女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

文字の大きさ
72 / 133
第二部 王国奪還

サウス・スターアイランド事変ーその④

しおりを挟む
「ギベェェェェェェェェ~~!!」
トロールは左頬と左目に銃弾を喰らい、その場に倒れる。
「騙しやがったな、この女ッ!」
トロールはすぐに立ち直ろうとするが、中々起き上がろうとしない。余程銃のダメージが大きかったのだろう。
「脚に当たった時は何ともなかったのに……どうしてだ?」
マイケルの質問は最もだ。実際誰でも思うだろう。
だが、ルーシーは銃が聞いた理由を簡単に説明する。
「それはね、銃をね、左目に当てたからなのよ、目は急所の一つよ、脳や心臓と同じくらい人間が喰らうと痛い場所なの」
ルーシーは自分のベレッタ拳銃の銃身を触りながら言った。
「スゲえよ……だから、あんたはあんな手に乗ったのか……」
マイケルは感嘆の声を上げている。
「わたしはできる限りは交渉するのだけれど、アイツに関しては最初から無理な要求ばかり、だから話すよりも撃った方が早いと考えたの……父もアル・カポネの使者を撃った時にそう答えんたんですって」
ルーシーが父親の例を出すと、全員が安堵のため息を吐く。
だが、それに納得していないのは、トロールだった。
左目を奪われた彼の怒りはまさに般若そのものと言っても過言ではない。
「クソッタレがッ!よくもよくも……オレにこんな真似をッ!ぶち殺してやるぜッ!」
トロールは棍棒を振り上げる。
「マズイわね……と言うとでも思ったの?」
トロールはルーシーの言葉に反応し、咄嗟に背後を振り返る。
そこにはヴィトが剣を構えて突っ込んできていた。
「なっ、どうしてお前がッ!?」
「お前に説明する義理はないッ!」
ヴィトの予想外のスピードにトロールは反応できずにそのまま黄金の剣に切り裂かれ、爆発する。
「ヴィト !大丈夫だった!?」
マリアはヴィトに駆け込み、抱きつく。
「大丈夫さ、キミにはどうして無事なのかを説明する義務があるからな……」
ヴィトはマリアに説明を始める。
「まず、オレはさっき落ちるのと同時に防御魔法ガード・マジックを使い、衝撃を和らげた……それから、機会を伺っていたのさ……最もドン・カヴァリエーレには分かっていたらしいがな」
ヴィトはルーシーに目をやる。
「そうよ、あなたがあんな事で倒されるなんて信じられなかったもの……何かあるんじゃないかと思って、話を引き延ばして、それからあいつに重傷を負わせたの」
ルーシーはそう言うとヴィトに目配せする。
「ふぅ、ビックリさせないでよね、でも、あなたが無事で良かった」
マリアは更に抱擁を強める。
「おいおい、よせよ……ファミリーのみんなが見てるのに照れくさいよ」
ヴィトは今更ながらだなと思いながら、頭をかく。
「ドン・カヴァリエーレ……いいんですか?」
「いいのよ、あれで」
マイケルの質問にルーシーは苦笑しながら二人を見つめる。

