2 / 19
2
しおりを挟む「ラ、ラ、ラウーさん!一緒に食堂に、い、行きませんか?!」
昼休みに入ってすぐ、教科書をトントン揃えて片付けていた僕の目の前に現れたのはクラスメイトの兎の獣人のティフくん。
淡い茶色の毛色、垂れた長耳が印象的な男の子。
丸い眼鏡をかけた目も垂れていて、とっても優しい顔立ちなんだけど、こう見えて、超超攻撃的な魔法を使う実力者だ。
何日か前の演習でペアになってから、こうやって話しかけてくれるようになった。
一年遅れて入学っていうのもあって、このクラスでは歳上。
そのせいか少し浮いてる・・・気がする。
だから話しかけてくれて、凄く嬉しい。
「もちろん!あと、僕は一応歳上ってだけで同じ一年なんだから、さん付けはしないでね?いい?」
「は、」
「敬語もなしね。」
「はっ・・・・・・う、うん!わかり、わかった!」
「ふふふ、じゃ、行こっか!誘ってくれてありがとう。」
「~~~はい!あっ、うん!」
頬っぺが赤くなったティフくんは、ふわふわした耳も相まってとっても可愛い。
僕は嬉しくて、つい頬が緩んでしまう。
そしたら何故かティフくんはもっと顔が真っ赤。
尚更可愛くて、思わずよしよし、と頭を撫でると、ふわふわな耳がピーン!と立っていて、僕は声を出して笑ってしまった。
「ちょ、ちょっと、ラウーさ・・・ラウーくん!悪戯しないで!」
「ティフくんが可愛くて、つい。」
「かっ、可愛い上に美人で更にプラスでかっこいいのはラウーくんだから!!!」
「あはは、ありがと~」
「あ゛!その顔!!真に受けてないでしょう?!」
「あはは、今日天気いいね。外で食べよう。」
「~~~もうっ!!早く食堂行くよ!!」
「はぁ~い。」
僕がこの学校に来たのは、クロヴィスさんの近くにいたかったからっていうのが一番の理由。
でもこうやってクラスメイトが話しかけてくれて、アントス先輩が親切にしてくれて。
きっと卒業する頃には、この学校に来てよかった理由がたくさん増えてるんだろうな~って。
そう思うと、僕はやっぱり幸せな気持ちになって心がふわふわふわ・・・・・・・・・してたんだけどなぁ。
この時まで。
「いいなぁ~、羨ましい。やっぱり凄い人には、みんな惹かれ・・・・・・あ、あれ?ラウーくん・・・?どうしたの・・・?」
「・・・・・・・・・ナンデモナイヨ。」
食後のティータイム。
香りのいい紅茶を飲んでいると、たまたまそこに居合わせた魔法科の先輩。
ティフくんによると、三年生次席の人らしい。
で、その人の隣には何やら距離が近い人が居て、二人ともとっても幸せそう。
ティフくんはその光景に『やっぱりそうなんだ~』とにこにこ微笑んでいた。
やっぱりって何?と聞いた僕は、とんでもない噂を耳にしたわけである。
「三科(魔法科、士官科、史科)の首席や次席の人、みんな恋人がいるって本当だったんだね!」
「こ、こ、こ、恋人ぉ・・・?」
「・・・?成績上位者は将来有望だし、恋人が居ても全くおかしくはないよね。というか、狙ってる人多いって聞くし。」
「ね、ね、狙っ、狙ってる・・・?!」
「だって学生の間に良い人と親しくなっておかないと、やっぱ働き出したらそれどころじゃないもん。」
「な、な、なるほど・・・?」
そ、そ、そうだよね。
僕の上の兄さんだって、そうだもん。
学生の間に今の結婚相手とお付き合い始めて、今すでに子どもが三人ずついるし。
いつ遊びに行っても幸せオーラ全開!羨ましい!
