女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

文字の大きさ
76 / 133
第二部 王国奪還

サウス・スターアイランド事変ーその⑧

しおりを挟む
ヴィトたちはホテルへと着くと、まず開かずの玄関に出会うことになった。
「こいつは厄介だな」
ヴィトが何気なしに漏らすと、マルロが後ろから入ってきた。
「いいや、大丈夫さ……オレはな、ピッキングが得意なんだよ」
マルロはそう言うと、懐から小さなピッキングキーを取り出し、ホテルの巨大な扉の鍵穴にねじ込む。
二、三分もガチャガチャと弄る音が聞こえ終わると、ホテルの扉が開く音がした。
「よし、行くぞ」
ヴィトの小さな号令でファミリーの構成員たちが一気にホテルの中へとなだれ込む。
「なっ、なんだ !」
と、声を上げたのは朝の番に来ようとしていたファミリーの構成員の男だった。アロハシャツとジーンズという姿から、それは容易に想像できた。
「カヴァリエーレ・ファミリーだよ !」
マイケルは男にショットガンを放つ。男は数メートル後ろに吹き飛ばされる。
「ようし、全員武器を構えて進むぞ !奴らに目にもの見せてやれッ!」
ヴィトの号令に合わせてトンプソンやグリースガンと言った武器を始め、様々な武器を持った構成員たちがホテルの中へと入っていく。そして中に入ると、散り散りになり、メアリー・マーニーとエリザベス・ド・フランソワの行方を探す。
「うわっ、ガーゴイルだッ!」
誰かの目の前にガーゴイルが現れたらしい。パニックになっているのか、大声を出し続けていたが……。
一発の銃声により、それはかき消された。その銃の持ち主はマルロだった。
「おい、こんな奴に怯えてちゃあ、このホテルでの勝利なんて無理だぞ !まだまだ得体の知れん怪物がいると思うんだからなッ!」
マルロの激昂に全員が沸き立つ。
「 よし、おれ達の……人間のギャングの恐ろしさをガーゴイルのクソどもに教えてやろうぜッ!」
そう叫んだのは、マイケルだった。
「その通りだッ!怪物になんぞ怯んでられるかッ!」
誰が叫んだのか、現れた怪物を見るなり、いきなりトンプソンを乱射する。怪物はハチの巣になる。
「どうだ !怪物なんてどうせ、こんなもんだッ!おれ達の敵じゃあねえ!」
その言葉に全員が賛同の意思を表す。
すると、次々と上の階へと上がる階段の前に中世の鎧を被った男とアロハシャツとジーンズ姿の戦闘員たちが現れた。
「よし、全員ここらで隠れる場所を見つけて、散開して、奴らを迎え撃つぜッ!」
ヴィトの命令に全員が一斉に一階の空いた部屋のドアや柱などの物陰に隠れながら、戦闘員たちや兵士相手に銃を撃ち続ける。


「よし、おれ達は行くぞ……一刻も早くエリザベスの奴とメアリー・マーニーを捕縛するんだ」
その言葉に目を丸くしたのはルーシーだった。
「本当に!?倒すんじゃあなくて?」
「その通りだよ、エリザベスを捕縛した後はマリア……キミに任せよう」
マリアは手で口元を覆う。
「あたしにエリザベスを任せろというの?」
ヴィトはその質問に敢えて答えない事で、消極的に賛同の意思を表示したのだ。
「分かったわ、あたしは女王だもの……あいつに対しては色々と思うことがあるけれど……何とか話してみるわ」
ヴィトはその言葉に優しげな顔を浮かべた。
「よし、それでこそ……おれがいや、ぼくが見込んだ女王さまな事だけあるぜ、おれはあんたに……」
その時だった。前方で強烈な銃の音がした。
「始まったらしい !おれは防御魔法ガード・マジックを使って、奴らを蹴散らすから、ルーシーにマリア !二人はおれを後ろから援護してくれッ!」
二人は同じタイミングで首を縦に動かす。
「それから……プイス……あんたはマリアとルーシーに向かってくる敵を風の魔法で倒してほしい……を守ってくれよ !」
という言葉がカチンときたのか、プイスは鼻の穴を膨らませていたが、すぐに意識を戻し、ヴィトの提案に応じた。
「よし、やってやるぞッ!」
ヴィトはまず自分に防御魔法ガード・マジックを使って、自分を緑の膜に覆わせ、自らも膜の中からトンプソンを撃ちながら、階段の前に溜まっている兵隊たちに突っ込む。
「グァ !」
「ギャァ!」
ヴィトのトンプソンの前に次々と中世の兵士とアロハにジーンズというラフな姿の構成員たちは次々と倒れていく。
「あいつを止めろッ!」
中世風の鎧の兵士は隣にいたファミリーの構成員に叫んだが、構成員は怯えるばかりだった。
それに加え、物陰からの魔法と銃による援護射撃……。兵士たちがヴィトに勝てる見込みは薄そうだった。
ヴィトはその様子を見ると、トンプソン機関銃を捨て、コートの下から剣を取り出し、構成員に兵士に戦いを挑む。
「ウォォォォォォ~!!」
ヴィトは兵士には魔法を唱える前に斬りかかり、ファミリーの構成員には銃を発砲させる前に斬りつけた。
「ちくしょう !化け物め……どうすりゃあいいんだ……」
頭の兜に飾りを付けた男ーー恐らく隊長である男は頭を抱えていた。すると……。
「お前はもう悩む必要はないぜ……」
ヴィトはそう呟くと、隊長に斬りかかった。隊長は爆発した。
「なっ、隊長がやられたァァァ~」
ヴィトはたじろぐ兵士に自分の剣の矛先を見せ、威嚇する。
「まだやるか?」
ヴィトの言葉と未だに剣が自分たち向けられている事を知り、全員は一斉にその場から散る。
「取り敢えず。一段落終わったな……」
ヴィトはその場で腰を下ろす。
「お疲れ様ヴィト……」
マルロはヴィトに彼が好きであるキューバ産のタバコを差し出す。
「ありがとな、マルロ……だけれども、おれは今はまだ吸いたくはないんだ。まだメアリーとエリザベスを倒した訳じゃあない、だから、本当に全てが終わるまでは……」
その時だった。マリアがヴィトに思いっきり抱きついてきたのだ。
「ヴィト……無茶して !あんたに何かあったらどうすんのよ!?あたし……」
マリアは無意識に唇を動かそうとしたが、その前にルーシーがヴィトを抱きしめた。
「ヴィト !また無茶して……あんたはどうしていつもそうなのよ !」
「大丈夫さ、おれは相談役コンシリエーレだぜ、相談役コンシリエーレには首領ドンを守る義務があるからな……」
ルーシーはヴィトの膝にそのまま横たわりたかったが、羨ましげな目で眺めるマリアを考慮してか、それはできなかった。
「とにかく……上の階には上がれんだ。急いで先に進もう」
ヴィトの言葉に全員は黙って従った。

階段を歩きながら、マイケルはパットに何やら耳打ちする。
「なぁなぁ、パット……絶対あの二人相談役コンシリエーレに惚れているよな」
「おい、声が大きいぞ」
パットは小さな声で嗜める。
「でもよぉ~あんなに密接すんのって、変だぜ、やっぱ惚れてるとしか……」
マイケルの口をパットは自分の左手で防ぐ。
「その事はみんな知ってんの……敢えて黙ってんの !分かっとけよ !」
パットの言葉にマイケルはへいへいと軽い調子で答えた。
(チェ、顔がいいのって得だよな、特にドン・カヴァリエーレは男なら誰でも手に入れたい美貌だよ、ありゃあ、オレも狙ってたのに……)
マイケルは少し憎らしげな目でヴィトを睨みつける。
(いいよな、お前さんは顔が美形で……)
だが、ヴィトがマイケルの嫉妬に気づく事はなかった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

大陸一の賢者による地属性の可能性追求運動 ―絶対的な物量を如何にして無益に浪費しつつ目的を達するか―

ぽへみやん
ファンタジー
魔王城への結界を維持する四天王を倒すべく、四属性の勇者が選ばれた。【地属性以外完全無効】の風の四天王に対抗すべき【地の勇者】ドリスは、空を飛び、高速で移動し、強化した物理攻撃も通用しない風の四天王に惨敗を喫した。このままでは絶対に勝てない、そう考えたドリスは、【大陸一の賢者】と呼ばれる男に教えを乞うことになる。 // 地属性のポテンシャルを引き出して、地属性でしか倒せない強敵(主観)を倒そう、と色々試行錯誤するお話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...