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第十一話 冒険者の商売 その①
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前の話が、少し脱線していたので、もう一話更新します。
数日後
「おはようございます。」
俺が冒険者ギルドに顔を出すと、マリエの元気な声が聞こえた。
「あ…ああ、おはようございます。マリエ、結婚したんじゃないのか?」
「ええ、結婚したけど?」
「なんでここにいるの?」
「だって、働かなきゃ食べていけないでしょう?」
「しばらくは共働きで行くのか?」
「ええ、ギルドもいまが大変なときだし。」
「そうか、これお祝いだ、弟たちになにか甘いもんでも食わしてやって。」
オレは、銀貨の入った袋を出した。
「いただけないわよ、こんなに。」
「まあ、気は心だ、気にするな。オレが結婚したら倍にしてくれ。」
「ばかねえ。」
「大工の女房が外で働いてて、仕事回るのか?」
「まあ、まだ親方の下で働いているうちは大丈夫よ。」
「そんなもんかねえ?おっと、じゃあ狩りに行ってくるよ。」
「はい、大物獲れるといいわね、行ってらっしゃい。」
俺は、ギルドの中でうろうろしているメンツを見回した。
「ユフラテさん!今日はオレを連れて行ってくれ!」
元気な声が聞こえた。
「ああ?だれよ。」
「メルシー横丁のミシェルです。」
「へ~、若いな~、いくつなんだ?」
「十五」
「成人したてか~、武器はなに持ってる?」
ミシェルはショートソードを見せた。
「ふ~ん。」
俺はそいつを抜いてみたが、鋳型に流した安物だ。
「こりゃあ、研ぎが必要だな、どこで買った?」
「ランドさんの店ですが…」
「野郎、子供だと思って安物出しやがって、おもちゃじゃねえぞ。」
「ひう。」
オレが静かに怒っていると、ミシェルの後ろで声がした。
「なんだ?」
「ままマレーネですぅ~」
「マママレーネ?」
ミシェルより背の低い女の子だ。
すっげえ痩せて、ひょろりとした女の子だ。
顔もあんまりいい色してないな…
青白いって感じだが。
「いえ、この子はマレーネ。近所の子ですが、冒険者になりたくて着いてきたんです。」
「そうか、十二歳から登録はできるからな、やってみてだめなら考えりゃいいさ。」
「ははい。」
俺は、二人を連れて裏に回った。
そこにはジャックとマルソーが、武器の手入れをしている。
井戸があるから、ここで武器を研ぐ。
汗をかいたら水をかぶったりもする。
研ぎ台にはジャックが陣取ってショートソードを研いでいる。
「おはようジャック、隣空いてるか?」
「ああおはよう、俺たちだけだ。」
「おはようマルソー、せいが出るな。」
「おはよう、まあこいつに命預けているからな。」
マルソーは、研ぎ石に目を落としつつ答えた。
研ぎ間違うと、いっそう切れない剣になっちまう。
「ちげえねえ。」
二人は後ろの子供たちに気がついた。
「なんだ、今日はちっこいの連れてるな。」
「ミシェルとマレーネだ、冒険者なりたてのホヤホヤだ。」
「そうか、俺はジャック、ユフラテに指導を頼むなんざ目利きだな。」
ミシェルは目を輝かせた。
「ミシェルです、よろしくお願いします。」
「マレーネです。」
俺は、砥石を手に取ると、ミシェルの剣を研ぎはじめた。
横からジャックが覗く。
「なんだ雑な作りだな、銅貨五枚くらいか?」
「え?銀貨一枚ですけど。」
「なんだと!ランドめ子供だと思ってぼったくりやがって!後で〆てやる。」
ジャックは、目を吊り上げた。
「あ・あの」
「まあいい、そいつはジャックに任せとけ。」
俺は、荒砥ぎをして、剣筋を見た。
「まあ、歪んではいないが、くれぐれも横に叩くなよ。折れるから。」
「ええ?じゃあどうすれば?」
「突く専門で使えば、まあしばらくは使える。」
「はい。」
俺は、マルソーに顔を向けた。
「今日は一緒に行けるか?」
「ああ、いいよ。」
「オレもいいぜ。」
二人も研げた剣を見ながら言う。
オレも腰を上げた。
「よし、まあナマクラぐらいは切れるようになった、しまっとけ。」
「はいっ」
「いい返事だ。」
オレはニカッと笑って見せた。
「マレーネは魔法使いか?」
「水と土を…」
「ほう、なかなかやるな。」
オレが言うと、はにかんでみせた。
「ジャック、荷車借りてあるか?」
「ああ、一番に取った。」
「じゃあ、これ。」
オレはポケットから銅貨三枚を渡した。
「あいよ、受けた。」
冒険者はなんでも山分けが基本だ。
出すときも人数割り。
今日は、二人の分も出してやる。
背中のブロードソードは使ったことがないが、お守り代わりだ。
基本、メイスでぶったたく。
短刀で止めを刺す。
そんなスタイルでやっている。
荷車を引きながら、そんな話をする。
しかしマレーネは十三にしてはちっこいな、食べてるのか?
