女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

文字の大きさ
77 / 133
第二部 王国奪還

サウス・スターアイランド事変ーその⑨

しおりを挟む
エリザベス・ド・フランソワは爆発音に心地の良い眠りから解き放たれた。
「一体何が起きたのよ!?」
エリザベスの疑問に慌てふためいた顔のルイが部屋に入ってくる。
「大変です !陛下 !マリア・ド・フランソワ旧王国国王陛下とその騎士団どもが、我々の城へと攻め入って参りましたッ!」
エリザベスは慌てて、杖を取り、女王用の高価なドレスに身を包む。
「アイツ……」
エリザベスはメアリーへの怒りを露わにする。彼女は夜襲の可能性はないと言っていた。それなのに攻められている。これは極刑ものだった。エリザベスはメアリーに抗議するためにメアリーの部屋へと向かう。
彼女の部屋は彼女の部屋の隣なのだ。
「メアリー !!あんた !この状況をどう説明するのッ!?」
メアリーはドアが勢いよく開かれた事に驚いたが、すぐに冷静な顔つきに戻る。
「どうしたもこうしたもないわ……アイツらが夜襲をかけてきたのよ、いやでも少しだけ、日は登っているから、正確には夜襲とは言えないけど……」
メアリーの冷静な分析に苛立ったのか、エリザベスはメアリーの襟を勢いよく掴む。
「全部……全部……あんたのせいよ !あんたが警備を疎かしたからッ!」
メアリーはそれに動じる事なく、エリザベスを勢いよくその場から突き放した。
「何すんのよ !あんた仮にも女王陛下に向かって……」
鼻の穴を膨らませているエリザベスに動じる事なくメアリーは彼女に拳銃を突き付ける。
「いい、あんたが国でどんなに偉いのかは知らないけれど、ここはアメリカなの……自由の国よ、だから、あんたが女王だの何だの言っても、ここでは何の意味もないわ」
メアリーの表情は冷徹そのものであった。彼女は自分の遥か下にエリザベスが居ると思って居る。
少なくとも彼女が始皇帝やナポレオンのように優れた君主ではあり得ない。彼女は拳銃の引き金に手を当てながら考える。
「この無礼者がッ!フランソワ王国女王の名において、処刑す……」
丁度エリザベスがメアリーに杖を振りかざそうとした時である。階段の下から複数人の声が聞こえてきた。
「どうやら、カヴァリエーレの連中がもうここまで来たみたいね、あんたも、もうおしまいじゃあないの?」
メアリーは拳銃を引っ込め、鋭い視線を向けたが、エリザベスは手をプルプルと震えさせるばかりだった。
「本当に役に立たないわね……」
メアリーは地面で何やら、ブツブツと呟いている女に哀れみの目を向けた。もう、彼女を馬鹿にする気にもなれない。怒りを通り越して……。という奴だ。
「あんたはそこで、大人しくしてなさい、それから……これからは夢を見て過ごすのね、自分は女王陛下なんだというね……」
メアリーは部屋を跡にした。部屋に一人妄想に取り憑かれている女を残して。

ヴィトは剣と銃を交互に使い、上へ上へと登っていく。その途中に立ちはだかる敵は敵のギャングだろうが、兵士だろうが、或いはガーゴイルだろうが、全て倒してきた。
「みんな、無事かッ!」
ヴィトは一階から付いてきてくれた全員に顔を向ける。
「大丈夫よ !あんたは目の前の事だけに集中しなさい !!」
マリアは魔法の杖を宙に掲げながら言った。
「そうよ、あなたが後ろを振り向いていては、わたし達は目の前の敵に集中できないわ !」
ルーシーはトンプソンの銃口を下に降ろし、大きな声で答えた。
「いよいよじゃ、あと一歩で陛下を国を取り戻せるッ!エリザベスを倒せばなッ!」
プイスは自慢のあご髭を撫でながら言った。
「オレ達も付いているぜッ!」
マルロは拳銃を見せながら言った。
「よし、オレらでこの国を救い、この街を手に入れ、カヴァリエーレ・ファミリーもとい、マリア・ド・フランソワ王国騎士団の名声を轟かせてやろう !」
ヴィトはその声とともに近くの手下に目配せし、手榴弾を受け取る。ヴィトは安全ピンを外し、最上階の豪華な黒の扉の前に投げる。手榴弾が爆発し、ホテルの最上級の部屋を象徴する扉は吹き飛ばされた。
その部屋の目の前に一人の女が姿を現していた。
「うふふ、いらっしゃい……ヴィト・プロテッツオーネとカリーナ・ルーシー・カヴァリエーレに……」
それからと、彼女はマリアに目をやる。
「あなたがマリア・ド・フランソワね、旧フランソワ王国の女王陛下……」
マリアはその言葉に異議を唱えた。
「違うわ !わたしこそが正統なるフランソワ王国の女王なの !アイツエリザベスは偽物の女王よ !!」
マリアの言葉は空中に響くほど、大きなものだった。それにメアリーも目を丸くしている。
「驚いたわ、あなたがそこまでやる気に燃えていたなんてね……でも、関係ないわ !」
メアリーは懐から拳銃を取り出す。
「それは?」
マリアの疑問にメアリーは大きな笑い声で答える。
「拳銃よ、ここから撃てば、あんたの頭を撃ち抜くくらい余裕だわ、あたしだってギャングの端くれよ、いざって時の覚悟くらいできてるわ」
ここに来て、ヴィトは大きく身を乗り出す。
「やめときな、あんたはギャングには向いていない人間さ、それにマリアはファミリーの一員じゃあない、そんな奴を撃ってもしょうがないだろ?」
ヴィトは自分を指差す。
「オレを撃ちな……今ここでオレを殺せば、カヴァリエーレ・ファミリーに損害を与えられるだろうな、仮にあんたがこの場でルーシーに殺されたとしても、ファミリーはかなりの損害を被ることは容易に予想がつくよ、いずれはコミッションの一ファミリーとして吸収されるか、或いはコミッションに全面戦争を仕掛けて、カヴァリエーレ・ファミリーは壊滅だ。あんたにとっては願ったり、叶ったりだろ?」
ヴィトの言葉にメアリーは引き金を引くのを一瞬迷った。
だが、それは戦場では命取りになる行為だ。ましてや、ギャング同士の抗争。情け容赦などあるわけがない。
彼女の体をショットガンが貫く。マイケルのショットガンだった。彼の銃口から白い煙が出ている。
「助かったよ、お前に借りができたな」
ヴィトはマイケルに微笑みかける。
「ふん、本当に借りだからな、それよりももっと進まなくてもいいのか?」
マイケルの言葉にヴィトは全員に進むように号令をかける。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

大陸一の賢者による地属性の可能性追求運動 ―絶対的な物量を如何にして無益に浪費しつつ目的を達するか―

ぽへみやん
ファンタジー
魔王城への結界を維持する四天王を倒すべく、四属性の勇者が選ばれた。【地属性以外完全無効】の風の四天王に対抗すべき【地の勇者】ドリスは、空を飛び、高速で移動し、強化した物理攻撃も通用しない風の四天王に惨敗を喫した。このままでは絶対に勝てない、そう考えたドリスは、【大陸一の賢者】と呼ばれる男に教えを乞うことになる。 // 地属性のポテンシャルを引き出して、地属性でしか倒せない強敵(主観)を倒そう、と色々試行錯誤するお話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...