異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます

空色蜻蛉

文字の大きさ
68 / 97
(第二部)第五章 君に贈る花束

11 繋がる世界

しおりを挟む
 樹はソフィーを連れて、エターニアの王都ツェンベルンに通じるゲートをくぐった。
 地上に出た樹は、陽の光の眩しさに目を細めた。
 城の周囲や街は花であふれ、風に乗って花びらが乱舞している。

「あれ? ちょっとやりすぎたかな」

 樹は魔晶石から人々を解放するだけのつもりだった。
 しかしそこら中、花畑になってしまった光景を見渡し、思わぬ副産物に冷や汗を流す。
 生命力を活性化させすぎた影響で、また変な生き物が誕生していなければ良いのだが。

「あ、樹君、戻ってきた!」

 樹とソフィーは、城の階段を降りて中庭に出た。
 すると二人の姿に気付いて、結菜が走り寄ってくる。

「皆、石から解放されて喜んでるよ。樹君のおかげでしょ」
「いや僕は」
「イツキがぱーっとしてキラキラーって魔法を使ってました!」

 ソフィーが横から会話に割り込む。
 擬音語が多すぎて詳細が分からないのに、樹が魔法を使って元に戻した意味は伝わる。
 何か猛烈に恥ずかしくなって樹は頭を抱えた。

「うう……ソフィーの説明が阿呆すぎる」
「ま、まあ樹君、お疲れ様ってことで」

 結菜が苦笑いしてフォローする。
 彼女は服のポケットから折り畳んだ封筒を取り出した。

「はい。弟君から手紙だよ」
青葉アオバから?」

 樹は手渡された封筒から手紙を取り出す。
 白い素っ気ない便箋には、彼の知る弟の荒いようでいて几帳面な文字が綴られていた。


 
 クソ兄貴、元気かよ。

 よくもまあ、俺に全部押し付けて高飛びしやがったな。
 異世界だのなんだの、母さんも父さんも目を回して倒れそうになってるぞ。おまけになんだ、異世界に彼女できたって?
 ふざけんな! 爆発しろ!
 あー、言いたいこと書いてすっきりした。
 出来た弟の俺様が、とりあえず母さんと父さんを説得しておいてやったから。後で異世界のお土産とか、お土産とか、お土産とか頼む。
 兄貴の友達についても、父さんが手を回してるみたいだぞ。そっちは俺はよく知らんけど。

 最後に伝言。
 年末年始くらいは帰って来い、だって。
 あと彼女連れて来い。

 以上!



 予想以上に破天荒な文章に、樹は吹き出した。
 ブリブリ怒って生意気なことを言うが、結局言うことを聞いてくれる可愛い弟の姿が思い浮かぶ。
 帰る場所がある。
 それは樹をほっと安心させた。
 
「これで大手を振って異世界を行き来できるな」

 手紙を畳ながら樹は明るい気持ちで言う。
 結菜は苦笑した。

「ほんと、樹君って変わってるよね。普通は親に黙っていくか、地球のことなんてどうでもいいって割り切るでしょうに」
「いつでも好きな場所に行って、好きな事ができる方がいいじゃないか。異世界と日本で行き来できるようになったほうが面白くないか?」

 面白いことは正義だ、そう言って笑うと、樹はソフィーの方を向いた。
 話についていけない彼女は途中から黙ったままだ。

「ソフィー。また一緒に地球に来るか? 今度は僕の家にお泊まりさせてやるよ」
「う、嬉しいですが何だか嫌な予感」

 僕の家、という言葉で、樹の両親と引き合わされるのを何となく感じたソフィーはウサギ耳をピンと立てて震えた。
 
「気のせい気のせい。いじめられたりしないから」
「それってイツキの世界で言う、ふらぐですよね?!」

 震えるウサギ耳を樹がつまんで笑う。
 二人を囲む花畑に風が吹いて、無数の花びらが浮かび上がった。
 小さな精霊達が花びらと共に樹の周囲を舞い踊る。
 花は、涙目で抗議するエルフの少女の金髪にそっと寄り添った。





 ◇◇◇





 樹のやり過ぎた生命力配布により、世界中に花が咲いて、魔晶石が全て無くなってしまった。
 勿論、もう一度作ることも可能なのだが、エターニアのカノン王が捕らえられたことにより、魔晶石作りは下火となる。
 往生際の悪いカノン王は脱走し、樹や英司の手を煩わせたりもするのだが、それはまた別の話だ。
 エターニアの王位は空となり、新王の候補としてアルファードの名前が上がった。
 これが後に「精霊に愛されし者」と呼ばれる王の治世の始まりとなる。
 精霊に祝福された地となったエターニアは、その名前の由来通り永く繁栄することになった。


しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

幼馴染の勇者が一般人の僕をパーティーに入れようとするんですが

空色蜻蛉
ファンタジー
羊飼いの少年リヒトは、ある事件で勇者になってしまった幼馴染みに巻き込まれ、世界を救う旅へ……ではなく世界一周観光旅行に出発する。 「君達、僕は一般人だって何度言ったら分かるんだ?!  人間外の戦闘に巻き込まないでくれ。  魔王討伐の旅じゃなくて観光旅行なら別に良いけど……え? じゃあ観光旅行で良いって本気?」 どこまでもリヒト優先の幼馴染みと共に、人助けそっちのけで愉快な珍道中が始まる。一行のマスコット家畜メリーさんは巨大化するし、リヒト自身も秘密を抱えているがそれはそれとして。 人生は楽しまないと勿体ない!! ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。