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俺の好きなこと
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「それでも、少しでも可能性があるならば……貴方と仲良くなれるのであれば」
「食べることと、料理すること」
「え」
「俺が好きなこと。趣味でもあるけど」
珍しくこちらの言葉を飲み込めていないのか、リアムは目を丸くしていた。大きく見開いていた夜空色の瞳に、じわじわとオレンジが滲んでいく。
「わっ、私もっ、好きかもしれませんっ!」
前のめりな肯定と一緒に、行儀良くしていた白い手が勢いよく伸びてきた。俺の手を取り、ぎゅっと力を込めてくる。驚きはすれど、やっぱり悪い気はしない。懸命にアピールしようとしてくる姿勢も相まって、つい口元が緩んでしまう。
黒い手の方は、すんでのところで止まっていた。今にも俺の全身を椅子ごと、その巨大な手のひらで包み込んでしまいそうな感じがしたけれども。
「貴方が作ってくれた料理は美味しかった! お味噌汁も、塩むすびも、また食べたいと思いました!」
「そっか。そんなに気に入ってくれたんなら、また明日も作るよ。それから他の料理も。だから味の好みとかがあったら、」
教えてもらおうと思ったけれど、今は難しそうだ。何やら彼は上の空。ブツブツと何かを呟いている。向かいの席からでも何を言っているのかは聞き取れない。というか、そもそも俺にとっては耳馴染みのない言葉や発音のような。
「……おーい、大丈夫か? 俺の好きなこと、まだ教えきれてないぞ?」
「っ、は、はい! 大丈夫っ……ですからっ、どうか、教えて下さい!」
どうやら俺の声は聞こえてはいたようだ。ハッとしたような顔をして、俺の左右に寄り添っていた黒い手も驚いたようにビクッと跳ねたものの表情は平常に戻っていた。少しだけ、頬が赤いように見える気もするが。
「料理もだけど、映画を見ることも好きだな。とにかくアクションが派手で、頭空っぽにして楽しめるヤツなら最高。ストーリーが良いのも好きだけど、あんまり重たかったり、心にくるのは……引きずっちゃうからさ」
「……分かるような気がします。やっぱり、多少都合が良くてもハッピーエンドの方が嬉しいですから」
「だよな! 俺もさ、皆で力を合わせて地球の危機を救う、みたいな。熱くて王道なのが好きなんだ」
地球の危機。自分で口にした言葉を切っ掛けに、直近の出来事が思い浮かんできた。そういえば、あの映像を見た時も。
「……リアムが隕石をぶっ潰してくれたのもスカッとしたんだ」
何だか現実感がなくて、映画みたいだなって思ってたんだっけ。アクション映画のヒーローみたいだなって。
「だからさ、ちょっと不謹慎かもだけど……また、見たいな」
「っ、どうぞ! いえ、是非っ! あの映像は貴方に見せる為に撮ったのでっ、何度でも見て下さい!」
「ふふ……ありがとう」
好きなことのベストスリーを話し終えたところで、大人しかった膝の上がもぞりと動いた。
みっ、と短い鳴き声と共に、ふわふわのマフラーみたいな長い身体がひょこっと伸びる。後ろ足だけで立ち、小さな前足を俺の胸元にちょんと乗せながら、つぶらな瞳で見上げてくる。
「ん? お前も見たいのか?」
「みぁっ!」
そう言えば、あの時この子も楽しんでたっけ。隕石を容易く潰したリアムを応援するように、明るい鳴き声を上げながら。
ふわふわで小さな頭を撫でながらリアムを見れば、小さく頷いた。これで観客は、本人を加えて三人。あの時とおんなじだ。
「そういや、この子って……リアムのペット……いや、家族なのか?」
「そうですね……今は私がネモネの保護者ですから」
「ネモネか。名前も可愛いな」
「みっ」
「他にもネモちゃん、ネーネー、モネりん、にょみゃぷぅ等々、複数の愛称をお持ちです」
「へぇ……」
つらつらと述べられた愛称も可愛らしいものばかり。何だかすっかり原型がなくなってしまっているものもあった気もするが、それもあふれんばかりの愛情故にだろう。
