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第五部
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翌日。わたしは、仕事終わりのイナリと一緒に、冒険者ギルドへとやってきていた。今日は残業を断ってきたとかで、ここ最近にしては少し終わるのが早かった。
流石元冒険者、というべきなのか、それともこの国では冒険者を頼るのが一般的なのか、イナリが依頼を出す仕草に迷いはない。
ネット小説だと、人気なものはもっぱら冒険者を仕事として、依頼を受ける側の描写が多いので、ちょっと興味深くてつい見てしまう。
依頼を発注するための受付で、条件と報酬を取り決めて、二、三枚書類を書いて受付終了。意外とあっさり終わってしまった。
本来ならば、依頼する側の身分証明が必要らしいのだが、冒険者が依頼する場合はスルーされることが多いらしい。まあ、冒険者相手なら、必要な情報はギルド側が持っているらしいので、それならスルーしても大丈夫、だろうか。
元冒険者であるイナリにもそれが適応されているのを見ると、少し処理が雑な気もするけど。
壁一面が掲示板になっている処にこれも並ぶのかな、と思い、なんとなく、そちらをちらっと見ると――。
「い、イナリ、ちょっと」
未だ受付嬢と話をしているイナリの肩を叩く。イナリは「もう少しで終わるから待って」と言っているが、そんな場合じゃない。
「いや、あの、あれ見て、イナリってば」
「ああ、もう、何――」
しつこいわたしに、少し苛立ちの声を上げながらもわたしが指さす方を見る。
その先に――シャシカさんがいた。
怪我の様子は多少は良くなったようで、前回見たときよりは、包帯やガーゼが減っている。それでも、一目見て怪我人、と分かるほどの見た目はしているが。
つい、大声を出して呼び止めたくなったが、黙ってイナリに声をかけたのだった。本当はイナリに名前を出して、彼女がいると言いたかったが、耳のいい獣人であるシャシカさんに届いてしまっては逃げられるかもしれない、とこっそりイナリの肩を叩いたのだ。
と、わたしがそこまで配慮したのに――。
「――シャシカ!」
イナリは思わず、と言った風に声を出してしまった。直後、あっしまった! という顔をする。
シャシカさんは、その声でわたしたちに気が付いたようで、一瞬こっちを見たかと思えば、即座に逃げ出した。
「――っ、それ、キャンセル!」
イナリはそれだけ言うと、シャシカさんを追いかけて走って行ってしまった。流石に二人とも、足が速い。
わたしはイナリの仕事の鞄を持っているし、そうじゃなくても普通に追い付けない。すぐにわたしも、と思って冒険者ギルドを出たが、どの方面に行ったのか分からなくなってしまった。
これは――戻ってくるのを待つべきか、それとも魔法を使って探してしまうか。
迷ったわたしは、後者を選んで、かなり出遅れたものの、二人を追って駆けだした。
流石元冒険者、というべきなのか、それともこの国では冒険者を頼るのが一般的なのか、イナリが依頼を出す仕草に迷いはない。
ネット小説だと、人気なものはもっぱら冒険者を仕事として、依頼を受ける側の描写が多いので、ちょっと興味深くてつい見てしまう。
依頼を発注するための受付で、条件と報酬を取り決めて、二、三枚書類を書いて受付終了。意外とあっさり終わってしまった。
本来ならば、依頼する側の身分証明が必要らしいのだが、冒険者が依頼する場合はスルーされることが多いらしい。まあ、冒険者相手なら、必要な情報はギルド側が持っているらしいので、それならスルーしても大丈夫、だろうか。
元冒険者であるイナリにもそれが適応されているのを見ると、少し処理が雑な気もするけど。
壁一面が掲示板になっている処にこれも並ぶのかな、と思い、なんとなく、そちらをちらっと見ると――。
「い、イナリ、ちょっと」
未だ受付嬢と話をしているイナリの肩を叩く。イナリは「もう少しで終わるから待って」と言っているが、そんな場合じゃない。
「いや、あの、あれ見て、イナリってば」
「ああ、もう、何――」
しつこいわたしに、少し苛立ちの声を上げながらもわたしが指さす方を見る。
その先に――シャシカさんがいた。
怪我の様子は多少は良くなったようで、前回見たときよりは、包帯やガーゼが減っている。それでも、一目見て怪我人、と分かるほどの見た目はしているが。
つい、大声を出して呼び止めたくなったが、黙ってイナリに声をかけたのだった。本当はイナリに名前を出して、彼女がいると言いたかったが、耳のいい獣人であるシャシカさんに届いてしまっては逃げられるかもしれない、とこっそりイナリの肩を叩いたのだ。
と、わたしがそこまで配慮したのに――。
「――シャシカ!」
イナリは思わず、と言った風に声を出してしまった。直後、あっしまった! という顔をする。
シャシカさんは、その声でわたしたちに気が付いたようで、一瞬こっちを見たかと思えば、即座に逃げ出した。
「――っ、それ、キャンセル!」
イナリはそれだけ言うと、シャシカさんを追いかけて走って行ってしまった。流石に二人とも、足が速い。
わたしはイナリの仕事の鞄を持っているし、そうじゃなくても普通に追い付けない。すぐにわたしも、と思って冒険者ギルドを出たが、どの方面に行ったのか分からなくなってしまった。
これは――戻ってくるのを待つべきか、それとも魔法を使って探してしまうか。
迷ったわたしは、後者を選んで、かなり出遅れたものの、二人を追って駆けだした。
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