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友情を感じた時間と……
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「これ直せるかな? 浜口先生に後から聞いてみよう」
瑞輝は杖を持っていた側に移動し、杖の代わりに瑞輝の左腕に詩奈の重心を傾け歩かせようとした。
「歩き難かったり、反対の足の負荷が強過ぎるようだったらオンブするけど、どっちがいい?」
歩き慣れているような舗装された道なら、瑞輝の腕に重心をかけて歩ける自信が有ったが、薄暗いでこぼこ道で驚かされた時の事を考えると、辿り着けないかも知れない不安に駆られた詩奈。
「この道だし、いつ驚かされるか分からないから、オンブしてもらえると助かる」
「了解!」
もう慣れた様子で、詩奈を背負った瑞輝。
(杖は、また折られてしまったけど、矢本君の背中、これで3回目だ......もう、一生分のシアワセを独り占めした気分!)
その時、脅し役の教師達に聴こえるように、よく通る大きな声で叫ぶ瑞輝。
「ハプニングが起きました! 危ないので、先頭グループを驚かすのは、中止にして下さい!」
その声が、詩奈にも背中の振動と共に伝わった。
(矢本君、私をオンブしながらも、とっさにそういう判断出来るって、スゴイ! やっぱり、頼もしくて、大好き!)
カサカサと人の潜んでいる気配が感じられたが、瑞輝の訴えを聞き入れた様子で、誰も驚かそうと飛び出て来る事は無いままゴールに到着出来た。
ゴール地点には、保健室の女性教員だけが残っていた。
「まあっ、牧田さん、大丈夫ですか?」
「私は大丈夫ですが、杖が折れてしまって……」
「杖が、こんな事になるなんて、困ったわね。これは、もう使えなさそうだし。矢本君、頑張ってくれて助かったわね、お疲れ様」
凌空から折れた杖を預かった女性教員。
肝試しを続行している次のグループの叫び声が、背後から響いていた。
瑞輝は、他のグループの生徒達に見られないうちに、詩奈を背中からゆっくりと下ろした。
「小畑達、マジで何考えてるんだ?」
「詩奈、ホントに、あの小畑さんって人と友達だったの? どうして、友達に向かって、あんなヒドイ事が出来るの?」
若葉が、興奮し過ぎて涙目になりながら怒っていた。
「若葉が、そんな怒らなくてもいいのに……」
「だって、おかしいよ! どうして、怪我している友達に対して、こんな困らせるような事をして、嘲笑っていられるの? 私は、そんな事なんて絶対しないからね、詩奈」
自分の為に、こんなに若葉が激怒してくれているのが、杖を折られた後というにも関わらず嬉しくて、若葉につられて涙が溢れて来た詩奈。
「うん、ありがとう、若葉」
遠目で、そんな様子を見ている芽里や、他クラスの恵麻の姿が有った。
大多数の生徒が戻った時点で、クラス担任の浜口も引き上げ、詩奈の方へ歩いて来た。
「肝試しの時に、災難だったな、牧田。杖、見せてくれ。う~ん……接続部分が折れただけだから、この施設内に有る道具で、もしかしたら何とかなるかも知れない。取り敢えず、預かるよ」
「浜口先生、よろしくな~! 俺らは、またおかしな女子達が近付かないように、牧田の周りで目を光らせておくから」
15分くらい経過すると、浜口が集合場所へ、ロフストランド杖を真っ直ぐに直して現れた。
「スゴイ、先生!! もう直ってる!!」
詩奈を支えていた瑞輝が、浜口の存在にまず気付き、詩奈を浜口がいる方向へと上手くターンさせた。
「実は、関節部分がやられてしまって、もう折り畳みは出来なくなったんだけど、これでも使えるかな?」
「大丈夫です、ありがとうございます!」
また使えるようになるとは思わなかった詩奈が、元通りにほぼ近い状態の杖に感激しながら、浜口に礼を伝えた。
こんな事が起こるまで詩奈の入浴は、集団で大浴場のはずだったが、家族用の小浴場を借りられる事になり、詩奈と若葉の2人は、貸し切り状態で息抜きした。
「詩奈のおかげで、大勢で煩くて慌ただしいお風呂時間にならなくて良かった~!」
小浴場とはいえ、2人で使用するには広過ぎるくらいで、ノビノビと使用していた2人。
「私も、少しは若葉の役に立てて良かった! いつも、面倒見てもらってばかりだったから……」
「何言ってるの、水臭いな~。私達、友達じゃん!」
瑞輝を介して、仲良くしてもらっているだけと思っていた詩奈に、友達という言葉が、暖かく胸に響いた。
怪我が治った後も、若葉と友達でいられるのか知りたかったが、尋ねるのが恐かった詩奈。
「若葉に友達って言ってもらえて、嬉しい! もう、こんな私には、友達が出来ないんじゃないかって、真剣に思っていたから……」
「今まで、色々、辛い事、耐えて来たんだもんね! ホント、頑張っていて、偉いよ~! 詩奈は私の大事な友達だよ、これからもずっと!」
若葉のその一言が嬉し過ぎて涙が込み上げ、慌てて、シャワーで隠しながら髪の毛を洗い出した詩奈。
「若葉、ありがとう、嬉しい!」
詩奈の言葉に頷きながら、若葉は隣のシャワーで髪の毛を洗い出した。
(ずっと友達……怪我が治っても、っていう事だよね? そう信じていいんだよね?)
