【完結】待って、待って!僕が好きなの貴方です!

N2O

文字の大きさ
18 / 19
番外編

クロヴィスから見たラウー

しおりを挟む
父から紹介された仕事仲間だという男性。
竜人族には初めて会うが、父よりも背が高いのには驚いた。
その背後には体を隠すように回された小さな腕が伸びている。


先ほど会ったジニーという少年は俺よりも二つ年上。
商談にも俺にも興味がないらしく、さっさと書庫の方へ歩いて行った。
そしてこの小さな腕の持ち主は俺の一つ年下の弟の方らしい。




「ほら、ラウー。挨拶しなさい。」

「・・・だって、か、かっこ・・・モニヨモニョ・・・」

「すまないね、クロヴィスくん。この子は少し恥ずかしがり屋で・・・」

「・・・いえ。」



愛想がないと言われることが多い。
俺よりも年下の子どもから、顔が怖いと泣かれたこともある。
もしかしたら互いの親の手前、本音を言えないだけで、この子もそういった印象を持ったのかもしれない。




「僕は庭で過ごします。」

「あ、ああ。自慢の庭なんだ。好きなように過ごしてくれていいからね。ラウーは・・・」

「・・・ラウーくんは、きっとお兄さんと本を読む方がいいのではない、」
「やだ!」

「・・・え?」

「ぼ、僕も、一緒に行く!あっ・・・、えっと、ついて行っても、い、いいですか・・・?」

「・・・・・・っ、う、ん。」

「・・・やったぁ・・・!」





一瞬言葉が詰まるほど、目の前の彼に目を惹かれてしまった。

小さく、華奢な体。
長い睫毛に、大きな瞳。
短く切り揃えられた黒髪は、窓から吹き込む風に靡いて、さらさらと揺れた。


突然大きく鳴り出す胸に、自分でも驚きを隠せない。
思わず胸を押さえていると、いつの間にかすぐ目の前に彼が近づいていて、俺は思わず後退っていまう。



「ラウー、です。ク・・・ロヴィスくん、一緒にあっち行こう?」

「あ・・・うん。」

「・・・へへ、良い匂いのお花が沢山あるから、見せてあげるね!」

「・・・あり・・・がとう。」





俺の言葉にニコリと笑った彼の目が、あまりにも綺麗で、可愛くて、言葉を絞り出すのがやっとだ。
「こっちだよ」と差し出された小さな手を握ると嬉しそうに俺の手を引き歩き出す。

温かくて、柔らかなこの優しい感触を、きっと俺は一生忘れないだろう。


何故か自然とそう思っていて、俺は少し自分が怖くなった。



















「・・・──クロヴィス?あ、ごめんなさい!もしかしてまだ寝てましたか?声がしたから、起きたのかと思って・・・」

「・・・寝て・・・たな。」

「ふ、ふふっ、そんな顔も珍しいですね。」

「・・・ここは・・・」

「クロヴィスの部屋です。・・・具合が悪いなら早く言ってくれればいいのに。アントスさんも心配してましたよ?」

「・・・そ、うか。」




ここ数日、体調が悪い自覚はあった。
だからと言って日々の訓練を休む理由にはならない。
今日も普通通り士官科の訓練場に行って・・・・・・そこからあまり覚えていない、な。
ラウーの話によると、剣を持ったまま立ち尽くす俺に動揺した(恐れた)士官科の生徒が同室のアントスを呼びに行き、寮に連れて帰ってくれたらしい。
偶然居合わせたユキが魔法を使って運ぶのを手伝ってくれたそうだ。


何と、まあ・・・




「・・・情けない。」

「クロヴィスなら絶対そう言うと思いました。」

「本当のことだ。」

「・・・もう少し、僕のこと頼ってくれたらここまで酷くならなかったんです。」

「・・・・・・ラウー?」

「何ですか。」

「・・・怒って、るだろう・・・?」





寝たままだとラウーの表情がよく見えない。
ベッドから体を起こすと・・・まず驚いた。
体が軽い、倦怠感が全くない。

腕をぐるぐると回すように動かし、手を何度か握っては開く。
目を瞑り、体の血と魔力の流れを辿ると、自分のものではない魔力を感じて、そしてそれが誰のものかもすぐ分かった。





「治癒魔法まで使えるようになったのか?」

「僕、凄いんですよ。知ってましたか?」

「ああ、勿論知ってる。」

「そっ・・・んなに、即答されると逆になんか恥ずかしくなって、きました・・・」

「?何故だ。誇らしいことだろう。」

「・・・さっきの答えですけど、僕、怒ってますよ。」

「・・・・・・すまない。」

「理由も分からないのに謝るんですか?」





ベッドの端に腰をおろしたラウーの顔が近づいてきて、俺の額に柔らかな感触を残して離れていく。
むす、と頬を膨らませた顔があまりにも可愛らしくて、俺は思わず頭を撫でた。

