エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

如月 そら

文字の大きさ
19 / 42
5.初めてのデート

初めてのデート③

しおりを挟む
 一緒にフライトをするのは毎回違うメンバーなので必ずしも気が合う人と一緒になるとは限らない。
 だから客室乗務員は一人で行動することにも、慣れているのだ。

「莉緒も?」
「はい。私も。知らない街を独り歩きするのも結構楽しいです」
「本当に君は頼もしいな。いつか君と旅行にも行きたいよ」

「もう、すごーく綿密に予定を立てることもありますし、行き当たりばったりも得意です」
 五十里はきゅっと莉緒の手を繋いだ。
「莉緒と一緒にいると本当に楽しい」

 そう言って五十里は嬉しそうに笑っている。
 手のぬくもりに加えて無邪気な笑顔が本当に魅力的で、莉緒はそんな姿に胸が締め付けられる心地だった。

「莉緒と一緒に、どこかに行きたいな」
「いつか行きましょう」
「いつか、な。それを楽しみにしていよう」
 そう言うと五十里は莉緒の肩を抱いて、軽く引き寄せた。

「到着いたします」
 甘い雰囲気になったところだったが、パーテーションが降りて運転手がそう声をかけてくる。

「分かった」
 五十里はそっと莉緒から離れると頭を撫でた。
「本当に愛おしいよ」

 莉緒もそれは同じだ。一緒にいればいるほど、五十里は胸の高鳴る存在になる。
 本当にいつか五十里と一緒に旅に行くことができるのなら、行ってみたかった。 

 そして運転手の言う通り程なくソシアルグランドホテルに到着し、ドアマンが車のドアを開けてくれる。

 先に降りた五十里が中の莉緒に手を差し伸べてくれるので、莉緒はその手に掴まった。
 すらりと長身で端整な五十里と、愛らしい雰囲気の莉緒は二人で並んでいても、とても微笑ましくお似合いだ。

「ここのレストランは来たことあるか?」
「いいえ。いつか来たいとは思ってましたけど」
「それはよかった。とても秀逸だから楽しみにしていてほしい」
 にこにことしている五十里は、とても楽しそうだ。莉緒をエスコートするのすら、楽しいようだった。

 ソシアルグランドホテルは、吹き抜けになった天井から華やかなシャンデリアがぶら下がっており、内装もベージュやゴールドがベースとなっている。

 落ち着いた雰囲気で上品でありながらも煌びやかだ。
 海外からのお客様が多いのも納得だった。

 五十里はスーツの胸ポケットからゴールドのカードを取り出すと、エレベーターのボタンを押す際にかざした。

(もしかして、クラブフロア?)
 このソシアルグランドホテルには、クラブフロアと呼ばれるエグゼクティブのためのフロアがあることは莉緒も知っていた。

 クラブフロアに入るためにはクラブ会員となることが必要で、年収だけでなく社会的ステータスやその背景すらも審査の対象になるらしい。

 専用カードキーがないとフロアに足を踏み入れることはできず、先程のカードがその専用カードキーなのだとさすがに莉緒も察することができた。
 一度行ってみたいと思ってはいたが、気軽に入れるものではない。

「クラブフロア……ですね」
「そう。落ち着くからな」
 確かにロビーなどは人も多くザワついた雰囲気だ。

 ソシアルグランドホテルの落ち着いた雰囲気を堪能するにはやはりクラブフロアが適切なのかもしれない。
 最高級のサービスが受けられるとあって、莉緒もわくわくと胸が高鳴ってきたのだった。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

現在の政略結婚

詩織
恋愛
断れない政略結婚!?なんで私なの?そういう疑問も虚しくあっという間に結婚! 愛も何もないのに、こんな結婚生活続くんだろうか?

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

処理中です...