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番外編
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服選びはあまり得意じゃない。
ス○ィーブ・ジョブ○みたいに毎日同じ服でいいかなとも思うけど、それはそれで毎日着ても似合う服とは・・・?ってことになるから程よい変化って実は必要。
でもここで、僕の中で矛盾が生じる。
首のチョーカーは一本しか持っていない。
その一本も病院内の売店で売ってある黒無地のやつ。
別に似合うとも思っていないし、作りは丈夫だからさほど安くもない。
夏は蒸れるし、冬は端がけばけばになって痒くなる。
じゃあこれをオーダーメイドにしたらどうなんだろう。
噂に聞くオーダーメイドのチョーカーはとても着け心地が良く、形によって印象も変わる。
値段は張るがそれだけの価値はあると、テレビでΩの俳優さんが言っていた。
Ωとチョーカーとの付き合いは一生だ。
番ができたあとも継続してチョーカーを着ける人は全体の半数近くいる。
僕もきっとその一人。
好きな人との繋がりは大事に隠して、閉じ込めておきたいから。
オーダーメイドについてそのうちΩの人に相談してみようと、ふとした瞬間考えて、いざとなったらいつも忘れている。
・・・だからこんなにいろいろ言っておいた手前、今更何を、と言われそうですが、僕のチョーカーに対する扱いの順位は低い。
「ひゃ~っ、首ほっそ、華奢すぎよ~!ちゃんと食べてるぅ?!」
「は、はい・・・最近は割と、いっぱい、た、食べます・・・」
「あーん、もう。肌弱そうなのに何でこんな化繊のやつにしたのよぉ?!」
「えっ、あ、か、かせんって・・・?」
「ねぇ!本当に好きに作っていいの?!わくわくしちゃう~~♡」
「いーんスよね?小松さん?とーるくぅん?」
「・・・どうぞ・・・」
「チッ」
お洒落の権化みたいな外観のビルの中に、これまた権化のオフィスあり。
七階でエレベーターが指示通り開き、ぴょんぴょん飛び跳ねてこちらに手を振る人物が近づいてくるのと時を同じくして、僕の隣の愛しい人は【閉】ボタンを連打し、来た道を戻ろうとした。
閉まりかけたエレベーターの扉にすかさず複数の腕が入り込んできて、ぞろぞろ現れたこれまた美の権化たちに、見事捕まるのである。
「いや~、助かりました!男性のΩの方って、珍しいじゃないっスか。」
「そ、だね・・・?」
「うちの会社、新しくメンズライン立ち上げたんスけどモニターになってくれる方がなっかなか見つからなくて・・・!」
「ほ、ほう・・・」
「あ、顔出しNGは分かってるスよ!着け心地の感想と首を貸していただければうちのデザイナー方のインスピレーションが・・・って、こわこわこわこわ、顔怖ッッ!透はもう帰れよ!?そもそも呼んでねぇし!」
「葉一人でアパレルメーカーに行かせられっか、クソがッ!」
「と、透くん、落ち着いて・・・!」
眉間に皺を寄せた透くんはデザイナーの皆さんを押し退けて僕の肩を引き寄せて椅子に座る。
もれなく赤面する僕に、デザイナー一同は声を上げて大よろこび(なんで?)。
「捗るわ~」「捗るわ~」とタブレットにイメージ図を描いていて、これは一体何の公開処刑なんだろうと、思わず僕は顔を手で覆った。
そもそもこうなったのは僕が望んだ『日車くんへの謝罪』からであり、透くんを通してのやりとりだと色々捻じ曲がって伝わりそうだったから────それをうっかり口にしたら物凄く拗ねていた────SNSで直接やりとりをさせていただいた。
金品、食事、土下座etcなんでも来いッ!と両手広げて構えていたんだけど、結果的に『会社の商品モデル兼モニター』という想像の斜め上をいく結果に。
断るわけにもいかず、透くんにも是を前提に相談して・・・・・・、今日という日を迎えた訳です、はい。
「あ?あんた何言ってんだ。葉はこっちの色だろ。」
「はあ?素人は黙っときなさいよ。あの顔であの髪色よ?このくらい大胆な色の方が映えるわけ。わかる?」
「俺は葉の素人じゃねぇし毎日一番近くで見てんだわ。」
「小松さんあっちでお茶飲みましょー!こうなるとこの人たち止まんないからー!」
「えっ、あ、は、はい!透くん、行って来るね・・・?」
「知らねぇ奴に声掛けられても無視しろよ。」