腕も細っこいし、あまり食料事情がよくないようだな、しっかり食わせよう。
だいたい喰えないから冒険者になるのかもしれんわな。
「ちなみにマレーネはいくつなんだ?」
何気なく聞いてみたんだが。
「え?十五です。」
「はあ?ミシェルと同じ年?」
「はい。」
「冗談だろ!なにこのほそっこい腕。おまえ、メシ喰ってるのか?」
「あ、たまにないときも…」
「ない時の方が多いだろう!ええっと…これ!これかじりながら歩け!」
俺は干し肉と、固パン(ビスケットみたいなやつ)を出して、マレーネに持たせた。
「あ、あの…」
「だまって喰え!」
「はい~。」
「ミシェル、お前知ってたな。」
「あ、うん…」
「どう言うことか説明しろ。」
「あいつんち、親父がケガして働けなくなって、母ちゃんが逃げて…」
「わかった、全部言わなくていい。くそ親父には後で話つける。」
「はい…」
「ジャック、マルソー、予定が変わった。ウサギ十匹だ。」
「あいよ。」
「ヨールがいなくてよかった。」
「そうだな、こんな話聞いたら、ヨールの奴・涙でウサギが見えない。」
「ちげえねえ。」
ジャックとマルソーは、腹を抱えて笑った。
「サーチ」
俺は、風魔法にサーチと名付けた。
ま~パッシブソナーだと思えば、あながち間違いでもないしな。
ぴこ~ん
「いた、ウサギ三匹、あっち方向だ。」
「了解!」
ジャックが体を低くした。
「穴掘るぞ、マルソー見張ってくれ、ミシェル・マレーネ、頭を低くしろ。」
マレーネは、干し肉を噛みながらうずくまった。
がぼん
目の前に一メートル四方の穴が開く。
深さは一メートル半。
「すごい、どうやったんですか?」
「あとで教えてやる。あっち方向をよく見てろ。」
「「はい。」」
若い二人は、伏せながら目を向けた。
「ふっ!」
俺は、足元にあった石を、ウサギに向かって投げる。
かきん!
好い音がして、ウサギは振り返った。
「あはは、ピキマーク貼り付けて怒ってるぜ。」
「そりゃまあ、俺でも怒ると思うぞ。」
油断なく構えて、マルソーも笑う。
不敵な面構えになってきたもんだ。
ジャックとマルソーは、槍を低く構えている。
ざざざざざざざざっざざっ
草をかき分けて、ウサギが飛んできた。
「ば~かば~か~!」
俺は手を振って、ウサギを呼ぶ。
二匹目はまだ向こうだ、三匹目も遠い。
「きたぞ、一撃で喉を突け!」
「おうさ!」
ジャックが吼える。
ざざ!
ウサギが草むらから飛び出してきた。
「ほい!」
俺は穴の前から横に飛ぶ。
がす!
土に当たったとは思えないような音がした。
「へへへ、大きめの石があったから、壁に固めておいたんだよ。」
その石に、みごとにクリーンヒットした。
ウサギは鼻血を吹きながら穴に落ちた。
「それ!」
ジャックが、上から槍で喉を裂く。
「ぎゅう」
短い声とともに、ウサギは絶命した。
「次・来るぞ!」
すでにサーチにかかっているウサギ二匹目は、長い前歯をかざして走り寄る。
「こい!」
俺は、メイスを上段に構えた。
ざざ!
「チェストオ!」
ごきい!
ウサギの額は陥没して、目が飛び出した。
「三匹目、くるぞ!」
「うひょおおおお!」
マルソーも、おどけて手を振りながら踊る。
なんの踊りだ?
飛びついて来たのは、角付きだった。
「ひょえ!」
これも、横に跳んだマルソーの声だ。
角ウサギは、やはり壁の石に頭をぶつけて、朦朧としている。
「マルソー。」
「ほいな。」
ぶっすし!
