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皇帝の星『オクタヴィル』
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「およしなさい。何があったのかは知りませんが、大人が子どもに向かって理不尽な暴力を振るうなどあってはならないと思いますよ」
修也は強い目で幼い少女を丸太のように大きな拳で殴り付けようとした男を睨み付けながら言った。それでもその口調は子どもを諭すかのように穏やかであった。
ダコティアヌ帝国語が喋ることができぬ修也が発した警告の言葉は当然ながら日本語である。それ故男に言葉が伝わるはずはなかった。
だが、修也の放つ剣幕から修也が何を言いたいのかは察したらしい。
彼はダクティアナ帝国語で修也を睨み付けながら言った。
「退け、貴様のような化け物には分からんだろうが、人間には人間のルールがあるんだ。貴様には分からんだろうが、その小娘はおれの妻でありながらオレを侮辱した。それ故に罰を喰らわせてやるんだ。分かったら退け」
威圧感を交えての忠告を発したので、いかに他の星から来た男であったとしても体の全身から放たれる殺気に怯え、皇女を見捨てて逃げるはずだ。
だが、目の前にいる男は予想に反して逃げようとはしなかった。それどころか歯を食いしばりながら、キッと両目を見開きながら男を睨み付けていた。
(……ッ!こいつッ!)
男の両頬はまだら色に染め上がっていった。彼の心の中に生じた怒りの念は炎のように高く燃え上がっていった。
そして男は勢いに乗ったまま修也を殴り飛ばそうとした。
「待てッ!」
と、背後から声が聞こえてきた。男が振り返ると、そこには激昂した様子の皇帝が男をジッと睨んでいた。
ダクティアナ帝国最高の権力者に睨まれればさしもの男であっても怯えの感情を感じずにはいられなかったらしい。
拳を下ろし、皇帝を見つめていた。
「ヒードルを倒した英雄とはいえ空より来た使節に暴力を加えてよいなどという権利はなかったぞ」
「しかし陛下」
「黙れッ! 下郎! 今喋っているのはわしだ! ダクティアナ帝国皇帝デ・ラナであるぞッ!」
より正確にいえばデ・ラナ二世である。彼の父親がデ・ラナ一世であったのでその名前をそのまま受け継いだ息子の彼は二世となっているのだ。
「も、申し訳ありませんぬ」
男は深く頭を下げながら謝罪の言葉を口に出した。いかに男といえども皇帝の持つ権威の前には逆らえないらしい。
「この場はここに侵入したガーゴイルを討伐したということであの男を許してやれ、ラ・レクスよ」
皇帝から命令されればラ・レクスは従わざるを得なかった。
ラ・レクスは両肩を強張らせそのまま頭を下げて部屋を後にしていった。
だが、去り際に修也をギロっと睨むのも忘れていなかった。
ギリシャ神話に登場する伝説の英雄ヘラクレスを彷彿とさせるような凄まじい筋肉を持つ男から睨まれてしまえば修也としても両肩を強張らせざるを得なかった。
修也が完全に密閉した二重扉を唖然とした様子で見つめていた時だ。
自身の裾を強く引っ張られていたことに気が付いた。背後を振り返ると、そこには修也自身の手で守り抜いた幼い少女の姿が見えた。
「どうしたのかな?」
修也はアハハと困ったような笑みを浮かべながら幼い皇女に向かって問い掛けた。
当然ながら修也の発した言葉は日本語である。幼い皇女に理解できるはずがなかった。
だが、幼い皇女はそんなことは気にも留めず小さく頭を下げて言った。
「先ほどは助けていただきありがとうございます。私はダクティアナ帝国の第二皇女でデ・レマと申します。以後お見知り置きを」
幼い皇女の言葉は当然ながら修也には届かない。
だが、それでも真剣に何かを訴え、最後の方では自身に向かって丁寧な一礼を行うレマの姿から修也は彼女が何を言いたいのかを察せられた。
修也は何も言わなかった。言葉が通じなかったかったのでどのように返せばいいのか分からなかったからだ。
代わりにデ・レマに対し黙って頭を下げた。そして優しく微笑んでみせた。デ・レマはその時の修也の顔からは「どういたしまして」という彼の返事が浮かんで見えたような気がした。
デ・レマはその姿を見て黙って微笑み返した。慈父のような笑みに対して皇女としての微笑みではなく、年相応の子どもとしての笑みを返すことこそが今自分が与えられる精一杯の褒美だと考えたのだ。
