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番外編
舞踊
しおりを挟む「卒業・・・祝賀会・・・ですか?」
偶然出会った中庭でそのまま手を引かれ、あっという間に食堂のテラス席。
少し伸びた黒髪を一結びにしたユキ先輩の髪紐は僕とお揃い。
それに気づいて、体から溢れる魔力をとめられなくなった僕の恋人の話はまた別の機会にでもするとして。
「そそ。正確には"卒業前にみんなで羽目を外してパァーッと祝っちゃおうの会"ね!」
「・・・だいぶ印象が変わりました。」
「どこもそんなもんでしょ。重要なのは名称じゃなくて、」
「舞踊ですよね。ちゃんと聞いてますよ、ユキ先輩じゃあるまいし。」
「・・・へぇ。なかなか言うようになったじゃないの、ラウーちゃん。」
「・・・すみません・・・調子に乗りました・・・」
にこりと微笑む綺麗な顔が恐ろしい。
師匠に楯突くと碌なことがないと身に染みている僕の小さな冗談は早めの撤回を余儀なくされた。
「まあ基本三年だけで踊るんだけど、番う相手が決まってる奴はその相手を誘って、一緒に踊るのが普通。」
「・・・・・・」
「あー・・・やっぱり?って、魔力抑えてくんない?ラウーにしてはおっかないんだけど。」
「・・・どうすれば抑えられますか・・・?」
「・・・本当似た者同士だよねぇ、君たち・・・」
人のこと言ってる場合じゃなかった。
魔力の制御ってどうするんだっけ・・・、えっと、うーんと・・・
周りの席の人たちが真っ青な顔して去っていく。
ああ・・・!優雅な放課後のティータイムを邪魔してしまって、本当にごめんなさい・・・!
「クロちゃんから誘われてないわけね。」
「・・・・・・それ、いつ開催なんですか。」
「えーっと・・・・・・ら、来週?」
「来週!?!も、もうすぐじゃないですか!!」
「・・・・・・ソウデスネ・・・」
毎日とは言わないけど、それに近いくらい会ってるのに・・・知らなかった。
最近少し様子がおかしいな、と思うことはあったけど卒業前だしナイーブになってるのかなと思って・・・・・・
え?どうおかしいかって?
えっと・・・僕の肩とかお腹周りとか触ってきて・・・足の大きさとか聞いてくるし・・・
くすぐったいし、照れちゃうし、戸惑ったけど・・・クロヴィスにならどこでも触って欲しいって言うか・・・その・・・っ、
「そういえば今日クロちゃん舞踊の打ち合わせあるとか言ってたナー!俺も今から行くんだけど一緒に見学したい人いるか、」
「行きます!!」
「っおお・・・食い気味・・・やる気溢れる一年生・・・」
「打ち合わせって何を打ち合わせるんですか!!?」
「あー・・・みんな故郷の民族衣装着るから・・・その受け取りと、当日の進行の確認?俺たち運営側もするし。」
「・・・・・・行きます。」
「・・・では、行きましょう。」
少しニヤけた顔のユキ先輩の後に続き、僕は会場となる大ホールへ向かう。
大きく息を吸って吐いて、クロヴィスのことを考えているうちに何故かまた魔力が溢れ出してしまい、ユキ先輩から頭に手刀を落とされ、痛みによって強制的に魔力を抑え込むことに成功したわけである。
-—————⭐︎
大ホールは三年生で溢れていて、各々仕立てた衣装や実家から取り寄せた衣装を受け取っていた。
個別に送ると受け取る機会が多い寮監さんが大変だから、日を指定しているんだって。それが、今日。
わざわざ仕立てる人も多く、完成した衣装が体に合うか最終確認のため仕立て屋も集結し、ホール内は熱気が充満していた。
そんな中にいても、分かります。
背が高くて、すらっとしてるのに逞しくて。
綺麗な白と黒の髪はいつも通り手触りが良さそう。
ここにきて引き止めようとするユキ先輩の手を振り払って僕はその背中へと猛ダッシュ。
体が小さくてよかった。
人の間をすり抜けるのが苦じゃないもん。
「クロヴィス、何してるんですか?」
「$\#%*☆@、ラ、ラウー?!どどどうして、ここに!?」
「・・・今隠した衣装は誰のですか。」
「こっ!こ、これ、は・・・、」
白い布に覆われた衣装と思われる物体は、二着。
ユキ先輩の話からすると、今回のために仕立てた衣装だとすれば一着はクロヴィスの、もう一着は当日一緒に踊る人のもの。
僕が何も知らなかったら、クロヴィスは誰か別の人と踊るつもりだったのかな。
「・・・僕と、番うんじゃなかったの・・・?」
