深紅の愛「Crimson of love」~モブキャラ喪女&超美形ヴァンパイアの戀物語~

大和撫子

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第三話

その男、異端につき……・その四

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「では、魔力と能力について述べよう。瞬間移動が可能だ。そしてテレパシーを使う事も出来る。四大元素である火・水・風・土や動物、昆虫を自在に操れる。更に、操るだけでなく、それらのものに変身する事も出来るのだ。相手を虜にして思うがままに操る魔力も持っている。そして、よく言われているように地を吸う事によってその者を一族に、即ち眷属化させる事が可能だ。それには、
①三回以上に分けて血を吸う事。がっついて一度に吸うとその人間は死んでしまうのだ。
②男女共に18歳以上の穢れを知らぬ身である事
が条件となる。穢れを知らぬ身であるかどうかはすぐに見抜ける」

「うわぁ、最強ですね!」

「それだけを聞けばな。だが、弱点が結構多いのでな……」

 彼は苦笑する。

「弱点はな、まずよく知られているのが太陽の光だ。これを浴びるとすぐに灰になる。そして十字架と聖水と銀の弾丸だ。これは我々の先祖の生まれ故郷による宗教的な背景が関連するのだろうな、東洋の魔除けはほとんど効かない事からして。それは、未だ足を踏み入れた事が無い建物には入れない、という事からも推測される。しかしこれは、相手を魅了して操ればなんて事はない。一度入ってしまえば次からは自由に出入りできるし、弱点に入らないだろうな。後はニンニクだ。これはその強烈な匂いと灰汁が濃すぎて一族の血に合わないのだ。そして木の杭。これは胸に打ちこまれると絶命してしまう。これも著しく体質に合わないのだ。そうだな……人間に分かり易く言えば、アレルギーによるアナフィラキシーショック、みたいなものかな」

「アレルギー! なるほど! では、同じヴァンパイアでも体質によってそれほどダメージを受けないアイテムもある、と言う事でしょうか!?」

 薔子は声を弾ませる。今まで知りえなかった情報が手に入って興奮しているのだ。

「その通り! 私は特に異端者なのでな。弱点は全く当てはまらないのだ」
「え? そうなんですか? 異端……とは?」
「私は生き血を吸う事も勿論出来るが、基本的には野菜や海藻類や穀物、花の蜜などの方が好みの上に栄養素も取り入れ易いのだ。つまりな、ベジタリアンなヴァンパイアなのだ」
「えっ? べジタリアンなヴァンパイア……?」
「あぁ、だから、16から18世紀に盛んに行われた魔女狩りやヴァンパイア狩りでも生き残る事が出来たのだよ……」

 彼は寂しそうに答えた。薔子はただ茫然として彼を見つめている。眼鏡のレンズが少し曇る。

 何となく気まずいような、微妙な雰囲気の沈黙が痛い。薔子は何とか沈黙を破ろうと心の中で奮闘する。

(うわ……やっぱり夢だ。いや、夢なんだけれども、段々私の意思が及ばない話になっていってる。そうだよねぇ、私の思い通りになる夢なんて、ねぇ。ある訳無い、ていうか。それにしても、ベジタリアンなヴァンパイアって……)
「あ、えーとその……ベジタリアン、て何だか体にも良さそうで、その……平和主義と言いますか、穏やかそうで。あの、人間にも溶け込んで生きていけそう、ですよね」

 我ながらわざとらしいと感じながらも切り出した。

「だから夢ではなくて現実なのだが……」

 これで何度めの苦笑いだろうか、と彼は思いながら応じる。

「まぁ、良い。……その通りだ。争い事を好まず、義理と人情、そして和を重んじる性質から一族では異端者扱いさ。『一族の恥さらしだ』とさえ言われたもんさ」

「ええ? それは酷い! 人間の世界だけじゃないんですね、差別や偏見、虐めがあるのって。動物の世界にも迫害とか、似たような事はあるらしいですけど、人外の方々にもあるのですね……」

 薔子は今にも泣き出しそうだ。

「まぁ、種族を問わず、色々な意味で厳しい世界を生き抜く為の本能、なのかもな。マウントを取り合って人よりも自分が抜きんでようとする性質は。最近ではフレネミーとか、その上をいく奴らもいるそうだが。ま、勿論中にはそういう事を好まず、独自の道を行くものも少なく無い訳だが。私に至っては、その『一族の恥さらし』な性質が生き残る術となったのは、何とも皮肉なものだ」

「本能の一つ……言われてみれば、そうかもしれませんね。私は存在すら空気というか、雑魚なので標的にすらなりませんけどね。うふふふふっ」

 薔子は可笑しそうに笑った。勿論自嘲である。

「今風の言葉で言えば、『モブキャラ』というやつか?」
「はい。その上……」
「喪女なのだろう?」

 薔子が勢い込んで答えようとする前に、彼が答える。

「へっ?」

 鳩が豆鉄砲を食ったような表情でポカンとする薔子。

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