23 / 48
二人の悪役令嬢
しおりを挟む
結局私は魔道具を取ってしまいました。
取らされたというのが正しいでしょうか。先生の話のすぐ後にやってきたさやかさんとレイザード様の二人。
「何だまだ取ってないの」
「早く取らないとトレーフルブランさん」
その二人に掴まれて無理矢理。今までの先生との会話が全部バカらしく思えるほどあっさりとした終わりでした。
「んじゃ。早速魔道具組み立ててみようぜ」
「そうだね。何なんだろう」
二人が私の手元を覗き込みニコニコします。五つのダンジョンで手に入れた魔道具はもとは一つで組み立てることで本来の姿を見せるのです。それを組み立てるように彼らが促してくるのに抵抗する気力もなく私は組み立てました。
出来上がったのは子供の背丈よりもある一本の笛です。
二人がきょとんとします。
「笛? これで魔王を封印するのか。……どうやって?」
「笛だし子守唄とかかな」
変なのと二人が話すのに分かっているじゃないかと思いましたが口にはしませんでした。
「じゃあ、早速魔王の所に行こうよ」
さやかさんが言います。
「おお、そうだな」
レイザード様も言います。
「行くぞ、トレーフルブラン」
先生も言います。
私は何でこんな事になったのかと思いました。こんな事になる筈ではありませんでした。どうやっても私には魔王を封印できないのですから……。でもそれなら、
考えて私は首を振りました。
「いいえ、ここから先は私一人で行きます」
「トレ「私一人で行かなければならないです」
先生の言葉を遮って私は告げます。先生が目を見開きました。さやかさんもレイザード様も私を驚いた顔で見ています。
「え、でも」
「私一人でも大丈夫です」
「私は」
「心配しないで。貴方はよくやってくれました。貴方がいてくれたから魔王を止めることができた。みんなにもそう話しますから」
「でも……。それにそうじゃなくて」
不安そうな顔をさやかさんにレイザード様がしています。私はその不安を消し飛ばすために笑います。
「本当に大丈夫ですわ。むしろ一人でなくては私は負けてしまいます。魔王とはそう云う相手なんですの。だから一人で行かせてくださいな」
二人が戸惑います。私は戸惑うさやかさんに向き合います。そして彼女に笛を渡しました。
「さやか様。これを持っていてくださいな」
えっと彼女が呟きます。
「これ、「私には必要ありませんの」
「必要ないって……」
「大丈夫ですから行ってまいりますわ」
私は二人から距離を取って優雅に会釈します。さやかさんが何を考えているのためだよと言ってきます。トレーフルブラン、俺も行くからとレイザード様が怒鳴ります。追いかけてこようとする二人を先生が止めました。
「トレーフルブラン。本当に大丈夫なんだな」
黒い目に私は少し固まりました。考えて口にします。ええと。なら行って来いと先生が言いました。
私は魔王のもとに向かいます。
……魔王ではない別のものと対峙するために。
かつてこの国には強大な王がいたと言います。
強き魔法の力を持つ王は大層傲慢で強欲だったそうです。富、女、名声。この世のありとあらゆるものを欲しがり手に入れたと。それでも王は満足できずに果てにはこの世界にいるすべての人々の命、この世界そのものを欲したと云うのです。王は世界中に戦争を仕掛けその力を持って世界を支配しようとしました。
そんな王の暴虐に立ちあがったものがいました。
その男は王を殺しました。
だが強欲だった王はその凄まじい力を持って死んだ後もなおこの世にしがみ付いたのです。
器をなくした力は膨れ上がりこの国にあったありとあらゆるものを飲み込み食べつくしました。そしてその牙は世界へと向いたのです。世界すらも飲み込もうとした王の前にある日一人の女が現れました。
その女が吹く笛の音は美しく不思議な力を持っていました。
女がその笛を吹くと王の力は消し飛び王は眠りについてしまいました。そして王は封印されたのです。
その王こそが今や魔王と呼ばれる存在なのでした。
魔王が封印されたのはかつて王が住んでいた城のある場所です。もう何百年も封鎖され続けているその土地には草木一本生えていません。これこそが魔王の呪いなのだとか。その何もない場所に聳え立つのは住む人もいなくなり寂れた崩れかけの王城です。何もなくなったこの国でこれだけが残っていたそうです。人々はその場所を恐れ封鎖した。
