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第五部
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索敵〈サーヅ〉を使った先に、イナリを見つける。魔法を使って、そこに居る、と分かっているし、イナリの元まで魔法の線が伸びているので迷いようがないのだが、細く入り組んだ、地元の人しか使わないような裏通りばかりを通ったようで、迷わないか心配になる。治安があまり良くないような細道に、いつ行き止まりがくるかひやひやしてしまう。
しばらく走り、そろそろ体力も尽きてしまいそうな頃、ようやくイナリのところにたどり着いた――のだと思う。索敵〈サーヅ〉が示すのはこの辺りで間違いないが……。
――もしかして、あの、変に人だかりが出来ている先、とかではない、よね……?
嫌な予感がしつつも、人の波をぬうように、わたしは人だかりの先に行く。
すると――。
「――っ、だから、少し、話がしたいだけだって、言ってるだろ!」
「うるさい! アタシは聞きたくない!」
「散々僕に付きまとってきた癖に!? 今更!?」
イナリとシャシカさんが取っ組み合いの喧嘩をしていた。
「えぇ……」
まさかの展開に、わたしは気の抜けた声を出してしまった。
怪我でボロボロのシャシカさんと、イナリの取っ組み合い。周りは止める様子がない。取っ組み合いの喧嘩、と言うよりは、もはや『戦闘』という方が正しいような二人の間に割って入れない……というわけではなく、喧嘩がもはや娯楽と化しているのか、周りは野次を飛ばしてはやし立てているだけだ。
治安の悪さが異常である。シーバイズでも日本でも、こんな光景見たことない。止めに入りたいものの、周りがこれだけ盛り上がっていると、やめろと叫んでも声が届かないだろうし、それこそ、あの二人の間に割って入る勇気はない。双方から、勢い余って止められなかった拳で殴られる未来が簡単に想像できる。
「アタシはアンタの話を聞きたくない! 冒険者に戻ってくれってアタシの話は全然聞いてくれなかったのに! 今更、はこっちのセリフさね!」
「シャシカもシャシカで、戻りたくなっていう僕の話を聞かなかっただろ! 一方的に被害者ぶるなよ!」
うーん……これはもう、やりたいようにやらせた方が、いいんだろうか。この二人、一方的に話を『聞いてほしい』ばかりで、『話し合い』をしたことがないように思うのだ、叫びあっている話を聞くに。
ならば、言いたいことを言わせ合ってしまうのが、一番なんじゃないかと……。暴力は、よくないけど。
周りの空気に押されて、割り込むのを諦めた、とかではない、断じて。本当にヤバそうなら、割って入るけど、二人だって、本当に超えてはいけないラインは分かっているだろう。……分かっているよね?
ひやひやしながらも、わたしは二人の喧嘩――もとい、『話し合い』を、見届けることにした。
わたしが到着してから、体感で、三十分もかからないくらいで勝負は決着する。
――勝者はイナリだった。
しばらく走り、そろそろ体力も尽きてしまいそうな頃、ようやくイナリのところにたどり着いた――のだと思う。索敵〈サーヅ〉が示すのはこの辺りで間違いないが……。
――もしかして、あの、変に人だかりが出来ている先、とかではない、よね……?
嫌な予感がしつつも、人の波をぬうように、わたしは人だかりの先に行く。
すると――。
「――っ、だから、少し、話がしたいだけだって、言ってるだろ!」
「うるさい! アタシは聞きたくない!」
「散々僕に付きまとってきた癖に!? 今更!?」
イナリとシャシカさんが取っ組み合いの喧嘩をしていた。
「えぇ……」
まさかの展開に、わたしは気の抜けた声を出してしまった。
怪我でボロボロのシャシカさんと、イナリの取っ組み合い。周りは止める様子がない。取っ組み合いの喧嘩、と言うよりは、もはや『戦闘』という方が正しいような二人の間に割って入れない……というわけではなく、喧嘩がもはや娯楽と化しているのか、周りは野次を飛ばしてはやし立てているだけだ。
治安の悪さが異常である。シーバイズでも日本でも、こんな光景見たことない。止めに入りたいものの、周りがこれだけ盛り上がっていると、やめろと叫んでも声が届かないだろうし、それこそ、あの二人の間に割って入る勇気はない。双方から、勢い余って止められなかった拳で殴られる未来が簡単に想像できる。
「アタシはアンタの話を聞きたくない! 冒険者に戻ってくれってアタシの話は全然聞いてくれなかったのに! 今更、はこっちのセリフさね!」
「シャシカもシャシカで、戻りたくなっていう僕の話を聞かなかっただろ! 一方的に被害者ぶるなよ!」
うーん……これはもう、やりたいようにやらせた方が、いいんだろうか。この二人、一方的に話を『聞いてほしい』ばかりで、『話し合い』をしたことがないように思うのだ、叫びあっている話を聞くに。
ならば、言いたいことを言わせ合ってしまうのが、一番なんじゃないかと……。暴力は、よくないけど。
周りの空気に押されて、割り込むのを諦めた、とかではない、断じて。本当にヤバそうなら、割って入るけど、二人だって、本当に超えてはいけないラインは分かっているだろう。……分かっているよね?
ひやひやしながらも、わたしは二人の喧嘩――もとい、『話し合い』を、見届けることにした。
わたしが到着してから、体感で、三十分もかからないくらいで勝負は決着する。
――勝者はイナリだった。
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