少しだけ赤らんだ顔。
だが顔はまだ怒っていて、俺は静かに撫でていた手を下ろす。





「俺が不甲斐ないからだろう?」

「違います。僕のこと頼ってくれないからです。」

「・・・そんなことは・・・・・・・・・」

「そうやって下手に嘘がつけないクロヴィスも大好きです。」

「・・・・・・俺を甘やかしすぎだ。」

「甘やかしちゃダメなんですか?」

「・・・は?」

「僕、甘やかしたいんですけど。」

「・・・・・・は・・・?」






あまりにも堂々とした言い方に、俺は首を傾げた。
ラウーはそんな俺をしばらくむすっとした顔で見ていたが、ふはっと、突然笑いだし、俺の体に飛びついた。





「僕ね、クロヴィスの側で一番の支えになりたいんです。」

「さ、さえ・・・?」

「いつも一生懸命なクロヴィスは凄いけど、たまには息抜きも大事なんですよ。」

「そ、う・・・だな・・・?」

「ふぅ~・・・って息抜きできる場所に、必ず僕がいたらいいなぁって。」

「・・・・・・」

「そう願うのは、贅沢でしょうか?」





ぎゅっと、抱きしめられた体。
自分よりも細い腕が背中にまわり、上下に優しく動いている。


・・・ラウーは、いつも温かい。





「贅沢・・・じゃない。」

「・・・嬉しい。」

「俺が・・・贅沢すぎる・・・」

「?また変なこと言ってる。ふふ、たまには寝込んでもいいかもしれませんね。」

「それは・・・困るな。」

「もう、本当に訓練が好きです、ね、うひゃっ、んんっ!?」







回された腕を外し、指を絡ませ手を握る。
そのまま押し倒すようにラウーをベッドに寝かせて、俺は噛み付くようなキスをした。

驚いたように見開かれた目も、繰り返されるそれに比例して段々と蕩けていく。




「・・・寝込んでいては、ラウーとこうできない。」

「・・・ひゃあ・・・」




制服の首元のボタンとフックに手を伸ばし、一つ、二つ、と外していく。
露わになった白い首はしっとりと汗ばんでいて、顔を寄せると、とくんとくんと近くからラウーの心音が聞こえてくる。


頸にキスを落とすと、ぴくんと、小さく震えるラウーがあまりにも愛おしい。
喉がなりそうになるのを必死で押さえ、ラウーと目を合わせる。
潤んだ瞳の中に、俺が、俺だけが、写っている。



それがどれほど嬉しいことか。
伝える術を俺はまだ知らない。


ラウーの首に顔を寄せ、何度も何度もキスをする。
鎖骨あたりを甘噛みして、頸には痕をいくつも残す。


腹の奥から迫り上がる欲望を必死に押さえながら、最後に一度小さな唇にキスをして額を合わせた。






「・・・ク、クロヴィス・・・」

「・・・すまない、少しやりすぎた。」

「あ、あの・・・・・・」

「・・・?どうした?」



ただでさえ、赤い耳が、頬がさらに赤みを帯びていく。
小さく小さく手招きをされ、ラウーの顔に耳を寄せた。




「もっと、したいって言ったら・・・怒りますか・・・?」




一気に自分の体が燃えるように熱くなる。
ふるふると、揺れる瞳があまりにも情欲的で、俺はついに喉を鳴らしてしまう。



「クロヴィス・・・?」

「・・・ラウー・・・」

「は、はい!」

「あまり・・・俺を煽ってくれるな・・・」

「嫌です。」

「・・・ラウー?」

「いっぱい煽ります。だって、」







「僕、クロヴィスが大好きなので、何されたって嬉しいですもん。」







弧を描く瞳を見るのが先か、俺が首を噛んだのが先か。
欲望と、喜びと、それから酷い安堵感。



そしてこの後すぐ、「寮で盛るな!!」と部屋に怒鳴り込んできたアントスに引き剥がされ、二人並んで正座させられたのは、ある意味一生の思い出とも言えるだろう。





番外編 おしまい




----------------⭐︎


ここで一先ず、完結!です。
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました・・・✨

また二人の小話を描きたくなったら更新しますので、その時はお付き合いください。

そして、表紙と挿絵を描いてくださった『みとし』様には感謝が尽きません🙇‍♀️
素晴らしい才能に、乾杯🥂


では!

2024.6.2    N2O
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ
BL
BLです。 11月のBL大賞用の作品です。 10/31に全話公開予定です。 宜しくお願いします。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

オメガだと隠して地味なベータとして生きてきた俺が、なぜか学園最強で傲慢な次期公爵様と『運命の番』になって、強制的にペアを組まされる羽目に

水凪しおん
BL
この世界では、性は三つに分かたれる。支配者たるアルファ、それに庇護されるオメガ、そして大多数を占めるベータ。 誇り高き魔法使いユキは、オメガという性を隠し、ベータとして魔法学園の門をくぐった。誰にも見下されず、己の力だけで認められるために。 しかし彼の平穏は、一人の男との最悪の出会いによって打ち砕かれる。 学園の頂点に君臨する、傲慢不遜なアルファ――カイ・フォン・エーレンベルク。 反発しあう二人が模擬戦で激突したその瞬間、伝説の証『運命の印』が彼らの首筋に発現する。 それは、決して抗うことのできない魂の繋がり、『運命の番』の証だった。 「お前は俺の所有物だ」 傲慢に告げるカイと、それに激しく反発するユキ。 強制的にペアを組まされた学園対抗トーナメント『双星杯』を舞台に、二人の歯車は軋みを上げながらも回り出す。 孤独を隠す最強のアルファと、運命に抗う気高きオメガ。 これは、反発しあう二つの魂がやがて唯一無二のパートナーとなり、世界の理をも変える絆を結ぶまでの、愛と戦いの物語。

「嵐を呼ぶ」と一族を追放された人魚王子。でもその歌声は、他人の声が雑音に聞こえる呪いを持つ孤独な王子を癒す、世界で唯一の力だった

水凪しおん
BL
「嵐を呼ぶ」と忌み嫌われ、一族から追放された人魚の末王子シオン。 魔女の呪いにより「他人の声がすべて不快な雑音に聞こえる」大陸の王子レオニール。 光の届かない深海と、音のない静寂の世界。それぞれの孤独を抱えて生きてきた二人が、嵐の夜に出会う。 シオンの歌声だけが、レオニールの世界に色を与える唯一の美しい旋律だった。 「君の歌がなければ、私はもう生きていけない」 それは、やがて世界の運命さえも揺るがす、あまりにも切なく甘い愛の物語。 歌声がつなぐ、感動の異世界海洋ファンタジーBL、開幕。

虐げられΩは冷酷公爵に買われるが、実は最強の浄化能力者で運命の番でした

水凪しおん
BL
貧しい村で育った隠れオメガのリアム。彼の運命は、冷酷無比と噂される『銀薔薇の公爵』アシュレイと出会ったことで、激しく動き出す。 強大な魔力の呪いに苦しむ公爵にとって、リアムの持つ不思議な『浄化』の力は唯一の希望だった。道具として屋敷に囚われたリアムだったが、氷の仮面に隠された公爵の孤独と優しさに触れるうち、抗いがたい絆が芽生え始める。 「お前は、俺だけのものだ」 これは、身分も性も、運命さえも乗り越えていく、不器用で一途な二人の成り上がりロマンス。惹かれ合う魂が、やがて世界の理をも変える奇跡を紡ぎ出す――。

過労死で異世界転生したら、勇者の魂を持つ僕が魔王の城で目覚めた。なぜか「魂の半身」と呼ばれ異常なまでに溺愛されてる件

水凪しおん
BL
ブラック企業で過労死した俺、雪斗(ユキト)が次に目覚めたのは、なんと異世界の魔王の城だった。 赤ん坊の姿で転生した俺は、自分がこの世界を滅ぼす魔王を討つための「勇者の魂」を持つと知る。 目の前にいるのは、冷酷非情と噂の魔王ゼノン。 「ああ、終わった……食べられるんだ」 絶望する俺を前に、しかし魔王はうっとりと目を細め、こう囁いた。 「ようやく会えた、我が魂の半身よ」 それから始まったのは、地獄のような日々――ではなく、至れり尽くせりの甘やかし生活!? 最高級の食事、ふわふわの寝具、傅役(もりやく)までつけられ、魔王自らが甲斐甲斐しくお菓子を食べさせてくる始末。 この溺愛は、俺を油断させて力を奪うための罠に違いない! そう信じて疑わない俺の勘違いをよそに、魔王の独占欲と愛情はどんどんエスカレートしていき……。 永い孤独を生きてきた最強魔王と、自己肯定感ゼロの元社畜勇者。 敵対するはずの運命が交わる時、世界を揺るがす壮大な愛の物語が始まる。

出来損ないΩと虐げられ追放された僕が、魂香を操る薬師として呪われ騎士団長様を癒し、溺愛されるまで

水凪しおん
BL
「出来損ないのβ」と虐げられ、家族に勘当された青年エリオット。彼に秘められていたのは、人の心を癒し、国の運命すら変える特別な「魂香(ソウル・パフューム)」を操るΩの才能だった。 王都の片隅で開いた小さな薬草店「木漏れ日の薬瓶」。そこを訪れたのは、呪いによって己の魂香を制御できなくなった「氷の騎士」カイゼル。 孤独な二つの魂が出会う時、運命の歯車が回りだす。 これは、虐げられた青年が自らの力で居場所を見つけ、唯一無二の愛を手に入れるまでの、優しくも力強い癒やしと絆の物語。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

処理中です...