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1.身代わりのお見合い
身代わりのお見合い①
「伯父様? お声が廊下にまで響いてますわよ」
「だって香澄、つい大きくなってしまうだろう」
くすくすと笑いながら香澄は和室を洋風に変えた和洋折衷の客間に入り、テーブルの上にお茶とお菓子を置く。
いつだってこの伯父は大袈裟なのだ。
伯父の向かいで父も微妙な顔をしていた。込み入った話なのかもしれない。香澄は用を済ませたら部屋を出ようとそっと立ち上がる。
先ほどまで大騒ぎしていた伯父はその香澄の仕草をじっと見ていた。
「良いことを思いついた」
「兄さんそれは止めてください」
なにか思いついたらしい伯父を即座に父が止めている。急にこの場に来た香澄には、何のことだかさっぱり分からなかった。
「菜々美が家を出てしまったんだ」
伯父は腕を組んで苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「あら……」
香澄に話しかけてきたようだったので、足を止めた。
従姉妹の菜々美はお嬢様なのだがとても自由に生きている人で、元々この柚木家の型に嵌まった部分は彼女に合わないところがあるのだ。
菜々美なら正直、家を出ても自分で生きていけるだろう。それくらいにバイタリティのある人だ。
むしろそんな従妹を型に嵌めようとしている伯父の方に無理がある。
「菜々美ちゃんは自由だからなぁ」
「自由すぎる!」
(雷が落ちたわ)
香澄は苦笑する。
「大体、本当は今週末見合いをするはずだったんだ。家を出るだけならともかく、置手紙をして家出状態だ」
吐き捨てるような伯父の声には同情するが所詮は他人事だ。
「あらら。そうだったんですね」
それはお見合いが嫌だったのでは? と思うけれども、香澄は口にはしなかった。
「頭が痛い。散々探しているが、どうやって隠れたものだか見つからない。見合い相手は大手コンサルティング会社のやり手CEOなんだ。取引相手でもあるし、こちらからの失礼は許されない」
「大変ですわね」
伯父がまたじっと香澄を見ている。
(ん……?)
「香澄は菜々美とも年齢が近かったな。いや、むしろお前の方が年上だったのではなかったか?」
大学出たてのピチピチの菜々美は二十三歳で、確かに香澄はその三歳年上で二十六歳だった。大きな声では言いたくない。童顔だから幼く見えるだけだ。
「ま……あ、私の方が年上、かも?」
菜々美は伯父夫婦が年を重ねてからできた愛娘だった。その分、わがままに育ってしまったこともやむないことなのではないだろうか。
「従姉妹ならそれほど変わらないだろう」
先ほどまで取り乱したようすだったのに、伯父は急に落ち着きを取り戻し始める。
(え、ちょっと待って。それは……)
「兄さん……」
父の咎めるような声にやっと香澄は危機感を感じ始めていた。
「伯父様? どういうことかしら?」
声が震えそうだ。
「交際相手でもいるのか?」
「だって香澄、つい大きくなってしまうだろう」
くすくすと笑いながら香澄は和室を洋風に変えた和洋折衷の客間に入り、テーブルの上にお茶とお菓子を置く。
いつだってこの伯父は大袈裟なのだ。
伯父の向かいで父も微妙な顔をしていた。込み入った話なのかもしれない。香澄は用を済ませたら部屋を出ようとそっと立ち上がる。
先ほどまで大騒ぎしていた伯父はその香澄の仕草をじっと見ていた。
「良いことを思いついた」
「兄さんそれは止めてください」
なにか思いついたらしい伯父を即座に父が止めている。急にこの場に来た香澄には、何のことだかさっぱり分からなかった。
「菜々美が家を出てしまったんだ」
伯父は腕を組んで苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「あら……」
香澄に話しかけてきたようだったので、足を止めた。
従姉妹の菜々美はお嬢様なのだがとても自由に生きている人で、元々この柚木家の型に嵌まった部分は彼女に合わないところがあるのだ。
菜々美なら正直、家を出ても自分で生きていけるだろう。それくらいにバイタリティのある人だ。
むしろそんな従妹を型に嵌めようとしている伯父の方に無理がある。
「菜々美ちゃんは自由だからなぁ」
「自由すぎる!」
(雷が落ちたわ)
香澄は苦笑する。
「大体、本当は今週末見合いをするはずだったんだ。家を出るだけならともかく、置手紙をして家出状態だ」
吐き捨てるような伯父の声には同情するが所詮は他人事だ。
「あらら。そうだったんですね」
それはお見合いが嫌だったのでは? と思うけれども、香澄は口にはしなかった。
「頭が痛い。散々探しているが、どうやって隠れたものだか見つからない。見合い相手は大手コンサルティング会社のやり手CEOなんだ。取引相手でもあるし、こちらからの失礼は許されない」
「大変ですわね」
伯父がまたじっと香澄を見ている。
(ん……?)
「香澄は菜々美とも年齢が近かったな。いや、むしろお前の方が年上だったのではなかったか?」
大学出たてのピチピチの菜々美は二十三歳で、確かに香澄はその三歳年上で二十六歳だった。大きな声では言いたくない。童顔だから幼く見えるだけだ。
「ま……あ、私の方が年上、かも?」
菜々美は伯父夫婦が年を重ねてからできた愛娘だった。その分、わがままに育ってしまったこともやむないことなのではないだろうか。
「従姉妹ならそれほど変わらないだろう」
先ほどまで取り乱したようすだったのに、伯父は急に落ち着きを取り戻し始める。
(え、ちょっと待って。それは……)
「兄さん……」
父の咎めるような声にやっと香澄は危機感を感じ始めていた。
「伯父様? どういうことかしら?」
声が震えそうだ。
「交際相手でもいるのか?」
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