・・・じゃなくて、待て待て。
ってことは、士官科のトップ成績者であるクロヴィスさんにも、こ、こ、恋人がいる・・・!?
そもそも確認したことなかった・・・!
だって、僕が恋人になりたかったんだもん・・・!!
「・・・ねえ、ラウーくんにもやっぱり恋人がいるの?」
「んええ?!こ、こ、こ、恋人!?」
「ま、そりゃいるよね。ラウーくん今もモテ」
「いないよ!!!?いない!こ、こ、恋人だなんて、今まで居たことないし!!?」
「ラウーくん?!こ、声!声が大きい・・・!!」
「あっ・・・・・・・・・ゴメンナサイ・・・・・・」
ガタッと椅子が倒れそうな勢いで立ち上がった僕。
周りをそろ~っと見渡すと、物凄い視線を感じる。
ここ、人が多い食堂のテラス席でした・・・っ!はっ、恥ずかしい・・・!
ペコペコ必死に頭を下げてから、一音も音を立てないように着席。
僕、今絶対顔真っ赤。
「・・・うわぁ~・・・これは・・・マズイ・・・非常にマズイ・・・」
「ごっ、ごめんね!ぼ、僕、声大きかったよね・・・みんな食事中なのに・・・」
クロヴィスさんは僕の幼馴染であって、憧れであって、片思いの相手。
在学中に猛アタックするつもりでいるけど、恋人だなんてまだまだ程遠い。
恋人って言葉に思わず願望増し増しでクロヴィスさんを思い浮かべてしまったけど、危うくとんだ勘違い野郎になってしまうところだった。
それを主張したかっただけなのに、ティフくんを巻き込んで悪目立ちしちゃって・・・・・・反省します。
ほら、その証拠に、目の前に座るティフくん頭抱えてるし。
僕が更に付け足して「本当にごめんね」と謝ると、「違うそうじゃない」と更に頭を抱え出した。
「・・・・・・ああ・・・ほら、狼がいっぱいいる・・・ラウーくんのこと獣の目で見てるよ・・・」
「・・・・・・?狼の獣人は少なくて珍しいんでしょう?沢山在学中なんてやっぱこの学校凄いねぇ。」
「・・・・・・」
「え?な、なんで、黙るの?!僕また変なことしちゃった?!」
「・・・・・・ラウーくん、これから毎日僕とご飯食べよう?」
「え!いいの?!やったーーー・・・じゃなくて!!」
「・・・・・・ラウーくんには敵わないけど・・・こう見えて僕強いから安心して・・・」
「・・・ありがと・・・?」
「どういたしまして・・・・・・」
昼食友達ができてしまった!嬉しい!
僕を見て、ははは、と力無く笑うティフくんには悪いけど、僕は嬉しさの方が勝ってしまって、顔のによによが止まらない。
僕は懲りもせず、うーんと手を伸ばし、ティフくんの頭をよしよしと撫でた。
また耳がピーンと立った、赤面ティフくんにめちゃくちゃ怒られたのは言うまでもない。
706
あなたにおすすめの小説
「嵐を呼ぶ」と一族を追放された人魚王子。でもその歌声は、他人の声が雑音に聞こえる呪いを持つ孤独な王子を癒す、世界で唯一の力だった
水凪しおん
BL
「嵐を呼ぶ」と忌み嫌われ、一族から追放された人魚の末王子シオン。
魔女の呪いにより「他人の声がすべて不快な雑音に聞こえる」大陸の王子レオニール。
光の届かない深海と、音のない静寂の世界。それぞれの孤独を抱えて生きてきた二人が、嵐の夜に出会う。
シオンの歌声だけが、レオニールの世界に色を与える唯一の美しい旋律だった。
「君の歌がなければ、私はもう生きていけない」
それは、やがて世界の運命さえも揺るがす、あまりにも切なく甘い愛の物語。
歌声がつなぐ、感動の異世界海洋ファンタジーBL、開幕。
絶対的センターだった俺を匿ったのは、実は俺の熱烈なファンだったクールな俳優様でした。秘密の同居から始まる再生ラブ
