建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF

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第19章 土の国ヒュプノベルフェ探訪・アルトラの解呪編

第552話 vsタマモゾンビ&ボーンスネーク

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「タマモ、この世界に二体の命が繋がってる生物って居る?」
「そなた奇妙なことを申すな? 繋がっているというと、片方を殺したらもう片方も同時に死ぬとか、そういうことか?」
「もしくは片方を殺しても、もう片方が生きてる限りは生き返らせるとか」
「そんな生物聞いたこと無いが……常識外過ぎて、ワシには分からぬよ……」
「流石にそんな生物居るわけないよね。でも、私が知っている物語で、二体の生物の命がリンクしていて片方を倒しても、もう片方が生きてる限り何度も生き返って死ぬことはないって話を見たことがあるんだよ」

 まあゲームの話なんだけど。

「片方生きていれば生き返る? だとしたら、まさしく不死の生物ではないのか!?」
「そう、だから両方同時にHPを削って調整して、トドメに全体攻撃でHPをゼロに~……」

 話を聞いていたタマモとフレアハルトの頭の上に『?』が見える。
 二人が表情で『この者は一体何の話をしているのだろう?』と語っている。
 冥球のヒトにゲームの話しても分かるわけないわ。もうちょっと言い方変えないと……

「…………ゴホンッ、ごめん、今のを要約すると、片方を先に倒してももう片方が生き返らせてしまうから、タイミングを合わせて両方同時に命を断ったって話をしようとしたんだけど」
「おお、なるほど! 片方がもう片方を再生させるなら、二体同時に首を斬ってしまえば復活させる者がらんくなるというわけじゃな!」
「そうそう、今回のゾンビはそのゲーム物語に出て来る生物に性質が似てるなって思ってね」

 しかし、ここでタマモが渋い顔をする。

「だが……今まで両方の首が同時に無くなったタイミングはあったぞ? それでも倒れんかったのに……」

 その疑問が起こるとは思っていた。私も二体の首が同時に身体から離れているのを実際にこの目で見ているし。

「それはあなたが言っていた『光魔法なら痛みがある』というところに反してるからと考えられないかしら? 例えば呪われているから、光魔法でなければその呪いによって構築されている“不死のくさび”みたいなものを断ち切れないとか」
「ううむ……呪いが闇に属するものなら光で滅せる可能性があると言いたいわけか?」
「そう、それを考慮に入れればもしかしたら“痛みを与えられる光魔法”で全く同時に首を斬れば倒せるかもしれない、と」
「なるほど……鍵となるのは“痛み”か。それは試してみる価値がありそうじゃな」

 人だって痛みが強ければ死ぬし、それなりに納得できる仮説だと思う。

「フレアハルト、よく気付いてくれたわ! ずっと下に居たら気付かなかったかもしれない!」
「しかしここには光魔法を使える者が二人らん。どうするつもりじゃ?」
「光魔法を使える者が二人居なくても、武器に付与することはできる。これを!」

 『真剣斬まじきり丸Ver.2』を投げて渡す。

「おっと! これは、さっき使っておった刀じゃな? この魔法剣は他人が使っておっても持続するのか?」
「まあしばらくは切れないよ」

 ホントは私が解除するまで切れない。今までは脇が甘かったけど、今後『効果:永続』はおいそれと口にしない方が良いからね……

「だがこれをワシに渡してしまったらそなたはどうする?」
「問題無い、もう一本あるから」

 【亜空間収納ポケット】から『真剣斬まじきり丸Ver.3』を取り出す。

「なるほど、ではこれで光を帯びた刀が二つになったわけじゃな。では作戦開始と行こうか」
「待って、まずその刀の使い方を教えるわ」

 『真剣斬まじきり丸』の使い方を教えた。

「ほう、なるほど。魔力を流すと超振動する刀の魔道具か」

 それを聞いたタマモは試しとばかりに地面に突き刺す。

「おぉ!? こ、これは……危ない刀じゃな……刀身に少し触れただけで指が飛んで行きそうだ……」
「そういうわけだから全部終わったら返却をお願い。危な過ぎて無闇に使わないようにしているから」
「うむ、心得た」
「フレアハルトは――」