「・・・はい。」
鋭い目つきで討論────僕のチョーカーについて────する年下の彼に子ども扱いされながら、僕の務める会社で言う休憩スペースのようなところへ向かう。(すぐそこ)
ソファ、椅子の一脚が何か洗練されていて気軽に座っていいものかと憚られる中、日車くんは両手に飲み物を持って再登場、コーヒーを少し溢した彼を見て僕は思いきって座ることにした。
「小松さんコーヒーダメだからお茶でよかったスよね?何かあの時みたいでちょっとドキドキする~!」
「本当、あの時はご、ごめんなさい。首痛かったでしょう・・・?」
「全っ然気にしないくていいっスから!透の手綱さえしっかり握ってくれれば全てよしです!」
「・・・ふ、ふふ、手綱って・・・ふ、ふ、」
「ほへぇ・・・(笑ったら尚更超かっわいいな・・・!?)」
「・・・?どうかした?」
「俺まだ死にたくないっス!何でもありません!」
「・・・そ、そう・・・?」
はい!と大きな返事をした日車くんの声に反応してオフィスの奥から「タケル、分かってるよな」と透くんの地を這うような声がした。
向こうからは何も見えないはずなのに、と日車くんは自分の体を抱きしめて震える真似事をして、僕からまた一歩距離を取る。
最近、透くんの喜怒哀楽がわかりやすくなった気がする。
僕がそう言うと日車くんは一瞬目を丸くして「それはよかったです」と微笑んでから「いやよくないんか・・・?」と頭を抱えた。
相変わらず忙しい人だな・・・。
「マンション買ってからあいつ益々やべぇって言うか・・・いや、まず電車と乗る車両把握してる時点でやべぇスけど、」
「うん?」
「そろそろ家に着くから俺も帰るとか、どこに寄ったとか、何でそんなことお前が知ってんだよって感じじゃないスか。」
「ひ、日車くん、さっきから何をぶつぶつ言ってるの・・・?」
「休みの日に知らない男探し回って落ち込んで、鬱憤晴らすためにジム通いすぎてSPみたいな体になってるし・・・」
「え、あ、あの、日車くん・・・?」
「小松さん!いいっスか!?身の危険を感じたらすぐ警察にっ、てギャ────!!出た────!」
「っ、と、透くん!?」
「余計なこと喋ってねぇよな・・・タケル。」
いつのまにか気配を消して僕の背後に立っていた透くん。
日車くんは透くんの問いに激しく頷いて更に僕たちから距離を取って座り直す。
透くんは日車くんと僕の間の席に座り、人前だからと離れようとする僕の考えを見透かして、腰に手を回して身動きを封じたようだ。
お陰様で(?)ビクともしません。
一人でドギマギしていると透くんは僕の首に顔を寄せ、鼻をスンと動かして匂いを嗅ぎ、額に青筋を浮かべにっこりと笑った。
(なんで────?!?)
挙動不審の僕と不敵な笑みを浮かべる透くん。
僕たちを交互に見てあの時と同じように嬉しそうに笑う日車くんはきっと見た通り本当に優しくて、透くんのことを大事に思ってるんだろうと思った。
「それにしてもお前んところのデザイナー、押し強すぎだろ。」
「小松さんに絶対似合う一品を作ってくれると思うけど?」
「・・・帰るぞ、葉。」
「え?!か、帰るって、僕まだ何もしてな、」
「ここに来た。顔を見せた。・・・あいつらに項を見せて触らせた。」
「っ、ん、」
チョーカーの上からゆっくりと項をなぞる手が、怒っている。
一見穏やかなように見えて、体の中で燃える炎が瞳から透けて見えて、僕は思わず姿勢を正した。
握る手は優しいのに、全く振り解けそうにない。
歩き出した大きな背中から視線を移し振り向くと、日車くんはひらひら手を振って頭を下げた。
「えっ、ちょっ、あっ!日車くん、またあのっ、お菓子でも、」
「まだ死にたくないので大丈夫っス!小松さん今からがんばってくださいね~!」
「?は、う、うん?」
「また完成したら連絡しまース!」
「わ、わかりました・・・?」
下ボタンを連打し、すぐに来たエレベーターに引き込まれる。
日車くんと、そのもっと後ろの方から手を振る綺麗なデザイナーさんたちにもお辞儀をして、この場を後にした。
「んあっ、なんでぇっ、ああっ、」
「項隠すな、見せろ。」
「まだっ、ヒートじゃ、んんっ、噛んでも意味な、いぎっ、あああっ、」
「・・・あー・・・いい匂い。俺だけの、葉の匂い・・・」
「・・・っ、んうっ」
