メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井

文字の大きさ
15 / 237
第三植民惑星ポーラ

しおりを挟む
 口先から頬を通った後頭部に繋がっている動力パイプが見えた。呼吸装置も兼ねているのか、ヒューヒューという音が聞こえてくる。他には特徴的な丸みを帯びた兜に他の『ロトワング』と異なり、シンプルなデザインの装甲が特徴的だった。

 敢えて特徴を挙げるとすれば右肩に付いている大きな棘の付いた肩鎧だろう。
 だが、そんなことはどうでも良かった。
 修也は嫌な性格をした人物とはいえ人をあっさりと殺した『ロトワング』の装着者に抗議の言葉を浴びせた。

「ひ、ひどい。どうしてこんなことを!?」

 だが、相手からの返答はなかった。当然である。目の前にいるのは
 代わりに修也はビームライフルを突きつけられた。

 この時咄嗟にその場から飛び上がらなければ目の前の『ロトワング』が構えたビームライフルからの熱線が修也を溶かしていたことだろう。

「お願いです! どうか私の話を聞いてくださいッ!」

 修也は必死になって相手へと訴え掛けた。だが、返事は先ほどと同じだった。ビームライフルの熱線が修也を襲っていった。
 は熱線を避けることができたのは運が良かったからだ。

「や、やめてくれ! 我々は同じ理性を持った人間だッ! なら話し合うことができるはずだろ!?」

 修也は必死になって説得を試みていた。目の前にいるのは恐ろしい異星獣でもなければ話し合いが通じない蛮族でもない。同じ知性を持った人間なのだ。
 それ故に話し合うことができるはずだと修也は固く信じていた。

 だが、熱線が右耳を掠めた時、修也は目の前にいる相手には話し合いなどは通じないのだとようやく悟った。
 それならば多少は荒療治ではあったとしても殴って目を覚まさせるしかない。
 修也は戦うための決意を固めた。

 修也はカプセルトイからパワードスーツを取り出して身に纏っていった。
 今将軍の前にいるのは先ほどまでの情けない姿を見せる中年男性ではなく、自身の部下が乗ったヘリを撃ち落とした騎士だった。

 琥珀色の兜にメタリックな銀色の装甲を纏った美しい騎士の姿が見えた。
 ユー将軍は思わず感嘆の声を上げた。

「う、美しい。まさかまだこの宇宙にこのようなパワードスーツがあったとは」

 できることならばずっと見つめていたい気持ちだった。
 だが、そんなことは修也が許さなかった。修也は腰に下げているレーザーガンを突き付けていき、躊躇うことなく引き金を引いた。

 黒色の『ロトワング』を身に纏ったユー将軍は咄嗟に身を翻して交わしたものの、右側の兜部分の装甲が微かに外れていることに気が付いた。
 どうやら修也の放った熱線が自身の兜の右側を掠めたらしい。まさしくプロ並みの腕前であった。

 もし彼が自軍にいれば大きな戦力となるだろう。先ほどの戦闘でシャルルは討ち取った。そのためもう危惧するものなど何もないのだが、それでも防備を固めておくに越したことはない。

 ユー将軍は計画通りに作戦を進めることにした。わざと退却を行い、修也をこの開拓地の周辺に広がっている深い森の中へと誘き寄せたのであった。

「待てッ!」

 怒りの感情に囚われた修也がレーザーガンを片手にユー将軍を追い掛けていた。
 背後から熱線が発射され、逃亡するユー将軍の近くにあった木が熱に溶かされていったが、ユー将軍の気にするところではない。

 パワードスーツの強靭な両足によって森の中にある葉や土を踏む音が聞こえてきた。森の奥深くまで修也を誘き寄せた。
 だが、逃げるのもここまでだ。ユー将軍は身を隠し、修也を翻弄していった。

「クソッ! どこに逃げた!?」

 自分でも信じられないほどの口汚い言葉を叫んだ後に修也はレーザーガンを宙の上に掲げて二度三度と発射していく。意味のない行動であることは修也本人が一番分かっていた。
 だが、自身の中に溜まった鬱憤を晴らすためにはこれが一番だったのだ。

 狙い通り修也は落ち着きを取り戻した。同時に今の自身が途方もない不利な状況に置かれているということを理解した。
 修也は敵の懐の中に踏み込んでしまったのである。もし、この周辺に敵が潜んでいたとすれば自分は蜂の巣になってしまう。

 慌ててその場から立ち去ろうとした時だ。目の前の草むらがガサガサと動き出した。修也は音のした方向に向かって咄嗟にレーザーガンを構えると、そこには先ほどの黒色に塗られた『ロトワング』の姿が見えた。

 黒色に塗られた『ロトワング』は無言でビームライフルを構えている。勝負としては五分と五分といったところだろうか。

 修也はレーザーガンの引き金を引いてしまいたかった。もちろん急所を狙うつもりはない。あくまでも相手のロトワングを破壊して戦力を奪うだけのつもりだ。
 修也が引き金を当てる手に力を込めた時のことだ。

「キミかね? 昨日我々の所有するヘリを撃ち落とした男というのは?」

 相手が装着している『ロトワング』の無線の中には翻訳機能が内蔵されているのだろう。修也の耳には黒色のロトワングを纏った男の声が流暢な日本語に聞こえた。

「そ、そうだ。あんたは誰だ?」

「申し遅れた。私の名前はモーリス・ユー。悪逆非道なポーラの総督に反旗を翻した誇り高きフランス人の名前だ」

「フランス人? 惑星ポーラにフランスはないぞ」

「私はフランスの出身でね。外国にいようが、他の惑星にいようがついそう名乗ったしまうのだ。許してくれたまえ」

「許すも許さないもないさ。それよりもどうしてこんなことをしたんだ?」

 修也は詰めるように問い掛けた。その口調はまるで悪事の現場を暴いた教師が生徒を問い詰めるかのような声だった。
 これまで多くの戦闘を積み重ねてきたユー将軍にとっては屈辱的に感じたに違いない。

 だが、ユー将軍は寛大な気持ちで修也の非礼を許し、質問に答えてやることにした。

「決まっているだろう? シャルル・シャロンの独裁体制を打破するためだッ!」

「独裁体制?」

「その通りだ。シャルルは独裁者だッ!あの野郎はヒトラーやスターリン、イディ・アミンにも劣るゲス野郎なんだッ!」

 世界史の中でもとりわけ強く批判されがちである面子と並べられるシャルル・シャンソンというのはどのような男なのだろう。
 修也は気になって仕方がなかった。

「……よろしければ教えてください。シャルル・シャロンが何をしたのかということを」

「よかろう。あの男は地球から支配権を渡されたという理由でロケットの装備を己と己の家族の持ち家としたんだ。あのロケットは本来であるのならばみんなで使うべきものだというのに……」

 修也にシャルルのことを語る際にユー将軍は感情的になったのだろう。握り拳を作ってプルプルと震わせていた。

「第二の理由として裏金だ。奴は金を隠し持っている」

「えっ?金を?」

「あぁ、日本円やフラン、ドルといった地球の金をな。奴はその金で奴個人で持ち込んだと思われるテレビ電話を利用して奴個人の贅沢品を密輸していたんだ」

「じゃ、じゃあ採掘したルビーの何割かは……」

「奴が換金したよ。我々には分け前もよこさずにな……」

「では、あなた方はそのことに不満を感じて反乱を?」

「いいや、それだけではない。奴に逆らうことになった決定的なきっかけがあった」

 ユー将軍は人差し指を掲げながら言った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

処理中です...