「すごい、ウサギ三匹があっという間に。」
「ほえ~。もぐもぐ。」
俺は、ウサギを穴から引きずり出して、木の枝につるす。
「なに?」
マレーネが首をかしげる。
「血抜きだ。これをしないと、肉が生臭くて喰えなくなる。」
言いながら、ロープを引っ張る。
「お、おれも手伝う。」
「おうさ、頼むぜ。」
マルソーに呼ばれて、ミシェルはロープに手を出した。
「重い~。」
「当たり前だよ、人間くれえあるんだから。」
「あ、あたしも手伝う。」
二人は、ウサギと言う現実に向き合った。
見ると聞くとでは大違い、ウサギは確かに重かった。
「これが、生活の重さだよ。」
マルソーが言う。
「お?先生、言うじゃないか。」
「マルソーは詩人だからなあ。」
「おまえら…」
また、サーチに引っかかった。
「おう、まだいるぞ。」
「なに?」
今度は反対側だ。
ウサギってやつは、交尾時期が年三回あって、交尾したのち排卵がある。
だから、一〇〇%大当たりなんだ。
しかも、だいたい二~三匹生まれる。
そりゃあ減るわけがないんだ。
「大物だな!五〇キロはあるぜ。」
「ユフラテ、どうする?」
「ガベが反対向きだ、俺に任せろ。」
「まかせた!」
俺は、メイスを青眼に構えた。
かきん!
ウサギは、顎を叩かれて意識が飛んだ。
「ミシェル、その剣で喉を突け!」
「は、はい!」
ぐさぐさ
「腰が引けてる、もっと右足を踏みこんで、ぐっさり刺すんだ!」
「ううう!」
それでも、喉を切り裂いて、ウサギにとどめをさした。
「うん、もういないな。」
俺は、穴を埋めて立ち上がる。
「いいか、マレーネ、これは土ボコの大きいのだ。」
「土ボコって、これ?」
マレーネは、目の前の地面を盛り上げて見せた。
「おお、できるのか。よしよし、これを練習で徐々に大きくするんだ。」
「はあ…」
「土ボコの土は、どこから来る?」
「え?どこから…」
「もう一遍やってみろ。」
「はい…あ、周りから土が集まってる。」
「そうだ、それを下から集めることができる。」
「へ?」
「こうだ。」
俺は、ゆっくり上下の土ボコを移動させて見せた。
「ああ、穴があいてる!」
「そうだ、土ボコには方向ってものがあるんだ、それを頭でよく考える。魔法はイメージを具現化するんだ。」
「ぐ、ぐげ?」
「あ~、頭で考えたことを形にする。」
「わかりました。」
「お前が落とし穴を掘る、ウサギが落ちる、ミシェルが止め刺す。オーケー?」
こくこく
(なんでカタコトなんだろう?)
「ミシェル、どうだ相手がウサギでも、度胸がいるだろう。」
「はい。」
「そこで腰が引けるから、手が前に出なくて傷が浅くなる。やるときは、利き足を前に出して、一気にブッ刺すんだぞ。」
「はい!」
ジャックが横から声をかけた。
「ユフラテ師匠の説明は、わかりやすいだろ。」
「はい、よくわかりました。」
「俺も叱られた。」
「え~?」
「俺もマルソーも、やっぱ腰が引けてたから、何度も剣で刺してたんだ。」
「へ~。」
「一日中、突きの練習させられたよなあ。」
「練習は裏切らない、やったこともない技なんか、でるわっきゃないだろう。」
俺は、ミシェルに聞こえるように言った。
「そのとおり。おかげで、一日一〇〇〇本突けるようになった。」
「せ、せんぼんですか?」
「お前も、できるようになるんだ。」
「俺が?」
「お前ができないと、マレーネは死ぬぞ。」
「ごくり」
「だって、マレーネを守れるのはお前しかいないじゃないか。」
こくり
ミシェルは頷いて見せた。
数日後
「おはようございます。」
俺が冒険者ギルドに顔を出すと、マリエの元気な声が聞こえた。
「あ…ああ、おはようございます。マリエ、結婚したんじゃないのか?」
「ええ、結婚したけど?」
「なんでここにいるの?」
「だって、働かなきゃ食べていけないでしょう?」
「しばらくは共働きで行くのか?」
「ええ、ギルドもいまが大変なときだし。」
「そうか、これお祝いだ、弟たちになにか甘いもんでも食わしてやって。」
オレは、銀貨の入った袋を出した。
「いただけないわよ、こんなに。」
「まあ、気は心だ、気にするな。オレが結婚したら倍にしてくれ。」
「ばかねえ。」
「大工の女房が外で働いてて、仕事回るのか?」
「まあ、まだ親方の下で働いているうちは大丈夫よ。」
「そんなもんかねえ?おっと、じゃあ狩りに行ってくるよ。」
「はい、大物獲れるといいわね、行ってらっしゃい。」
俺は、ギルドの中でうろうろしているメンツを見回した。
「ユフラテさん!今日はオレを連れて行ってくれ!」
元気な声が聞こえた。
「ああ?だれよ。」
「メルシー横丁のミシェルです。」
「へ~、若いな~、いくつなんだ?」
「十五」
「成人したてか~、武器はなに持ってる?」
ミシェルはショートソードを見せた。
「ふ~ん。」
俺はそいつを抜いてみたが、鋳型に流した安物だ。
「こりゃあ、研ぎが必要だな、どこで買った?」
「ランドさんの店ですが…」
「野郎、子供だと思って安物出しやがって、おもちゃじゃねえぞ。」
「ひう。」
オレが静かに怒っていると、ミシェルの後ろで声がした。
「なんだ?」
「ままマレーネですぅ~」
「マママレーネ?」
ミシェルより背の低い女の子だ。
すっげえ痩せて、ひょろりとした女の子だ。
顔もあんまりいい色してないな…
青白いって感じだが。
「いえ、この子はマレーネ。近所の子ですが、冒険者になりたくて着いてきたんです。」
「そうか、十二歳から登録はできるからな、やってみてだめなら考えりゃいいさ。」
「ははい。」
俺は、二人を連れて裏に回った。
そこにはジャックとマルソーが、武器の手入れをしている。
井戸があるから、ここで武器を研ぐ。
汗をかいたら水をかぶったりもする。
研ぎ台にはジャックが陣取ってショートソードを研いでいる。
「おはようジャック、隣空いてるか?」
「ああおはよう、俺たちだけだ。」
「おはようマルソー、せいが出るな。」
「おはよう、まあこいつに命預けているからな。」
マルソーは、研ぎ石に目を落としつつ答えた。
研ぎ間違うと、いっそう切れない剣になっちまう。
「ちげえねえ。」
二人は後ろの子供たちに気がついた。
「なんだ、今日はちっこいの連れてるな。」
「ミシェルとマレーネだ、冒険者なりたてのホヤホヤだ。」
「そうか、俺はジャック、ユフラテに指導を頼むなんざ目利きだな。」
ミシェルは目を輝かせた。
「ミシェルです、よろしくお願いします。」
「マレーネです。」
俺は、砥石を手に取ると、ミシェルの剣を研ぎはじめた。
横からジャックが覗く。
「なんだ雑な作りだな、銅貨五枚くらいか?」
「え?銀貨一枚ですけど。」
「なんだと!ランドめ子供だと思ってぼったくりやがって!後で〆てやる。」
ジャックは、目を吊り上げた。
「あ・あの」
「まあいい、そいつはジャックに任せとけ。」
俺は、荒砥ぎをして、剣筋を見た。
「まあ、歪んではいないが、くれぐれも横に叩くなよ。折れるから。」
「ええ?じゃあどうすれば?」
「突く専門で使えば、まあしばらくは使える。」
「はい。」
俺は、マルソーに顔を向けた。
「今日は一緒に行けるか?」
「ああ、いいよ。」
「オレもいいぜ。」
二人も研げた剣を見ながら言う。
オレも腰を上げた。
「よし、まあナマクラぐらいは切れるようになった、しまっとけ。」
「はいっ」
「いい返事だ。」
オレはニカッと笑って見せた。
「マレーネは魔法使いか?」
「水と土を…」
「ほう、なかなかやるな。」
オレが言うと、はにかんでみせた。
「ジャック、荷車借りてあるか?」
「ああ、一番に取った。」
「じゃあ、これ。」
オレはポケットから銅貨三枚を渡した。
「あいよ、受けた。」
冒険者はなんでも山分けが基本だ。
出すときも人数割り。
今日は、二人の分も出してやる。
背中のブロードソードは使ったことがないが、お守り代わりだ。
基本、メイスでぶったたく。
短刀で止めを刺す。
そんなスタイルでやっている。
荷車を引きながら、そんな話をする。
しかしマレーネは十三にしてはちっこいな、食べてるのか?