 まだ青い顔してる……

「――まあ見ててくれれば良いわ」
「すまぬな……今回何の役にも立てんで……」
「そんなことないよ! さっきあなたが気付かなければ活路さえ見い出せなかったかもしれないし」

 幼少期のトラウマって割と引きずるんだな……レイアも怖がってたけど同じような状態かしら?

「じゃあ、どちらがどちらを斬る?」
「ワシに蛇の方をやらせてくれ。原点となったワシ自身の手で決着を付けたい。ヤツには七百年に渡って子々孫々に被害を与えてくれた罪をあがなってもらわねばな。それに自分の身体を斬るのも気が進まんしの」
「分かった。それじゃあ作戦開始しましょうか」
「ヤツらは交戦しても、一度視界から消えると我らへの警戒を解く。不意打ちして初手で首を斬ってしまおう。ゾンビ化と呪いによって力も強化されておるから最初の一撃で倒せねば厄介じゃ」
「了解。じゃあ着地した瞬間に飛び掛かって斬るってことで」
「では行くそ」

 岩壁の上から二人同時に飛び降り……着地。
 蛇の方が遠い……さっき一度交戦した時のことを鑑みるに、斬った瞬間から再生が始まっていた。つまり倒すには“同時に首が離れている”という状態ではなく、“寸分の狂い無く全く同時に切断する”という状況にしなくてはならない。一瞬遅かっただけでも再生の時間を与えてしまう。
 タマモの動きに合わせ、一呼吸置いてからタマモゾンビに飛び掛かり首を斬り飛ばした。

「やった?」

 自分の目標を達成し、タマモの方を見ると……ボーンスネークの首はまだ繋がっている。
 更によく見ると首の骨に真剣斬まじきり丸が刺さった状態で止まっていた。

「すまぬ、距離が遠すぎた。一瞬早く気付かれてしまった」

 しかも、刀がそのまま首に刺さったままになっている。緊急避難せざるを得なかったようだ。
 仕切り直すか? でも……今斬ったタマモゾンビの方が再生し、身に纏う黒いオーラが増大。また呪いの力が強くなってしまったかもしれない。

「ギイイィィィシャアアァァァアァァァ!!」

 光を帯びた刀がそのまま刺さっている状態なので、余程痛みがあるのか激しい叫び声を上げ、その巨体をくねらせながら辺りをのたうち回るボーンスネーク。
 付近の岩壁に巨体が何度もぶつかり、岩がボロボロと崩れどんどん削れていく。

「アレ、さっさと引き抜かないとマズくない!? ゾンビたちを閉じ込めてる地形自体が壊されちゃうよ!?」
「ああ、分かっておる」
「じゃあ一旦動きを止めるから……」
「いや、必要無い」

 タマモがそう答えると、右手をボーンスネークに向かってかざした。
 次の瞬間右手部分だけが塵のように分解し、ボーンスネークに刺さっている刀付近に出現。刀を掴むと引き抜いて再び刀ごと塵となってタマモの身体へと戻って来た。
 刺さっていた刀が抜かれて痛みが消えたのか、やたらにのたうつのも収まる。

「その能力凄いね」
「ワシは物質の精霊として昇華したようでな、身体を分解させて移動できる」

 これがカイベルが言ってた『分解転移』か。

「さて、二体ともこちらを睨んでおるが、どうする?」
「足を切って動けなくしてから首を斬る…………なんて考えたけど、蛇の方に足無いんだったね……」

 くそっ! ゾンビのあの身体では下半身を切ったところで機動力が落ちるとも思えない……それに致命傷を与えたら、多分また再生されてパワーアップされる。
 ゾンビになって身体のリミッターが壊れているのか、スピードも生きている獣人より速い。ボーンスネークの方も骨だけになって身軽になっているためか、百メートル超 (予測)の巨体とは思えない速度で反応してくる……