ネモネを見れば分かる。触り心地抜群な毛並み、初対面の俺にも人懐っこく、更には心配してくれて寄り添ってくれる優しさ。どれもがネモネが大切に、愛されてきたんだということを示していたから。
「食べることと、料理すること」
「え」
「俺が好きなこと。趣味でもあるけど」
珍しくこちらの言葉を飲み込めていないのか、リアムは目を丸くしていた。大きく見開いていた夜空色の瞳に、じわじわとオレンジが滲んでいく。
「わっ、私もっ、好きかもしれませんっ!」
前のめりな肯定と一緒に、行儀良くしていた白い手が勢いよく伸びてきた。俺の手を取り、ぎゅっと力を込めてくる。驚きはすれど、やっぱり悪い気はしない。懸命にアピールしようとしてくる姿勢も相まって、つい口元が緩んでしまう。
黒い手の方は、すんでのところで止まっていた。今にも俺の全身を椅子ごと、その巨大な手のひらで包み込んでしまいそうな感じがしたけれども。
「貴方が作ってくれた料理は美味しかった! お味噌汁も、塩むすびも、また食べたいと思いました!」
「そっか。そんなに気に入ってくれたんなら、また明日も作るよ。それから他の料理も。だから味の好みとかがあったら、」
教えてもらおうと思ったけれど、今は難しそうだ。何やら彼は上の空。ブツブツと何かを呟いている。向かいの席からでも何を言っているのかは聞き取れない。というか、そもそも俺にとっては耳馴染みのない言葉や発音のような。
「……おーい、大丈夫か? 俺の好きなこと、まだ教えきれてないぞ?」
「っ、は、はい! 大丈夫っ……ですからっ、どうか、教えて下さい!」
どうやら俺の声は聞こえてはいたようだ。ハッとしたような顔をして、俺の左右に寄り添っていた黒い手も驚いたようにビクッと跳ねたものの表情は平常に戻っていた。少しだけ、頬が赤いように見える気もするが。
「料理もだけど、映画を見ることも好きだな。とにかくアクションが派手で、頭空っぽにして楽しめるヤツなら最高。ストーリーが良いのも好きだけど、あんまり重たかったり、心にくるのは……引きずっちゃうからさ」
「……分かるような気がします。やっぱり、多少都合が良くてもハッピーエンドの方が嬉しいですから」
「だよな! 俺もさ、皆で力を合わせて地球の危機を救う、みたいな。熱くて王道なのが好きなんだ」
地球の危機。自分で口にした言葉を切っ掛けに、直近の出来事が思い浮かんできた。そういえば、あの映像を見た時も。
「……リアムが隕石をぶっ潰してくれたのもスカッとしたんだ」
何だか現実感がなくて、映画みたいだなって思ってたんだっけ。アクション映画のヒーローみたいだなって。
「だからさ、ちょっと不謹慎かもだけど……また、見たいな」
「っ、どうぞ! いえ、是非っ! あの映像は貴方に見せる為に撮ったのでっ、何度でも見て下さい!」
「ふふ……ありがとう」
好きなことのベストスリーを話し終えたところで、大人しかった膝の上がもぞりと動いた。
みっ、と短い鳴き声と共に、ふわふわのマフラーみたいな長い身体がひょこっと伸びる。後ろ足だけで立ち、小さな前足を俺の胸元にちょんと乗せながら、つぶらな瞳で見上げてくる。
「ん? お前も見たいのか?」
「みぁっ!」
そう言えば、あの時この子も楽しんでたっけ。隕石を容易く潰したリアムを応援するように、明るい鳴き声を上げながら。
ふわふわで小さな頭を撫でながらリアムを見れば、小さく頷いた。これで観客は、本人を加えて三人。あの時とおんなじだ。
「そういや、この子って……リアムのペット……いや、家族なのか?」
「そうですね……今は私がネモネの保護者ですから」
「ネモネか。名前も可愛いな」
「みっ」
「他にもネモちゃん、ネーネー、モネりん、にょみゃぷぅ等々、複数の愛称をお持ちです」
「へぇ……」
つらつらと述べられた愛称も可愛らしいものばかり。何だかすっかり原型がなくなってしまっているものもあった気もするが、それもあふれんばかりの愛情故にだろう。
ネモネを見れば分かる。触り心地抜群な毛並み、初対面の俺にも人懐っこく、更には心配してくれて寄り添ってくれる優しさ。どれもがネモネが大切に、愛されてきたんだということを示していたから。
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