女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

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第二十三話 最後の中枢メンバー

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ルカ・ミラノリアは一つの額縁に入った写真を眺めていた。その写真は叔父のカルロと弟のフランク。そして彼自身が笑顔で並んで立っている写真だった。
彼はその写真を見るなり、フゥと短いため息を吐く。
「フランクはいい子だった……おれの自慢の弟だったよ、将来は医者になっておれとカルロを助けてあげると言っていたな……」
ルカが珍しく涙を流していると、ファミリーの相談役コンシリエーレである、カール・ピーチタッカーズがドアを開けた。
「ドン・ミラノリア……あのホテルでセルマ・アランチーニが死亡しているのが発見されました !」
「そうか、となるとあの子は死んだのか」
ルカは三日も音沙汰がなかった弟の事を思い、涙を流していたのだが、やはり死亡していたという事実を知り、一層瞳から涙を溢れさせた。
「あの子には……あの子には家業を継がせるべきではなかった……」
ルカはまるで子供のようにワンワンと泣き出したのだ。
「ドン・ミラノリア……落ち着いてください、残る我々の区域はブランドニュースタウンのみです」
「分かっておるッ!このままではワシらは終わりだという事もな……」
悲壮な表情を浮かべるルカとは対照的にカールは口元を一文字に歪めていた。
「ドン・ミラノリア……お忘れですか?アジアの三龍会の事を……」
三龍会。その文字のことをルカはすっかりと忘れていた。三龍会はアジアの最大のギャング組織からなるコミッションであり、カルロはそこで色々と学んでいたのだ。しかし、ルカには一つの心配事が頭をよぎる。
「だが、三龍会に連絡を取るとなると……ワシらは今後奴らの支配下に置かれるかもしれん」
そう三龍会に依頼をするということは、今後ルカとミラノリア・ファミリーが三龍会の配下になるかもしれないという不安があったのだ。
三龍会は強いものには媚び、弱者には厳しいと言われるいわゆる"最低のマフィア団体"であったのだ。
カールはその事を思い出したのか、あっと呟く。
「もういい、お前は席を外してくれ」
その言葉を受け、カールはその場から離れた。そしてカールと入れちがう形で美しい長い金髪の女性が入ってきた。
「だから言ったでしょう、フランクでは無理だって」
「……メアリーか」
ルカはメアリーには悟られまいと、必死に気持ちを落ち着け、メアリーに酒を勧める。
「ええ、もらいましょうか」
メアリーはルカからバーボンを受け取り、グラスに軽く口を付ける。
「やはり、バーボンはいいわ、落ち着く」
「そうか、ワシは落ち着けんがな」
ルカは酒を楽しんで飲む、メアリーに嫌味を言った。そうでもしなければ、彼の精神は落ち着いていられない。
「フゥ、最初からお前の言う事を聞いておくべきだった……お前の言う事を聞けば、フランクは死なずに済んだからな……」
「そうね、あなたの判断ミスと言ったところかしらね」
ルカは無言だった。その様子を見てメアリーは哀れに感じたのか、自分の手のひらをルカの頰に優しく打ち付ける。
「大丈夫よ、わたしに任せて……必ずヴィトの奴を仕留めてみせるわ」
ルカはそんなメアリーを凝視し、懇願するような目でメアリーを見つめる。
「頼むぞ、オレの叔父カルロフランクの仇を討ってくれ」
メアリーはルカを優しく見つめ、「任せてよ」と呟く。
ルカはメアリーが退出するのを見計らい、自分の革張りの高価な椅子に背中を預ける。

メアリー・クイーンズはトニーの死を聞いた時から、ミラノリア・ファミリーはこれから落ちぶれるだろうと予測していた。事実トニーはやり手だったし、あの時にカヴァリエーレ・ファミリーがダウンタウンを奪還する戦力など保養していなかったからだ。だが、トニーはヴィトにより殺され、ダウンタウンは奪還されていった。
そればかりではない、その後からは火が枯葉を焼くかのように奪還が進んでいく。
あちこちの地域が奪い返され、ファミリーの幹部たちは次々と討ち取られていく。
誰の目から見てもミラノリア・ファミリーはかつての勢いを失い、落ち目のファミリーになり、ルカの或いはコミッションに潰されるのは目に見えていた。それでもメアリーはファミリーを救いたかった。不気味な力を有し、先住民からはポワカ魔女と言われた自分を雇ってくれたのは、ファミリーだったから。
「ルーシー・カヴァリエーレにヴィト・プロテッツイオーネ……この二人を殺せば、ミラノリアは救えるはずだわ、そしてファミリーに匿われていると言われているを捕らえれば、彼はにも許しを乞えるはずだわ」
メアリーは低い調子でそう呟いていると、ふと頭にある考えが浮かんだ。
「そうよ !直接屋敷に攻撃を仕掛ければいいんだわ !まだ部下だって残っているはずよ……ショートアイランド・ビーチに特攻をかければいいんだわッ!」
メアリーは考えを相談するために自身の腹心の部下であるジョナサン・トランシーノを呼びつけた。
「何でしょうか?」
ジョナサンは端正な顔の美男子であり、尚且つ金時計の着いたオーダーメイドのスーツが似合うキッチリとした印象を与える男だった。それだけではない、彼はいつもメアリーに良い助言アドバイスを与えていた。
「あなたに話したいことがあるの……わたし達の部隊だけでカヴァリエーレの屋敷を襲撃したいのだけど」
その問いにジョナサンはアッサリと首を横に振る。
「ダメです。わたし達の部隊だけでは弱過ぎます……一カ月前ならいざ知れず、今の戦力で総攻撃を仕掛けるなんていうのはとても……」
メアリーはそれを聞くなり、書斎の黒色の本革のレザーチェアから立ち上がり、ジョナサンの頰を優しく触る。
「ねぇ、誰がなんて言ったの?」
ジョナサンはメアリーの手を優しく離し、まさかと顔を青ざめる。
「そうよ、夜襲をかけるのよ、こんな状況でしょう?手段なんか選んでいられないわ」
メアリーは耳元で囁くように言った。
「分かりました……それ相応の構成員を用意しておきます」
ジョナサンは手のひらをギュッと握りしめながら言った。
「頼んだわよ、わたしの騎士さん」
メアリーは満面の笑みを見せた。
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