死にたがりの悪役令嬢

わたちょ

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第二部

悪役令嬢と先生の部屋

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ごめんなさいと頭を下げられるのに私は大丈夫ですよと言います。本当に大丈夫ですから気にしないでとも口にするのですが四つの頭は中々上がりません。どうしたらいいのかと悩んでいたらまあ、いいじゃんたまにはお茶会出来なくともとのんきな声が横から聞こえてきます。
「場所がないならしかたないよ。何も絶対お茶会しないと駄目ってわけでもないんだし。ねえ、トレーフルブランさん」
 さやかさんが言いますのにええ、そうねと口にする前にミルシェリー様がそう云う問題ではないのと怒ります。えーと云う彼女に場が騒がしくなる予感がして私は声を張り上げました。
「落ち着いてください。さやかさんの言う通りですわ。出来ないのなら仕方ありませんわ。私は気にしませんし誰にでも失敗と云うものはありますから四人も気にしないでくださいな。それに今日の授業は移動ばかりで忙しかったのでしょう。むしろ私が予約しておくべきでしたわ。ごめんなさいね」
「そんなトレーフルブラン様が謝ることじゃありませんわ。お茶室の予約は私達がすると決めていたのですし」
「それでも、ね。ねぇ、今日はもうお互い気にしないことにして皆でさやか様の勉強でも見ようじゃありませんの。会議室ならどこかまだ空いている所がある筈ですわ」
「はい」
 渋々ではありますが四人娘が納得してくれたのに私はほっと息をつきました。
この学園には生徒が使える特別な教室がいくつかあります。その一つがお茶室であり生徒がお茶会をひらくための教室です。十数個あるそれらは先着予約制となっており先に予約をした方が使えるシステムで私達のお茶会はいつも予約を四人娘がしてくれるのですが今日は忙しくて取れなかったのです。お茶会を諦め会議室できょうは勉強することに。人気のお茶室と違い会議室は使う人はあまりいませんからきっと相手いるはずです。
 さあ、空いている会議室を探しに行きましょうと声をかけようとして、その声をルーシュリック様に遮られてしまいます。
「なあ、お茶やるなら別に茶室じゃなくともあのテラスでよくねぇ。あそこなら俺たち以外人は来ないだろう」
 周りの空気が固まりました。急速に冷え切っていくのが分かります。私も何を言っているんだこの方はと思いながらさやかさんを確認しました。あ、と云う顔を一度してから周りの雰囲気に気付いて気まずそうに目をそらしています。彼女はあそこがどんな場所なのか細かいことは聞いてないでしょうし、周りの雰囲気で分かっただけ良しとしましょうか。問題はルーシュリック様か。
 最高に冷たい視線で私は彼を見ます。
「駄目に決まっているでしょう。あそこは総合成績三位までか王族に五大貴族の者しか入ってはいけないと決められた神聖な場所ですよ。学園の規則として明記されているものではありませんが長い歴史の中で受け継がれてきたものです。それを壊すことなどできませんし、何より周りの目と云うものを考えてください」
 四人娘が強くうなずき私と同じような目でルーシュリック様を見ます。言葉の内容がどこまで理解されたかは分からないが怯んだ姿を見るにもう馬鹿なことを言いだすことはないだろう。さやかさんも縮こまっているので良しとする。
「あ、それなら」
 ルーシュリック様がまた声を上げます。みんな今度は何だというような目で見るのに彼は明るく云いました。
「もう一つの所に行こう!」
 はい? みんなの声が重なりました。私は言いそうになって口を閉ざしたのですが重なったのをきくとちょっと後悔します。私もやって見たかったです。次はと思いながらルーシュリック様をみます。彼は何を言いだしているのでしょう。お茶室は全部埋まっていますし、他にお茶会を開ける場所はありません。
「みんな、成績良いよな」
 彼が聞いてくるのにみんな首を傾げます。何故お茶会の場所の話で成績が出てくるのでしょう。
「ルーシュリック様。貴方何を考えていますの」
 普段ルーシュリック様をお止めする役目をしているベロニカ様が警戒心をあらわにして問いかけますが、ルーシュリック様そんなこと気にせずニコニコ笑顔を見せています。
「茶会するんだろ。良い場所があるんだよ。で、皆成績良いよな」
「……まあ、貴方よりは……」
「よし。なら多分大丈夫だいこう」
 一人ルーシュリック様は何処かに向かって歩いていきます。五人のどうするという視線が突き刺さるのに私は仕方ないと言います。
