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第三話
出会いは夢のように……・その三
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「来た来た来た来たーーーー! 学園の王子の異名を持つ光一・フォスター様とのイベントーーーー!」
完全にゲームの中にヒロインになりきっている薔子、喜々として叫ぶ。室内は防音効果施されている為、気にせずに好きなだけ騒げるのである。
明るい茶髪の短髪に深緑色の瞳のイケメンキャラが、ヒロインの『のばら』に照れたように話しかけるシーンだ。ちなみに、ヒロインの名前はプレイヤーが自由に名付けられる。
『のばらちゃん、その……クリスマスイブなんて、予定……あったりするかな?』
のばら
A「あったら良いんですけど、残念ながら……」
B「……大切な人の為に、変更可能な予定なら」
C「いいえ。恥かしいですけれど、何の予定も……」
「うーん、Bは言ってみたいけど無いな。Cとしたいところだけど、光一様の性格上Aが好みだろうなぁ」
と言いながらAを選択しようとした時、
「へぇ? そうやって色々と策略を巡らしながら選択していくものなのだね?」
唐突に背後の頭上から柔らかな声が響いた。ビオラを思わせる深みのある澄んだ癒し系の声色だ。さすがに虚を突かれ、ドキンと心臓が跳ね上がる。
「ひっ!」
と悲鳴を上げて逃げ出そうと椅子から立ち上がろうとしたが足を滑らせて椅子ごと背後に倒れかけた。このままだとまともに後頭部を打つ! と思った瞬間、
トン
と何者かが両手で受け止めたようだ。
「すまない。驚かせてしまったね」
再び声が響く。何が起こったのか理解出来ず、呆然と頭上を見上げる薔子。
「あ、あの……」
辛うじて声が出た。見上げた先には、漆黒の艶やか髪が肩まで流れ、蝋のように透き通る肌、深く澄んだ紫色の瞳の恐ろしい程に整った顔立ちの男が気遣わし気に覗き込んでいたのだった。
(この人、人間じゃない……)
彼に椅子ごと支えられた状態で、呆然と彼を見上げる。先端が尖った耳、タンザナイトを思わせるアーモンド型の瞳の色は、深い紫のパンジーを思わせる程だ。
(蝋のような肌、て本当にあるんだ……)
加えて淡紅色の唇は形良く引き締まり、グロスを塗ったように艶々としている。
(睫毛、真っ黒で艶々。長くていっぱい生えてるのに、上品にカールしていて睫毛エクステをしてるみたい)
「どうした? どこか怪我でもしたか? 大丈夫か?」
再び、気遣わし気に声をかけられてハッと我に返る。同時に一気に頬が上気した。まさに瞬間湯沸かし器のように……
「あ、あの、だ、大丈夫です。ていうかあの、あなたは、一体……?」
両手で両頬を覆い、あたふたと答える。彼はふわりと微笑んだ。まるで花が開くように。
(花笑みだ……乙女ゲームでよく見る……。長髪のイケメンてリアルで初めて見る。白いワイシャツに黒のスーツかぁ。長身、スリムで手足がすごく長いなぁ……え? リアル? な訳無いしっ! そっかぁ、夢かぁ! そっかそっか)
薔子の思考は目まぐるしく移り変わり、「夢だ」と感じた途端、妙に全てを納得した様子だ。
「フフフフ……やはりな」
彼は声を立てて笑った。そしてゆっくりとテーブルを挟んだ薔子の向かい側に移動し、正面に立った。また一見すると夢見心地の彼女をしっかりと見つめ、
「面白い思考だ。実に興味深い。私はずっと、そなたを探して居たのだ」
はっきりと、嬉しそうに述べた。
(あぁ、やっぱり。これは「願望夢」だわ)
薔子は確信した。
これが、二人……いや、一人と一体の初めての出会いであった。
完全にゲームの中にヒロインになりきっている薔子、喜々として叫ぶ。室内は防音効果施されている為、気にせずに好きなだけ騒げるのである。
明るい茶髪の短髪に深緑色の瞳のイケメンキャラが、ヒロインの『のばら』に照れたように話しかけるシーンだ。ちなみに、ヒロインの名前はプレイヤーが自由に名付けられる。
『のばらちゃん、その……クリスマスイブなんて、予定……あったりするかな?』
のばら
A「あったら良いんですけど、残念ながら……」
B「……大切な人の為に、変更可能な予定なら」
C「いいえ。恥かしいですけれど、何の予定も……」
「うーん、Bは言ってみたいけど無いな。Cとしたいところだけど、光一様の性格上Aが好みだろうなぁ」
と言いながらAを選択しようとした時、
「へぇ? そうやって色々と策略を巡らしながら選択していくものなのだね?」
唐突に背後の頭上から柔らかな声が響いた。ビオラを思わせる深みのある澄んだ癒し系の声色だ。さすがに虚を突かれ、ドキンと心臓が跳ね上がる。
「ひっ!」
と悲鳴を上げて逃げ出そうと椅子から立ち上がろうとしたが足を滑らせて椅子ごと背後に倒れかけた。このままだとまともに後頭部を打つ! と思った瞬間、
トン
と何者かが両手で受け止めたようだ。
「すまない。驚かせてしまったね」
再び声が響く。何が起こったのか理解出来ず、呆然と頭上を見上げる薔子。
「あ、あの……」
辛うじて声が出た。見上げた先には、漆黒の艶やか髪が肩まで流れ、蝋のように透き通る肌、深く澄んだ紫色の瞳の恐ろしい程に整った顔立ちの男が気遣わし気に覗き込んでいたのだった。
(この人、人間じゃない……)
彼に椅子ごと支えられた状態で、呆然と彼を見上げる。先端が尖った耳、タンザナイトを思わせるアーモンド型の瞳の色は、深い紫のパンジーを思わせる程だ。
(蝋のような肌、て本当にあるんだ……)
加えて淡紅色の唇は形良く引き締まり、グロスを塗ったように艶々としている。
(睫毛、真っ黒で艶々。長くていっぱい生えてるのに、上品にカールしていて睫毛エクステをしてるみたい)
「どうした? どこか怪我でもしたか? 大丈夫か?」
再び、気遣わし気に声をかけられてハッと我に返る。同時に一気に頬が上気した。まさに瞬間湯沸かし器のように……
「あ、あの、だ、大丈夫です。ていうかあの、あなたは、一体……?」
両手で両頬を覆い、あたふたと答える。彼はふわりと微笑んだ。まるで花が開くように。
(花笑みだ……乙女ゲームでよく見る……。長髪のイケメンてリアルで初めて見る。白いワイシャツに黒のスーツかぁ。長身、スリムで手足がすごく長いなぁ……え? リアル? な訳無いしっ! そっかぁ、夢かぁ! そっかそっか)
薔子の思考は目まぐるしく移り変わり、「夢だ」と感じた途端、妙に全てを納得した様子だ。
「フフフフ……やはりな」
彼は声を立てて笑った。そしてゆっくりとテーブルを挟んだ薔子の向かい側に移動し、正面に立った。また一見すると夢見心地の彼女をしっかりと見つめ、
「面白い思考だ。実に興味深い。私はずっと、そなたを探して居たのだ」
はっきりと、嬉しそうに述べた。
(あぁ、やっぱり。これは「願望夢」だわ)
薔子は確信した。
これが、二人……いや、一人と一体の初めての出会いであった。
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