赤い耳とか」
気にすることなく、耳慣れない形容詞ばかりを口にする声。優しくて、嬉しそうな声を聞いている内に、よく分からない何かが気恥ずかしさを上回った気がした。
「っ、あー……もういいよ、俺の負けだ……好きなだけ見ていいよ」
「良いんですかっ?」
何であんなに頑なに意地を張ってしまっていたんだか。ヤケクソで言った言葉すらも、こうも素直に喜ばれてしまうと余計にそう思ってしまう。
しかも、本当にじっくり見てくるし。めっちゃご機嫌そうだし。
本当に……好き、なんだな……俺のこと。
「……リアム」
「はい」
「アンタの気持ち……その……少しは、分かったよ……でもさ、やっぱり……いきなり……番になりたいってのは、急過ぎるんじゃないか?」
「そうかもしれませんね」
意外だった。てっきり、そんなことはありませんよ、って平然と返されるもんかと。
そこまで考えて、胸の辺りがモヤっとした。自分から言っておいて、何を驚いているんだろう。それどころか、何で。
「ですが、後悔はしたくはないのです」
芯の通った声で紡がれた言葉は、俺の胸にすとんと落ちてきた。
「私にとっては、貴方とこうして過ごせる時間は非常に短い。行動にも移さずに、あーだこーだと悩んでばかりいては、一ヶ月なんてあっという間です」
「……そうだね。一年ですら早いし……気が付いたらもう年末? って毎年言ってるような気がするな」
でしょう?
真一文字にしか見えなかった口元が僅かに綻ぶ。
俺の心臓は平常運転だ。だから、気のせいに決まっている。気のせい、だと思うんだけれども。柔らかな微笑みを向けられた時、胸の奥で軽やかな音が鳴ったような気がしたんだ。
「私にとって、貴方と過ごせる時間が何よりも大切なのです。今、この時ですら……少しでもいい……貴方と楽しい時間を過ごしたい……仲良くなりたい……私のことを、好きになって頂きたいのです」
「……それで……俺に直接聞けばいいって?」
「はい。より確実に貴方の好みに近づけるかと思いまして」
「……俺の好みになれるように努力しても、俺がリアムのことを……そういう意味で好きになるとは限らないのに?」
「構いません。貴方のお気持ちが、何よりも大切ですから」
真っ直ぐな眼差しでリアムは言い切ってみせた。
その気持ちは嬉しい。それに、しっかりとした覚悟のこもった言葉は、男の俺からしてもカッコいいなと思ったのだけれども。
「……寂しい、ですけど」
ぽつりとこぼれた本音に、つい吹き出しそうになってしまう。
そりゃあ、そうだよな。やっぱり、想いが届かないのは寂しいよな。
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