【完結】待って、待って!僕が好きなの貴方です!

N2O

文字の大きさ
17 / 19
番外編

ティフから見た二人

しおりを挟む
僕は過去何度も魔物を討伐したことがある。


実家は標高の高い山の麓。
山に入ればいくらでも魔物は居たし、そいつらを練習台にして僕は技術を向上させたと言ってもいい。
だから正直ここに在学中の上級生を含んだ魔法科の生徒には負ける気がしない。

何なら士官科の生徒にだって勝つ自信がある。
少々性格に難ありの僕の兄も今では上級士官。
幼少期から彼にコテンパンにやられていた僕からすれば、並大抵の士官志望の学生じゃ、相手にならない。




・・・・・・ただし、この学校に居る生徒の中に少数存在する"並大抵"に該当しない彼らのことも、僕はよく知っている。










「ティ、ティフくん!こちら・・・えっと、あの・・・ぼ、僕の、幼馴染の、」
「恋人の。」

「・・・っ、こ、こ、恋人の、クロヴィスさんです・・・!」




ここは食堂、いつものテラス席。
僕の目の前に座った真っ赤な顔のラウーくん。
ああ・・・神様、ありがとうございます。
今日もラウーくんは綺麗で可愛いです。
しかもいつも優しくて、魔法使い出すと凶悪になるギャップが最高です。



でも。




「・・・・・・初めまして。魔法科一年のティフです。よろしくお願いします。」

「・・・・・・ああ。よろしく。」

「・・・?」




隣に座ってる貴方の恋人、めちゃくちゃ目が怖いですけどね。







こうやって面と向かって直接会うのは、もちろん「初めまして」だけど、僕はこのクロヴィス先輩の気配をこれまで何度も"感じたこと"がある。



魔法科の訓練場の通路から。
寮の近くのベンチ付近から。
教室棟門の外から。



そして、ラウーくんの体から。



だから初めましてって、気持ちにあまりならない。
・・・どうやらそれは先輩も、同じらしい。


近くで見ると益々際立つその存在感。
ラウーくん同様、顔も体もとてもお美しい。
あっっっんなに嫉妬丸出しのフェロモンを出す獣人だから、僕はてっきり・・・・・・失礼ながら色々と妄想してました。
表情はあまり崩れないタイプなんですね。






「・・・ティフくん?さっきからどうしたの、って、わあっ!?」

「別に、ナンデモナイヨ。」

「そ、そう?ちょ、ちょっと、クロヴィスさん、急に、ど、どっ、どうしたんですか?!」

「・・・・・・理由がないといけないのか?」

「そっ・・・んな、ことは、ないですけど・・・、うう、」

「(・・・oh)」



喉が鳴り出す二秒前って感じの顔で、何を言ってらっしゃいますか、先輩。
理由ならあるでしょう、立派な嫉妬理由が。


それともあれですか?
そのマーキングに相当する行為は無意識ですか?


テーブルで微妙に隠れてはっきりとは見えないけど、背後から尻尾がぐるりとラウーくんに巻き付いてるのわかるし、腕でラウーくんの腰に手を回して固定してますよね。

ラウーくん真っ赤な顔でわたわたしてるからすぐ分かります。


辛うじてまだ出てないだけで、威嚇フェロモン・・・、いや、すでにちょっと出てますね。
ほら、その証拠に僕たちの様子を興味津々で窺っていた獣人の同級生、先輩方が席を立ち始めました。制御していても尚、凄い威力。




はぁ~~・・・本当にまさか、まさか。
あの士官科三年、鉄壁のクロヴィス先輩がラウーくんのストー・・・・・・、こほん。
陰ながら護衛、していたなんて、ねえ。







「ティフくんは僕の大事な友達だから、紹介しておきたくて・・・へへ、」

「・・・嬉しい。ありがとう。」

「クロヴィスさんはこう見えてちょっと、」
「ラウー。」

「は、はい!何でしょう?」

「クロヴィス。」

「あっ・・・は、はい、ク、クロヴィスさ」
「クロヴィス。」

「・・・えっと、ク、ロヴィス・・・は、こう見えて、ひ、人見知りで・・・怖い人じゃないから、ね・・・?」

「・・・ウン!ワカッタヨ!(棒読み)」

「へへ、よかったぁ。」





もう・・・本当に嬉しそう。
うん、うん。僕はその顔が見れて、本当に安心した。
きっとこれからも末長く一緒に過ごすんだろうけどさ、一応・・・ね。






「あの、クロヴィス先輩。一つよろしいでしょうか。」

「・・・何だ。」

「僕、ラウーくんの笑った顔がとても好きです。勿論、友人として。」

「・・・ああ。」

「先日のように・・・ラウーくんが辛い時は友人の僕が護りますので、ご安心ください。」






目に見えてやつれていくラウーくんは、本当に見てられなかった。
本人は気丈に振る舞おうと頑張っていたけど、僕に出来ることは何だってしたし、ラウーくんのためならこれからだって、する。

わ~・・・目に見えて、表情が曇りましたね。
ラウーくんも僕と先輩をハラハラした顔で交互に目で追って忙しい。


さて、先輩は何て言うのかな。






「ありがとう。」

「・・・は?」

「ラウーの側で・・・支えてくれたんだろう?だから、ありがとう。」

「い、いや、僕そんな大したことは、してな」
「何言ってるの!ティフくんは、いっぱい助けてくれた!あの時は・・・本当にありがとう。」

「・・・うん。どういたしまして。」





前に身を乗り出して、テーブルの上の僕の手を握ったラウーくんの目は真剣そのもの。
うっかり泣きそうになってしまった。
本当に大したことはできなかったけど、少しでも力になれたなら・・・よかった。
クロヴィス先輩、フェロモンから察するにもっと子どもっぽいことする人だと勝手に思ってたけど意外と大人な対応──・・・・・・






「だが、安心してくれ。今後ラウーが辛い時は俺が側にいる。」

「うわあっ!?ク、ク、クロッ、ひえっ、」

「今からラウーの部屋で勉強会だ。もう行こう。」

「あ、あれ?そ、そうでしたっけ・・・って、お、下ろしてくださいぃ・・・っ!」

「では、これで失礼する。」

「ティ、ティフくん、また教室でっ、ひゃっ!クロヴィス!匂い嗅ぐのやめてくださいって、言ってるのに!」

「ラウーくん、またねー(棒読み)」

「ま、またね!んやっ、もう、クロヴィス?!」

「・・・・・・」





訂正しよう。
全然大人じゃない、この獣人。
ラウーくんが華奢とは言え、立派に成人した男。なのにあんなに軽々担ぎ上げるとは・・・・・・筋力ヤバいでしょ。



そして最後にちらりと振り向いたクロヴィス先輩の目。




「・・・あれは敵わないなぁ。」



恐ろしいほどの執着に塗れた愛情を、ラウーくんは知っているのかな。


クロヴィス先輩の体に隠れてラウーくんはもう見えない。
だけど僕はそちらに向けてひらひらと手を振って見送った。





----------------⭐︎

番外編の『アントスから見た二人』に挿絵を追加しました!
良ければご覧ください☺︎
2024.6.2 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ヒメ様が賊にさらわれました!

はやしかわともえ
BL
BLです。 11月のBL大賞用の作品です。 10/31に全話公開予定です。 宜しくお願いします。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

オメガだと隠して地味なベータとして生きてきた俺が、なぜか学園最強で傲慢な次期公爵様と『運命の番』になって、強制的にペアを組まされる羽目に

水凪しおん
BL
この世界では、性は三つに分かたれる。支配者たるアルファ、それに庇護されるオメガ、そして大多数を占めるベータ。 誇り高き魔法使いユキは、オメガという性を隠し、ベータとして魔法学園の門をくぐった。誰にも見下されず、己の力だけで認められるために。 しかし彼の平穏は、一人の男との最悪の出会いによって打ち砕かれる。 学園の頂点に君臨する、傲慢不遜なアルファ――カイ・フォン・エーレンベルク。 反発しあう二人が模擬戦で激突したその瞬間、伝説の証『運命の印』が彼らの首筋に発現する。 それは、決して抗うことのできない魂の繋がり、『運命の番』の証だった。 「お前は俺の所有物だ」 傲慢に告げるカイと、それに激しく反発するユキ。 強制的にペアを組まされた学園対抗トーナメント『双星杯』を舞台に、二人の歯車は軋みを上げながらも回り出す。 孤独を隠す最強のアルファと、運命に抗う気高きオメガ。 これは、反発しあう二つの魂がやがて唯一無二のパートナーとなり、世界の理をも変える絆を結ぶまでの、愛と戦いの物語。

「嵐を呼ぶ」と一族を追放された人魚王子。でもその歌声は、他人の声が雑音に聞こえる呪いを持つ孤独な王子を癒す、世界で唯一の力だった

水凪しおん
BL
「嵐を呼ぶ」と忌み嫌われ、一族から追放された人魚の末王子シオン。 魔女の呪いにより「他人の声がすべて不快な雑音に聞こえる」大陸の王子レオニール。 光の届かない深海と、音のない静寂の世界。それぞれの孤独を抱えて生きてきた二人が、嵐の夜に出会う。 シオンの歌声だけが、レオニールの世界に色を与える唯一の美しい旋律だった。 「君の歌がなければ、私はもう生きていけない」 それは、やがて世界の運命さえも揺るがす、あまりにも切なく甘い愛の物語。 歌声がつなぐ、感動の異世界海洋ファンタジーBL、開幕。

過労死で異世界転生したら、勇者の魂を持つ僕が魔王の城で目覚めた。なぜか「魂の半身」と呼ばれ異常なまでに溺愛されてる件

水凪しおん
BL
ブラック企業で過労死した俺、雪斗(ユキト)が次に目覚めたのは、なんと異世界の魔王の城だった。 赤ん坊の姿で転生した俺は、自分がこの世界を滅ぼす魔王を討つための「勇者の魂」を持つと知る。 目の前にいるのは、冷酷非情と噂の魔王ゼノン。 「ああ、終わった……食べられるんだ」 絶望する俺を前に、しかし魔王はうっとりと目を細め、こう囁いた。 「ようやく会えた、我が魂の半身よ」 それから始まったのは、地獄のような日々――ではなく、至れり尽くせりの甘やかし生活!? 最高級の食事、ふわふわの寝具、傅役(もりやく)までつけられ、魔王自らが甲斐甲斐しくお菓子を食べさせてくる始末。 この溺愛は、俺を油断させて力を奪うための罠に違いない! そう信じて疑わない俺の勘違いをよそに、魔王の独占欲と愛情はどんどんエスカレートしていき……。 永い孤独を生きてきた最強魔王と、自己肯定感ゼロの元社畜勇者。 敵対するはずの運命が交わる時、世界を揺るがす壮大な愛の物語が始まる。

劣等生の俺を、未来から来た学院一の優等生が「婚約者だ」と宣言し溺愛してくる

水凪しおん
BL
魔力制御ができず、常に暴発させては「劣等生」と蔑まれるアキト。彼の唯一の取り柄は、自分でも気づいていない規格外の魔力量だけだった。孤独と無力感に苛まれる日々のなか、彼の前に一人の男が現れる。学院一の秀才にして、全生徒の憧れの的であるカイだ。カイは衆目の前でアキトを「婚約者」だと宣言し、強引な同居生活を始める。 「君のすべては、俺が管理する」 戸惑いながらも、カイによる徹底的な管理生活の中で、アキトは自身の力が正しく使われる喜びと、誰かに必要とされる温かさを知っていく。しかし、なぜカイは自分にそこまで尽くすのか。彼の過保護な愛情の裏には、未来の世界の崩壊と、アキトを救えなかったという、痛切な後悔が隠されていた。 これは、絶望の運命に抗うため、未来から来た青年と、彼に愛されることで真の力に目覚める少年の、時を超えた愛と再生の物語。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

隠れオメガの整備士は自由になりたい。なのに暴走する最強騎士を身体を張って止めたら、運命の番だとバレて過保護な専属契約を結ばされました

水凪しおん
BL
※オメガバース設定。激しい戦闘描写や、執着攻めによるマーキング描写、軽度の性的な接触の描写がありますので、15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 汚染された惑星を浄化する生体兵器『機装(ギア)』。 その搭乗者は優れた能力を持つ『アルファ』に限られ、彼らの精神を安定させる鎮静剤として『オメガ』が存在する世界。 整備士のエリアンは、オメガであることを隠し、ベータと偽って軍の最前線で働いていた。 オメガは道具のように扱われるこの社会で、自由を守るための必死の嘘だった。 だがある日、軍最強のエリートパイロット・クレイドの機装が暴走する事故に遭遇する。 死を覚悟して止めに入ったエリアンだったが、暴走する機体はなぜか彼にだけ反応し、沈静化した。 それは、隠していたオメガのフェロモンが、クレイドと強烈な『共鳴』を起こした瞬間だった。 「見つけた。俺の対になる存在を」 正体がバレたと戦慄するエリアンに対し、冷徹なはずのクレイドが向けたのは、処罰ではなく執着に満ちた熱い視線で……? 孤独なエリート騎士×身分を隠した健気な整備士。 星の命運と本能が交錯する、近未来SFオメガバース!

処理中です...