私はその城の扉に手を触れます。扉を押そうとして迷います。本当にあけてもいいのかと。迷ってそれでも私は開けます。
私はちゃんと話したいのです。向き合いたいのです。
扉を開けると黒い靄が私を包んできました。それは数分私を包み込むとさっと去っていきます。そして私の前で一つどころに集まり何かの形を成していきます。
私はそれを見つめます。
目の前にある靄こそが魔王でした。
王の魂である魔王には形がありません。黒い靄です。その靄であってさえとてつもなく強い力を持つのですが、元は人間だった魔王は人の姿を一番に欲します。
その為魔王は人を食らおうとするのです。人の魂のみを飲み込み、残った器を自分のものにしようとするのです。
ですが人の魂を飲み込むのは簡単なことではありません。器ごと食べるのなら一瞬ですが器を残して魂を食らうにはその魂の輝きを鈍らせなくてはなりません。だから魔王はターゲットを決めたらそのものの心の中を見て一番醜く弱い部分に変身するのです。
ゲームではさやかがターゲットにされました。
そしてその時に前に話したもう彼女が一人乗り越えたかつての世界に帰りたいと望む気持ちに変身したのです。帰りたい何で私がこんな所に来なくちゃいけなかったのみんなに会いたいよと喚く魔王にさやかは揺れてそうだ帰りたいんだと同調してしまいます。そこを食らおうとする魔王でしたがセラフィード達五人に一旦弾かれ、さらに五人の言葉でさやかは我に返り、ここで生きていくことを決めるのでした。
そして魔王を封印する。
そう云う展開でした。
その時の魔王は黒い靄が集まったものではありましたがさやかの姿をしていました。映した心の形をするのが魔王なのです。
私は目の前の靄を見つめます。
もぞもぞと動いていた靄はもうだいぶ形になってきていて……
目の前には肩までの髪に長い前髪、左目には眼帯をした三十代余りの女性がいました。
ああ、やはりと私は口にします。
「やはり……私の場合は私__わたくし__ではなく私__わたし__になってしまうのですね」
私ではない私を見て私は泣きたい気持ちで笑います。
目の前にいる女性は私とは似ても似つきません。でも私です。かつてのトレーフルブランとして生まれる前の私。白詰そうかです。
先生に言われた言葉を思い出しました。
それを言われたのはセラフィード様たちに陥れかけられたあのパーティーの日。先生が最後に問うたこと、いや言ったことか。
「俺にはお前が二人いるように見える」
私はそんな訳ないじゃないですかと口にしましたが、先生の言ったことは正しかった。私は二人いました。
今ここにいる十六年この世界で生きた私と、前世で三十年生きた私。
その二人が私の中には今もいるのです。
目の前で白詰そうかが、魔王が叫びます。叫ぶように咽び泣きます。
「いやあああああああああ!いやあああああああ!! もういや、もういやもういやああああ! 殺して死にたい死にたいもう嫌なの」
その心は痛いほど私に突き刺さります。
嫌だと彼女は泣きます。もう生きたくないと生きるのが怖いと泣きます。嫌だと言います。
私の中にある彼女の記憶がよみがえります。
白詰そうかは産れた時から暴力の世界にいました。
母親も父親も彼女に拳を振るい怪我をしない日は一日たりともありませんでした。人買いに売られて買われた後も暴力を振るわれ続けるのに変わりはありませんでした。その過程で彼女は左目を潰されました。地獄のような日々の中、ある日彼女は車に乗せられて、彼女を買っていた人間と同じようなものが集まる会に連れていかれました。そしてその帰り、彼女は車のドアを無理矢理開けて外へと飛び出した。
車のすぐ横は崖でした。
ガードレールから飛び出した彼女の体は真っ逆さまに落ちていきます。
その時彼女に死への恐怖ありませんでした。車から飛び降りたのでさえ逃げたいと言う思いより死にたいと言う思いの方が強かったのです。
だけど彼女は木々に引っ掛かることで運良くかもしくは運悪くか助かってしまったのでした。
