メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井

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第二章『共存と滅亡の狭間で』

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「話を聞いてくれたんじゃあないのか!」

 修也は堪らなくなり、抗議の声を上げた。

「うん。聞いたよ。でも、それ嘘だから」

「う、嘘だと……」

 修也は絶句した。ソグは兜の下で顔を青ざめていると思われる修也の姿を想像して大きな声で笑い声を上げていた。

「人間ってよく嘘を吐くじゃん! だからおれもそれに習ったんだけなんだよー!」

 修也はもう何も言えなかった。どこまでも汚い顔を見せるソグにはほとほと愛想というものが尽き果てていた。

 同時に修也の中に出た怒りは噴火寸前のマグマのように湧き上がり、上昇していった。気が付けばビームソードを持つ手を離し、ソグに対して強い拳を繰り出していった。

 修也からの拳を受けたソグは広間の上に倒れ込んでしまった。
 ぶつかった際に生じる大理石によるダメージはソグの纏う戦闘スーツの装甲が防いでくれたが、殴られた衝撃までは緩和することができなかったらしい。

 強烈な拳を受けたソグは悲鳴を上げながら地面の上へと倒れ込んでいった。

「い、今のは効いたよ」

 だが、修也はソグの言葉になど耳を貸さずに蹴りを用いて強力な攻撃を加えていった。

「ぐっ、クソ」

 ソグは修也に対して罵声を浴びせたものの蹴りによる攻撃が止むことはなかった。
 なんとかその場から起き上がろうとするものの修也からの攻撃は止まなかった。

 だが、ようやく逆転の機会は訪れた。修也の足を両手で掴みそのまま勢いよく飛び付いて修也を大理石の床の上へと叩き付けたのだった。

 いくら『メトロイドスーツ』を纏っていたとしても大理石に体をぶつけたとあればそれ相応のダメージが体に響いてくる。
 修也は悲鳴を上げながら地面の上で悶え苦しんでいった。この時の修也は痛みのために無防備を晒していた。

 そこにソグは蹴りを喰らわせていった。これで立場が逆転することになった。ソグは先ほどのお返しだとばかりに修也に向かって蹴りを喰らわせ、うめき声を上げさせていた。

 絶望的な状況へと追い込まれた修也であったが、ここにきてまたしても逆転の機会が訪れることになった。
 地面に押し倒されて殴られている際に両足を揃えてソグの腹部を勢いよく蹴り飛ばしたのだった。

 ソグは呻めき声を上げながら背後に後退していった。修也はそのまま起き上がり、腹部に向かって鳩尾を喰らわせた。
 強烈な拳が戦闘スーツ越しから伝わってきたらしい。ソグはこれまで感じたことのない痛みと屈辱に襲われることになった。

 そのためソグはもう一度地面の上に叩き伏せられてしまうことになった。

 だが、修也はそのまま何もしなかった。何もせずにその場から逃げ出していったのだ。

 ソグはこの時冷静であったのならば修也の行動が罠だと理解できたはずだった。

 恐らくこの時のソグはこれまでに受けたこともない痛みと屈辱によってすっかりと我を忘れてしまっていた。

 修也を追い掛け、とうとう国会議事堂の外へと出てしまったのだ。
 そのことは修也が立ち止まった駐車場で敵に囲まれている状況を見て全てを察した。

「し、しまったッ!」

 その周りを修也の他にも『ロトワング』の装着者二名が取り囲んでいたのだ。
 ソグは知らないが、この時の装着者は修也の息子である麗俐と悠介の両名である。
 二人は兜の下から父親の宿敵ともいえるソグを強い目で睨み付けていた。

「……驚いたなぁ。まさか地球人に嵌めらるとは思いもしなかった」

「これでキミも終わりだ。覚悟してもらおうか」

「……終わり? 冗談じゃあないよ。ぼくがこんなところで終わるはずないじゃあないか……ラーガレット星人であるぼくが」

 ソグはいやらしい笑みを浮かべながら指を鳴らした。
 嫌な予感がしたので修也はソグの元へと駆け寄り、その体に向かって勢いよく飛び掛かっていった。

「なっ、あ、あんたもしつこいなぁ!」

 ソグは非難の声を上げたものの、修也はソグを掴んで離さなかった。せっかく訪れた逆転の機会なのだ。ここを逃してはソグを仕留めることはできなくなる。

 そのため宇宙船に運ばれている最中のソグを殴り付けて地面の上へと叩き伏せたのである。
 ソグはこのまま修也に纏わりつかれたままでは修也ごと宇宙船に運んでしまうと判断した。ソグとしては宇宙船の中に修也を連れて行くことましてや母星に修也を運んでいくことだけは何があっても避けたかった。

