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水の惑星『カメーネ』
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「これで形成逆転だな。小僧」
長い殴り合いの末に勝利を収めたラオスは悠介を見下ろすように言った。ラオスの言葉は当然ながらコルテカ王国の言葉である。
当然言葉を知らぬ悠介に理解できるはずがない。理解できるはずがないのだが、自身を見下ろしている様子を察して怒りを隠すことができなかった。
拳をプルプルと震わせながらラオスを鋭い目で睨み付けていた。
体を動かそうとしても殴り合った末のダメージが蓄積し、指一本動こうとしない。悠介は悔しげな目でラオスを睨み付けた。
「さてと、小僧……貴様には死んでもらおう。これは見せしめのためであるし、さらに付け加えれば貴様の首をクレスタリア王へ送るためでもあるのだ。コルテカ王国にいいや、わしに逆らえばどうなるのかを教えてやるのだよ」
ラオスは口元に勝ち誇ったような笑みを浮かべながらビームサーベルを悠介の胸元へと突き立てようとした。
本来であれば体を転がしてでも避けなければならない。しかし動こうにも体が動かない。より正確に表せば言うことを聞かないといった方が正しいだろう。
悠介が歯を噛み締めながらラオスを睨んでいると、ゆっくりと扉の開く音が聞こえてきた。
「何用だ? わしは今このガキと決着を付けようとしているところなのだぞ」
ラオスが不満そうな声を吐き出しながら扉の開いた方向を振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべて麗俐を捕らえたリディの姿が見えた。この時のリディはパワードスーツを脱いで軍服姿であった。
それとは対照的に麗俐は『エンプレスト』の装甲を纏ったままであったが、装甲のあちこちに傷や汚れが付いていることから激闘の末にリディの手によって捕まえられたということが分かった。
「お姉ちゃん!」
「……ごめん。悠介」
ヘルメットをかぶっていたので麗俐の表情は見えなかった。ただ視線を逸らすように頭を下げるのが見えたので、ヘルメットの下では負けてしまい、リディを連れてきたことによる罪悪感で押し潰されているに違いなかった。
悠介はそんな姉の姿を見るたびに悔しさに胸が押し潰されそうになった。
巻き込んでしまったのは完全に自分のせいだ。自分のせいで姉を道連れにしてしまったのだ。
悠介が悔しげに下唇を噛み締めていた時のことだ。リディが口元を「へ」の形に歪めて笑った。
真紅のルージュが綺麗に塗られたその唇が歪められているのを悠介ははっきりと見た。
「陛下、この女の処遇はどう致しましょうか?」
「どうするかだと? その方分かっておろう。コルテカ王国の国王に叛逆を企てたものは例外なく大逆罪だ。そしてその罰は極刑でしかあながえぬのだぞ」
「畏まりました。では、この女は処刑させていただきますね」
リディはニヤニヤと笑いながら腰に下げていたレーザーガンを抜き、麗俐の胸元に銃口を突き付けた。
「悪く思わないでね。お嬢ちゃん。国王の命令に従わないと我が社がここの貿易を独占できなくなるのよ」
リディが発したのはフランス語である。当然麗俐は理解できない。ただ、ヘルメットの下で睨み付けることしかできないのだ。
悔しくともそうすることしかできない自分が不甲斐なくて仕方がなかった。
なにせ今の自分は拘束されて動けないのだ。助けを求めようにも全員が動けない状況にあっては助ける余裕もない。
お手上げだ。麗俐の中でこれまでの十数年間の回想が頭の中に過ぎっていった。
(あぁ、私これから死ぬんだ……でも、私酷いことをしたもんね。だから撃ち殺されるのも当然なんだよね)
麗俐が目隠し代わりに視線を下に向けて自身に迫る銃口を意識から取り除こうとした時のことだ。
「このまま諦めるつもりですか? 麗俐さん」
声が聞こえてきた。麗俐が声のした方向を向くと、そこには両目をキッと見開いたカエデの姿が見えた。
「麗俐さん、あなたには大きな罪があります。それは賽の河原で鬼に叛逆した子どもたちが罰として落とされる石の山よりも重い罪です。それをあなたは背負って生きなくてはなりません。そして、これからも私たちのためにコーヒーを淹れなければなりません。それがあなたの償いです。死んで逃げることなど許しませんよ」
その言葉に麗俐は強く揺さぶられることになった。ここで死ぬというのは卑怯者のすることだ。自身にできるのはアンドロイドと人類との共存のために奔走していくことではないのか。
麗俐はそう己を鼓舞した。死んで逃げることなど卑怯者のすることだ。そう自身に言い聞かせて走馬灯を無理やりに断ち切った。
覚悟の決まった麗俐を見たカエデはニヤリと笑い、しゃがみ込むと、自身の腕を拘束している兵士をしゃがみ込んだ際の勢いを使って振り払ったのだった。
「クソッ!この女!」
暴れたことにより他の兵士がカエデを拘束しようと試みたが、その前にカエデはビームポインターを取り出してリディに向けて発射していった。
麗俐はここぞとばかりにリディの拘束を解いて軍服状態の彼女をパワードスーツを纏った拳で弾き飛ばしていく。装甲による防御がないため彼女の体にかかる負荷は相当なものであったに違いない。
思わず耳を塞ぎたくなるような呻めき声を上げながらリディは地面の上に蹲ることになった。
そこからはなんのアクションも起こさないところを見ると戦闘の継続が不可能であるのは火を見るよりも明らかであった。
麗俐はリディが戦闘不能に陥ったことを再確認し、彼女の足元を転がっていたレーザーガンを拾い上げ、弟を殺そうとする狂王に向けて銃口を突き付けた。
そして家族の命を守るため躊躇うことなくレーザー光線を照射したのだった。
狂王ことラオスは慌てて飛び上がり、レーザー光線を回避した。
普通であればこのまま追撃を繰り返していくことになるだろう。だが、麗俐はラオスに対する攻撃をいったん取りやめ、カエデの周りを囲っている兵士たちに向かってレーザー光線を発射していった。
未知の熱線に怯える兵士たちを更にカエデがビームポインターによって攻撃していく。ビームポインターを受けた兵士たちは次々と地面の上へ倒れていく。バタバタとなす術もなく惑星カメーネの重力に引っ張られていくその姿はドミノ倒しのようだった。不甲斐ない部下たちに対して怒りを隠しきれなかったのは国王であるラオスであった。
不甲斐のない姿や子どものように泣き喚く姿に彼の我慢は限界を超えたに違いない。
彼は光線による攻撃を加え続ける二人に対して眉間に青筋を立てながらビームソードを抜いて迫っていった。
もしこの時ラオスが怒りによって我を忘れていなければ自身に与えられたレーザーガンを使用して撃ち合いに持ち込むこともできたはずだ。
しかしラオスはそうしなかった。自らの手で無礼な小娘二人を叩き斬ることに執着したのだ。
麗俐にとって今のラオス以上に狙いやすい相手はなかった。ゆっくりと照準を合わせ、その肩に向かってレーザー光線を放っていった。
熱線はラオスの右肩を直撃し、彼を地面の上に転ばせていった。
ここでとどめを刺すべきだ。そう直感した麗俐はラオスの頭部に向かって引き金を引こうとした。
だが、それよりも前に悠介が最後の力を振り絞ってラオスに向かって飛び掛かっていった。
「こいつはオレに倒させてくれ! シーレを苦しめたこいつだけは許せねぇからッ!」
悠介の剣幕の前に麗俐は引くより他に仕方がなかった。悠介は躊躇うことなく自身のビームソードでラオスを貫こうとしたが、ラオスは右肩に負傷を負いつつも体を起こして悠介のビームソードを正面から受け止めた。
それから後は熾烈な打ち合いが始まることになった。二合、三合と打ち合いが始まり、突き、払いといった地球の剣道で習う作法が繰り広げていった。
この時の二人の獲物がビームソードやビームライフルといった光剣の類でなければ時代劇の撮影にも見えたかもしれない。
麗俐がそんなことを考えていた時だ。動きが見えた。悠介のビームソードがラオスの腹部を貫いていったのだ。
ラオスがビームソードの剣が腹部を貫き、ダメージによってよろめいていく姿が見えた。装甲は完全に破壊され、火花が散っている姿やそこから血が垂れて、それが地面の上に流れて血溜まりを作っている姿が見えた。
血を流し、今にも倒れそうな姿を見て悠介は決着がついたと判断したのだろう。ビームソードを収め、そのまま麗俐の元に合流しようとした。
その時だ。ラオスが最後の力を振り絞って自身のビームライフルを投げ付けようとしてきたのだ。
「危ないッ!」
麗俐の声を聞いて悠介が振り向いた時には投げ付ける寸前であった。間に合うはずがない。麗俐も悠介も最悪の事態を考えて両目を瞑った時だ。真横から熱線が飛び、ラオスのヘルメットを貫いていった。
ヒュドラをイメージしたヘルメットが割れ、その眉間に焦げ付いた跡がハッキリと見えた。
二人が光線の飛んだ方向を振り向くと、そこにはビームポインターを握ったカエデの姿が見えた。
「ダメですよ、勝負が付くまでは油断しては」
カエデは得意げな顔を浮かべて言った。
長い殴り合いの末に勝利を収めたラオスは悠介を見下ろすように言った。ラオスの言葉は当然ながらコルテカ王国の言葉である。
当然言葉を知らぬ悠介に理解できるはずがない。理解できるはずがないのだが、自身を見下ろしている様子を察して怒りを隠すことができなかった。
拳をプルプルと震わせながらラオスを鋭い目で睨み付けていた。
体を動かそうとしても殴り合った末のダメージが蓄積し、指一本動こうとしない。悠介は悔しげな目でラオスを睨み付けた。
「さてと、小僧……貴様には死んでもらおう。これは見せしめのためであるし、さらに付け加えれば貴様の首をクレスタリア王へ送るためでもあるのだ。コルテカ王国にいいや、わしに逆らえばどうなるのかを教えてやるのだよ」
ラオスは口元に勝ち誇ったような笑みを浮かべながらビームサーベルを悠介の胸元へと突き立てようとした。
本来であれば体を転がしてでも避けなければならない。しかし動こうにも体が動かない。より正確に表せば言うことを聞かないといった方が正しいだろう。
悠介が歯を噛み締めながらラオスを睨んでいると、ゆっくりと扉の開く音が聞こえてきた。
「何用だ? わしは今このガキと決着を付けようとしているところなのだぞ」
ラオスが不満そうな声を吐き出しながら扉の開いた方向を振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべて麗俐を捕らえたリディの姿が見えた。この時のリディはパワードスーツを脱いで軍服姿であった。
それとは対照的に麗俐は『エンプレスト』の装甲を纏ったままであったが、装甲のあちこちに傷や汚れが付いていることから激闘の末にリディの手によって捕まえられたということが分かった。
「お姉ちゃん!」
「……ごめん。悠介」
ヘルメットをかぶっていたので麗俐の表情は見えなかった。ただ視線を逸らすように頭を下げるのが見えたので、ヘルメットの下では負けてしまい、リディを連れてきたことによる罪悪感で押し潰されているに違いなかった。
悠介はそんな姉の姿を見るたびに悔しさに胸が押し潰されそうになった。
巻き込んでしまったのは完全に自分のせいだ。自分のせいで姉を道連れにしてしまったのだ。
悠介が悔しげに下唇を噛み締めていた時のことだ。リディが口元を「へ」の形に歪めて笑った。
真紅のルージュが綺麗に塗られたその唇が歪められているのを悠介ははっきりと見た。
「陛下、この女の処遇はどう致しましょうか?」
「どうするかだと? その方分かっておろう。コルテカ王国の国王に叛逆を企てたものは例外なく大逆罪だ。そしてその罰は極刑でしかあながえぬのだぞ」
「畏まりました。では、この女は処刑させていただきますね」
リディはニヤニヤと笑いながら腰に下げていたレーザーガンを抜き、麗俐の胸元に銃口を突き付けた。
「悪く思わないでね。お嬢ちゃん。国王の命令に従わないと我が社がここの貿易を独占できなくなるのよ」
リディが発したのはフランス語である。当然麗俐は理解できない。ただ、ヘルメットの下で睨み付けることしかできないのだ。
悔しくともそうすることしかできない自分が不甲斐なくて仕方がなかった。
なにせ今の自分は拘束されて動けないのだ。助けを求めようにも全員が動けない状況にあっては助ける余裕もない。
お手上げだ。麗俐の中でこれまでの十数年間の回想が頭の中に過ぎっていった。
(あぁ、私これから死ぬんだ……でも、私酷いことをしたもんね。だから撃ち殺されるのも当然なんだよね)
麗俐が目隠し代わりに視線を下に向けて自身に迫る銃口を意識から取り除こうとした時のことだ。
「このまま諦めるつもりですか? 麗俐さん」
声が聞こえてきた。麗俐が声のした方向を向くと、そこには両目をキッと見開いたカエデの姿が見えた。
「麗俐さん、あなたには大きな罪があります。それは賽の河原で鬼に叛逆した子どもたちが罰として落とされる石の山よりも重い罪です。それをあなたは背負って生きなくてはなりません。そして、これからも私たちのためにコーヒーを淹れなければなりません。それがあなたの償いです。死んで逃げることなど許しませんよ」
その言葉に麗俐は強く揺さぶられることになった。ここで死ぬというのは卑怯者のすることだ。自身にできるのはアンドロイドと人類との共存のために奔走していくことではないのか。