水凪しおん
BL
捏造スキャンダルで全てを失った元トップアイドル・朝比奈湊。絶望の淵で彼に手を差し伸べたのは、フードで顔を隠した謎の男だった。連れてこられたのは、豪華なタワーマンションの一室。「君に再起してほしい」とだけ告げ、献身的に世話を焼く『管理人さん』に、湊は少しずつ心を開いていく。しかし、その男の正体は、今をときめく若手No.1俳優・一ノ瀬海翔だった――。
「君のファンだったんだ」
憧れの存在からの衝撃の告白。クールな仮面の下に隠された、長年の熱烈な想い。
絶望から始まる、再生と愛の物語。失われたステージの光を、二人は取り戻せるのか。
虐げられΩは冷酷公爵に買われるが、実は最強の浄化能力者で運命の番でした
水凪しおん
BL
貧しい村で育った隠れオメガのリアム。彼の運命は、冷酷無比と噂される『銀薔薇の公爵』アシュレイと出会ったことで、激しく動き出す。
強大な魔力の呪いに苦しむ公爵にとって、リアムの持つ不思議な『浄化』の力は唯一の希望だった。道具として屋敷に囚われたリアムだったが、氷の仮面に隠された公爵の孤独と優しさに触れるうち、抗いがたい絆が芽生え始める。
「お前は、俺だけのものだ」
これは、身分も性も、運命さえも乗り越えていく、不器用で一途な二人の成り上がりロマンス。惹かれ合う魂が、やがて世界の理をも変える奇跡を紡ぎ出す――。
オメガだと隠して地味なベータとして生きてきた俺が、なぜか学園最強で傲慢な次期公爵様と『運命の番』になって、強制的にペアを組まされる羽目に
水凪しおん
BL
この世界では、性は三つに分かたれる。支配者たるアルファ、それに庇護されるオメガ、そして大多数を占めるベータ。
誇り高き魔法使いユキは、オメガという性を隠し、ベータとして魔法学園の門をくぐった。誰にも見下されず、己の力だけで認められるために。
しかし彼の平穏は、一人の男との最悪の出会いによって打ち砕かれる。
学園の頂点に君臨する、傲慢不遜なアルファ――カイ・フォン・エーレンベルク。
反発しあう二人が模擬戦で激突したその瞬間、伝説の証『運命の印』が彼らの首筋に発現する。
それは、決して抗うことのできない魂の繋がり、『運命の番』の証だった。
「お前は俺の所有物だ」
傲慢に告げるカイと、それに激しく反発するユキ。
強制的にペアを組まされた学園対抗トーナメント『双星杯』を舞台に、二人の歯車は軋みを上げながらも回り出す。
孤独を隠す最強のアルファと、運命に抗う気高きオメガ。
これは、反発しあう二つの魂がやがて唯一無二のパートナーとなり、世界の理をも変える絆を結ぶまでの、愛と戦いの物語。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
出来損ないΩと虐げられ追放された僕が、魂香を操る薬師として呪われ騎士団長様を癒し、溺愛されるまで
水凪しおん
BL
「出来損ないのβ」と虐げられ、家族に勘当された青年エリオット。彼に秘められていたのは、人の心を癒し、国の運命すら変える特別な「魂香(ソウル・パフューム)」を操るΩの才能だった。
王都の片隅で開いた小さな薬草店「木漏れ日の薬瓶」。そこを訪れたのは、呪いによって己の魂香を制御できなくなった「氷の騎士」カイゼル。
孤独な二つの魂が出会う時、運命の歯車が回りだす。
これは、虐げられた青年が自らの力で居場所を見つけ、唯一無二の愛を手に入れるまでの、優しくも力強い癒やしと絆の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる