異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます

空色蜻蛉

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(第二部)第五章 君に贈る花束

01 夜会話

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 第二部 最終章 君に贈る花束

 Secret episode




 凪いだ泉の水面に月が映っている。
 月の光が明るいので、夜だというのに泉の周囲は人の目にも見通しがきく状態だった。
 その夜、夏風の都アストラルの近くの小さな泉で、樹とソフィーは話をした。樹が地球に帰るのは嫌だと動揺するソフィーを、樹はなだめた。
 けれど、シリアスな話だけではなく、泣き止んだソフィーと他愛もない会話をしたのは、二人だけの秘密だ。

「……ソフィーは、花より団子だよな」
「?」
「綺麗な花より、美味しい食べ物の方を優先しそうだってこと」

 樹がそう言うと、ソフィーはウサギ耳を立ち上げて唇を尖らせた。

「馬鹿にしないで下さい!」

 エルフの少女は泉の周囲に目を走らせて、ちょこちょこと走ると、何か手に持って帰ってきた。

「これ何?」
「花です!」
「……」

 鈴蘭のような、小さな白いつぼみが鈴なりに付いた茎を押し付けられて、樹は黙り込んだ。
 ソフィーは真剣だ。
 冗談を言っているような雰囲気ではない。

「ぷっ」
「何がおかしいんですか」
「……ソフィー。僕は別に花が欲しいと言った訳じゃないよ」
「え? そうなんですか」

 きょとんとする少女の金髪の頭を、樹はポンポンと叩いた。

「第一、花を贈るとしたら僕からだろ。だって君は僕に向かって散々好きだって言ってるのに、僕の方からは返事をしてないんだから」
「イツキが花をくれるんですか?!」
「お預け」
「はい?」

 樹は意地悪い笑みを浮かべると、ソフィーの手から花を取り上げた。途中で折られた茎を地面に置くと、茎から葉や根が生えて一瞬で花の株がそこに生まれる。
 まるで手品のような光景だった。「わあ」と目を丸くするソフィーに、樹は笑った。

「地球から帰ってくるまでお預けだよ」
「何それ、ずるーい!」
「ずるくて結構」

 ぶうぶう文句を言うソフィーを、樹が軽くいなす。
 それは、約束と呼ぶにはささやかな、二人だけの夜の出来事。

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