女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

文字の大きさ
74 / 133
第二部 王国奪還

サウス・スターアイランド事変ーその⑥

しおりを挟む
それから、お茶が二人のテーブルに届けられた。
「お待たせしました。アールグレイ紅茶です !茶葉の色は中国から輸入致しましたよ !」
お茶を運んできた緑色の背広と同じ色の中折れ帽を身につけた男は調子の良い声でお茶を置く。その様子が面白くなかったのか、エリザベスはまた顔をしかめている。
「どうしたの?」
メアリーの言葉にエリザベスはドンと目の前の机を叩く。たった今置かれたばかりの紅茶から水滴が飛ぶ。
「どうしたもこうしたもないわッ!あんたの部下はどうしてこんなにも無礼なのッ!」
メアリーはエリザベスの言葉が一向に理解できなかった。彼は普通にお茶を進めだけだ。それの何に落ち度があるのか理解できない。
「女王にそんな態度を取るなんて、許さないッ!このものを殺しなさいッ!」
エリザベスは持っていた杖の先端を男に向ける。
「どうしたんスか?俺なんかしたんスか?」
男の質問にメアリーは何もないわと男を下がらせた。
「どういうつもりッ!あいつはわたしに無礼な口を聞いたのよ、処分して当然でしょ!?」
エリザベスの言葉は半ば理不尽とも言えた。いや、そうとしか思えない。
中世のヨーロッパにもこんな王様はいなかっただろう。それくらい、メアリーにはエリザベスが酷い君主に思えた。
「ともかく……あなたの部下ではありません、彼はわたしの部下です。あなたに処分する事はできませんわ」
メアリーこの時の判断は賢明と言えた。少なくともルイにはそう思えた。確かに彼は自分たちの王国に仕える兵でもないし、臣下でもないのだ。彼女に処罰したり、処刑したりする権利はない。
「あんた……わたしに逆らう気 !いいわ……あたしに逆らうとどうなるか……」
その時だった。その手をルイが止めていた。
「陛下……彼女は平民とはいえ、仮にも同盟相手……もしものことがあれば、エドワード陛下が黙っておられませんぞ !」
ルイの厳しい顔にエリザベスはどうにもできなかった。
「さてと、失礼いたしましたな、話の続きをさせてもらいましょうか」
その後はルイとメアリーとの間で話が進む。丁度カヴァリエーレ・ファミリーとマリアの事が話題の登った時であった。勢いよく部屋の扉が開く。扉を開けたのは中世風の鎧を着た体格の良い中年の男だった。
「報告 !我々の兵が駅という施設に現れた謎の部隊と衝突 !!」
エリザベスは兵士に怒鳴りつけながら尋ねる。
「それは本当 !」
「ええ、少し前に衝突したと報告がありまして……」
その言葉にメアリーは思わず素早く息を吸い込む。
(まさか、カヴァリエーレ・ファミリーの連中がこんなに早く来るとは想定外だったわ、兄さんは死にアールは捕らえられ、あぁ……あたしはどうすればいいの?)
メアリーは苦悩した。
だが、悩んでばかりいる訳にもいかない。メアリーはすぐに大声で扉の外に待機していると思われる構成員を呼び寄せる。
「ドン・マーニー !お呼びですか?」
構成員の男はアロハシャツとジーンズパンツというラフな格好であったが、これがこのファミリーの通常の服であった。
「悪い噂よ、駅の方へと向かってちょうだい……それから、にも備えて、わたし達の今いるホテルの警備を固めてください !!」
と、ここにきてエリザベスが口を挟む。
「待ってよ !あたし達の軍がそんなに弱いって言いたいの!?」
どうやら、先ほどの負けた場合という言葉が癇に障ったようだ。
エリザベスは全身に極度の震えを起こしながら叫ぶ。
「落ち着いて、もしもの話よ、何だって仮定くらいはするでしょ?よくあるじゃあない『石橋を叩いて渡れ』と……わたし達はそれをやろうとしているだけなの」
メアリーは幼い子供を宥めるように言った。そうでもしないと目の前の子が落ち着いてくれないのだと考えたからだ。
「ううう……あんた、あたしを何処まで馬鹿にすれば気がすむの……」
今度は極度の震えだけではなく、口の端に唾液も溜まっている。
 「落ち着いてよ、これはわたし達の勝利に関わる重大な問題なの……カヴァリエーレ・ファミリーの連中がこの街を手に入れるという事は、わたし達がアメリカ政府に宣戦布告する事ができなくなるという訳なのよ、あなたはそれも分かってるの?」
メアリーの指摘にエリザベスは黙ってうなだれるしかない。
「分かればいいわ、それよりもカヴァリエーレ・ファミリーの奴らを片付ける方が大切よ、あなた駅に行って調べてきなさい !!」
メアリーの命令に男は頭を下げ、部屋を退出し、慌ててホテルの階段を駆け下りていく。
「あれで、応援になればいいのだけど」
メアリーは不安そうに左手をギュッと握りしめる。
「ふん、あれで応援かしら?あなた達の兵隊ってとても弱そうだし、あたし達の兵の役に立つかどうか……」
と、その瞬間にエリザベスの目と鼻先に一丁の拳銃が突きつけられる。
「そう、言っておくけど……わたし達の兵隊はみんな、これを持っているわ……魔法はないけれど、あなた達が魔法を発動させるより前に撃てると思うけど……」
銃を突きつけながら、メアリーはクスクス笑う。
「くっ、しょうがないわ……」
エリザベスは沈黙せざるを得なかった。

その後に不安な時間を過ごしているうちに再び扉がノックされる音が聞こえた。
「申し上げます !駅構内には銃死体と思われる遺体を初め、他の死因による死体がありました !」
「応援は間に合ったの?」
メアリーの問いかけに男は首を横に振る。
それをエリザベスはこれ見ようがしに腕を組む。
「残念ね、やはりあなたの兵隊は役に立たないと分かったらしいわね」
「まだ分からないわよ、それよりも無事に今晩を過ごせるように祈りでも唱えた方がいいんじゃあないかしら」
メアリーの指摘にエリザベスは首を傾げている。
「どういう事なの?」
「分からないの?夜襲をかけられる可能性があるのよ、寝込みを襲われたら、わたし達は一貫の終わりだわッ!」
メアリーの意見は正論だった。実際に夜に攻撃を仕掛けられ、勝敗を決した戦いが過去にあったのだから。
「つまり、用心しろという事かな?」
ルイの問いにメアリーは意を唱えないという消極的な形で同意してみせる。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

大陸一の賢者による地属性の可能性追求運動 ―絶対的な物量を如何にして無益に浪費しつつ目的を達するか―

ぽへみやん
ファンタジー
魔王城への結界を維持する四天王を倒すべく、四属性の勇者が選ばれた。【地属性以外完全無効】の風の四天王に対抗すべき【地の勇者】ドリスは、空を飛び、高速で移動し、強化した物理攻撃も通用しない風の四天王に惨敗を喫した。このままでは絶対に勝てない、そう考えたドリスは、【大陸一の賢者】と呼ばれる男に教えを乞うことになる。 // 地属性のポテンシャルを引き出して、地属性でしか倒せない強敵(主観)を倒そう、と色々試行錯誤するお話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...