 ソグは拳を勢いよく締めることによって自身の体を運ぼうとした宇宙船の光を強制的に断ち切った。同時に宇宙船は主人の邪魔をしてはならないとばかりにヨロヨロとした動作で宇宙へと戻っていった。

 修也は怯え切ったソグの頬に向かってもう一度強力な右ストレートを喰らわせたのだった。ただ、傍から見ればこのストレートは他のパンチよりも弱いように思われた。
 何か思うところがあったのかもしれない。

 それでも『メトロイドスーツ』の装甲に包まれた強力な一撃であることには変わらない。修也からの強烈なストレートを喰らったソグは地面の上へと倒れ込んだ。この際に溝を打たれたのか、ソグは意識を失ってしまった。

 同時にソグの体を纏っていた鎧が解除され、ソグ自身の体が露わになっていった。

「こ、こいつが宇宙人なのか?」

 悠介は信じられないと言わんばかりに両目を大きく見開きながら父親に向かって問い掛けた。

「宇宙人っていうけど、地球の人と変わらないみたいだね。見たところは違和感のようなものを感じないよ」

 弟は対照的に麗俐は至極落ち着いた調子だった。声もどこか柔らかである。

「いいや、こいつは確かに宇宙人だ。お前たちも目の前でこいつらの技術を目の当たりにしただろ?とにかく、こいつをどこかに運ぼう」

 修也はすっかりと意識を失ったソグの体を掴み、そのまま肩を貸していった。

「大津さん、その方をどうなさるおつもりですか?」

 ジョウジは興味深そうな目を浮かべながら修也に向かって問い掛けた。

「決まっているでしょう? この人には然るべき裁きを受けてもらわないといけません」

 修也は淡々とした口調で言った。

「大津さん、言っておきますが、宇宙人に日本の……いいえ地球の法律が適用できるとは思えません。今のうちに処罰するべきでは?」

「……私も最初はそう思いました。ですが、意識を失ったソグを見た瞬間に考えが変わったんです」

 修也によればそれは人間ならば必ず持ち合わせる理性というものだった。
 理性という名の鎖が修也にトドメを刺す気力を奪わせたのだそうだ。
 もちろん、これまでに多くの敵を倒してきた修也にこんなことを言えた義理はないだろう。

 だが、それでも修也に理性という名の鎖で縛らせたのはソグが発した『惑星連合』という単語だった。
『惑星連合』なる星間同士の提携があったとすれば将来地球もその『惑星連合』とやらに加盟することになるかもしれない。

 そのことを考えればソグは生かしておいた方がいいと意識を失ったソグの顔を見た時に咄嗟に判断し、理性という名の鎖で自身を縛り上げたのだ。

「そうだったんですか……」

 ジョウジとしても修也からそのように告げられてしまえばもう何も言えなかった。
 むしろ修也の考えに共感するかのようにソグを助け起こしたのだった。
 一方で不満を持っていたのは修也の子どもたちだった。

「なんだよ。あんな奴あのまま倒しちまえばよかったのに」

「そうだよ。今回の騒動でどれだけ首都が荒れたか分からないし、お父さんだって酷い目に遭わされたのにさ」

 二人はそのまま父親と父親の同僚だというアンドロイドによって運ばれていくソグの背中を睨み付けていた。
 それを中断させたのはカエデだった。

「確かに、被害者感情やあなたたちのことを考えればあの男を倒してしまうのが一番だったかもしれませんね。でも、考えてみてください。歴史上に文明圏からやってきた人を恐怖や怒りの感情だけで殺してあとで大変なことになった国の事例はたくさんありますよ。あなた方のお父様は地球がそうしたことにならないように気を遣ってくれたのでは?」

 悠介も麗俐も特段歴史に詳しいわけではなかった。

 だが、アンドロイドの語る知識ならば間違いないだろうと判断して敢えて反論の言葉は口にしなかった。
 それにソグなる宇宙人の母星が反撃に転じないとも限らないことも事実だ。
 その点から二人は何も言わずに沈黙していた。

 だが、胸の中に燻る不満は残っていたらしい。警察官たちや自衛官たちが駆け付けてくるまでの間、二人は不服そうな顔を浮かべながらロボットや車の残骸が転がる駐車場を眺めていた。


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