腕も細っこいし、あまり食料事情がよくないようだな、しっかり食わせよう。
だいたい喰えないから冒険者になるのかもしれんわな。
「ちなみにマレーネはいくつなんだ?」
何気なく聞いてみたんだが。
「え?十五です。」
「はあ?ミシェルと同じ年?」
「はい。」
「冗談だろ!なにこのほそっこい腕。おまえ、メシ喰ってるのか?」
「あ、たまにないときも…」
「ない時の方が多いだろう!ええっと…これ!これかじりながら歩け!」
俺は干し肉と、固パン(ビスケットみたいなやつ)を出して、マレーネに持たせた。
「あ、あの…」
「だまって喰え!」
「はい~。」
「ミシェル、お前知ってたな。」
「あ、うん…」
「どう言うことか説明しろ。」
「あいつんち、親父がケガして働けなくなって、母ちゃんが逃げて…」
「わかった、全部言わなくていい。くそ親父には後で話つける。」
「はい…」
「ジャック、マルソー、予定が変わった。ウサギ十匹だ。」
「あいよ。」
「ヨールがいなくてよかった。」
「そうだな、こんな話聞いたら、ヨールの奴・涙でウサギが見えない。」
「ちげえねえ。」
ジャックとマルソーは、腹を抱えて笑った。
「サーチ」
俺は、風魔法にサーチと名付けた。
ま~パッシブソナーだと思えば、あながち間違いでもないしな。
ぴこ~ん
「いた、ウサギ三匹、あっち方向だ。」
「了解!」
ジャックが体を低くした。
「穴掘るぞ、マルソー見張ってくれ、ミシェル・マレーネ、頭を低くしろ。」
マレーネは、干し肉を噛みながらうずくまった。
がぼん
目の前に一メートル四方の穴が開く。
深さは一メートル半。
「すごい、どうやったんですか?」
「あとで教えてやる。あっち方向をよく見てろ。」
「「はい。」」
若い二人は、伏せながら目を向けた。
「ふっ!」
俺は、足元にあった石を、ウサギに向かって投げる。
かきん!
好い音がして、ウサギは振り返った。
「あはは、ピキマーク貼り付けて怒ってるぜ。」
「そりゃまあ、俺でも怒ると思うぞ。」
油断なく構えて、マルソーも笑う。
不敵な面構えになってきたもんだ。
ジャックとマルソーは、槍を低く構えている。
ざざざざざざざざっざざっ
草をかき分けて、ウサギが飛んできた。
「ば~かば~か~!」
俺は手を振って、ウサギを呼ぶ。
二匹目はまだ向こうだ、三匹目も遠い。
「きたぞ、一撃で喉を突け!」
「おうさ!」
ジャックが吼える。
ざざ!
ウサギが草むらから飛び出してきた。
「ほい!」
俺は穴の前から横に飛ぶ。
がす!
土に当たったとは思えないような音がした。
「へへへ、大きめの石があったから、壁に固めておいたんだよ。」
その石に、みごとにクリーンヒットした。
ウサギは鼻血を吹きながら穴に落ちた。
「それ!」
ジャックが、上から槍で喉を裂く。
「ぎゅう」
短い声とともに、ウサギは絶命した。
「次・来るぞ!」
すでにサーチにかかっているウサギ二匹目は、長い前歯をかざして走り寄る。
「こい!」
俺は、メイスを上段に構えた。
ざざ!
「チェストオ!」
ごきい!
ウサギの額は陥没して、目が飛び出した。
「三匹目、くるぞ!」
「うひょおおおお!」
マルソーも、おどけて手を振りながら踊る。
なんの踊りだ?
飛びついて来たのは、角付きだった。
「ひょえ!」
これも、横に跳んだマルソーの声だ。
角ウサギは、やはり壁の石に頭をぶつけて、朦朧としている。
「マルソー。」
「ほいな。」
ぶっすし!
