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一輪挿しと……
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翌朝、また早目に登校したが、朝練が有る瑞輝や凌空は玄関にいなかった。
詩奈は重いリュックを背負いながら、昨日よりゆっくりと足元に気を付け階段を慎重に上った。
やっと教室まで着くと、詩奈の机の上には、白い菊の一輪挿しが置かれていた。
既に登校していたクラスメイト達が皆、詩奈に注目し、彼女の表情が変わったのを認めるなり、一斉に大爆笑した。
そこへ、朝練を終えた凌空が入って来た。
「おはよう、牧田さん。この花……誰だよ?」
笑っているクラスメイト達に尋ねたが、凌空の問いに誰も答えず笑い続けるだけだった。
そのタイミングで教室へ入って来た芽里。
「酷い事する人がいるものね~!」
その1輪挿しを教壇に置いた。
「芽里、ありがとう……」
詩奈がお礼を言うと、芽里が言動とは一致しない、今まで見た事も無いような冷たい表情を浮かべた。
「友達なんだから、当然じゃない」
そう言うと、爆笑していたクラスメイト達が急にヒソヒソ声で話し出した。
(入院中、あんな事が有った後なのに、芽里はまだ私の友達でいてくれる! 北岡君以外は、皆、敵のように見えていたけど、芽里がいてくれるなら安心! ……ただ、気のせいか、芽里の顔つきがいつもと違う)
朝のホームルームの時間になると、浜口が入って来てすぐに、教壇に置かれた菊に気付いた。
「どうした、この花?」
凌空の時と同様、生徒達はクスクス笑うだけで答えなかった。
そんな中、1人俯いた状態の詩奈に、勘付いた浜口。
「悪戯する前に、された本人の気持ちになって考えろ! 俺はな、このクラスで一年間、誰一人イジメも不登校も無く、皆で協力し合えるクラスメイト達であってもらいたいんだ!」
浜口は、それだけ言うと、一時限目のチャイムが鳴る前に、出て行った。
「あんな浜口の理想論、押し付けられても、迷惑だよな!」
「むしろ私達の方が、面倒かけられている被害者なんだから!」
「先生を味方に付けたり、北岡君が毎回かばってくれると思って、イイ気にならないでよ!」
「みんなの迷惑にしかならないようなクラスメイトなんか、居ない方がせいせいするのに!」
一時限目の社会の教師が現れるまで、詩奈は罵声を浴びせられ続けていた。
昨日の事が有り、何も言い返せない凌空は、詩奈の気持ちを察し、ただやるせなかった。
休憩時間の度に、詩奈一点に集中する視線と、ヒソヒソ聴こえる嘲笑に耐えながら、何とか午前中の授業を終えた。
そして、また後ろめたく感じつつ、凌空に給食当番を替わってもらう時間となった。
詩奈が給食で飲み終えた牛乳瓶を戻そうと椅子から立ち上がった瞬間、クラスメイトの1人がわざとにぶつかり、牛乳瓶が割れてしまった。
詩奈が、足に負担をかけないよう椅子に腰かけてから、拾おうとすると、近くの席の芽里が一緒に拾った。
「ありがとう、芽里」
「いいよ、詩奈は。危ないから」
そう言って、破損物用の缶の所へ芽里が行き、割れた瓶を入れた。
(芽里......花の時もだったけど、こうして手伝ってくれる友達がいてくれて良かった。北岡君もきっと手伝ってくれそうだけど、そうなると、またヤジが飛ぶから。北岡君に手伝ってもらうのは、お互いにとって、あまり良くないのかも知れない。芽里がやってくれるなら、女子だし、元々仲良しだったの皆が知っているから、他のクラスメイト達も何も文句言って来ない)
入院の面会時に壊れたと思っていた芽里との友情はまだ続いている事に、胸を撫で下ろした詩奈。
が、安堵感は長くは続かなかった。
放課後、部活の有る瑞輝と凌空は、詩奈のリュックだけ預かり、先に下で待つ母親の車の所まで届けた。
詩奈が、自分のペースで松葉杖で立ち上がり帰ろうとした時、クラスメイトの女子1人が片足を伸ばし、わざと詩奈を転倒させた。
「あ~ら、失礼!」
取って付けたように謝った女子。
詩奈が起き上がろうとすると、その周りには、芽里を含めた10人ほどの女子が囲っていた。
「芽里……?」
驚いた眼で見上げる詩奈を嘲笑う芽里。
「どうしたの、驚いた? 友情がまだ続いていると思って、すっかり油断していたものね~!」
芽里を囲んでいたクラスメイトの女子達も皆、見下したような視線を向けながら笑っていた。
「どうして……芽里?」
「そんなの、北岡君に悪く思われたくないからに決まってるじゃん! 北岡君の前では、詩奈と仲良くしている風に見せかける方が、好印象でしょ? それに、詩奈も油断するから、尚更面白いし」
机の花を退けてくれて、牛乳瓶を一緒に拾ってくれた芽里の口から、そんな言葉を聞きたくなかった詩奈。
「詩奈って、この松葉杖無いと、マジで何も出来ないんだ~!」
「不便ね~!」
