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第一部 第二章 ヴァレンシュタイン旋風
オットー王子の謀略 パート8
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「女王陛下!ご無事でしたか!?」
魔道士ユーノ・キルケと護衛騎士のディリオニスの二人は慌ててガラドリエルとマートニアとガートルードの元に駆け寄ってきた。
ガラドリエルは慌てふためいた二人とは対照的に落ち着き払っていた。彼女の両腕がハッキリと組まれている事から、その様子がハッキリと分かる。
押し黙っている主人の代わりに答えたのはディリオニスの姉にして同じく護衛騎士のマートニア。
「どうかしたの?二人とも?」
「聞いてよ!あいつが逃げたんだッ!魔道士エドガーがッ!ぼくとあの人の二人で戦っている時にッ!急に煙をかき消すかのようにパッとッ!」
慌てふためくディリオニリの言葉にマートニアは口元を右手で覆う。
「じ、じゃあ……エドガーはまだ何処からか攻めてくるという事なの?」
「それだけじゃあないよ!」
ディリオニスは大袈裟に手を振って事の重大さを伝える。
「あいつは死んだ人間を吸血鬼にする魔法を使うんだッ!マートニアもドラキュラ伯爵くらいは知ってるでしょ!?あんな恐ろしい奴がぼくらの……」
ディリオニスは最後の言葉を言う前に、丁度、宿から出てきた女王一行の背後を震える手で指差す。
三人がディリオニスの尋常ではない様子に堪らずに背後を振り向く。
三人は背後を振り返った瞬間に各々の剣に手をかけた。
何故ならば、先程、殺した筈のオットー王子とその隣で不気味に笑う白いローブを着た不気味な老人が立っていたからだ。
全員がこちらに視線を向けたのを合図にしたのだろう。オットー・フォン・シュヴァルツ・クロインツは大きな声でマントを大きく右手で払ってから、両手を拳で握り、空中に掲げて叫ぶ。
「ハッハッハッ、どうやらオレにも勝機は巡ってきたようだな?なあ、後ろのお美しいお嬢さん……あんたに聞くんだが、さっき吸血鬼をどうやって倒したんだ?吸血鬼は日光か杭でしか殺せない筈だがな」
「簡単な話ですわ」
ユーノはオットーの質問に鼻を鳴らしてから答えた。
「この杖を吸血鬼が弱点とする杭に変えたのです。そうすれば、エドガー老人が去った後に、人間態となった吸血鬼の心臓を串刺しにできましたわ」
ユーノは杖をポンポンと鳴らしながら呪文を独唱して尖った木の棒と化した杖の先端をオットーに向ける。
オットーは吸血鬼の本能から、咄嗟に両手で顔を覆ったが、隣にいたエドガー老人に両手の甲を軽く叩かれて直ぐに手を離す。
「怯えてどうするのですか?あなたは二つの十字架の家を束ねる男ですぞ、あんな杭に怯えてどうなさるのです!?」
エドガーの喝でオットーは正気を取り戻して、反対にユーノを睨み付けた。
「そうだな、それにしても生意気な女だ……不快だな、ガラドリエルと同じくらいにな」
「あら、小さな事におこだわりになるのですね?オットー王子。私が女性である事がそんなにお嫌ですか?」
「やはり、気に入らん女だなァァ~!」
オットーは剣をユーノに向けて突進していくが、その剣はガートールードによって止められてしまう。
オットーの剣とガートールードの剣がかち合う。刃と刃の間で睨み合いが始まった。
オットーは続けて第二の攻撃を放つ。だが、ガートールードのバランスは崩れない。オットーの剣をそのまま受け止めていた。侮蔑の顔を浮かべるオットーをガートールードは黙って睨み返す。
そして、ガートールードはもう一度強い攻撃を放つ。
ここでオットー側のバランスが崩れる。
ガートールードがバランスを崩し、膝を付いたオットーの頭上に剣を振り上げた時だ。
オットーはここぞとばかりに巨大な一つの蝙蝠に変身し、次に多数の蝙蝠に変身して持っていた剣を地面に落としてしまう代わりに、ガートールードの攻撃を避けた。
この作業の行程が全て剣が地面に振り下ろすまでに全て行われていたのだから、吸血鬼の恐ろしさという物をガートールードは肌で感じ取っていた。
オットーはガートールードの背後を取りながら、けたたましく笑っていた。
「どうした?どうした?女ァァ~もしかしたら、お前なんぞに殺されるタマだと思ったのか?忘れたのか、オレは既に吸血鬼になっていたのをッ!」
ガートールードは答えない。答えない代わりに懐から取り出した小さなナイフをオットーに向かって放り投げた。
オットーは今度は巨大な蝙蝠になってナイフを交わす。
巨大な蝙蝠は意外と早いらしい。ガートールードが対処に困っていた時だ。
側に立っていたガラドリエルとマートニアが剣を引き抜く。
「あの、あたし達もお役に立てるのかどうかは分かりませんが、助太刀致します!」
「主人たるもの家臣ばかり戦わす訳にはいかぬからな」
二人の息の合う様子に勇敢なる騎士は苦笑し、それから夜の街の中一人で立っているオットーに向かって剣先を向ける。
「先程、ユーノが言っていたが、杭であいつの心臓を貫けるのなら、剣でも貫ける筈だな?どちらも尖っているし」
ガラドリエルの言葉にマートニアが突っ込みを入れる。
「もしかしたらなんですけれど、杭には何か特別な力が込められていて、他の尖ったものではいけないのかもしれませんよ?」
「かもしれんな」
ガラドリエルは微笑した。次に笑った形のままの口を開き、
「だが、試してみる価値はあるだろ?」
主人の言葉に二人の従者は同時に首を縦に動かす。
「先程は退席してすまんかったの、美しきお嬢さん……話は変わるが、ここら辺は静かじゃな、言っておる意味が分かるか?」
「あなたの仰る悪趣味な言葉の意味でしょうか?」
「ほう、流石は偉大なる魔道士の一人じゃな、物分かりが良くて助かるわい」
意味が分からずにキョトンとしていたディリオニスはたまりかねてユーノに尋ねた。ユーノはダメな生徒を根気よく教える優しい教師のような微笑を見せて意味を教授する。
全てが分かったディリオニスは堪らずに目を見開く。
「な、なんだって!?そんな事をすれば……」
「ええ、目の前のご老人はイカれてらしてよ。私たちがこの場から離れたらすれば、何らかの魔法をこの静かな街に放つと言う事よ」
ディリオニスは震える手で剣先をエドガーに向けた。
エドガーはその様子を見ながら、唇を舐めた。
「ハッハッ、どうやら若い者には刺激が強すぎたようだわい。青筋立てて怒っておるわい」
ケラケラと笑うエドガーの顔にかつて、彼がディリオニスに見せた筈の弱い老人の姿は何処にも無かった。
あるのは狂気じみた笑顔と意思だけだろう。ディリオニスはこの場でエドガーを殺さなければならないと決意した。
かつて、中学生の頃に読んだ『走れメロス』に登場する主人公メロスが無理だと分かっていても、義憤に駆られて邪智暴虐なる王を殺そうとした気持ちが分かった。
彼はここで王を取り除けなければ、もっと多くの人が苦しむと考えたのだ。
今のディリオニスはメロスと自分を重ね合わせていた。
かの邪智暴虐なる老人をこの場で排除せねばならぬ、と。
魔道士ユーノ・キルケと護衛騎士のディリオニスの二人は慌ててガラドリエルとマートニアとガートルードの元に駆け寄ってきた。
ガラドリエルは慌てふためいた二人とは対照的に落ち着き払っていた。彼女の両腕がハッキリと組まれている事から、その様子がハッキリと分かる。
押し黙っている主人の代わりに答えたのはディリオニスの姉にして同じく護衛騎士のマートニア。
「どうかしたの?二人とも?」
「聞いてよ!あいつが逃げたんだッ!魔道士エドガーがッ!ぼくとあの人の二人で戦っている時にッ!急に煙をかき消すかのようにパッとッ!」
慌てふためくディリオニリの言葉にマートニアは口元を右手で覆う。
「じ、じゃあ……エドガーはまだ何処からか攻めてくるという事なの?」
「それだけじゃあないよ!」
ディリオニスは大袈裟に手を振って事の重大さを伝える。
「あいつは死んだ人間を吸血鬼にする魔法を使うんだッ!マートニアもドラキュラ伯爵くらいは知ってるでしょ!?あんな恐ろしい奴がぼくらの……」
ディリオニスは最後の言葉を言う前に、丁度、宿から出てきた女王一行の背後を震える手で指差す。
三人がディリオニスの尋常ではない様子に堪らずに背後を振り向く。
三人は背後を振り返った瞬間に各々の剣に手をかけた。
何故ならば、先程、殺した筈のオットー王子とその隣で不気味に笑う白いローブを着た不気味な老人が立っていたからだ。
全員がこちらに視線を向けたのを合図にしたのだろう。オットー・フォン・シュヴァルツ・クロインツは大きな声でマントを大きく右手で払ってから、両手を拳で握り、空中に掲げて叫ぶ。
「ハッハッハッ、どうやらオレにも勝機は巡ってきたようだな?なあ、後ろのお美しいお嬢さん……あんたに聞くんだが、さっき吸血鬼をどうやって倒したんだ?吸血鬼は日光か杭でしか殺せない筈だがな」
「簡単な話ですわ」
ユーノはオットーの質問に鼻を鳴らしてから答えた。
「この杖を吸血鬼が弱点とする杭に変えたのです。そうすれば、エドガー老人が去った後に、人間態となった吸血鬼の心臓を串刺しにできましたわ」
ユーノは杖をポンポンと鳴らしながら呪文を独唱して尖った木の棒と化した杖の先端をオットーに向ける。
オットーは吸血鬼の本能から、咄嗟に両手で顔を覆ったが、隣にいたエドガー老人に両手の甲を軽く叩かれて直ぐに手を離す。
「怯えてどうするのですか?あなたは二つの十字架の家を束ねる男ですぞ、あんな杭に怯えてどうなさるのです!?」
エドガーの喝でオットーは正気を取り戻して、反対にユーノを睨み付けた。
「そうだな、それにしても生意気な女だ……不快だな、ガラドリエルと同じくらいにな」
「あら、小さな事におこだわりになるのですね?オットー王子。私が女性である事がそんなにお嫌ですか?」
「やはり、気に入らん女だなァァ~!」
オットーは剣をユーノに向けて突進していくが、その剣はガートールードによって止められてしまう。
オットーの剣とガートールードの剣がかち合う。刃と刃の間で睨み合いが始まった。
オットーは続けて第二の攻撃を放つ。だが、ガートールードのバランスは崩れない。オットーの剣をそのまま受け止めていた。侮蔑の顔を浮かべるオットーをガートールードは黙って睨み返す。
そして、ガートールードはもう一度強い攻撃を放つ。
ここでオットー側のバランスが崩れる。
ガートールードがバランスを崩し、膝を付いたオットーの頭上に剣を振り上げた時だ。
オットーはここぞとばかりに巨大な一つの蝙蝠に変身し、次に多数の蝙蝠に変身して持っていた剣を地面に落としてしまう代わりに、ガートールードの攻撃を避けた。
この作業の行程が全て剣が地面に振り下ろすまでに全て行われていたのだから、吸血鬼の恐ろしさという物をガートールードは肌で感じ取っていた。
オットーはガートールードの背後を取りながら、けたたましく笑っていた。
「どうした?どうした?女ァァ~もしかしたら、お前なんぞに殺されるタマだと思ったのか?忘れたのか、オレは既に吸血鬼になっていたのをッ!」
ガートールードは答えない。答えない代わりに懐から取り出した小さなナイフをオットーに向かって放り投げた。
オットーは今度は巨大な蝙蝠になってナイフを交わす。
巨大な蝙蝠は意外と早いらしい。ガートールードが対処に困っていた時だ。
側に立っていたガラドリエルとマートニアが剣を引き抜く。
「あの、あたし達もお役に立てるのかどうかは分かりませんが、助太刀致します!」
「主人たるもの家臣ばかり戦わす訳にはいかぬからな」
二人の息の合う様子に勇敢なる騎士は苦笑し、それから夜の街の中一人で立っているオットーに向かって剣先を向ける。
「先程、ユーノが言っていたが、杭であいつの心臓を貫けるのなら、剣でも貫ける筈だな?どちらも尖っているし」
ガラドリエルの言葉にマートニアが突っ込みを入れる。
「もしかしたらなんですけれど、杭には何か特別な力が込められていて、他の尖ったものではいけないのかもしれませんよ?」
「かもしれんな」
ガラドリエルは微笑した。次に笑った形のままの口を開き、
「だが、試してみる価値はあるだろ?」
主人の言葉に二人の従者は同時に首を縦に動かす。
「先程は退席してすまんかったの、美しきお嬢さん……話は変わるが、ここら辺は静かじゃな、言っておる意味が分かるか?」
「あなたの仰る悪趣味な言葉の意味でしょうか?」
「ほう、流石は偉大なる魔道士の一人じゃな、物分かりが良くて助かるわい」
意味が分からずにキョトンとしていたディリオニスはたまりかねてユーノに尋ねた。ユーノはダメな生徒を根気よく教える優しい教師のような微笑を見せて意味を教授する。
全てが分かったディリオニスは堪らずに目を見開く。
「な、なんだって!?そんな事をすれば……」
「ええ、目の前のご老人はイカれてらしてよ。私たちがこの場から離れたらすれば、何らかの魔法をこの静かな街に放つと言う事よ」
ディリオニスは震える手で剣先をエドガーに向けた。
エドガーはその様子を見ながら、唇を舐めた。
「ハッハッ、どうやら若い者には刺激が強すぎたようだわい。青筋立てて怒っておるわい」
ケラケラと笑うエドガーの顔にかつて、彼がディリオニスに見せた筈の弱い老人の姿は何処にも無かった。
あるのは狂気じみた笑顔と意思だけだろう。ディリオニスはこの場でエドガーを殺さなければならないと決意した。
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