敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない

如月 そら

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1.身代わりのお見合い

身代わりのお見合い②

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「いませんけど」
 自慢ではないがなんなら生まれてこの方、香澄は男性と交際というものをしたことがない。
「ちょうどいい」

(ちょうど!? ちょうどとは!?)
 心の中で叫ぶことはできても、現実にはどうしたらいいのか分からずおろおろとしてしまう香澄だ。嫌な予感はするものの逆らう術を持っていなかった。

「あの……どういう?」
 これが現実なのだとは信じたくない。
 お見合い? いつだと言った? 今週末!?
「さっき言っていたのを香澄も聞いていただろう。こちらから失礼をするわけにはいかない相手なのだ。それにお前だって交際相手はいないと言っていたじゃないか」

 確かに言った。言ったけども!
「私……無理です! それにお相手は菜々美ちゃんだと思っているのですよね?」
「大丈夫だ」
 そう言って、伯父は香澄をまたじっと見る。香澄はその視線を手で払えるものなら払いたかった。
「お前は若く見える」

(そういう問題じゃないんですっ!)
「いや、兄さん本当に香澄は無理ですよ」
 父の横でこくこくっと香澄は頷く。香澄は押しも押されもせぬ女子校育ちだ。それに社会に出ていないので、箱入りであることにも自信がある。そんな自信はどうなのかと自分で思わなくもないが。

「なんでだ?」
 兄弟で経営している不動産会社ではワンマンで知られる伯父だ。強く返されるとさすがに迫力がある。
「だって、ずっと女子校で育ってきたんです。知らない方とそんな風にお見合いでお話なんて、きっとできません」
 香澄は一生懸命、無理な理由を説明したつもりだった。

 けれど、伯父はご機嫌になっただけだ。
「なおさら、お見合い相手としてはちょうどいいな。身持ちが固いのは良いことだ。それにこんなことでもなければ結婚の機会もないだろう。いやなら断ればいいんだ。とりあえず週末はお見合いをしなさい」

 いや……と伯父は軽く咳払いをすると、今度は香澄に向かって思いきり頭を下げた。
「助けると思って! 頼む! 香澄、見合いに行ってくれ!」
 強く言われれば反発もできるけれど、頭を下げている人を足蹴にすることは誰しもできないだろう。

(ず……ずるいわ、伯父様っ!)
「お父様っ! なんとかしてください」
「いや……確かにこうでもなければ、香澄の花嫁姿を見ることができないかもしれない……」

 ──お父様の裏切り者っっ!
 こうして香澄は従姉妹の菜々美の身代わりとしてお見合いをすることとなったのだった。
 当日は呆れるほどの晴天だった。香澄は自分の部屋の窓から雲一つない空を見上げる。
 この晴天に反して心の中はどんより曇っているというのに。

 今日は振袖で来るようにと伯父に言われていた。香澄は着物にも慣れているけれど、さすがに振袖の着付けは自分ではできない。
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