「何処に行くつもりなのか分かりませんが、今日はルーシュリック様についていきましょう。一人で行かせるのもお可哀想ですし」
 少女たちは嫌そうな顔でルーシュリック様を見ましたがついていきます。私も正直嫌です。
「先生! 遊びに来たぜ」
「帰れ」
 あ、一人で行かせて私たちは私達で勉強会をすればよかったと扉が開いてすぐに後悔しました。歩いている途中から嫌な予感はしていたのですが、まさか教師の部屋に入るとは思わないじゃないですか。お茶会の場所に使おうとするなんて予想しないでしょう。
 四人娘もさやかさんも驚いていますよ。
「あのルーシュリック様……。ここは止めませんか」
「え? なんで」
「先生の部屋と云うのは問題があるように「大丈夫大丈夫。先生は細かいこと気にしないから。なあーーグリシーヌ先生」
 大丈夫って何一つ大丈夫じゃありませんわよ。何を言っているのですかこの男は。
「……トレーフルブラン達もいるのか。一体何のようなんだ」
 扉からは顔を出さないようにしていましたのに先生にもばれてしまいました。ぬっと顔を出してくるのに四人娘が固まります。さやかさんがじっとしているのに凄いなと感心します。先生は私達をしばらく見つめてからルーシュリック様をみます。なんだかとてもつめたい目をしているのが雰囲気で伝わってきました。
「で、」
「茶室取れなかったから先生の部屋でお茶会させてくれよ」
「は」
 先生が口をぽかんと開けた間抜けな顔をしました。何をしているんだという目をルーシュリック様に向けます。そしてお前らも大変だなと目で語りかけてきました。四人娘が頷いています。
「それは他の奴らが嫌がっているんじゃないのか」
「そんなことないって。お茶会したいらしいし。先生良いだろ」
「……お前は俺の部屋でお茶会が出来ると思っているのか」
「え、できるだろ。お湯をわかせるし、人数も入る。椅子もある」
 きょとんとして応えられるのに先生はため息を付き、四人娘は信じられないという目をルーシュリック様に向けます。さやかさんは扉から中を覗き込み固まっています。先生の汚部屋は学園では恐怖の対象として知れ渡っている部屋。誰がそんな部屋に入りたがるのか。私だって重要な用事でもない限り入りたくありません。何とかルーシュリック様に諦めてもらおうと声を上げれば先生が先に話してしまいます。
「分かった。好きにしろ」
 え、と少女たちが悲壮な声を上げます。私も上げそうになっておしとどまり先生の方に良いですからと言おうとすればまた先生に遮られます。
「その代わりにあれをやるからな」
「あれ?」
「よくやるやつだ。お前が土で部屋の中一杯にしたり、虫だらけにしたときに」
「ああ。良いけどなんで?」
「いいか。ルーシュリック。お前の感覚は特殊だという事を忘れるな。そして人にそれが通用すると思うな。普通の奴らは俺の部屋みたいな場所には入りたくない」
「ええ」 
 ルーシュリック様が先生の言葉に驚くのに当然だろうと思いましたし、分かっているなら片付けろとも思いました。それからだから別の場所に行きますとも思ったのだけど、先生が指を鳴らすことで一旦掻き消える。
 なんと部屋のものが一瞬にして全て消え失せたのだ。塵一つ落ちていない真っ白な部屋が広がる。そこに本棚や机と云った家具が並んでいく。どれも何処で掃除してきたのかキラキラのピカピカになっている。本棚の中に本が並んでいき、棚の中には物が詰められていく。並ばなかった本は棚の上に詰められるが床には置かれない。
 数秒のうちに部屋が片付いた。
 ほこり一つない綺麗な部屋だ。窓も何かで磨いたように輝いている。
 ぽかんとする私たちの前で先生はまた一つ指を鳴らす。
 机の上にテーブルクロスがかけられ、真ん中に色鮮やかな花が飾られた花瓶が置かれる。さらには美しい装飾のなされたティーセットが並べられた。椅子は人数分ならび一つ以外には見た目からしてふわふわなクッションがかけられている。
 ああ、それと、と先生が指を鳴らす。
 机の上にケーキが二つ並んだ。あ、と反応しそうになったのを抑えました。あれは私の好きな店のショートケーキとチーズケーキでは……。ま、まさかここで出すという事は。
「ケーキは食べていい。好きに寛いで行け」
「やりーー!」
「お前は我慢しろ」
「なんで!!」
「女性優先だ。馬鹿。後迷惑かけているからその分だ」
「ええ!! そんなんひでえよ」
 二人が言い合う中、四人の視線が私に問いかけてきます。どうしますかと。私は優雅に笑ってみせます。
「折角の御好意を無駄にしてもいけませんわ。今日はお茶会をさせてもらいましょう」
 決して甘いものに負けたわけではなくてよ

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