その後数日山の中をさまよった彼女は警察に保護されて、児童施設へと行くことになりました。彼女は人を前にしてろくに話すこともできず、左目の傷のこともあり周りは彼女を腫れもの扱いしました。
そして一人ぼっちのまま二十年生きました。
彼女は人が怖く人が嫌いでしたが、それよりずっと一人が怖くて一人が嫌いでした。一人の夜彼女は毎日幼い頃の夢を見ては泣き叫んでいたのです。
だから簡単に恋に落ちました。そして一人になることを恐れるあまり自分を捨てた男を刺して、自分もまた死んだのです。
そんな彼女、今や私の記憶を思い出したのはセラフィード様とさやかさんのキスを見た日ではありません。あの日前世の事を思い出しましたが、一番大きな痛みとなった暴力の日々だけはぼんやりとしか思い出さなかったのです
防衛本能がそうさせたのでしょう。
でも夜遅く学園に残ったあの日、不審者に負けて襲われそうになったあの日に全てを思い出してしまいました。
あの日から私と彼女は心の中完全に分かたれてしまいました。
その前までも私たちは一人には成り切れずにいました。
十六年この世界で生きていた私は何だかんだ言いながらもセラフィード様の事を憎みきることができなかったのです。あの人を支えたいと思い続けていました。だけど三十年生きた前世の私は死にたい気持ちが強い上に、私がいながらさやかと付き合いだしたセラフィード様に結婚詐欺師の姿を重ねて憎しみ酷い目に合わせたいと思っていました。
その二つの心は微妙な形で融合してころころころころ思考が変わってしまっていました。
それがあの日を境に二つに分かれて、白詰そうかの方は殆ど私の奥に隠れてしまいました。
忘れていた痛みを思い出した彼女はこの世を酷く憎み例え私と言う形であってもこの世に居ることを嫌ったのです。それでも時々は私の代わりに外に現れてセラフィード様たちに憎しみをぶつけていました。
そんな彼女の形をした魔王が今私の前でこの世界への憎しみを叫びます。
「死にたい死にたい! 死にたいのもう一人は嫌! 誰も助けてくれないこの世界なんて大嫌い」
彼女はずっと一人、最後の時まで守ってくれる人も助けてくれる人も持ちませんでした。死にたいと彼女は言います。
そうずっと死にたがっていたのは彼女だったのです。私も最初の方は彼女に引きずられ少し死にたかった。疲れていましたから。それにセラフィード様に必要とされなくなったのだと思いましたから……。
でもその気持ちは少しずつ小さくなっていて……、今の私には死にたいと思う気持ちは残っていないのです。
それでも死にたいのは死ななくてはならないと思うのは彼女がいるから。
彼女は死にたいと思い憎しみながらも私の気持ちを優先させてくれました。
セラフィード様に何かをする時も決して危ないことはしませんでした。決定的になるような取り返しがつかなくなるようなこともしませんでした。したのはあのシャンデリアの仕掛けぐらいでしょうか。それも私が失敗させてしまいましたが。本当は殺したいともっと酷いことをしたいと思っていたにもかかわらず私の為に我慢してくださいました。それに私の望む私の姿を壊さないでいてくれました。
だから私はせめて彼女のために死んであげたかった。
この世界が怖い一人が怖いとなく彼女の為にこの世界から去ってあげたかったのです。
だけど生きろと言われました。
生きたいと思いました。みんなの傍で私は……。
でも彼女が泣くのです。
目の前にいる魔王が死にたい死にたい嫌だと。
それに私の中にいる白詰そうかが泣きます。
死にたいと泣き叫びます。
目の前にいるのはあくまで魔王。私の中にいる彼女の形をしているにすぎません。
本物の白詰そうかは私の中にいて、私の中で泣くのです。
痛いほど苦しいほど彼女の気持ちが伝わってきて……、そしてそれが私の心になっていく。幾ら二つに分かたれていようと私の心に違いはないのですから。私の心が叫びます。怖い辛い苦しいともう嫌だと。
死にたいと。
私自身が思います。
ああ……やはり私は……
「生きろ! トレーフルブラン!」
死にたいと口にしてしまいそうになりました。その時に声が聞こえてきます。私の心を遮って声が。私は後ろを振り返りました。
扉の傍に先生が立っていました。
「生きろ! お前がそう望むなら。苦しくても辛くとも生きろ。お前は生きたいんだろう!」