芽里ともう1人のクラスメイトの女子が、詩奈の松葉杖を2本とも奪い、力任せに床に打ち付けた。
「止めて!!」
詩奈は、自分でもこんな大声が出せたのかと驚くほどの音量で叫んだ。
詩奈は重いリュックを背負いながら、昨日よりゆっくりと足元に気を付け階段を慎重に上った。
やっと教室まで着くと、詩奈の机の上には、白い菊の一輪挿しが置かれていた。
既に登校していたクラスメイト達が皆、詩奈に注目し、彼女の表情が変わったのを認めるなり、一斉に大爆笑した。
そこへ、朝練を終えた凌空が入って来た。
「おはよう、牧田さん。この花……誰だよ?」
笑っているクラスメイト達に尋ねたが、凌空の問いに誰も答えず笑い続けるだけだった。
そのタイミングで教室へ入って来た芽里。
「酷い事する人がいるものね~!」
その1輪挿しを教壇に置いた。
「芽里、ありがとう……」
詩奈がお礼を言うと、芽里が言動とは一致しない、今まで見た事も無いような冷たい表情を浮かべた。
「友達なんだから、当然じゃない」
そう言うと、爆笑していたクラスメイト達が急にヒソヒソ声で話し出した。
(入院中、あんな事が有った後なのに、芽里はまだ私の友達でいてくれる! 北岡君以外は、皆、敵のように見えていたけど、芽里がいてくれるなら安心! ……ただ、気のせいか、芽里の顔つきがいつもと違う)
朝のホームルームの時間になると、浜口が入って来てすぐに、教壇に置かれた菊に気付いた。
「どうした、この花?」
凌空の時と同様、生徒達はクスクス笑うだけで答えなかった。
そんな中、1人俯いた状態の詩奈に、勘付いた浜口。
「悪戯する前に、された本人の気持ちになって考えろ! 俺はな、このクラスで一年間、誰一人イジメも不登校も無く、皆で協力し合えるクラスメイト達であってもらいたいんだ!」
浜口は、それだけ言うと、一時限目のチャイムが鳴る前に、出て行った。
「あんな浜口の理想論、押し付けられても、迷惑だよな!」
「むしろ私達の方が、面倒かけられている被害者なんだから!」
「先生を味方に付けたり、北岡君が毎回かばってくれると思って、イイ気にならないでよ!」
「みんなの迷惑にしかならないようなクラスメイトなんか、居ない方がせいせいするのに!」
一時限目の社会の教師が現れるまで、詩奈は罵声を浴びせられ続けていた。
昨日の事が有り、何も言い返せない凌空は、詩奈の気持ちを察し、ただやるせなかった。
休憩時間の度に、詩奈一点に集中する視線と、ヒソヒソ聴こえる嘲笑に耐えながら、何とか午前中の授業を終えた。
そして、また後ろめたく感じつつ、凌空に給食当番を替わってもらう時間となった。
詩奈が給食で飲み終えた牛乳瓶を戻そうと椅子から立ち上がった瞬間、クラスメイトの1人がわざとにぶつかり、牛乳瓶が割れてしまった。
詩奈が、足に負担をかけないよう椅子に腰かけてから、拾おうとすると、近くの席の芽里が一緒に拾った。
「ありがとう、芽里」
「いいよ、詩奈は。危ないから」
そう言って、破損物用の缶の所へ芽里が行き、割れた瓶を入れた。
(芽里......花の時もだったけど、こうして手伝ってくれる友達がいてくれて良かった。北岡君もきっと手伝ってくれそうだけど、そうなると、またヤジが飛ぶから。北岡君に手伝ってもらうのは、お互いにとって、あまり良くないのかも知れない。芽里がやってくれるなら、女子だし、元々仲良しだったの皆が知っているから、他のクラスメイト達も何も文句言って来ない)
入院の面会時に壊れたと思っていた芽里との友情はまだ続いている事に、胸を撫で下ろした詩奈。
が、安堵感は長くは続かなかった。
放課後、部活の有る瑞輝と凌空は、詩奈のリュックだけ預かり、先に下で待つ母親の車の所まで届けた。
詩奈が、自分のペースで松葉杖で立ち上がり帰ろうとした時、クラスメイトの女子1人が片足を伸ばし、わざと詩奈を転倒させた。
「あ~ら、失礼!」
取って付けたように謝った女子。
詩奈が起き上がろうとすると、その周りには、芽里を含めた10人ほどの女子が囲っていた。
「芽里……?」
驚いた眼で見上げる詩奈を嘲笑う芽里。
「どうしたの、驚いた? 友情がまだ続いていると思って、すっかり油断していたものね~!」
芽里を囲んでいたクラスメイトの女子達も皆、見下したような視線を向けながら笑っていた。
「どうして……芽里?」
「そんなの、北岡君に悪く思われたくないからに決まってるじゃん! 北岡君の前では、詩奈と仲良くしている風に見せかける方が、好印象でしょ? それに、詩奈も油断するから、尚更面白いし」
机の花を退けてくれて、牛乳瓶を一緒に拾ってくれた芽里の口から、そんな言葉を聞きたくなかった詩奈。
「詩奈って、この松葉杖無いと、マジで何も出来ないんだ~!」
「不便ね~!」
芽里ともう1人のクラスメイトの女子が、詩奈の松葉杖を2本とも奪い、力任せに床に打ち付けた。
「止めて!!」
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