ロフストランド杖は少し形状を変えていたが、その件で、若葉との友情が深まっていくのを感じられた詩奈。
瑞輝は杖を持っていた側に移動し、杖の代わりに瑞輝の左腕に詩奈の重心を傾け歩かせようとした。
「歩き難かったり、反対の足の負荷が強過ぎるようだったらオンブするけど、どっちがいい?」
歩き慣れているような舗装された道なら、瑞輝の腕に重心をかけて歩ける自信が有ったが、薄暗いでこぼこ道で驚かされた時の事を考えると、辿り着けないかも知れない不安に駆られた詩奈。
「この道だし、いつ驚かされるか分からないから、オンブしてもらえると助かる」
「了解!」
もう慣れた様子で、詩奈を背負った瑞輝。
(杖は、また折られてしまったけど、矢本君の背中、これで3回目だ......もう、一生分のシアワセを独り占めした気分!)
その時、脅し役の教師達に聴こえるように、よく通る大きな声で叫ぶ瑞輝。
「ハプニングが起きました! 危ないので、先頭グループを驚かすのは、中止にして下さい!」
その声が、詩奈にも背中の振動と共に伝わった。
(矢本君、私をオンブしながらも、とっさにそういう判断出来るって、スゴイ! やっぱり、頼もしくて、大好き!)
カサカサと人の潜んでいる気配が感じられたが、瑞輝の訴えを聞き入れた様子で、誰も驚かそうと飛び出て来る事は無いままゴールに到着出来た。
ゴール地点には、保健室の女性教員だけが残っていた。
「まあっ、牧田さん、大丈夫ですか?」
「私は大丈夫ですが、杖が折れてしまって……」
「杖が、こんな事になるなんて、困ったわね。これは、もう使えなさそうだし。矢本君、頑張ってくれて助かったわね、お疲れ様」
凌空から折れた杖を預かった女性教員。
肝試しを続行している次のグループの叫び声が、背後から響いていた。
瑞輝は、他のグループの生徒達に見られないうちに、詩奈を背中からゆっくりと下ろした。
「小畑達、マジで何考えてるんだ?」
「詩奈、ホントに、あの小畑さんって人と友達だったの? どうして、友達に向かって、あんなヒドイ事が出来るの?」
若葉が、興奮し過ぎて涙目になりながら怒っていた。
「若葉が、そんな怒らなくてもいいのに……」
「だって、おかしいよ! どうして、怪我している友達に対して、こんな困らせるような事をして、嘲笑っていられるの? 私は、そんな事なんて絶対しないからね、詩奈」
自分の為に、こんなに若葉が激怒してくれているのが、杖を折られた後というにも関わらず嬉しくて、若葉につられて涙が溢れて来た詩奈。
「うん、ありがとう、若葉」
遠目で、そんな様子を見ている芽里や、他クラスの恵麻の姿が有った。
大多数の生徒が戻った時点で、クラス担任の浜口も引き上げ、詩奈の方へ歩いて来た。
「肝試しの時に、災難だったな、牧田。杖、見せてくれ。う~ん……接続部分が折れただけだから、この施設内に有る道具で、もしかしたら何とかなるかも知れない。取り敢えず、預かるよ」
「浜口先生、よろしくな~! 俺らは、またおかしな女子達が近付かないように、牧田の周りで目を光らせておくから」
15分くらい経過すると、浜口が集合場所へ、ロフストランド杖を真っ直ぐに直して現れた。
「スゴイ、先生!! もう直ってる!!」
詩奈を支えていた瑞輝が、浜口の存在にまず気付き、詩奈を浜口がいる方向へと上手くターンさせた。
「実は、関節部分がやられてしまって、もう折り畳みは出来なくなったんだけど、これでも使えるかな?」
「大丈夫です、ありがとうございます!」
また使えるようになるとは思わなかった詩奈が、元通りにほぼ近い状態の杖に感激しながら、浜口に礼を伝えた。
こんな事が起こるまで詩奈の入浴は、集団で大浴場のはずだったが、家族用の小浴場を借りられる事になり、詩奈と若葉の2人は、貸し切り状態で息抜きした。
「詩奈のおかげで、大勢で煩くて慌ただしいお風呂時間にならなくて良かった~!」
小浴場とはいえ、2人で使用するには広過ぎるくらいで、ノビノビと使用していた2人。
「私も、少しは若葉の役に立てて良かった! いつも、面倒見てもらってばかりだったから……」
「何言ってるの、水臭いな~。私達、友達じゃん!」
瑞輝を介して、仲良くしてもらっているだけと思っていた詩奈に、友達という言葉が、暖かく胸に響いた。
怪我が治った後も、若葉と友達でいられるのか知りたかったが、尋ねるのが恐かった詩奈。
「若葉に友達って言ってもらえて、嬉しい! もう、こんな私には、友達が出来ないんじゃないかって、真剣に思っていたから……」
「今まで、色々、辛い事、耐えて来たんだもんね! ホント、頑張っていて、偉いよ~! 詩奈は私の大事な友達だよ、これからもずっと!」
若葉のその一言が嬉し過ぎて涙が込み上げ、慌てて、シャワーで隠しながら髪の毛を洗い出した詩奈。
「若葉、ありがとう、嬉しい!」
詩奈の言葉に頷きながら、若葉は隣のシャワーで髪の毛を洗い出した。
(ずっと友達……怪我が治っても、っていう事だよね? そう信じていいんだよね?)
ロフストランド杖は少し形状を変えていたが、その件で、若葉との友情が深まっていくのを感じられた詩奈。
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