叫ばれて……私は、私を取り戻しました。彼女のために死んであげたかった。だけど生きていたい私を私は捨てられないのです。捨てようとしても私の元に届けられてしまう。
だから私はごめんなさいと口にしました。
ごめんなさいと私の中の私に向けて言葉にしました。私の中の私が泣き叫びます。そんな彼女に向けてだけどといいました。だけどと声に出しました。
「だけどもうあなたを一人に何てさせませんわ。私もう一人に何てなりません。誰にも私を裏切らせない。裏切ろうだなんて思えないような素敵な私であり続ける。ずっと傍に居たいと思える人々の傍にいて見せますわ。
トレーフルブラン・アイレッドの名に懸けて誓いますわ」
心の中の叫びが弱まりました。一人は嫌だと彼女が言います。その思いが伝わりそして私のものにもなる。私は深く頷きます。私だっていやです。一人はもう寂しくて嫌です。だからもう一人には成らないと言います。
そして先生を見て言います。
「それに今の私__わたしたち__には助けに来てくれる方もいますのよ」
黒い靄が音を立てて霧散していきます。絶叫のような音が廃城の中響き渡ります。
私の中ではまだ私が泣いています。一人にしないで、一人にしないでと……そして言います。
約束だよと
だから返します。ええ、約束ですわ。私約束は絶対守りますわ。
ほぅと先生が息を吐きました。飲まれなかったのかと言います。
「知っていたんですか」
「まあな」
「私の事も」
「最後まで半信半疑ではあったがそうでないと説明がつかないところがあったからな」
「そうですか……」
礼を言おうとしてやめました。
その前にやらねばならぬことがまだ二つほど残っているのです。
私は霧散し、力の弱まった魔王と向き合います。
「私貴方を退治しに来たわけではありませんの。その証拠に貴方を封印するための笛を持っていませんわ」
何をと魔王が言います。先生はじっと私を見ています。
「私は貴方を封印なんてできませんわ。だって……あなたは私と同じなのですもの」
靄が動きます。信じられない事を聞いたようにゆらゆら揺れて弾けます。
「貴方も一人が寂しいのでしょう」
「何を」
「分かっていますのよ。私貴方のことを知っていますの
貴方は一人が寂しいだけ。強大な力を持つあまり誰も貴方の傍にいてくれなくて……。それに最後は信じた人に裏切られたのでしょう。私も一緒。私たちみたいな寂しがり屋は誰でもすぐに信じてしまうんだから少しは優しくしてもらいたいものよね、裏切るなんてひどいわ……」
私は靄に手を伸ばしました。触れた靄は冷たいけれどドロドロとはしていなくて……。撫でるような手の動きで魔王に触れます。魔王は私と一緒ただの寂しいだけの存在だと私は知っていました。だから絶対に封印などできないと分かっていました
私と同じ寂しいだけの存在を封印するなどとそんなの自分自身を否定するようでできないと……。
だから考えました。
そして私は決めました。なら私はこれを利用して見せようと。
ならどうするというのだと魔王が聞くのに私は微笑んで見せます。
「貴方私と共に生きる気はなくて」
「何を」
「私の中に入って私と共に暮らしましょう。私は周りの人間に文句を言わせたりしませんわ。私が好きなように生きて見せる。貴方が望むこともそれなりに叶えてやれます」
魔王がぽっかんと私を見あげています。顔はありませんが何となくの雰囲気でそうだなと思えます。ぽわんぽわんといくつか靄がはじけました。何のメリットがあるんだと魔王が言います。
「貴方は封印されなくてすむ。私は貴方を封印しなくてすむ。
それに私たち二人とも一人にならなくてすみますわ。ねぇ、友達になりましょう。ずっと一緒にいる友達に。私寂しいのよ。
貴方ならわかるでしょう」
「それがお前の答えか。」
魔王を身に宿した私に先生が聞きます。
「ええ」
私は美しい笑みを浮かべて応えて見せます。行くのかと先生が聞いてきました。
「そうですね。ですが、まずは王城に行って書類を作りに行かねばなりませんね。他の人々にまずは認めてもらっておかなければ。それがすみましたら……」
さあ、急がなければなりません。今日中に最後の決着をつけたいですから
取らされたというのが正しいでしょうか。先生の話のすぐ後にやってきたさやかさんとレイザード様の二人。
「何だまだ取ってないの」
「早く取らないとトレーフルブランさん」
その二人に掴まれて無理矢理。今までの先生との会話が全部バカらしく思えるほどあっさりとした終わりでした。
「んじゃ。早速魔道具組み立ててみようぜ」
「そうだね。何なんだろう」
二人が私の手元を覗き込みニコニコします。五つのダンジョンで手に入れた魔道具はもとは一つで組み立てることで本来の姿を見せるのです。それを組み立てるように彼らが促してくるのに抵抗する気力もなく私は組み立てました。
出来上がったのは子供の背丈よりもある一本の笛です。
二人がきょとんとします。
「笛? これで魔王を封印するのか。……どうやって?」
「笛だし子守唄とかかな」
変なのと二人が話すのに分かっているじゃないかと思いましたが口にはしませんでした。
「じゃあ、早速魔王の所に行こうよ」
さやかさんが言います。
「おお、そうだな」
レイザード様も言います。
「行くぞ、トレーフルブラン」
先生も言います。
私は何でこんな事になったのかと思いました。こんな事になる筈ではありませんでした。どうやっても私には魔王を封印できないのですから……。でもそれなら、
考えて私は首を振りました。
「いいえ、ここから先は私一人で行きます」
「トレ「私一人で行かなければならないです」
先生の言葉を遮って私は告げます。先生が目を見開きました。さやかさんもレイザード様も私を驚いた顔で見ています。
「え、でも」
「私一人でも大丈夫です」
「私は」
「心配しないで。貴方はよくやってくれました。貴方がいてくれたから魔王を止めることができた。みんなにもそう話しますから」
「でも……。それにそうじゃなくて」
不安そうな顔をさやかさんにレイザード様がしています。私はその不安を消し飛ばすために笑います。
「本当に大丈夫ですわ。むしろ一人でなくては私は負けてしまいます。魔王とはそう云う相手なんですの。だから一人で行かせてくださいな」
二人が戸惑います。私は戸惑うさやかさんに向き合います。そして彼女に笛を渡しました。
「さやか様。これを持っていてくださいな」
えっと彼女が呟きます。
「これ、「私には必要ありませんの」
「必要ないって……」
「大丈夫ですから行ってまいりますわ」
私は二人から距離を取って優雅に会釈します。さやかさんが何を考えているのためだよと言ってきます。トレーフルブラン、俺も行くからとレイザード様が怒鳴ります。追いかけてこようとする二人を先生が止めました。
「トレーフルブラン。本当に大丈夫なんだな」
黒い目に私は少し固まりました。考えて口にします。ええと。なら行って来いと先生が言いました。
私は魔王のもとに向かいます。
……魔王ではない別のものと対峙するために。
かつてこの国には強大な王がいたと言います。
強き魔法の力を持つ王は大層傲慢で強欲だったそうです。富、女、名声。この世のありとあらゆるものを欲しがり手に入れたと。それでも王は満足できずに果てにはこの世界にいるすべての人々の命、この世界そのものを欲したと云うのです。王は世界中に戦争を仕掛けその力を持って世界を支配しようとしました。
そんな王の暴虐に立ちあがったものがいました。
その男は王を殺しました。
だが強欲だった王はその凄まじい力を持って死んだ後もなおこの世にしがみ付いたのです。
器をなくした力は膨れ上がりこの国にあったありとあらゆるものを飲み込み食べつくしました。そしてその牙は世界へと向いたのです。世界すらも飲み込もうとした王の前にある日一人の女が現れました。
その女が吹く笛の音は美しく不思議な力を持っていました。
女がその笛を吹くと王の力は消し飛び王は眠りについてしまいました。そして王は封印されたのです。
その王こそが今や魔王と呼ばれる存在なのでした。
魔王が封印されたのはかつて王が住んでいた城のある場所です。もう何百年も封鎖され続けているその土地には草木一本生えていません。これこそが魔王の呪いなのだとか。その何もない場所に聳え立つのは住む人もいなくなり寂れた崩れかけの王城です。何もなくなったこの国でこれだけが残っていたそうです。人々はその場所を恐れ封鎖した。
私はその城の扉に手を触れます。扉を押そうとして迷います。本当にあけてもいいのかと。迷ってそれでも私は開けます。
私はちゃんと話したいのです。向き合いたいのです。
扉を開けると黒い靄が私を包んできました。それは数分私を包み込むとさっと去っていきます。そして私の前で一つどころに集まり何かの形を成していきます。
私はそれを見つめます。
目の前にある靄こそが魔王でした。
王の魂である魔王には形がありません。黒い靄です。その靄であってさえとてつもなく強い力を持つのですが、元は人間だった魔王は人の姿を一番に欲します。
その為魔王は人を食らおうとするのです。人の魂のみを飲み込み、残った器を自分のものにしようとするのです。
ですが人の魂を飲み込むのは簡単なことではありません。器ごと食べるのなら一瞬ですが器を残して魂を食らうにはその魂の輝きを鈍らせなくてはなりません。だから魔王はターゲットを決めたらそのものの心の中を見て一番醜く弱い部分に変身するのです。
ゲームではさやかがターゲットにされました。
そしてその時に前に話したもう彼女が一人乗り越えたかつての世界に帰りたいと望む気持ちに変身したのです。帰りたい何で私がこんな所に来なくちゃいけなかったのみんなに会いたいよと喚く魔王にさやかは揺れてそうだ帰りたいんだと同調してしまいます。そこを食らおうとする魔王でしたがセラフィード達五人に一旦弾かれ、さらに五人の言葉でさやかは我に返り、ここで生きていくことを決めるのでした。
そして魔王を封印する。
そう云う展開でした。
その時の魔王は黒い靄が集まったものではありましたがさやかの姿をしていました。映した心の形をするのが魔王なのです。
私は目の前の靄を見つめます。
もぞもぞと動いていた靄はもうだいぶ形になってきていて……
目の前には肩までの髪に長い前髪、左目には眼帯をした三十代余りの女性がいました。
ああ、やはりと私は口にします。
「やはり……私の場合は私__わたくし__ではなく私__わたし__になってしまうのですね」
私ではない私を見て私は泣きたい気持ちで笑います。
目の前にいる女性は私とは似ても似つきません。でも私です。かつてのトレーフルブランとして生まれる前の私。白詰そうかです。
先生に言われた言葉を思い出しました。
それを言われたのはセラフィード様たちに陥れかけられたあのパーティーの日。先生が最後に問うたこと、いや言ったことか。
「俺にはお前が二人いるように見える」
私はそんな訳ないじゃないですかと口にしましたが、先生の言ったことは正しかった。私は二人いました。
今ここにいる十六年この世界で生きた私と、前世で三十年生きた私。
その二人が私の中には今もいるのです。
目の前で白詰そうかが、魔王が叫びます。叫ぶように咽び泣きます。
「いやあああああああああ!いやあああああああ!! もういや、もういやもういやああああ! 殺して死にたい死にたいもう嫌なの」
その心は痛いほど私に突き刺さります。
嫌だと彼女は泣きます。もう生きたくないと生きるのが怖いと泣きます。嫌だと言います。
私の中にある彼女の記憶がよみがえります。
白詰そうかは産れた時から暴力の世界にいました。
母親も父親も彼女に拳を振るい怪我をしない日は一日たりともありませんでした。人買いに売られて買われた後も暴力を振るわれ続けるのに変わりはありませんでした。その過程で彼女は左目を潰されました。地獄のような日々の中、ある日彼女は車に乗せられて、彼女を買っていた人間と同じようなものが集まる会に連れていかれました。そしてその帰り、彼女は車のドアを無理矢理開けて外へと飛び出した。
車のすぐ横は崖でした。
ガードレールから飛び出した彼女の体は真っ逆さまに落ちていきます。
その時彼女に死への恐怖ありませんでした。車から飛び降りたのでさえ逃げたいと言う思いより死にたいと言う思いの方が強かったのです。
だけど彼女は木々に引っ掛かることで運良くかもしくは運悪くか助かってしまったのでした。
その後数日山の中をさまよった彼女は警察に保護されて、児童施設へと行くことになりました。彼女は人を前にしてろくに話すこともできず、左目の傷のこともあり周りは彼女を腫れもの扱いしました。
そして一人ぼっちのまま二十年生きました。
彼女は人が怖く人が嫌いでしたが、それよりずっと一人が怖くて一人が嫌いでした。一人の夜彼女は毎日幼い頃の夢を見ては泣き叫んでいたのです。
だから簡単に恋に落ちました。そして一人になることを恐れるあまり自分を捨てた男を刺して、自分もまた死んだのです。
そんな彼女、今や私の記憶を思い出したのはセラフィード様とさやかさんのキスを見た日ではありません。あの日前世の事を思い出しましたが、一番大きな痛みとなった暴力の日々だけはぼんやりとしか思い出さなかったのです
防衛本能がそうさせたのでしょう。
でも夜遅く学園に残ったあの日、不審者に負けて襲われそうになったあの日に全てを思い出してしまいました。
あの日から私と彼女は心の中完全に分かたれてしまいました。
その前までも私たちは一人には成り切れずにいました。
十六年この世界で生きていた私は何だかんだ言いながらもセラフィード様の事を憎みきることができなかったのです。あの人を支えたいと思い続けていました。だけど三十年生きた前世の私は死にたい気持ちが強い上に、私がいながらさやかと付き合いだしたセラフィード様に結婚詐欺師の姿を重ねて憎しみ酷い目に合わせたいと思っていました。
その二つの心は微妙な形で融合してころころころころ思考が変わってしまっていました。
それがあの日を境に二つに分かれて、白詰そうかの方は殆ど私の奥に隠れてしまいました。
忘れていた痛みを思い出した彼女はこの世を酷く憎み例え私と言う形であってもこの世に居ることを嫌ったのです。それでも時々は私の代わりに外に現れてセラフィード様たちに憎しみをぶつけていました。
そんな彼女の形をした魔王が今私の前でこの世界への憎しみを叫びます。
「死にたい死にたい! 死にたいのもう一人は嫌! 誰も助けてくれないこの世界なんて大嫌い」
彼女はずっと一人、最後の時まで守ってくれる人も助けてくれる人も持ちませんでした。死にたいと彼女は言います。
そうずっと死にたがっていたのは彼女だったのです。私も最初の方は彼女に引きずられ少し死にたかった。疲れていましたから。それにセラフィード様に必要とされなくなったのだと思いましたから……。
でもその気持ちは少しずつ小さくなっていて……、今の私には死にたいと思う気持ちは残っていないのです。
それでも死にたいのは死ななくてはならないと思うのは彼女がいるから。
彼女は死にたいと思い憎しみながらも私の気持ちを優先させてくれました。
セラフィード様に何かをする時も決して危ないことはしませんでした。決定的になるような取り返しがつかなくなるようなこともしませんでした。したのはあのシャンデリアの仕掛けぐらいでしょうか。それも私が失敗させてしまいましたが。本当は殺したいともっと酷いことをしたいと思っていたにもかかわらず私の為に我慢してくださいました。それに私の望む私の姿を壊さないでいてくれました。
だから私はせめて彼女のために死んであげたかった。
この世界が怖い一人が怖いとなく彼女の為にこの世界から去ってあげたかったのです。
だけど生きろと言われました。
生きたいと思いました。みんなの傍で私は……。
でも彼女が泣くのです。
目の前にいる魔王が死にたい死にたい嫌だと。
それに私の中にいる白詰そうかが泣きます。
死にたいと泣き叫びます。
目の前にいるのはあくまで魔王。私の中にいる彼女の形をしているにすぎません。
本物の白詰そうかは私の中にいて、私の中で泣くのです。
痛いほど苦しいほど彼女の気持ちが伝わってきて……、そしてそれが私の心になっていく。幾ら二つに分かたれていようと私の心に違いはないのですから。私の心が叫びます。怖い辛い苦しいともう嫌だと。
死にたいと。
私自身が思います。
ああ……やはり私は……
「生きろ! トレーフルブラン!」
死にたいと口にしてしまいそうになりました。その時に声が聞こえてきます。私の心を遮って声が。私は後ろを振り返りました。
扉の傍に先生が立っていました。
「生きろ! お前がそう望むなら。苦しくても辛くとも生きろ。お前は生きたいんだろう!」
叫ばれて……私は、私を取り戻しました。彼女のために死んであげたかった。だけど生きていたい私を私は捨てられないのです。捨てようとしても私の元に届けられてしまう。
だから私はごめんなさいと口にしました。
ごめんなさいと私の中の私に向けて言葉にしました。私の中の私が泣き叫びます。そんな彼女に向けてだけどといいました。だけどと声に出しました。
「だけどもうあなたを一人に何てさせませんわ。私もう一人に何てなりません。誰にも私を裏切らせない。裏切ろうだなんて思えないような素敵な私であり続ける。ずっと傍に居たいと思える人々の傍にいて見せますわ。
トレーフルブラン・アイレッドの名に懸けて誓いますわ」
心の中の叫びが弱まりました。一人は嫌だと彼女が言います。その思いが伝わりそして私のものにもなる。私は深く頷きます。私だっていやです。一人はもう寂しくて嫌です。だからもう一人には成らないと言います。
そして先生を見て言います。
「それに今の私__わたしたち__には助けに来てくれる方もいますのよ」
黒い靄が音を立てて霧散していきます。絶叫のような音が廃城の中響き渡ります。
私の中ではまだ私が泣いています。一人にしないで、一人にしないでと……そして言います。
約束だよと
だから返します。ええ、約束ですわ。私約束は絶対守りますわ。
ほぅと先生が息を吐きました。飲まれなかったのかと言います。
「知っていたんですか」
「まあな」
「私の事も」
「最後まで半信半疑ではあったがそうでないと説明がつかないところがあったからな」
「そうですか……」
礼を言おうとしてやめました。
その前にやらねばならぬことがまだ二つほど残っているのです。
私は霧散し、力の弱まった魔王と向き合います。
「私貴方を退治しに来たわけではありませんの。その証拠に貴方を封印するための笛を持っていませんわ」
何をと魔王が言います。先生はじっと私を見ています。
「私は貴方を封印なんてできませんわ。だって……あなたは私と同じなのですもの」
靄が動きます。信じられない事を聞いたようにゆらゆら揺れて弾けます。
「貴方も一人が寂しいのでしょう」
「何を」
「分かっていますのよ。私貴方のことを知っていますの
貴方は一人が寂しいだけ。強大な力を持つあまり誰も貴方の傍にいてくれなくて……。それに最後は信じた人に裏切られたのでしょう。私も一緒。私たちみたいな寂しがり屋は誰でもすぐに信じてしまうんだから少しは優しくしてもらいたいものよね、裏切るなんてひどいわ……」
私は靄に手を伸ばしました。触れた靄は冷たいけれどドロドロとはしていなくて……。撫でるような手の動きで魔王に触れます。魔王は私と一緒ただの寂しいだけの存在だと私は知っていました。だから絶対に封印などできないと分かっていました
私と同じ寂しいだけの存在を封印するなどとそんなの自分自身を否定するようでできないと……。
だから考えました。
そして私は決めました。なら私はこれを利用して見せようと。
ならどうするというのだと魔王が聞くのに私は微笑んで見せます。
「貴方私と共に生きる気はなくて」
「何を」
「私の中に入って私と共に暮らしましょう。私は周りの人間に文句を言わせたりしませんわ。私が好きなように生きて見せる。貴方が望むこともそれなりに叶えてやれます」
魔王がぽっかんと私を見あげています。顔はありませんが何となくの雰囲気でそうだなと思えます。ぽわんぽわんといくつか靄がはじけました。何のメリットがあるんだと魔王が言います。
「貴方は封印されなくてすむ。私は貴方を封印しなくてすむ。
それに私たち二人とも一人にならなくてすみますわ。ねぇ、友達になりましょう。ずっと一緒にいる友達に。私寂しいのよ。
貴方ならわかるでしょう」
「それがお前の答えか。」
魔王を身に宿した私に先生が聞きます。
「ええ」
私は美しい笑みを浮かべて応えて見せます。行くのかと先生が聞いてきました。
「そうですね。ですが、まずは王城に行って書類を作りに行かねばなりませんね。他の人々にまずは認めてもらっておかなければ。それがすみましたら……」
さあ、急がなければなりません。今日中に最後の決着をつけたいですから
1
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる