メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井

文字の大きさ
130 / 237
職人の惑星『ヒッポタス』

しおりを挟む
「それでわざわざここまで来たんだ」

タラップから降りて二人を出迎えた麗俐は呆れたような口調で言った。

「そうなんだ。悪いが、悠介の代わりに来てくれんか?」

修也は懇願するように言った。父親の哀れな態度を見て麗俐も思うところがあったのか、快くその申し出を承諾した。

留守番にはカエデと悠介の両名が残ることになった。異性であるが、カエデはアンドロイドということなので今更気にする必要はないと彼女自身の口から言い放ったのだった。

それに悠介は惑星カメーネで恋仲となったシーレ第一主義者であるためカエデに手を出すこともない。こうした安心感もあり、麗俐と悠介が入れ替わる形で惑星ヒッポタスにある町の一角へ向かうことになったのだった。
自身の怠慢のため留守番を言い付けられることになった悠介はモニター越しから不服そうに二人を見つめていたものの、自分ではどうにもならないと判断したのか、運転席の上で不貞腐れる羽目になった。

腕枕を作り、その上で眠ろうとする悠介を苛立った様子のカエデが現実世界へと引き戻していった。

「な、何をするんだよ!」

突然夢の世界から現実へと引き戻されることになった悠介は抗議の言葉を上げたが、カエデは無視して説教を始めていった。

「そうやって眠っている暇があったら宿題でもしたらどうですか?」

カエデは交渉の場で自らの感情を優先して、追い出される羽目になった悠介に対してドライな感情を持っていた。
そのため少し辛い言葉になってしまったのである。

「やる気が起きないんですよ」

だが、辛い形で当たるカエデに対しても恐れることなくぶっきらぼうな口調で悠介は言い返した。

「だからって眠って時間を無駄にする必要もないじゃあないですか。起きている間に有意義なことをする方が何倍もいいですよ」

「バスケットボールもないのに?」

「だから、その代わりに宿題をしろと言ってるじゃーー」

カエデが聞く耳を持たない悠介に向かって説教を続けようとした時だ。宇宙船の周囲に異変が起きたことを伝えるサイレンの音が鳴り響いていった。

けたたましいサイレンの音で悠介が運転席の上から降り、慌ててカプセルを握り締めていった。

「ど、どうした!? 何があったんですか!?」

「この周辺に敵が現れたみたいです……」

「敵?」

悠介の質問に対し、カエデは無言でモニターを出してそこ
に映る鎧だけの存在を映し出していった。
ガタガタと重い金属を鳴らして宇宙船の入り口を目指す甲冑たちが所持しているのは剣だった。

太陽の光が反射し、怪しげな色を浮かび上がる鋭利な刃に派手な装飾が施された柄。西洋の中世騎士道物語で見るような剣そのものだ。

本来であればこの剣は『本体』とでも表現するべきだが、この場では分かりやすさを優先させるため敢えて『剣』と表現させていただきたい。

二人がモニター越しにその『剣』たちの数を確認すると、その数はおおよそ二十体ほどだ。

「こいつらがこの星の人間にとっての天敵っつーわけか」

「えぇ、解析したデータによればそう記されています。データによればかなり強いとか」

カエデは淡々とした口調で言い放った。そこに焦りというものが見えないのはアンドロイドであるからだ。

「目的としては偵察ってところか?」

「かもしれません」

と、カエデが同意の言葉を口に出した時のことだ。剣によって宇宙船が傷付けられているのが確認できた。モニター越しから自立型の鎧たちが自身の本体である剣を勢いよく宇宙船の表層部にぶつける音が聞こえてきた。


思わず耳を塞ぎたくなるような凄まじい音であった。それでも黒板を引っ掻くような凄まじい音ではなかったことは不幸中の幸いというべきだろう。

悠介は聴くに耐えない音を両耳を塞ぐごことでよろめきながらもカエデの元を抜け出して迎撃のため外へ向かっていった。タラップを開き、階段を下ろしていく。

幸いなことに弱点は分かっている。剣そのものを倒せばいいのだ。悠介はカプセルを用いて『ゼノン』の装甲を纏った後でレーザーガンを握り締めていった。

レーザー光線で剣を撃ち抜くつもりだった。階段が降り、一段一段をゆっくりと降りていく自身の姿はコロッセオで大衆や貴族たちに囲まれて恐ろし相手と試合を行う剣闘士の心境だった。

悠介は階段が地面に近くなると、飛び降りていき、そのまま挨拶代わりだと言わんばかりに引き金を引いた。

悠介のレーザー光線によって剣の一本が地面の上に転がっていった。悠介は得意げな顔を浮かべながら西部劇に登場するガンマンのように人差し指を使ってレーザーガンを回し、白い煙が出ていないにも関わらず、フッと息を吐きかけた。その近くでは一本の剣が自身の黒焦げになったのが見えた。

それを見た鎧たちは仲間の敵討ちだとばかりに悠介の元へと向かっていった。
悠介は最初の10体はレーザーガンを撃ち抜いて剣を壊したものの、徐々に自分の元への距離を詰めてきたので接近戦に変えざるを得なかった。

悠介はビームソードを抜いて接近戦に対応せざるを得なかった。接近戦では剣を抜いて戦っていたものの、今度は悠介が翻弄されてしまった。なにせ相手は剣が本体なのだ。悠介をなすがままにしていくのは朝飯前なのだろう。昔の剣客さながらの素早い動きに悠介は付いていくのに必死だった。

やはり遠距離のみで対応するべきだったかもしれない。そんな考えが頭をよぎった時のことだ。悠介は無意識のうちにビームソードの先端を「突き」の姿勢へと変えた。

狙いを定めたのはビームソードの先端が突き刺したのは弱点そのものである剣だった。
剣はレーザー光線によって撃ち抜かれた時と同様に黒焦げになって地面の上へ落ちていった。

そして先ほどと同様に地面の上から二度と立ち上がることはなかった。悠介は気がついた。『突き』による攻撃を喰らわせれば剣の怪物は地面の上に倒れ込んでしまうのだ、と。

しかし『言うは易し行うは難し』という言葉があるように実行に移すことは難しいものだった。
事実鎧たちによる攻撃は自分たちの対処法が看破されるのと同時に激しくなっていった。

悠介は懸命になってビームソードを振るって鎧からの攻撃を防ごうとしたものの、背後からの攻撃に気が付かなかったのか、悠介の背中に強烈な衝撃が走っていった。


「うっ、うぐっ……クソ」

悠介が背後を振り返ると、そこには剣を握り締めて自身の元に迫り来る鎧の姿があった。もしこの鎧に感情というものが存在していたのならば得意げな顔を浮かべていたに違いなかった。

「クソッ!」

悠介は咄嗟に声を荒げたが、そんなもので怯む鎧たちではなかった。それどころか、これを好機とばかりに剣を構えて悠介の元へと突っ込んでいこうとした。
悠介はビームソードを闇雲に『突き』を繰り返したことによってなんとか包囲網の一角を崩すことに成功し、そのまま脱出を図ったのだった。

だが、もう一度同じ手を喰らえば勝機はない。悠介は慌ててその場から逃げ出して態勢を立て直そうとしていた。
残る数は9体。一気に相手にするにはいささか厳しい相手である。

悠介はビームソードを構え、鎧へと立ち向かっていった。最初に真下から勢いよくビームソードの剣先を突き立てることで剣を破壊していった。

そして同様の手口でもう一度鎧を破壊していった。だが、ここで先ほど受けた傷の痛みが再びぶり返してしまう羽目になった。

悠介は荒い息を吐きながら両膝を突いた。悠介にとって思っていた以上に痛みや疲労が体のうちに残っていたらしい。
やがて耐え切れなくなり、悠介の体は地面の上に倒れてしまった。その周りを囲む形でこちらに迫って来る鎧たち。

得体の知れない剣が今にも悠介を突き刺そうとばかりに迫って来るのが見えた。
万事休すかとヘルメットの下で歯を噛み締めていた悠介であったが、思わぬところで助けが現れた。

閉じていたはずの船のハッチが開いてカエデの姿が見えたのだ。
カエデはハッチを開いてタラップから階段を下ろしていくのと同時にビームポインターを抜き、熱線を放射していった。

人間とは異なる無機物であるためか、感情にとらわれることもなく落ち着いてカエデを処置しようとしたが、それでも先に動くことができた楓が有利であったのはいうまでもない。熱線を放射して三体ほどの鎧を片付けていく。

悠介はこれが機会だとばかりに自身に対して背を向けた鎧たちを背後から襲っていった。鎧たちは最初の三体がやられた上にカエデへ襲い掛かっていく最中に二体が倒されたこともあいまって悠介を注意外へ追い出していたことも大きかった。

悠介はそうした鎧たちの事情を巧みに利用して背後から攻撃を仕掛けていった。
背後からの攻撃など鎧に当たるものでしかなく本体である剣にはなんの意味もないことは明白である。

悠介はそのことを忘れていたが、彼は咄嗟に起点を効かし、不利な状況を有利な状況へ変えていったのだった。
攻撃を喰らった瞬間、鎧は背後を振り返るものの、その際に本体であり武器である剣によって反撃を行うのだ。

悠介は初太刀を寸前のところで交わし、そのまま剣に対して『突き』を喰らわせたのだった。こうして無事にまた一体を葬ることができた。
残る数は三体。カエデと力を合わせれば勝つことが難しい数ではない。悠介はヘルメットの下で希望を持った目を浮かべていた。

だが、同時に背中にズキっと痛みが走った。装甲越しとはいえ切り傷を負ったのだから当然である。上手くことが運べば素早く治療を施すことができるのだが、そんなに早く済むだろうか。

悠介はこれからの戦いに対して深い絶望と高い希望の二つの感情を抱くことになった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

処理中です...