【完結】待って、待って!僕が好きなの貴方です!

N2O

文字の大きさ
1 / 19

しおりを挟む
この学校に入学して早ニ週間。

終礼ベルが鳴り響く廊下を、今日も僕は走る。
初めは先生も『廊下を走らない!』って怒っていたのに、もう諦めたみたい。

だから先生だって、クラスメイトだって、同じ科の先輩だって、誰も僕を止めたりしない。


早く、早く、会いに行かなきゃ。
僕は大好きな人のもとへ、今日も全速力で走る。


----------------⭐︎


「あー・・・クロヴィスなら・・・さっき訓練場行ったねぇ。」

「・・・・・・・・・ソウデスカ。」

「えっと・・・そのー・・・だ、だから、さ?ラウーくんは寮に帰ろっか。ね?」

「・・・・・・ハイ。」


もし僕の頭の上にも、この先輩みたいにふわふわの毛が生えた獣耳があったのなら、それはそれは力無くぺたんと垂れていることだろう。
僕の角はさすがに硬くて垂れないし、ふわふわな毛だって生えてない。
尻尾だってないから分かりにくいかもしれないけど、僕は絶賛落ち込み中なのである。



「今日も俺が送っていくから!ね、帰ろ?」

「・・・一人でダイジョウブデス・・・」

「え゛!?いやいやいや、それは悪い虫が寄って来そ、じゃなくて!えっと、あっ!見て!外!暗くなってきたし!ね?ね?危ないから、送らせて!?」

「・・・・・・・・・ハイ。いつも・・・スミマセン・・・」

「いーの!!いーの!!役得だから!全っ然気にしないで!!!」

「・・・・・・?」



『ほら、行こっか!』と僕が今来た道を歩き出すこの茶色と黒色が混ざった髪色、三角のふさふさな獣耳、そしてふわりとした毛がとっても気持ちよさそうな尻尾の先輩は、キツネの獣人のアントス先輩。
はあはあ息を切らした僕にクロヴィスさん探し人の不在を知らせてくれる親切な人だ。
クロヴィスさんとは寮の部屋が同じで、とても仲が良いんだって。



「・・・僕も士官科に入ればよかったです・・・」

「まあ、何事も向き不向きがあるからさ。それにラウーくんは魔法科首席入学でしょ?めちゃ凄いじゃん。」

「士官科と魔法科の教室棟が別棟で、しかもこんなに遠いなんて知らなかったんです・・・」

「あー・・・竜人族がこの学校に入学するの珍しいもんね。知らなくて当然だよ。あっちの学校じゃダメだったの?」

「えっと・・・それは・・・」



僕は、こんな小さな体だけど一応竜人族。
この学校の大半は獣人族、あとは鳥人族。
竜人族は僕とあと数人だけだ。
僕が暮らしていた竜人族が多い国にも勿論学校はある。
だけど、僕はどうしてもこの学校に通いたかった。



「クロヴィスさんと一緒の学校がよかったんです・・・あ、僕が勝手に決めたことなので、クロヴィスさんには内緒ですよ・・・?」

「・・・・・・」

「ここは全寮制だし、家族みんな心配性だから説得に結構時間かかっちゃって・・・、それで一年遅れてようやく今年入学しました。」

「・・・・・・俺、泣いちゃう・・・・・・」

「え?!わっ、本当に泣いてる?!大丈夫ですか?!」



立ち止まった先輩は目頭を押さえていて、慌てた僕がハンカチを差し出すと「もっと泣いちゃう」と下唇を噛み、ハンカチを受け取って涙を拭いていた。



「クロヴィスさんは今年卒業ですし、軍の入隊も決まってるから、色々お忙しいのはわかってるんですけど・・・僕、しつこくて・・・ははは・・・」

「あいつ一発殴ってこようか?」

「ええ?!だ、大好きな人にっ、そ、そんなことできません!!」

「・・・・・・俺、やっぱ泣いちゃう・・・ぐすっ、」

「えええ?!アントス先輩!?」



さっきから登場する"クロヴィス"っていう人は、僕の自慢の幼馴染。
仕事の関係でよくお互いの街を行き来していた親の影響で、小さな頃よく遊んでもらっていた。


クロヴィスさんはユキヒョウの獣人で、白色と黒色が混じった毛色の獣耳と髪。
瞳は夕焼け空みたいな色の、とても綺麗な人。
小さな頃から体が大きくて、強くて、僕の一つ歳上。
僕はずっとクロヴィスさんのことが大好きだ。


でも成長するにつれ、会う機会が年々減り、手紙のやりとりだけに。
手紙の中のクロヴィスさんもいつも優しくて、益々僕は好きになっていったんだけど・・・・・



「昨日も少ししかお会いできなくて・・・あ!で、でも、それだけで僕は嬉しいと言うか、あの、」

「ラ、ラウーくん・・・俺の、心臓をこれ以上抉るのは・・・」

「アントス先輩は史科でしたよね。教室棟も士官科の隣だし、寮なんて一緒だし。同じ授業をとることも多いってクラスメイトが話してました。羨ましいです。」

「ラウーくん~~~~~~~~~」

「ええええ?!ご、号泣!!?ハ、ハンカチ足りますか?!」

「足゛り゛る゛~~~~~」

「あはははははははは!」

「うえ~~~~ん!!!いい子~~~~!!」



泣きじゃくるアントス先輩に魔法科の寮まで送ってもらい、無事寮に帰宅。
静かな廊下を通り過ぎ、パタン、と閉めた部屋の扉。
中には誰も居ない。

首席合格者は、何と一年生なのに一人部屋。
誇らしいことだけど、でも、今はそれが少し寂しい。


「・・・明日は会えるかなぁ。」


誰もいない部屋でポツリと呟く僕の言葉に、返事をしてくれる人はもちろんいなかった。






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

抑制剤の効かない薬師オメガは森に隠れる。最強騎士団長に見つかり、聖なるフェロモンで理性を溶かされ、国を捨てた逃避行の果てに番となる

水凪しおん
BL
「この香りを嗅いだ瞬間、俺の本能は二つに引き裂かれた」 人里離れた森で暮らす薬師のエリアルは、抑制剤が効かない特異体質のオメガ。彼から放たれるフェロモンは万病を癒やす聖なる力を持つが、同時に理性を失わせる劇薬でもあった。 ある日、流行り病の特効薬を求めて森を訪れた最強の騎士団長・ジークフリートに見つかってしまう。エリアルの香りに強烈に反応しながらも、鋼の理性で耐え抜くジークフリート。 「俺が、貴方の剣となり盾となる」 国を救うための道具として狙われるエリアルを守るため、最強の騎士は地位も名誉も投げ捨て、国を敵に回す逃避行へと旅立つ。 シリアスから始まり、最後は辺境での幸せなスローライフへ。一途な騎士と健気な薬師の、運命のBLファンタジー。

虐げられΩは冷酷公爵に買われるが、実は最強の浄化能力者で運命の番でした

水凪しおん
BL
貧しい村で育った隠れオメガのリアム。彼の運命は、冷酷無比と噂される『銀薔薇の公爵』アシュレイと出会ったことで、激しく動き出す。 強大な魔力の呪いに苦しむ公爵にとって、リアムの持つ不思議な『浄化』の力は唯一の希望だった。道具として屋敷に囚われたリアムだったが、氷の仮面に隠された公爵の孤独と優しさに触れるうち、抗いがたい絆が芽生え始める。 「お前は、俺だけのものだ」 これは、身分も性も、運命さえも乗り越えていく、不器用で一途な二人の成り上がりロマンス。惹かれ合う魂が、やがて世界の理をも変える奇跡を紡ぎ出す――。

捨てられΩの癒やしの薬草、呪いで苦しむ最強騎士団長を救ったら、いつの間にか胃袋も心も掴んで番にされていました

水凪しおん
BL
孤独と絶望を癒やす、運命の愛の物語。 人里離れた森の奥、青年アレンは不思議な「浄化の力」を持ち、薬草を育てながらひっそりと暮らしていた。その力を気味悪がられ、人を避けるように生きてきた彼の前に、ある嵐の夜、血まみれの男が現れる。 男の名はカイゼル。「黒き猛虎」と敵国から恐れられる、無敗の騎士団長。しかし彼は、戦場で受けた呪いにより、αの本能を制御できず、狂おしい発作に身を焼かれていた。 記憶を失ったふりをしてアレンの元に留まるカイゼル。アレンの作る薬草茶が、野菜スープが、そして彼自身の存在が、カイゼルの荒れ狂う魂を鎮めていく唯一の癒やしだと気づいた時、その想いは激しい執着と独占欲へ変わる。 「お前がいなければ、俺は正気を保てない」 やがて明かされる真実、迫りくる呪いの脅威。臆病だった青年は、愛する人を救うため、その身に宿る力のすべてを捧げることを決意する。 呪いが解けた時、二人は真の番となる。孤独だった魂が寄り添い、狂おしいほどの愛を注ぎ合う、ファンタジック・ラブストーリー。

オメガだと隠して地味なベータとして生きてきた俺が、なぜか学園最強で傲慢な次期公爵様と『運命の番』になって、強制的にペアを組まされる羽目に

水凪しおん
BL
この世界では、性は三つに分かたれる。支配者たるアルファ、それに庇護されるオメガ、そして大多数を占めるベータ。 誇り高き魔法使いユキは、オメガという性を隠し、ベータとして魔法学園の門をくぐった。誰にも見下されず、己の力だけで認められるために。 しかし彼の平穏は、一人の男との最悪の出会いによって打ち砕かれる。 学園の頂点に君臨する、傲慢不遜なアルファ――カイ・フォン・エーレンベルク。 反発しあう二人が模擬戦で激突したその瞬間、伝説の証『運命の印』が彼らの首筋に発現する。 それは、決して抗うことのできない魂の繋がり、『運命の番』の証だった。 「お前は俺の所有物だ」 傲慢に告げるカイと、それに激しく反発するユキ。 強制的にペアを組まされた学園対抗トーナメント『双星杯』を舞台に、二人の歯車は軋みを上げながらも回り出す。 孤独を隠す最強のアルファと、運命に抗う気高きオメガ。 これは、反発しあう二つの魂がやがて唯一無二のパートナーとなり、世界の理をも変える絆を結ぶまでの、愛と戦いの物語。

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

的中率100%の占い師ですが、運命の相手を追い返そうとしたら不器用な軍人がやってきました

水凪しおん
BL
煌都の裏路地でひっそりと恋愛相談専門の占い所を営む青年・紫苑。 彼は的中率百パーセントの腕を持つが、実はオメガであり、運命や本能に縛られる人生を深く憎んでいた。 ある日、自らの運命の相手が訪れるという予言を見た紫苑は店を閉めようとするが、間一髪で軍の青年将校・李翔が訪れてしまう。 李翔は幼い頃に出会った「忘れられない人」を探していた。 運命から逃れるために冷たく突き放す紫苑。 だが、李翔の誠実さと不器用な優しさに触れるうち、紫苑の頑なだった心は少しずつ溶かされていく。 過去の記憶が交差する中、紫苑は李翔の命の危機を救うため、自ら忌み嫌っていた運命に立ち向かう決意をする。 東洋の情緒漂う架空の巨大都市を舞台に、運命に抗いながらも惹かれ合う二人を描く中華風オメガバース・ファンタジー。

エリートαとして追放されましたが、実は抑制剤で隠されたΩでした。辺境で出会った無骨な農夫は訳あり最強αで、私の運命の番らしいです。

水凪しおん
BL
エリートαとして完璧な人生を歩むはずだった公爵令息アレクシス。しかし、身に覚えのない罪で婚約者である王子から婚約破棄と国外追放を宣告される。すべてを奪われ、魔獣が跋扈する辺境の地に捨てられた彼を待っていたのは、絶望と死の淵だった。 雨に打たれ、泥にまみれたプライドも砕け散ったその時、彼を救ったのは一人の無骨な男、カイ。ぶっきらぼうだが温かいスープを差し出す彼との出会いが、アレクシスの運命を根底から覆していく。 畑を耕し、土に触れる日々の中で、アレクシスは自らの体に隠された大きな秘密と、抗いがたい魂の引力に気づき始める。 ――これは、偽りのαとして生きてきた青年が、運命の番と出会い、本当の自分を取り戻す物語。追放から始まる、愛と再生の成り上がりファンタジー。

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

処理中です...