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21 練
手を握り、深呼吸をして目を閉じる。
自分の心臓の音が聞こえるくらい静かなこの場所で、今日も俺は────・・・
「いぎゃーーーっ!服、焦げっ、あ、熱っ!!」
「のろま。魔力量を瞬時に見極めろ。」
「そっんなっ、こと言われてもっ、ぶはっ、今度は、み、水う?!さ、さ、寒っ、」
「そうやって加減せずに魔力を使うのも駄目だ。お前はすぐに倒れる。」
「ひいっ!イルお前っ、俺にっ、厳しすぎんか?!」
「これだから人間は、ひ弱で好かん。」
「すっ、好きとか好かんとか、今関係なっ、いぎゃーーー!」
イルが放つ火球や水球。(氷は勘弁してもらった)
とんでもない速さでとんでくるそれを避けきれない、相殺しきれないと、俺は死ぬ。
「これくらいで死ぬものか」とイルは鼻で笑うけど、いや、これは死ぬ。
この竜人、加減を知らない。
「もっ、もっと、や、優しい、初心者向けの訓練はっ、」
「無い。お前が教えろと言ったんだろう。甘えるな餓鬼。」
「きっ、鬼畜上官!!!」
「・・・いい度胸だ。」
「ひえっ、」
瞬時にとびきり大きな水球が頭上に浮かび影になる。
あわわわわ、と右往左往する俺に細かく分裂しながら落ちてくる水球は、まるで桶をひっくり返した雨・・・、いや、滝・・・?
びしゃびしゃのびちょびちょの状態で聞こえてきたのは大きな大きなイルの舌打ち。
そんな呆れなくても・・・と、顔をあげるとイルは心底鬱陶しそうな顔で空を見ていた。
水を滴らせ戦意喪失状態で上を向くと、見覚えしかない一頭の竜が降りてくるのが見えた。
《 何遊んでんだ?水遊びなら俺も混ぜろ 》
「・・・よく見ろイーライ。これのどこが水あそ・・・クシュンッ」
風吹いて体がぶるりと大きく震えた。
震えで歯がぶつかり、カチカチと音が鳴るのを見てイーライは笑っている。こらこら、笑い事じゃない。
頭を振って髪の水切りをしていると、ふわっとした温かさを感じた。
見覚えのある薄灰色の外套は寒冷仕様になっていて、厚みがありとても温かい。
「生憎拭くものを持ち合わせていない。これを羽織るといい。」
「ジェイスさん!ありがとうござ・・・クシュンッ、久しぶり・・・クシュンッ、ですね!」
「・・・大丈夫か。」
「はい!いつものことなんで!これでも結構慣れました!」
「・・・・・・」
ジェイスさんとイーライのペアに会うのはいつぶりだろう。
ディランさんと同い年、出世頭のジェイスさん。
竜騎士の中では一番立場が上で────そう考えるとカルマのあの態度はやばい────ユシュフになかなか来れないのだと、フェイさんから聞いた。
俺がぶっ倒れて寝ていた期間は知らないけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・もしかして、直接会うのはリーディア様の一件以来?
「少々やりすぎでは。」
「口出し無用。何の用だ。」
何かぴりぴりしたやりとり。
そっと後ろを見ると赤い瞳がイルの方をまっすぐ向いていた。
外套を掛けてくれた手は俺の方に乗ったままで、ぐっと力がこもる。
この二人、相性は良くないらしい。
「えーっと・・・ジェイスさん、今日はどうしたんですか?」
「・・・・・・あちらの体制が整った。待たせてすまない。レヴィを迎えに来た。」
「・・・あ、え?迎え?それはまた急に、うわあっ!イル?!」
ずんずん近付いてきたイルに腕を引かれて厚い胸板へ突っ込んでしまった。
そのまま片腕で封じ込まれて身動きが取れないし、何も見えない。
俺の肩にかかっていた外套を剥ぎ取ると、バサッと投げる音がする。
・・・どうか、どうか、地面に捨ててませんように。せめてジェイスさんに投げてますように(それでもよくはない)。
「勝手なことをするな、殺すぞ。」
「・・・その者は騎士団の見習いです。今回は緊急時ゆえ、特別にこちらで面倒をみていただきましたが・・・もう大丈夫ですので。そちらこそ勝手なことをしないでいただきたい。」
「・・・あ゛あ?」
「(ひょえ~・・・・・・)」
イルの魔力が長年体内にあったからなのか、俺の魔力が多すぎるからなのか、俺は他者の魔力に敏感だ。
今もイルから漏れ出す魔力が攻撃的すぎて、体のぞわぞわが止まらない。
ここは「威嚇すんな!」と怒りたいところだが、背後から伝わってくるジェイスさんの魔力もなかなか攻撃的で、イルを怒る=ジェイスさんにも物申さないと、イルの機嫌が更に悪化する。
ジェイスさんの溢れた魔力はきっと無意識なんだろうけど、そんな落ち着いた口調で、実は今、結構怒ってるんですね────・・・!
「ルドラから連絡があったはずだ。」
「・・・魔族の動きが活発化。砦の竜人と竜騎士団並びに契約竜は一時的に同盟を結び、短期集中型の魔族討伐を行う。」
「こいつがここにいても問題ない。」
「・・・レヴィは竜と契約していません。特別な力を持っているとは聞きましたが、一人で魔族と戦、」
「もう俺と契約した。」
「・・・は?」「え?!俺と?!いつ?!」
少し緩んだイルの腕の力。
隙をついて体を反転、腕を下にずらして何とか顔を自由に動かせるようになった。
見上げたイルと目が合うと、何とまあ、めちゃくちゃしてやったり顔をしていて、俺がジェイスさんの立場なら相当腹が立つ煽り顔だな、と思った。
・・・おっと、違う。今は考えるのはそっちじゃなくて!
「契約って何?!そんなことした覚えないんだけど!?」
「お前が寝ている間に血を舐めた。俺の血も飲ませた。」
「・・・・・・血?!おえ゛っ、なっ、何してんの、お前!?」
「竜人と契約だ。光栄に思え。」
「???!」
そういやリーディア様が俺の血舐めた時、イルぶち切れだったな。
て言うか、リーディア様も何してんの。
俺と契約しようとしてたの。
無理です。あなたのこと絶対制御できません。
・・・かと言って、イルを制御できるとも全く思いませんけど。
「そういうことだ、赤目。お前が竜との契約に口を出せる立場ではなかろう。契約は当人同士の問題だ。」
「俺、同意した覚えないん、むごっ!んぐー!!」
「・・・・・・体調も心配ですので、とにかく一旦連れて帰ります。」
「ならば俺も行こう。それでいいな?」
「・・・・・・わかりました。上層部に報告しておきます。」
「(・・・決まっちゃった・・・)」
溢れ出す魔力がジェイスさんの感情を表していた。
少し眉を下げ、俺を一瞥した後イーライの方へ歩き出す。
俺は慌ててイルに見送りを懇願し、飛び立つ前の一人と一頭の元へ走った。
「迎えに来てもらったのに・・・なんか本当すみません・・・」
「レヴィが謝ることではない。元はと言えば、私が巻き込んだのだから。」
「いや、それは・・・まあ最初はそうでしたけど、今は完全に俺の魔力の問題なんで、ジェイスさんが気にする必要はないです。」
「・・・そうか。」
「イーライも来てくれてありがとな。」
イーライの体を撫でようと近づく。
そして何故か後退るイーライに、俺とジェイスさんは首を傾げた。
《 ・・・レヴィ、イル様の匂い強い 》
「え゛っ!?そんなに?!」
「・・・どうした?」
「なななななんでもないです・・・!気をつけて帰ってくださいね!あははは・・・」
「・・・帰りを待っている。三日以内にダートへ。」
「分かりまし、わっ、」
後頭部を引き寄せられて、ジェイスさんの肩の甲冑に額があたる。
痛くはないけどびっくりした。
そしてぽんぽん、と二回俺の頭を撫でてからジェイスさんはイーライに乗り、ダートへと帰って行った。
「あの赤目、今度焼いてやる。」
「・・・本当やめろよ。」
そしてこの二日後、俺は竜化したイルの背に乗り、約三ヶ月ぶりのダートに向けて飛び立った。
自分の心臓の音が聞こえるくらい静かなこの場所で、今日も俺は────・・・
「いぎゃーーーっ!服、焦げっ、あ、熱っ!!」
「のろま。魔力量を瞬時に見極めろ。」
「そっんなっ、こと言われてもっ、ぶはっ、今度は、み、水う?!さ、さ、寒っ、」
「そうやって加減せずに魔力を使うのも駄目だ。お前はすぐに倒れる。」
「ひいっ!イルお前っ、俺にっ、厳しすぎんか?!」
「これだから人間は、ひ弱で好かん。」
「すっ、好きとか好かんとか、今関係なっ、いぎゃーーー!」
イルが放つ火球や水球。(氷は勘弁してもらった)
とんでもない速さでとんでくるそれを避けきれない、相殺しきれないと、俺は死ぬ。
「これくらいで死ぬものか」とイルは鼻で笑うけど、いや、これは死ぬ。
この竜人、加減を知らない。
「もっ、もっと、や、優しい、初心者向けの訓練はっ、」
「無い。お前が教えろと言ったんだろう。甘えるな餓鬼。」
「きっ、鬼畜上官!!!」
「・・・いい度胸だ。」
「ひえっ、」
瞬時にとびきり大きな水球が頭上に浮かび影になる。
あわわわわ、と右往左往する俺に細かく分裂しながら落ちてくる水球は、まるで桶をひっくり返した雨・・・、いや、滝・・・?
びしゃびしゃのびちょびちょの状態で聞こえてきたのは大きな大きなイルの舌打ち。
そんな呆れなくても・・・と、顔をあげるとイルは心底鬱陶しそうな顔で空を見ていた。
水を滴らせ戦意喪失状態で上を向くと、見覚えしかない一頭の竜が降りてくるのが見えた。
《 何遊んでんだ?水遊びなら俺も混ぜろ 》
「・・・よく見ろイーライ。これのどこが水あそ・・・クシュンッ」
風吹いて体がぶるりと大きく震えた。
震えで歯がぶつかり、カチカチと音が鳴るのを見てイーライは笑っている。こらこら、笑い事じゃない。
頭を振って髪の水切りをしていると、ふわっとした温かさを感じた。
見覚えのある薄灰色の外套は寒冷仕様になっていて、厚みがありとても温かい。
「生憎拭くものを持ち合わせていない。これを羽織るといい。」
「ジェイスさん!ありがとうござ・・・クシュンッ、久しぶり・・・クシュンッ、ですね!」
「・・・大丈夫か。」
「はい!いつものことなんで!これでも結構慣れました!」
「・・・・・・」
ジェイスさんとイーライのペアに会うのはいつぶりだろう。
ディランさんと同い年、出世頭のジェイスさん。
竜騎士の中では一番立場が上で────そう考えるとカルマのあの態度はやばい────ユシュフになかなか来れないのだと、フェイさんから聞いた。
俺がぶっ倒れて寝ていた期間は知らないけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・もしかして、直接会うのはリーディア様の一件以来?
「少々やりすぎでは。」
「口出し無用。何の用だ。」
何かぴりぴりしたやりとり。
そっと後ろを見ると赤い瞳がイルの方をまっすぐ向いていた。
外套を掛けてくれた手は俺の方に乗ったままで、ぐっと力がこもる。
この二人、相性は良くないらしい。
「えーっと・・・ジェイスさん、今日はどうしたんですか?」
「・・・・・・あちらの体制が整った。待たせてすまない。レヴィを迎えに来た。」
「・・・あ、え?迎え?それはまた急に、うわあっ!イル?!」
ずんずん近付いてきたイルに腕を引かれて厚い胸板へ突っ込んでしまった。
そのまま片腕で封じ込まれて身動きが取れないし、何も見えない。
俺の肩にかかっていた外套を剥ぎ取ると、バサッと投げる音がする。
・・・どうか、どうか、地面に捨ててませんように。せめてジェイスさんに投げてますように(それでもよくはない)。
「勝手なことをするな、殺すぞ。」
「・・・その者は騎士団の見習いです。今回は緊急時ゆえ、特別にこちらで面倒をみていただきましたが・・・もう大丈夫ですので。そちらこそ勝手なことをしないでいただきたい。」
「・・・あ゛あ?」
「(ひょえ~・・・・・・)」
イルの魔力が長年体内にあったからなのか、俺の魔力が多すぎるからなのか、俺は他者の魔力に敏感だ。
今もイルから漏れ出す魔力が攻撃的すぎて、体のぞわぞわが止まらない。
ここは「威嚇すんな!」と怒りたいところだが、背後から伝わってくるジェイスさんの魔力もなかなか攻撃的で、イルを怒る=ジェイスさんにも物申さないと、イルの機嫌が更に悪化する。
ジェイスさんの溢れた魔力はきっと無意識なんだろうけど、そんな落ち着いた口調で、実は今、結構怒ってるんですね────・・・!
「ルドラから連絡があったはずだ。」
「・・・魔族の動きが活発化。砦の竜人と竜騎士団並びに契約竜は一時的に同盟を結び、短期集中型の魔族討伐を行う。」
「こいつがここにいても問題ない。」
「・・・レヴィは竜と契約していません。特別な力を持っているとは聞きましたが、一人で魔族と戦、」
「もう俺と契約した。」
「・・・は?」「え?!俺と?!いつ?!」
少し緩んだイルの腕の力。
隙をついて体を反転、腕を下にずらして何とか顔を自由に動かせるようになった。
見上げたイルと目が合うと、何とまあ、めちゃくちゃしてやったり顔をしていて、俺がジェイスさんの立場なら相当腹が立つ煽り顔だな、と思った。
・・・おっと、違う。今は考えるのはそっちじゃなくて!
「契約って何?!そんなことした覚えないんだけど!?」
「お前が寝ている間に血を舐めた。俺の血も飲ませた。」
「・・・・・・血?!おえ゛っ、なっ、何してんの、お前!?」
「竜人と契約だ。光栄に思え。」
「???!」
そういやリーディア様が俺の血舐めた時、イルぶち切れだったな。
て言うか、リーディア様も何してんの。
俺と契約しようとしてたの。
無理です。あなたのこと絶対制御できません。
・・・かと言って、イルを制御できるとも全く思いませんけど。
「そういうことだ、赤目。お前が竜との契約に口を出せる立場ではなかろう。契約は当人同士の問題だ。」
「俺、同意した覚えないん、むごっ!んぐー!!」
「・・・・・・体調も心配ですので、とにかく一旦連れて帰ります。」
「ならば俺も行こう。それでいいな?」
「・・・・・・わかりました。上層部に報告しておきます。」
「(・・・決まっちゃった・・・)」
溢れ出す魔力がジェイスさんの感情を表していた。
少し眉を下げ、俺を一瞥した後イーライの方へ歩き出す。
俺は慌ててイルに見送りを懇願し、飛び立つ前の一人と一頭の元へ走った。
「迎えに来てもらったのに・・・なんか本当すみません・・・」
「レヴィが謝ることではない。元はと言えば、私が巻き込んだのだから。」
「いや、それは・・・まあ最初はそうでしたけど、今は完全に俺の魔力の問題なんで、ジェイスさんが気にする必要はないです。」
「・・・そうか。」
「イーライも来てくれてありがとな。」
イーライの体を撫でようと近づく。
そして何故か後退るイーライに、俺とジェイスさんは首を傾げた。
《 ・・・レヴィ、イル様の匂い強い 》
「え゛っ!?そんなに?!」
「・・・どうした?」
「なななななんでもないです・・・!気をつけて帰ってくださいね!あははは・・・」
「・・・帰りを待っている。三日以内にダートへ。」
「分かりまし、わっ、」
後頭部を引き寄せられて、ジェイスさんの肩の甲冑に額があたる。
痛くはないけどびっくりした。
そしてぽんぽん、と二回俺の頭を撫でてからジェイスさんはイーライに乗り、ダートへと帰って行った。
「あの赤目、今度焼いてやる。」
「・・・本当やめろよ。」
そしてこの二日後、俺は竜化したイルの背に乗り、約三ヶ月ぶりのダートに向けて飛び立った。
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