「すごい、ウサギ三匹があっという間に。」
「ほえ~。もぐもぐ。」
俺は、ウサギを穴から引きずり出して、木の枝につるす。
「なに?」
マレーネが首をかしげる。
「血抜きだ。これをしないと、肉が生臭くて喰えなくなる。」
言いながら、ロープを引っ張る。
「お、おれも手伝う。」
「おうさ、頼むぜ。」
マルソーに呼ばれて、ミシェルはロープに手を出した。
「重い~。」
「当たり前だよ、人間くれえあるんだから。」
「あ、あたしも手伝う。」
二人は、ウサギと言う現実に向き合った。
見ると聞くとでは大違い、ウサギは確かに重かった。
「これが、生活の重さだよ。」
マルソーが言う。
「お?先生、言うじゃないか。」
「マルソーは詩人だからなあ。」
「おまえら…」
また、サーチに引っかかった。
「おう、まだいるぞ。」
「なに?」
今度は反対側だ。
ウサギってやつは、交尾時期が年三回あって、交尾したのち排卵がある。
だから、一〇〇%大当たりなんだ。
しかも、だいたい二~三匹生まれる。
そりゃあ減るわけがないんだ。
「大物だな!五〇キロはあるぜ。」
「ユフラテ、どうする?」
「ガベが反対向きだ、俺に任せろ。」
「まかせた!」
俺は、メイスを青眼に構えた。
かきん!
ウサギは、顎を叩かれて意識が飛んだ。
「ミシェル、その剣で喉を突け!」
「は、はい!」
ぐさぐさ
「腰が引けてる、もっと右足を踏みこんで、ぐっさり刺すんだ!」
「ううう!」
それでも、喉を切り裂いて、ウサギにとどめをさした。
「うん、もういないな。」
俺は、穴を埋めて立ち上がる。
「いいか、マレーネ、これは土ボコの大きいのだ。」
「土ボコって、これ?」
マレーネは、目の前の地面を盛り上げて見せた。
「おお、できるのか。よしよし、これを練習で徐々に大きくするんだ。」
「はあ…」
「土ボコの土は、どこから来る?」
「え?どこから…」
「もう一遍やってみろ。」
「はい…あ、周りから土が集まってる。」
「そうだ、それを下から集めることができる。」
「へ?」
「こうだ。」
俺は、ゆっくり上下の土ボコを移動させて見せた。
「ああ、穴があいてる!」
「そうだ、土ボコには方向ってものがあるんだ、それを頭でよく考える。魔法はイメージを具現化するんだ。」
「ぐ、ぐげ?」
「あ~、頭で考えたことを形にする。」
「わかりました。」
「お前が落とし穴を掘る、ウサギが落ちる、ミシェルが止め刺す。オーケー?」
こくこく
(なんでカタコトなんだろう?)
「ミシェル、どうだ相手がウサギでも、度胸がいるだろう。」
「はい。」
「そこで腰が引けるから、手が前に出なくて傷が浅くなる。やるときは、利き足を前に出して、一気にブッ刺すんだぞ。」
「はい!」
ジャックが横から声をかけた。
「ユフラテ師匠の説明は、わかりやすいだろ。」
「はい、よくわかりました。」
「俺も叱られた。」
「え~?」
「俺もマルソーも、やっぱ腰が引けてたから、何度も剣で刺してたんだ。」
「へ~。」
「一日中、突きの練習させられたよなあ。」
「練習は裏切らない、やったこともない技なんか、でるわっきゃないだろう。」
俺は、ミシェルに聞こえるように言った。
「そのとおり。おかげで、一日一〇〇〇本突けるようになった。」
「せ、せんぼんですか?」
「お前も、できるようになるんだ。」
「俺が?」
「お前ができないと、マレーネは死ぬぞ。」
「ごくり」
「だって、マレーネを守れるのはお前しかいないじゃないか。」
こくり
ミシェルは頷いて見せた。
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軟派で無能な侯爵令息を装い、妹の対抗馬である庶民出身のテレサ嬢を支援したり、裏でいろいろ画策していた。
しかし、リトスの完璧な計画は、国外から招聘された有名な魔術師レイヴンによって徐々に暴かれていく。
リトスとレイヴン、二人の【星瞳の魔術師】が織りなす、オリジナル世界観の異世界ファンタジー物語。
※女性向けハイファンタジー&ブロマンス作品です
恋愛がメインではないので既存の女性向けカテゴリに分類できず・・主役二人の関係性はBLに近いです。
主人公最強、かつ相方も最強で、対等に戦うライバル&相棒です。
主役二人が水戸黄門よろしく事件を恰好よく解決していくお話になります。いっそ文芸の方がいいのかも?
※カクヨム、エブリスタ、Talesで連載中。掲載サイトによって進行がちがいます。
また、番外編の掲載の仕方も各サイトの仕様に合わせて変えています。
自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
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