容赦なく噛まれて痛いのに、それ以上に気持ちいいと感じる自分が怖い。
すぐに消えてしまう歯形を「勿体無い」と舌で舐め取られて、その余韻でずっとイってる。
内腿が痙攣しすぎてもうすぐ攣りそう。
でも背中にのしかかる重みが気持ちよさを逃がすのさえ許さない。
何度も、何度も、ナカで自分の匂いを擦り付けるように動く腰が、信じられないくらい熱くて、思考をぼんやりとさせる。
そしてぼんやりした僕の頭を、ドスンと一撃で仕留めて起こすのが、恐らく何らかのヤキモチスイッチを押されてしまった透くんである。
「はっ・・・、ふうぅ・・・っ、」
「葉・・・、好き・・・、愛してる、葉・・・」
「ぼ、僕も、しゅき・・・っ、早く本当のヒートきてほし・・・」
「・・・あークソッ!何でそんなに・・・っ、葉、覚悟しろよ!?」
「へっ?!僕の別に何もっ、ひあっ、気持ちい、の、もうやだぁっ、あああっ、」
「ダメ。まだ俺イケる。」
「~~~っ、ばかぁ~~っ、んあっ、」
再開した容赦ない抽挿は日付が変わる直前まで続き、僕はほぼ気絶に近い状態で次の日の朝を迎えた。
さすがにヤりすぎだと数日のお触り禁止を僕から命じられた透くん。
これに懲りて加減を知ってくれればよかったのだが、後日完成したチョーカーの色が透くんの瞳と同じ薄灰色で、それが僕のリクエストだと知るや否やまた猛獣と化し、再び禁止令を出されることになったのは、番になった今となっては笑い話である。(僕の中でだけ)
----------------⭐︎
初オメガバ書くの楽しかった~!
現代日本だと使える言葉も違ってまた新鮮(いつもファンタジーの世界にいるから・・・笑)
感想等いただけますと作者のやる気に直結します💪
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
2025.1.6 N2O
----------------⭐︎
ス○ィーブ・ジョブ○みたいに毎日同じ服でいいかなとも思うけど、それはそれで毎日着ても似合う服とは・・・?ってことになるから程よい変化って実は必要。
でもここで、僕の中で矛盾が生じる。
首のチョーカーは一本しか持っていない。
その一本も病院内の売店で売ってある黒無地のやつ。
別に似合うとも思っていないし、作りは丈夫だからさほど安くもない。
夏は蒸れるし、冬は端がけばけばになって痒くなる。
じゃあこれをオーダーメイドにしたらどうなんだろう。
噂に聞くオーダーメイドのチョーカーはとても着け心地が良く、形によって印象も変わる。
値段は張るがそれだけの価値はあると、テレビでΩの俳優さんが言っていた。
Ωとチョーカーとの付き合いは一生だ。
番ができたあとも継続してチョーカーを着ける人は全体の半数近くいる。
僕もきっとその一人。
好きな人との繋がりは大事に隠して、閉じ込めておきたいから。
オーダーメイドについてそのうちΩの人に相談してみようと、ふとした瞬間考えて、いざとなったらいつも忘れている。
・・・だからこんなにいろいろ言っておいた手前、今更何を、と言われそうですが、僕のチョーカーに対する扱いの順位は低い。
「ひゃ~っ、首ほっそ、華奢すぎよ~!ちゃんと食べてるぅ?!」
「は、はい・・・最近は割と、いっぱい、た、食べます・・・」
「あーん、もう。肌弱そうなのに何でこんな化繊のやつにしたのよぉ?!」
「えっ、あ、か、かせんって・・・?」
「ねぇ!本当に好きに作っていいの?!わくわくしちゃう~~♡」
「いーんスよね?小松さん?とーるくぅん?」
「・・・どうぞ・・・」
「チッ」
お洒落の権化みたいな外観のビルの中に、これまた権化のオフィスあり。
七階でエレベーターが指示通り開き、ぴょんぴょん飛び跳ねてこちらに手を振る人物が近づいてくるのと時を同じくして、僕の隣の愛しい人は【閉】ボタンを連打し、来た道を戻ろうとした。
閉まりかけたエレベーターの扉にすかさず複数の腕が入り込んできて、ぞろぞろ現れたこれまた美の権化たちに、見事捕まるのである。
「いや~、助かりました!男性のΩの方って、珍しいじゃないっスか。」
「そ、だね・・・?」
「うちの会社、新しくメンズライン立ち上げたんスけどモニターになってくれる方がなっかなか見つからなくて・・・!」
「ほ、ほう・・・」
「あ、顔出しNGは分かってるスよ!着け心地の感想と首を貸していただければうちのデザイナー方のインスピレーションが・・・って、こわこわこわこわ、顔怖ッッ!透はもう帰れよ!?そもそも呼んでねぇし!」
「葉一人でアパレルメーカーに行かせられっか、クソがッ!」
「と、透くん、落ち着いて・・・!」
眉間に皺を寄せた透くんはデザイナーの皆さんを押し退けて僕の肩を引き寄せて椅子に座る。
もれなく赤面する僕に、デザイナー一同は声を上げて大よろこび(なんで?)。
「捗るわ~」「捗るわ~」とタブレットにイメージ図を描いていて、これは一体何の公開処刑なんだろうと、思わず僕は顔を手で覆った。
そもそもこうなったのは僕が望んだ『日車くんへの謝罪』からであり、透くんを通してのやりとりだと色々捻じ曲がって伝わりそうだったから────それをうっかり口にしたら物凄く拗ねていた────SNSで直接やりとりをさせていただいた。
金品、食事、土下座etcなんでも来いッ!と両手広げて構えていたんだけど、結果的に『会社の商品モデル兼モニター』という想像の斜め上をいく結果に。
断るわけにもいかず、透くんにも是を前提に相談して・・・・・・、今日という日を迎えた訳です、はい。
「あ?あんた何言ってんだ。葉はこっちの色だろ。」
「はあ?素人は黙っときなさいよ。あの顔であの髪色よ?このくらい大胆な色の方が映えるわけ。わかる?」
「俺は葉の素人じゃねぇし毎日一番近くで見てんだわ。」
「小松さんあっちでお茶飲みましょー!こうなるとこの人たち止まんないからー!」
「えっ、あ、は、はい!透くん、行って来るね・・・?」
「知らねぇ奴に声掛けられても無視しろよ。」
「・・・はい。」
鋭い目つきで討論────僕のチョーカーについて────する年下の彼に子ども扱いされながら、僕の務める会社で言う休憩スペースのようなところへ向かう。(すぐそこ)
ソファ、椅子の一脚が何か洗練されていて気軽に座っていいものかと憚られる中、日車くんは両手に飲み物を持って再登場、コーヒーを少し溢した彼を見て僕は思いきって座ることにした。
「小松さんコーヒーダメだからお茶でよかったスよね?何かあの時みたいでちょっとドキドキする~!」
「本当、あの時はご、ごめんなさい。首痛かったでしょう・・・?」
「全っ然気にしないくていいっスから!透の手綱さえしっかり握ってくれれば全てよしです!」
「・・・ふ、ふふ、手綱って・・・ふ、ふ、」
「ほへぇ・・・(笑ったら尚更超かっわいいな・・・!?)」
「・・・?どうかした?」
「俺まだ死にたくないっス!何でもありません!」
「・・・そ、そう・・・?」
はい!と大きな返事をした日車くんの声に反応してオフィスの奥から「タケル、分かってるよな」と透くんの地を這うような声がした。
向こうからは何も見えないはずなのに、と日車くんは自分の体を抱きしめて震える真似事をして、僕からまた一歩距離を取る。
最近、透くんの喜怒哀楽がわかりやすくなった気がする。
僕がそう言うと日車くんは一瞬目を丸くして「それはよかったです」と微笑んでから「いやよくないんか・・・?」と頭を抱えた。
相変わらず忙しい人だな・・・。
「マンション買ってからあいつ益々やべぇって言うか・・・いや、まず電車と乗る車両把握してる時点でやべぇスけど、」
「うん?」
「そろそろ家に着くから俺も帰るとか、どこに寄ったとか、何でそんなことお前が知ってんだよって感じじゃないスか。」
「ひ、日車くん、さっきから何をぶつぶつ言ってるの・・・?」
「休みの日に知らない男探し回って落ち込んで、鬱憤晴らすためにジム通いすぎてSPみたいな体になってるし・・・」
「え、あ、あの、日車くん・・・?」
「小松さん!いいっスか!?身の危険を感じたらすぐ警察にっ、てギャ────!!出た────!」
「っ、と、透くん!?」
「余計なこと喋ってねぇよな・・・タケル。」
いつのまにか気配を消して僕の背後に立っていた透くん。
日車くんは透くんの問いに激しく頷いて更に僕たちから距離を取って座り直す。
透くんは日車くんと僕の間の席に座り、人前だからと離れようとする僕の考えを見透かして、腰に手を回して身動きを封じたようだ。
お陰様で(?)ビクともしません。
一人でドギマギしていると透くんは僕の首に顔を寄せ、鼻をスンと動かして匂いを嗅ぎ、額に青筋を浮かべにっこりと笑った。
(なんで────?!?)
挙動不審の僕と不敵な笑みを浮かべる透くん。
僕たちを交互に見てあの時と同じように嬉しそうに笑う日車くんはきっと見た通り本当に優しくて、透くんのことを大事に思ってるんだろうと思った。
「それにしてもお前んところのデザイナー、押し強すぎだろ。」
「小松さんに絶対似合う一品を作ってくれると思うけど?」
「・・・帰るぞ、葉。」
「え?!か、帰るって、僕まだ何もしてな、」
「ここに来た。顔を見せた。・・・あいつらに項を見せて触らせた。」
「っ、ん、」
チョーカーの上からゆっくりと項をなぞる手が、怒っている。
一見穏やかなように見えて、体の中で燃える炎が瞳から透けて見えて、僕は思わず姿勢を正した。
握る手は優しいのに、全く振り解けそうにない。
歩き出した大きな背中から視線を移し振り向くと、日車くんはひらひら手を振って頭を下げた。
「えっ、ちょっ、あっ!日車くん、またあのっ、お菓子でも、」
「まだ死にたくないので大丈夫っス!小松さん今からがんばってくださいね~!」
「?は、う、うん?」
「また完成したら連絡しまース!」
「わ、わかりました・・・?」
下ボタンを連打し、すぐに来たエレベーターに引き込まれる。
日車くんと、そのもっと後ろの方から手を振る綺麗なデザイナーさんたちにもお辞儀をして、この場を後にした。
「んあっ、なんでぇっ、ああっ、」
「項隠すな、見せろ。」
「まだっ、ヒートじゃ、んんっ、噛んでも意味な、いぎっ、あああっ、」
「・・・あー・・・いい匂い。俺だけの、葉の匂い・・・」
「・・・っ、んうっ」
容赦なく噛まれて痛いのに、それ以上に気持ちいいと感じる自分が怖い。
すぐに消えてしまう歯形を「勿体無い」と舌で舐め取られて、その余韻でずっとイってる。
内腿が痙攣しすぎてもうすぐ攣りそう。
でも背中にのしかかる重みが気持ちよさを逃がすのさえ許さない。
何度も、何度も、ナカで自分の匂いを擦り付けるように動く腰が、信じられないくらい熱くて、思考をぼんやりとさせる。
そしてぼんやりした僕の頭を、ドスンと一撃で仕留めて起こすのが、恐らく何らかのヤキモチスイッチを押されてしまった透くんである。
「はっ・・・、ふうぅ・・・っ、」
「葉・・・、好き・・・、愛してる、葉・・・」
「ぼ、僕も、しゅき・・・っ、早く本当のヒートきてほし・・・」
「・・・あークソッ!何でそんなに・・・っ、葉、覚悟しろよ!?」
「へっ?!僕の別に何もっ、ひあっ、気持ちい、の、もうやだぁっ、あああっ、」
「ダメ。まだ俺イケる。」
「~~~っ、ばかぁ~~っ、んあっ、」
再開した容赦ない抽挿は日付が変わる直前まで続き、僕はほぼ気絶に近い状態で次の日の朝を迎えた。
さすがにヤりすぎだと数日のお触り禁止を僕から命じられた透くん。
これに懲りて加減を知ってくれればよかったのだが、後日完成したチョーカーの色が透くんの瞳と同じ薄灰色で、それが僕のリクエストだと知るや否やまた猛獣と化し、再び禁止令を出されることになったのは、番になった今となっては笑い話である。(僕の中でだけ)
----------------⭐︎
初オメガバ書くの楽しかった~!
現代日本だと使える言葉も違ってまた新鮮(いつもファンタジーの世界にいるから・・・笑)
感想等いただけますと作者のやる気に直結します💪
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
2025.1.6 N2O
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ご感想ありがとうございました♡BLUEさまもご自愛ください🙇♀️
まるちな さま
ひや〜!ありがとうございます!
嬉しいです😭
番になった二人は今と変わらず、透が主導権を握っていると見せかけて葉が握っていると思います。
読みたいと思っていただけて大変幸せです✨
白眼 さま
わわ!なんと〜!
偶然にも白眼さんの萌ポイントを押せました〜👏
オメガバースもdomsubもケーキバースも何だって好きです〜🫶
書いてて楽しかったので、白眼さんもお楽しみいただければ幸いです!
今年もよろしくお願いします!