「ゾンビってもっと遅く動くもんじゃないの?」

 ほにゃららハザードのゾンビはもっと遅かったのに……

「ワシはこやつらしかゾンビを知らんから速度の違いなど知らぬが……話してる時間は無さそうだ。襲って来たぞ!」

 ボーンスネークの尻尾振り攻撃。その巨体を生かして超広範囲を巻き込むように薙ぎ払う。尻尾が近くの岩壁に次々とぶつかり、岩の表面を大きく削りながらも攻撃してきたが、二人同時にジャンプしてやり過ごす。
 岩壁に当たった尻尾は、身体の中心を通る脊椎骨に繋がっている多数の肋骨が折れて損壊や欠損してしまっている。が、それでも痛みは無いらしく機動力は全く落ちない。

「あれは死んで再生した時にまた完全修復されるのかな……?」

 岩壁で削られてボキボキボロボロだ……

「おい! よそ見をするな! タマモゾンビの方が飛んで来ておる!」
「えっ!?」

 その鋭いツメによる振り下ろし。
 空中で打ち下ろされ、叩き落されて勢い良く地面に激突した。

「アルトラ!?」
「大丈夫……」

 コイツ……高いジャンプをしないのかと思ってたけど、敵が視界に入ってればそれを追いかけてハイジャンプもするのか……それでも岩壁の囲いを抜けないのは、やっぱりそういう考えが頭に無いからってことなのね。

 私の後に着地したタマモゾンビはなおも執拗に私を標的にしてくる。
 そのツメによる素早い連続攻撃。一発一発が重い……一振りするごとに私の後ろの岩壁にその風圧により巨大なツメの痕が付く。この身体でなければあっという間に細切れにされているかもしれない。
 このまま真剣斬まじきり丸で攻撃を受け続けるのもまずい。折れてしまう。
 一旦距離を離……そうとするも、すぐに追いつかれてまた攻撃を受ける。密着されてなければ離脱は容易だが……後ろの岩壁が邪魔をして機動力が大きく削がれる。何て執拗に追いかけてくるのかしら!

「くそっ! やむを得ない!」

 ツメによる攻撃を受け流し、一瞬の隙を突いて首を切断。
 一度仕切り直す!
 しかし……

「これでまた呪いをパワーアップさせてしまった……」

   ◆

 一方、時は本体らが呪いの大元を突き止めようとゴルゼン家を出発したところまでさかのぼる。
 アルトラの分身体の方では――

「交互に治癒魔法をかければ進行は留めておけるようですし、交代で休み休みやりましょう」

 ゴルゼン家に風の国から招かれた治癒医師・ピレオスさん。
 ホワイト・ヘルヘヴン族で医者で光魔法に長けた回復のエキスパートだそうだ。
 この二週間、彼ががんばって呪いの進行を留めていた。

「そうですね」

 と、主治医ピレオスさんからの提案に同意したところ、フォルクスさんから不安の声が出る。

「だ、大丈夫なのですか?」
「二人同時にですと両方疲れてしまった時に打つ手も無くなってしまいますので、現状最善の手かと思われます」
「わ、分かりましました……娘をよろしくお願い致します」

 深々と頭を下げるゴルゼン夫妻。

「じゃあまずは私が治癒魔法をかけます。一時間交代としましょう。ピレオスさんは少し休んでいてください」

 今までは一人で呪いを抑え込んでいた分かなりの疲れの色が見え、夫妻同様に目の下には濃いクマができてしまっている。

「分かりました。少し仮眠させてもらいます」

 そして何度かの交代を経た後に、それは起こる。

   ◆

「お休みのところすみません、アルトラさん!」

 交互に呪いの進行を抑える過程で、私の番が終わって椅子に座って休憩していたところ、突然焦りの混じった声で呼ばれた。

「どうしたんですか?」
「斑点の範囲が急激に進行を始めました! もう私だけでは留めておけません! 手伝ってください!」
「え!? 急激に進行し始めた!?」

 本当だ! 凄い早さで右足首から広がりを見せている!
 今まで交互の治癒魔法で大丈夫だったものが、二人がかりでやらなければ進行を留めておけないような状態に……
 本体の方は何やってるんだ!?

「うぅ……うああぁあぁ……」

 フィリアちゃんからの悲痛なうめき声が上がったと思ったら――

「カハッ! コホッ……! ううぅ……」

 ――血を吐いた!
 一旦呪いが解除された安堵感から椅子に座ったままうたた寝していた夫妻も目を覚ます。

「ど、どうしたんですか……?」
「斑点の広がりが加速しています! 今は二人がかりで留めておりますが……」

 という、ピレオスさんの説明を受け、再び狼狽し始めるゴルゼン夫妻。

「ああ……フィリア……」
「なぜなんですか!? 大丈夫なんですか!?」
「何とか……食い止めます……その間に分身体わたしの本体が何とかしてくれるのを祈っててください……」

 『祈って』、そうとしか言えなかった。
 分身体わたしの本体とは言え、意識を共有しているわけではないからあちらの状況など分からない。フィリアちゃんの病状の急激な変化を見ると、多分今解呪のために奮戦しているのだろう……この急激な呪いの転化は、あちらの状況に何か変化があったことを物語っている。

 さっき『祓魔ふつまくろがね』で解呪された後、右足首にだけ少し残った黒い斑点は再び拡大を見せ、既に右中脛から下が真っ黒に変色、中脛より上へと勢力を伸ばしつつある。
 二人がかりでギリギリ進行を留められてる状態。少しでも気を抜けば、あっという間に全身に広がりそうな勢いだ。

「このままじゃ私たちの魔力の枯渇も早まる……も、もうあまり時間もたない! 早く何とかして本体!」

   ◇

 そして時は現在、場面は本体のアルトラへと戻る――

 緊急避難的に斬り飛ばした首はすぐに再生を始め、短時間で完全復活。
 そして、予想した通りまた黒いオーラが強まった。

 タマモの方もその巨体相手に大分苦戦している。
 ボーンスネークに多分そういう意図は無いのだろうが、激しくのたうって自身の首を狙わせないようにしているかのように見える。

「おのれっ! 近寄れん!」

 タマモが尻尾に注目している中、逆側から頭が攻撃してきているのに気付いた。

「タマモ、危ない! 後ろから頭が来てる!」
「しまった!!」

 一瞬のミス!
 タマモはボーンスネークに上半身を丸ごと食いちぎられてしまった!

「タマモ!」

 まさか……これで終わりなのか……?

 そう思ったところ――

「ふぅ~~、危なかった……」

 ――私のすぐ近くから声。

「あと一瞬遅かったら分解する前に殺られておったわ」

 ボーンスネークの近くに残された下半身を見ると、いつの間にかこっちに移動してきている。

「お、驚かせないでよ……あなた、食べられても死なないのね」
「いや、死ぬぞ? これは分解の魔法を使っているに過ぎぬからな。ワシの身体のベースは獣人であって砂の精霊や水の精霊と違って流体する受肉体ではないから食いちぎられれば終わりじゃ」

 じゃあ、今のはギリギリで回避したってわけか……

「厄介じゃな……中々首も狙えん上に、二体同時の斬首となると……」
「しかも殺せば殺すほどパワーアップ……」

 再びの仕切り直し。
 双方、ほんの少し、秒にして三秒にも満たないくらいの僅かな“動きの無い時間”が訪れた。
 その直後に、沈黙を打ち破ったのは予想だにしない現象だった。
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