その後に一行は駅から出て、ハリーが立て籠もっているアパートへと向かう。
「ったく、どこもかしこも荒れ放題だ。マーニーの奴らめカタギにも手を出したのか」
忌々しげに吐き捨てたのは、マルロだった。
「いいや、マーニーだけなら、ハリーはオレらをここサウス・スターアイランドには呼ばないぜ、ハリーがオレらを呼んだのは、マーニーの奴ら以上の脅威を感じたからだろうな」
ヴィトの説明にマルロはうーんと唸る。
「つまり、ルカとかトーマスみてえなあんたの言う異世界の奴らとマーニーの残党が手を組んだというのか?」
「そうだよ、そうでもなければ、行く前にあんなに銃を運べとは言わん」
ヴィトの説明にマルロは納得したようであった。
「よく、来てくれました !ドン・カヴァリエーレに相談役コンシリエーレに、マリア !」
ハリーは笑顔で出迎えたが、それはプイスの顔は少し不機嫌そうだった。
「まぁまぁ、とにかくここで作戦会議でも立てましょうよ」
ハリーは部屋の中にヴィトとルーシーとマリアとプイスを入れ、他のメンバーは余っているアパートの部屋に待機するように言った。
「早速だが、この戦況を打開するにはどうしたらいいと思う?」
ヴィトはテーブルの上にきちんと全てコーヒーと紅茶が並べられたのを確認すると、話を切り出す。
「私に聞いているんですか?この戦況を打開するには、やはり全ての黒幕を倒すしかありませんよ、そのためにはルカの奴を殺した時みたいに一人一人着実に殺し、尚且つビジネスを全て奪っていくのが、ベストだと思われますが……」
ハリーの提案にヴィトは賛同しかねた。ヴィトは抗議の声を上げるために右腕を宙に挙げてみる。この方法は学生の頃から変わらない、意思表明の仕方であった。
ヴィトの右腕に気がついたのか、ハリーがヴィトを指名する。
「おれとしてはこの方法に賛同しかねるな、FBIの奴らの介入を招けば最悪だ……例えこの街にいるマリアの従兄弟とマーニー・ファミリーの奴らを壊滅させたしても、この街をオレたちの縄張りシマにできるかは分からないからな」
ヴィトの意見にハリーは肩を落とす。
「じゃあ、どうすれば?」
ハリーの問いかけに答える代わりにヴィトは紙とペンを要求した。それから、用意された真っ白な用紙にボールペンで何やら記入していく。
「それは?」
「この街を支配している連中の実態さ、おれ達の敵はマーニー・ファミリーとそれに手を貸しているマリアの従兄弟、つまり現在のフランソワ王国の勢力だ。数の上では恐らく奴らの方が圧倒的に上だ……だが、それでもやれる方法はある」
ヴィトの言葉には説得力があった。全員の視線がヴィトの端正な顔に向けられた。
「オレが言いたいのはな、敵の大将を討てば、相手の軍を直ぐに倒れると言いたいんだ。日本の戦国時代にしろ、中国の三国時代や春夏戦国時代にしろ、敵の大将を討てば、相手の軍は崩壊する。つまり、マーニー・ファミリーの現首領ドンとフランソワ王国の現女王エリザベス・ド・フランソワを討てば、オレ達に勝機が出てくる。しかもFBIやアメリカ政府の介入なしでだ……」
この言葉に他のメンバーは納得する表情を浮かべていたが、唯一ルーシーだけは納得できないようだ。
「何か質問でも?」
「一つあるわ、過去に誰も相手の大将を暗殺して勝利を収めたなんて例はないわ、古代中国の秦の始皇帝を暗殺しようとした燕王は失敗しているし、ナポレオンと戦った優秀なネルソン提督も戦いの途中に流れ弾に当たって死んだけど、イギリスはナポレオンに侵略されていないままだったわ、日本の天草島原の乱にしたって、総大将の板倉重昌は死亡してるけど、その後に一揆軍は全滅してるわ、その件についてはどう考えてるの?」
その問いに対するヴィトの答えは鮮やかなものであった。
「大丈夫さ、昔日本では忍者という存在があったが、忍者は相手方の殿様を暗殺するなどが任務だったそうだ。それに暗殺で歴史が動いたケースだってあるオーストリア皇太子の暗殺が確か、第一次世界大戦を引き起こしたんだよな?なら、暗殺でも歴史は動かせるといういい例だと思うぜ」
ヴィトの答えにルーシーは黙ってしまう。反論しようにもできないからだ。
ヴィトは全員を安心させるために一つの言葉を言い放つ。
「キミらの焦りは無理もないが、問題解決の手立てはキチリとある。それは、夜襲さ……丁度夜になるな」
ルーシーは慌ててアパートにかけてある時計を見る。時刻はちょうど午後七時であった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

大陸一の賢者による地属性の可能性追求運動 ―絶対的な物量を如何にして無益に浪費しつつ目的を達するか―

ぽへみやん
ファンタジー
魔王城への結界を維持する四天王を倒すべく、四属性の勇者が選ばれた。【地属性以外完全無効】の風の四天王に対抗すべき【地の勇者】ドリスは、空を飛び、高速で移動し、強化した物理攻撃も通用しない風の四天王に惨敗を喫した。このままでは絶対に勝てない、そう考えたドリスは、【大陸一の賢者】と呼ばれる男に教えを乞うことになる。 // 地属性のポテンシャルを引き出して、地属性でしか倒せない強敵(主観)を倒そう、と色々試行錯誤するお話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...