麗俐はそう己を鼓舞した。死んで逃げることなど卑怯者のすることだ。そう自身に言い聞かせて走馬灯を無理やりに断ち切った。
覚悟の決まった麗俐を見たカエデはニヤリと笑い、しゃがみ込むと、自身の腕を拘束している兵士をしゃがみ込んだ際の勢いを使って振り払ったのだった。
「クソッ!この女!」
暴れたことにより他の兵士がカエデを拘束しようと試みたが、その前にカエデはビームポインターを取り出してリディに向けて発射していった。
麗俐はここぞとばかりにリディの拘束を解いて軍服状態の彼女をパワードスーツを纏った拳で弾き飛ばしていく。装甲による防御がないため彼女の体にかかる負荷は相当なものであったに違いない。
思わず耳を塞ぎたくなるような呻めき声を上げながらリディは地面の上に蹲ることになった。
そこからはなんのアクションも起こさないところを見ると戦闘の継続が不可能であるのは火を見るよりも明らかであった。
麗俐はリディが戦闘不能に陥ったことを再確認し、彼女の足元を転がっていたレーザーガンを拾い上げ、弟を殺そうとする狂王に向けて銃口を突き付けた。
そして家族の命を守るため躊躇うことなくレーザー光線を照射したのだった。
狂王ことラオスは慌てて飛び上がり、レーザー光線を回避した。
普通であればこのまま追撃を繰り返していくことになるだろう。だが、麗俐はラオスに対する攻撃をいったん取りやめ、カエデの周りを囲っている兵士たちに向かってレーザー光線を発射していった。
未知の熱線に怯える兵士たちを更にカエデがビームポインターによって攻撃していく。ビームポインターを受けた兵士たちは次々と地面の上へ倒れていく。バタバタとなす術もなく惑星カメーネの重力に引っ張られていくその姿はドミノ倒しのようだった。不甲斐ない部下たちに対して怒りを隠しきれなかったのは国王であるラオスであった。
不甲斐のない姿や子どものように泣き喚く姿に彼の我慢は限界を超えたに違いない。
彼は光線による攻撃を加え続ける二人に対して眉間に青筋を立てながらビームソードを抜いて迫っていった。
もしこの時ラオスが怒りによって我を忘れていなければ自身に与えられたレーザーガンを使用して撃ち合いに持ち込むこともできたはずだ。
しかしラオスはそうしなかった。自らの手で無礼な小娘二人を叩き斬ることに執着したのだ。
麗俐にとって今のラオス以上に狙いやすい相手はなかった。ゆっくりと照準を合わせ、その肩に向かってレーザー光線を放っていった。
熱線はラオスの右肩を直撃し、彼を地面の上に転ばせていった。
ここでとどめを刺すべきだ。そう直感した麗俐はラオスの頭部に向かって引き金を引こうとした。
だが、それよりも前に悠介が最後の力を振り絞ってラオスに向かって飛び掛かっていった。
「こいつはオレに倒させてくれ! シーレを苦しめたこいつだけは許せねぇからッ!」
悠介の剣幕の前に麗俐は引くより他に仕方がなかった。悠介は躊躇うことなく自身のビームソードでラオスを貫こうとしたが、ラオスは右肩に負傷を負いつつも体を起こして悠介のビームソードを正面から受け止めた。
それから後は熾烈な打ち合いが始まることになった。二合、三合と打ち合いが始まり、突き、払いといった地球の剣道で習う作法が繰り広げていった。
この時の二人の獲物がビームソードやビームライフルといった光剣の類でなければ時代劇の撮影にも見えたかもしれない。
麗俐がそんなことを考えていた時だ。動きが見えた。悠介のビームソードがラオスの腹部を貫いていったのだ。
ラオスがビームソードの剣が腹部を貫き、ダメージによってよろめいていく姿が見えた。装甲は完全に破壊され、火花が散っている姿やそこから血が垂れて、それが地面の上に流れて血溜まりを作っている姿が見えた。
血を流し、今にも倒れそうな姿を見て悠介は決着がついたと判断したのだろう。ビームソードを収め、そのまま麗俐の元に合流しようとした。
その時だ。ラオスが最後の力を振り絞って自身のビームライフルを投げ付けようとしてきたのだ。
「危ないッ!」
麗俐の声を聞いて悠介が振り向いた時には投げ付ける寸前であった。間に合うはずがない。麗俐も悠介も最悪の事態を考えて両目を瞑った時だ。真横から熱線が飛び、ラオスのヘルメットを貫いていった。
ヒュドラをイメージしたヘルメットが割れ、その眉間に焦げ付いた跡がハッキリと見えた。
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