本来であるのならば自身を二度も助けてくれた英雄に対してその頬に対して口付けでも与えたかったのだが、それを実行に移せば父親がどのような行動に出るのかを知らなかったわけではなかったのだ。
修也が微笑ましい気持ちになって見つめていると、修也の前にヘ・リーマとジョウジの両名が姿を現した。
「失礼致します。オオツ様。本日の夕食はこれで終了となります。陛下は翌日のお昼に改めて会談をご希望なされているということですので、また出直しを願います」
「は、はい。了解致しました」
以上のやり取りは全てジョウジ一人の通訳によって担われていた。
修也と二人のアンドロイドはそのままヘ・リーマの案内で部屋に戻されていった。
部屋の中に戻った修也はヘ・リーマと彼が呼んだメイドたちの手で衣装を返却される羽目になった。
中世の衣装を思わせる堅苦しい服から元の宇宙服へと着替え終えると、修也は用意されていたベッドの上に腰を掛けた。そこでようやくホッとして小さく溜息を吐いていった。
寝心地を優先されて作られたベッドマッドであるのか、少し体の負担を掛けただけで修也の掌が真っ白なシーツが敷かれたベッドマットの中へと沈んでいった。
修也は自身の掌が沈んで掌のクレーターを作っている姿を見て、自身の体全体もベッドマットの中に沈ませようと考えたのだろう。そのまま体をベッドの上に預け、大の字に手足を伸ばして休んでいた。
ジョウジはその横、窓際の席で何も言わずに暗くなり何も見えなくなった窓の外を見つめていた。
「ジョウジさん何をやっているんですか?あなたもお疲れでしょうし、今日のところは休んだ方がいいですよ」
「大津さん、少し妙だとは思いませんか?」
ジョウジがいつになく神妙な顔を顔を浮かべて言った。
「妙と言いますと?」
「今日の夕食会です。夕食会の最中にガーゴイルなるこの星の凶悪な動物が乱入したことは覚えていますよね?」
「もちろんです。それを私が倒しましたね」
「えぇ、ですが、あのガーゴイル。本当はあのラ・レクスなる男が倒す予定だったというのならば?」
どうやらあの英雄ヘラクレスを思わせるような素晴らしい筋肉を持った男の名はラ・レクスというらしい。
ますます英雄に相応しいような名前だ。
修也が腕を組んでうんうんと唸っていた時だ。
「大津さん、私の話聞いてますか?」
ジョウジの忠告を聞いて修也は頭の中で考えていたことが大きく逸れたことを思い出し、大きく空咳を行なって話を本筋に戻した。
「つまり、ラ・レクスは自作自演で皇帝一家の危機を救おうとしていたと?」
「そうなります。恐らくデ・レマ皇女との婚約を円滑に進ませるための舞台装置としてどこからか放ったのでしょう。ガーゴイルに皇帝一家や重臣たちを襲わせ、十分に恐怖を味合わせたところでガーゴイルを倒して自身の存在をアピールするというものだと考えられます」
ジョウジの言葉は理にかなっていた。バラバラだったはずの点と線が繋がったように思えた。
「それは明日皇帝に話した方がよろしいでしょうか?」
「今日の会談を見た限り皇帝はラ・レクスという男を嫌っておりますので話した方がプラスに働くような気はしますね」
頭に内蔵されているコンピュータから計算を導き出すジョウジが言うのならば間違いはあるまい。修也はこの事実を明日の会談で皇帝に話してやることに決めた。
修也は強い目で幼い少女を丸太のように大きな拳で殴り付けようとした男を睨み付けながら言った。それでもその口調は子どもを諭すかのように穏やかであった。
ダコティアヌ帝国語が喋ることができぬ修也が発した警告の言葉は当然ながら日本語である。それ故男に言葉が伝わるはずはなかった。
だが、修也の放つ剣幕から修也が何を言いたいのかは察したらしい。
彼はダクティアナ帝国語で修也を睨み付けながら言った。
「退け、貴様のような化け物には分からんだろうが、人間には人間のルールがあるんだ。貴様には分からんだろうが、その小娘はおれの妻でありながらオレを侮辱した。それ故に罰を喰らわせてやるんだ。分かったら退け」
威圧感を交えての忠告を発したので、いかに他の星から来た男であったとしても体の全身から放たれる殺気に怯え、皇女を見捨てて逃げるはずだ。
だが、目の前にいる男は予想に反して逃げようとはしなかった。それどころか歯を食いしばりながら、キッと両目を見開きながら男を睨み付けていた。
(……ッ!こいつッ!)
男の両頬はまだら色に染め上がっていった。彼の心の中に生じた怒りの念は炎のように高く燃え上がっていった。
そして男は勢いに乗ったまま修也を殴り飛ばそうとした。
「待てッ!」
と、背後から声が聞こえてきた。男が振り返ると、そこには激昂した様子の皇帝が男をジッと睨んでいた。
ダクティアナ帝国最高の権力者に睨まれればさしもの男であっても怯えの感情を感じずにはいられなかったらしい。
拳を下ろし、皇帝を見つめていた。
「ヒードルを倒した英雄とはいえ空より来た使節に暴力を加えてよいなどという権利はなかったぞ」
「しかし陛下」
「黙れッ! 下郎! 今喋っているのはわしだ! ダクティアナ帝国皇帝デ・ラナであるぞッ!」
より正確にいえばデ・ラナ二世である。彼の父親がデ・ラナ一世であったのでその名前をそのまま受け継いだ息子の彼は二世となっているのだ。
「も、申し訳ありませんぬ」
男は深く頭を下げながら謝罪の言葉を口に出した。いかに男といえども皇帝の持つ権威の前には逆らえないらしい。
「この場はここに侵入したガーゴイルを討伐したということであの男を許してやれ、ラ・レクスよ」
皇帝から命令されればラ・レクスは従わざるを得なかった。
ラ・レクスは両肩を強張らせそのまま頭を下げて部屋を後にしていった。
だが、去り際に修也をギロっと睨むのも忘れていなかった。
ギリシャ神話に登場する伝説の英雄ヘラクレスを彷彿とさせるような凄まじい筋肉を持つ男から睨まれてしまえば修也としても両肩を強張らせざるを得なかった。
修也が完全に密閉した二重扉を唖然とした様子で見つめていた時だ。
自身の裾を強く引っ張られていたことに気が付いた。背後を振り返ると、そこには修也自身の手で守り抜いた幼い少女の姿が見えた。
「どうしたのかな?」
修也はアハハと困ったような笑みを浮かべながら幼い皇女に向かって問い掛けた。
当然ながら修也の発した言葉は日本語である。幼い皇女に理解できるはずがなかった。
だが、幼い皇女はそんなことは気にも留めず小さく頭を下げて言った。
「先ほどは助けていただきありがとうございます。私はダクティアナ帝国の第二皇女でデ・レマと申します。以後お見知り置きを」
幼い皇女の言葉は当然ながら修也には届かない。
だが、それでも真剣に何かを訴え、最後の方では自身に向かって丁寧な一礼を行うレマの姿から修也は彼女が何を言いたいのかを察せられた。
修也は何も言わなかった。言葉が通じなかったかったのでどのように返せばいいのか分からなかったからだ。
代わりにデ・レマに対し黙って頭を下げた。そして優しく微笑んでみせた。デ・レマはその時の修也の顔からは「どういたしまして」という彼の返事が浮かんで見えたような気がした。
デ・レマはその姿を見て黙って微笑み返した。慈父のような笑みに対して皇女としての微笑みではなく、年相応の子どもとしての笑みを返すことこそが今自分が与えられる精一杯の褒美だと考えたのだ。
本来であるのならば自身を二度も助けてくれた英雄に対してその頬に対して口付けでも与えたかったのだが、それを実行に移せば父親がどのような行動に出るのかを知らなかったわけではなかったのだ。
修也が微笑ましい気持ちになって見つめていると、修也の前にヘ・リーマとジョウジの両名が姿を現した。
「失礼致します。オオツ様。本日の夕食はこれで終了となります。陛下は翌日のお昼に改めて会談をご希望なされているということですので、また出直しを願います」
「は、はい。了解致しました」
以上のやり取りは全てジョウジ一人の通訳によって担われていた。
修也と二人のアンドロイドはそのままヘ・リーマの案内で部屋に戻されていった。
部屋の中に戻った修也はヘ・リーマと彼が呼んだメイドたちの手で衣装を返却される羽目になった。
中世の衣装を思わせる堅苦しい服から元の宇宙服へと着替え終えると、修也は用意されていたベッドの上に腰を掛けた。そこでようやくホッとして小さく溜息を吐いていった。
寝心地を優先されて作られたベッドマッドであるのか、少し体の負担を掛けただけで修也の掌が真っ白なシーツが敷かれたベッドマットの中へと沈んでいった。
修也は自身の掌が沈んで掌のクレーターを作っている姿を見て、自身の体全体もベッドマットの中に沈ませようと考えたのだろう。そのまま体をベッドの上に預け、大の字に手足を伸ばして休んでいた。
ジョウジはその横、窓際の席で何も言わずに暗くなり何も見えなくなった窓の外を見つめていた。
「ジョウジさん何をやっているんですか?あなたもお疲れでしょうし、今日のところは休んだ方がいいですよ」
「大津さん、少し妙だとは思いませんか?」
ジョウジがいつになく神妙な顔を顔を浮かべて言った。
「妙と言いますと?」
「今日の夕食会です。夕食会の最中にガーゴイルなるこの星の凶悪な動物が乱入したことは覚えていますよね?」
「もちろんです。それを私が倒しましたね」
「えぇ、ですが、あのガーゴイル。本当はあのラ・レクスなる男が倒す予定だったというのならば?」
どうやらあの英雄ヘラクレスを思わせるような素晴らしい筋肉を持った男の名はラ・レクスというらしい。
ますます英雄に相応しいような名前だ。
修也が腕を組んでうんうんと唸っていた時だ。
「大津さん、私の話聞いてますか?」
ジョウジの忠告を聞いて修也は頭の中で考えていたことが大きく逸れたことを思い出し、大きく空咳を行なって話を本筋に戻した。
「つまり、ラ・レクスは自作自演で皇帝一家の危機を救おうとしていたと?」
「そうなります。恐らくデ・レマ皇女との婚約を円滑に進ませるための舞台装置としてどこからか放ったのでしょう。ガーゴイルに皇帝一家や重臣たちを襲わせ、十分に恐怖を味合わせたところでガーゴイルを倒して自身の存在をアピールするというものだと考えられます」
ジョウジの言葉は理にかなっていた。バラバラだったはずの点と線が繋がったように思えた。
「それは明日皇帝に話した方がよろしいでしょうか?」
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