「・・・・・・ッ、ラ、ラ、ラウー?!!」
魔力じゃなくて、今度は涙が溢れてきちゃった。
次々と頬を伝う雫を、大慌てで袖口で拭うクロヴィス。
そして異変を察知したユキ先輩は、後ろからドタバタと足音を鳴らしてやってきて僕の泣きじゃくった顔を見た後、こうなった経緯を事細かに説明してくれた。
「踊るのが苦手・・・、クロヴィスが?」
「ラウー!これ大マジだから!クロちゃん本っっ当相手の足折るんじゃないかってぐらいの強さで踏むし蹴るし投げ飛ばすの!ラウーにかっこ悪い姿は見せられないとか言って猛特訓するのはいいんだけどさ、さすがに一週間前だし、ラウーの衣装合わせだってイタタタタタ!!」
「ユキ、喋りすぎだ。」
「ちょっ、なっ、絞め、苦しっ、」
「ク、ク、クロヴィス!ユキ先輩死んじゃう!」
大ホール外のベンチに座り、隣のユキ先輩を絞めあげる腕にしがみ付く。
少し照れたように目線を逸らし、姿勢を正したクロヴィスは、僕の方に向き直ると左手をとり、両手で包み込んだ。
その冷たくなった手で、僕の失礼な疑惑は全部消えた。
これは緊張したクロヴィスの手だ。
「・・・最初から言って欲しかったです。」
「すまない。冗談抜きで・・・その、壊滅的なんだ・・・」
「・・・僕も、ごめんなさい。一瞬だけど、疑ってしまいました。」
「謝る必要はない。まだ足りなかっただけだ。」
「・・・足りなかった、ですか?」
「ラウーへの愛情表現が足りなかったようだ。精進しよう。」
「っ、えっ、ええっ、?」
「・・・・・・ねえ、俺帰っていい?」
白い目をしたユキ先輩は俺に「今度ランチ奢りなさいね」と呟いて大ホールに戻って行った。
番う相手が決まっていない三年生はそれこそ羽目を外して大騒ぎして、みんなでワイワイ踊るんだって。
そこで運命と出会うこともあるから、とユキ先輩は笑っていて、僕の角をギュッと悪戯に握った。
「・・・着てみてくれないか?ラウーの体に合うか不安なんだ。その・・・俺の手の感覚だけが頼りだったから・・・」
「・・・ハッ!も、もしかして、あのスキンシップは、サ、サイズを測ってたんですか?!」
「そんなことはない。ラウーにはいつも触りたい。ついでにサイズを確認しただけだ。」
「・・・・・・ソウナンデスネ・・・」
「嫌だったか?」
「いいえ???!」
「・・・よかった。」
キューン・・・と僕の胸が鳴る。
何その顔、初めて見ました・・・!
悶える僕の方に差し出された白い布に包まれた衣装。
ゆっくり、ゆっくり、白い布を剥ぎ取って、中から出てきた衣装を見た後クロヴィスの方を見る。
クロヴィスは僕の衣装と色違い。
体に沿わせた衣装の色は、艶やかな黒。
そして僕の衣装は、溶け出すような夕陽色。
新品の衣装にシミをつけてはいけないと慌てて上を向いたけど、間に合わなかったらしい。
溢れかかった僕の涙は、クロヴィスが間一髪で拭ってくれた。
「今日から一緒に練習しましょう?というか今まで誰と踊ってたんですか?」
「・・・・・・アントスだ・・・」
「・・・・・・な、投げたんですか?」
「・・・片手で数えるくらい・・・」
投げ飛ばされるアントス先輩を想像して、思わず僕は吹き出してしまった。
今度何かお礼(お詫び?)にお菓子でも差し入れよう。
今度、と言っても彼らがここにいるのはあと一ヶ月とちょっとだ。
「僕も早く卒業したいです。」
「・・・それは俺と早く番いたいということであってるか?」
「・・・んなっ!?そっ、それは、その、んんっ、!」
不意を突かれた僕の顔はきっと間抜けだっただろう。
ちゅ、と音がして唇が離れていく。
再び交わる視線は、甘く、僕の体の熱を上げていった。
「早く卒業してくれ。」
「・・・・・・任せてください。」
おしまい
-—————⭐︎
いい夫婦の日ですね☺︎
と言うことで、うちの夫婦(予定)をそっと置いていきます☺️
可愛い二人を描いてくださったのは コクノコ 様(X:@nlnh40)です。
読んでくださり、ありがとうございました🫶
2024.11.22 N2O
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完結おめでとうございます🎉㊗️
可愛いお話で読んでいて楽しかったです。
番外編も楽しみにしています。
火の鳥 様
わ〜〜!感想大変嬉しいです・・・っ!
ありがとうございます🙇♀️
感想を励みに、不器用で可愛い二人を番外編でも書けるようにがんばります☺︎