女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

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第二部 王国奪還

ゴッドファーザーと呼ばれた男ーその④

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ヴィトはルーシーを助手席に乗せて、車の中で先ほどの反省会に出ていた。
「参ったぜ、あんな風にまくし立てて喋られるとやりにくくてしょうがねえ」
ヴィトは豪快に笑っていたが、ルーシーはそれとは対照的に暗い顔でため息を吐く。
「どうするの?彼はまた明日も同じことをやるわよ、今は彼の考え方がバカげていると思われているけど、彼の考えが他の労働者たちにも伝わったら最悪だわ、これ以上給料を上げるのはハッキリと言って不可能よ !」
「権利証はこちらにあるんだ……当分の心配はいらんだろう」
ヴィトはカーラジオをいじくり回しながら言った。
「そうじゃあないわよ、例え法的な権利を使えなくても、彼らが決起してわたし達を襲ったら、どうするの?カヴァリエーレの戦力だけで対処できると思って?彼らの団結力はファミリーの構成員よりも上なのよ !!」
ルーシーは助手席で頭を抱えていた。
「心配するな、今晩に話をつけよう……それまでは近くのソーダーショップでお茶でもしようぜ」
ヴィトは口元を一文字に歪めたが、ルーシーはハァとため息を吐くだけだった。
「言っておくけど、わたしの目の前でタバコを吸う奴がいたら、放り出してよね !」
ルーシーは苛立ちもあり、不機嫌そうな声で怒鳴った。

夕方になった。大抵の仕事は終わる時間だ。ソーダーショップの中は仕事帰りの労働者たちで溢れていた。
「うん、ペプシもいけるな」
ヴィトは店頭で買ったコーラをチビチビと飲んでいる。
「そんな事よりも夕方だわ、わたしが飲んだコーヒーの数を見てよ、もう五杯目だわ !!あなたはコーラですって !今夜中に話をつけると言ったのは、あなたでしょう !もう夜よ !港に戻らなくていいの!?」
ルーシーの荒げる声に周囲が一斉に視線を向けた。
「落ち着きなって……みんな見てるぜ、まぁ、オレもボチボチ動く予定だったからな、さて勘定を……」
と、ヴィトがカバンを持ってイスから立ち上がろうとした時だった。店の入り口の方でジョセフと叫ぶ声が聞こえた。
「やあ、トミーにポールにピーターにそれから、ルー、みんな元気そうで何よりだよ」
ジョセフと呼ばれた少年は口ぶりこそ穏やかなものだったが、その四人の名前の少年に怯えていることは震えている声で分かった。
「なぁ、ジョセフここには来るなと言っといたよな、やっちゃダメと言われたことは小学生でも分かるぜ、お前……こりゃあ罰金もんだな、お前いくら持ってる?」
ピーターか、トミーか、ポールか、ルーか知らないが、一人のいかつい顔のリーダー格の少年がジョセフと呼ばれた少年を嘲笑いながら金銭を要求している。
悪質なイジメなのに誰も止めない。それだけこの少年が強いというか事なのだろう。
だが、ヴィトはこんな状況を見れば、頭より体が反応してしまうタイプだった。気付いた時にはヴィトは半ば反射的に少年を殴りつけていた。
「テメェ !何者だ !」
彼の取り巻きたちが、一斉にヴィトに視線を向けた。だが、そんな取り巻きたちよりも怒りを露わにしたのは、リーダー格の少年であった。
「おいおい、お前いい度胸じゃあねえか、オレを誰だと思って殴ってんだよ」
「お前が誰かは知らんが、弱い子から金銭を奪い取るのは、クズのする事だと思うぜ、おい、それから……」
ヴィトはジョセフと呼ばれた少年に目を向ける。
「キミはもう帰ってもいいよ、コイツの始末はオレがやっておく」
ヴィトの言葉に甘えたのか、それとも二人が怖くなったのか、叫び声を上げて店を跡にする。
「おいおい、オレは物事の通りっていうものをあいつに説いてたんだぜ、それをお前がめちゃくちゃにした……責任取ってもらうぜ」
デカイ男はヴィトに勢いよく殴りかかる。ヴィトは迫ってくる右ストレートを回避し、そればかりか、反対に男の腹に自分の右ストレートを食らわせてやる。
「ウゲェ!」
男は肺の空気を全て出してたような悶絶を吐いて、その場に崩れ落ちる。
「ひっ、ルー!!!」
取り巻きの男の一人が、その場に崩れ落ちて動かなくなる。学校一強いと言われている自分たちのリーダーが、目の前の若くて端正な顔立ちのスーツのよく似合う、喧嘩はあまり強くなさそうな男に一瞬で倒されてしまったからだ。
「まだやるか?」
ヴィトはスーツのポケットに手を入れながら尋ねる。
ワザとポケットに手を入れる事で、威圧感をアピールしていた。それに手を入れている事により、お前らなんぞ手をポケットに入れたままでも倒せるんだぜと証明しているのもあった。
男たちはたまらなくなり、倒れたリーダー格の少年を担ぎ上げ、店の前に停めてあるルーと呼ばれた少年の車である黒色の自動車に乗せ、店を跡にした。
「ヴィト……困るわ、勝手にあんな事をして……これから話があるんでしょう?警察を呼ばれたりしたら、どうするのよ?」
ルーシーは腰に手を当てて抗議する。
「すまん、だかなつい体の方が先に動いてしまっていて……」
ヴィトが頭をかきながら、項垂れていると、そこに先ほどのジョセフと呼ばれた少年が現れた。
「あの、ありがとう……アイツから助けてくれて……」
「いいや、気にするなよ、アレはオレが好きでやった事さ、お前が気にする事はないよ」
ヴィトは笑顔で語りかけ、そして彼が変な気を使わないようにと気さくに彼の肩をポンと叩く。
「気にするよ、ぼくいつもアイツにいじめられてて……ほら、こんななりだろ?冴えないSF好きで……いつもアイツらに宿題をさせられたり、お金を取られたりしてんだ」
ジョセフ人差し指をツンツンと交差させている。ヴィトはこの少年が舐められるのはこの態度のせいだろうなと考察した。
「なぁ、キミもそんな弱々しい態度を取るのはやめて、もっと堂堂としたらどうだい?なら、嫌な事はハッキリとノーと言ってやるんだッ!」
ヴィトはそう警告してやったが、少年は弱々しい態度を改める様子はなさそうだ。
「うん、そうだね、それよりも、二人に今のお礼として、ぼくの学校でやるダンスパーティーに招待したいんだ」
少年の言葉に二人は顔を見合わせた。 
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