敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない

如月 そら

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12.仲違い

仲違い①

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 新たな人物の登場に誰かな? という疑問を顔に貼り付けた神代へ香澄が紹介する。
「佳祐さん、清柊せいしゅう先生です。私のお師匠様です」
「なるほど」
 清柊もにこにことして香澄の紹介を待っている。

「清柊先生、私の……こ、婚約者の神代さんです」
 ちょっと恥ずかしかったけど、頑張って言えた。
 一瞬、神代が頑張りましたと言うように背中を撫でてくれた感触が嬉しかった。

「婚約者……いつの間に。初めまして。清柊と申します」
 清柊は神代に向かって丁寧に頭を下げ、神代も頭を下げた。
「柚木さんは師匠と言ってくださったけれど、彼女は立派な書道家ですから、仲間のようなものですよ」

 そう言って清柊は袷たもとから名刺入れを取り出し、神代に名刺を差し出す。
 神代もスーツの内ポケットから名刺入れを取り出して、名刺を差し出した。
「頂戴します」
 とお互いに丁寧に受領する。

「柚木さん」
 突然に清柊から声をかけられ、香澄が返事をする。
「はい」
「少し、神代さんをお借りしてもいいですか?」
 そんなことを言い出すことは今までなかったので戸惑いながらも香澄は頷いた。

 * * *

「神代さん、少しお話しませんか?」
 そう言われた神代も戸惑ったが、それは表情には出さずに頷いた。
 一緒に会場内の書を見て歩く。

「神代さんは、この書をご覧になっていかがですか?」
 神代は壁際に掛けられている目の前の書をじっと見た。
「正直に言えば俺は良い悪いは分かりません。ただ生命力というんですかね、そういったものを感じます」
「ああ、正しい見方ですね。芸術というのは良し悪しを判断するものではないですから。それに……生命力か」
 ふふっと清柊は笑った。

「それも正しいですよ。書をされる方の中にはかなりご高齢の方も多いです。私なんかは若造扱いですから。一緒にいるだけでも生命力を感じるような方々です。なにかを伝えようとする方々からは確かに発するものがあるように思います」
「なるほど」
 それは書いているものからも力を感じるはずだと、改めて神代は壁の書を見た。

「それだけではないです。香澄さんから、展覧会に出されるときのお話を少し聞きました。半年も前から準備すると聞いて驚いていたところです」
「ははっ、そうですね。なにを書くか……自分を見つめるようにして書いてゆくんです。人がもがく様は美しいですよ。スポーツなどでもそうでしょう? 勝っても負けても、もがいているときに美しさを感じるから、そのさまに人は夢中になるのではないでしょうか」

 ──否定はしないが、そこまで露骨に言うものだろうか?
 神代は眉をひそめて、隣にいる清柊を見た。綺麗な人だがつかみきれない雰囲気を感じる。
「否定はしませんよ。けどそれだけではないと思います。スポーツなどは達成感もあるでしょう」
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