女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

文字の大きさ
9 / 133

第九話 ドイツ人街の戦いーその①

しおりを挟む
ルカ・ミラノリアは中国から駆けつけてきた叔父を叱責する。
「全く、お前がこの街を離れたせいで、街の殆どのビジネスが、カヴァリエーレの奴らに乗っ取られちまっている !」
「心配はねぇって」
ここで、でっぷりと太った良い貫禄の男が、初めて口を開く。
「まだ、オレたちのスポンサーであるジョゼフ・ギャリアー上院議員だっていらっしゃられているんだぜ、それにオレのこの"金棒"の威力を知ってるか?街のレンガなんか簡単にぶっ壊せるんだぜッ!」
"ドイツ人街のサンタクロース"こと、カルロ・ミラノリアはニッコリと笑ってみせる。何故"サンタクロース"と呼ばれるのかは、彼の太った姿と街の名士として振る舞うその姿と彼の笑顔が、クリスマスの子供たちの人気者であるサンタクロースと重なるからだと言われている。の割には、彼は白い髭も生えておらず、赤い服も着ていない。代わりに彼は彼の太った体に似合うピンクの背広に黄色のワイシャツそして、頭には白いボンビンと呼ばれる種類の紳士帽を被っていた。
「それでもだ……ギャリアー上院議員がヴィトの小僧に殺されれば、我々は強力な後ろ盾を失うことになるんだぞッ!何としても、お守りするんだ !いいなッ!」
しつこい甥の問いかけにカルロはたじろぐばかりで、両手を正面に添えて、ルカの小言を和らげようと努力していた。
「大丈夫だって、上院議員は必ず守ってみせるさ、少し護衛を強くすればな」
カルロは自分たちが今いる邸の地下にある地下牢の中にあるものを覗き見る。

ヴィトが、ドイツ人街の街に駐屯している部下の一人である、マウロ・マルティーノのアパートを訪ねたのは、アブラゼミが鳴り響くある日の事だった。
「どうだ?」
「ああ、カルロはキチンと戻ってきているよ、しかも上院議員の護衛までも務めるらしいぜ」
マウロはヴィトとは正反対のニキビだらけの、お世辞にも2枚目とも言えない男だったが、仕事はキチンとこなし、盗聴や盗撮などの重要の情報を与えるためにファミリー内での信頼は厚かった。
「上院議員の?」
「そうよ、あいつらのスポンサーこと、ジョゼフ・ギャリアー上院議員……噂じゃあ、こいつは戦時中に国民を煽動させ、戦争に発展させたらしい……それに筋金入りの人種差別主義者だよ、これも噂の域を出ないんだが……奴は南部白人優越主義連盟の名誉顧問を務めているらしい」
「成る程ね、ママと神とアップルパイを愛する"古き良きアメリカ市民"というわけか……」
ヴィトは皮肉たっぷりに呟く。
「そうさ !だから、こんな老いぼれにはサッサと退場してもらってさぁ~オレたちの手で、現在のアメリカっていうのを作り出してやろうぜ」
マウロは口元を一文字に歪める。
「了解さ !それよりもどうやって?」
「これだよ !!」
マウロは巨大なテープレコーダーを再生する。これには、彼の盗聴した電話の内容が記されているらしい。
『おい、カルロ !お前は一体どこにいたんだ!?お前が居なかったせいで、私はカヴァリエーレの奴らに命を狙われている身だッ!どうしてくれるッ!?』
『まぁ、落ち着いてください、上院議員……強力な護衛を付かせますので……何もかも私にお任せ頂ければ安心です !』
カルロは嗜めるように言ったが、ジョゼフは相変わらず不安そうな声だった。
『ともかくだ !早く迎えを寄越せ !私には、耐えられんッ!』
『とにかく、これ以上話をしていると、カヴァリエーレの連中やら、FBIやらに盗聴されているらしい可能性もあるんです。慎重にお願いしますよ』
『うるさい !!!』
受話器を乱暴に切る音がした。
「どうも、あの上院議員は短気らしいな」
「その通り……お前の女王陛下よりもな」
マルロは顎を高く上げて、首を高くしてみせる。
「そうだな」
ヴィトは整った口を一文字に歪める。
「ともかくだ……後は上院議員様を始末しようぜ、上院議員は、この後に近くの路地裏で麻薬を買うらしいぜ」
「どうして、それを知っている?」
「簡単な話だよ、あいつの行動をずっと監視してたからな、あいつは三日に一度は、この近くの路地裏でアヘンかマリファナか知らんが、それを買うらしい……そこをバーン !!とやれば……」
「全ては片付くんだろ?」
ヴィトは明るい声で言ってみせる。これから、ミラノリアの後ろ盾を一人消せると思うと、つい楽しくなってしまうのだ。
「あいつが来るのを待っておこうぜ、今日がその三日目だよ……」
マルロはスーツの胸ポケットから、タバコの箱を一つ取り出す。
「いただくよ」
ヴィトはスーツのポケットから、銀に光り輝くカルチェのライターを取り出し、渡されたタバコに火を点ける。
「ふぅ~うまいな」
「美味いだろ?キューバ製だぜ、それ」
「そうか、なら、話は変わるが、キューバにいるであろう、ルカの弟は?」
「さぁ、しらねぇなあ、そろそろ戻って来ると思うんだが……」
その時だった。安アパートの裏側にこの辺りには不釣り合いだと思われる黒のキャラデイックが停止した。
「あれだぜ」
マルロは窓の下の車を指差した。

しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

大陸一の賢者による地属性の可能性追求運動 ―絶対的な物量を如何にして無益に浪費しつつ目的を達するか―

ぽへみやん
ファンタジー
魔王城への結界を維持する四天王を倒すべく、四属性の勇者が選ばれた。【地属性以外完全無効】の風の四天王に対抗すべき【地の勇者】ドリスは、空を飛び、高速で移動し、強化した物理攻撃も通用しない風の四天王に惨敗を喫した。このままでは絶対に勝てない、そう考えたドリスは、【大陸一の賢者】と呼ばれる男に教えを乞うことになる。 // 地属性のポテンシャルを引き出して、地属性でしか倒せない強敵(主観)を倒そう、と色々試行錯誤するお話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...