死にたがりの悪役令嬢

わたちょ

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第二部

悪役令嬢と先生の部屋

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 先生の部屋ですることになったお茶会。先生もいて気まずいのではと思ったのですがその先生は用事があるから出ていくと言って出ていてしまいました。私たちのせいなのではと思いやはり帰りますと言い出そうとしても普段馬鹿弟子が面倒をかけてる詫びだ。弟子だとは俺は思ってないが周りからはそう見られているらしいからな。監督責任は俺にある。言い切られて押し込まれてしまった。終わったら気にせず帰ってくれと言う言葉つきで。
 そのせいかお茶会が始まっても無言が続きようやく会話が始まったかと思えば話題は先生だったわ
「……凄かったですね。さっきの先生」
「ええ、私魔法であんなことが出来るなど知りませんでした」
「しかもこの内装にこのケーキ……」
「この前のこともあって先生に対する苦手意識は薄くなっていたのですが、これは……」
 口々に話していた少女たちが口を閉ざしました。何かを言いたそうにしながらも必死に抑えています。ああ、分かりますわ。その気持ち。言いたいことも、でも言いたくないことも全部分かりますわ。私もそうですもの。だから私は必死に先生のみためを思い出しますの。
 あの趣味の悪い分厚い眼鏡にボサボサの髪。一体何日お風呂に入ってないのですかと言いたくなるようなあの見た目を思い出しましたわ。
 大丈夫。もう大丈夫。
 落ち着いてお茶を飲みます。ああ、今日のお茶も美味しいですわね。しかも今日のお茶のお供はケーキです。学園でのお茶会では保存場所がないため生菓子は食べられないのになんと言う贅沢でしょう。この点は先生に感謝します。
 ありがたくいただかせてもらいますわ。
 うぅ~~。美味しいですわ。甘いものは正義ですわ。
 みんなも一口食べて幸せそうな顔をしています。その後四人娘はまた複雑そうな顔をしますが。言いたいことはわかりますわ。でもここは美味しくいただきましょう。折角美味しいものを食べているんだから。
「美味しい~~。先生って優しいし凄いし見た目と違って凄く素敵な人だね~」
 そんな微妙な空気の中でさやがさんが言うのに四人娘も私も固まってしまいました。
 認めたいけど認めたくない。
 そんな葛藤が伝わってきます。そして私の中でも行われています。色々助けてもらっていい人だとは思っていますものの、それでもそれを認めるには時間がかかるのです。だってあの見た目ですもの。
 ルーシュリック様はあの先生とどうして仲良くできますのかずっと不思議なんですもの。あら? そう言えばルーシュリック様が静かですね。ここに連れてきた本人だし騒いでいても良いのですが、お茶会を初めてから一口も口を聞いていないような……。
 気になってルーシュリック様の方を見てみました。そして私は首をかしげます。彼は何をしているのでしょうか?私には椅子の上で体育座りして蹲っている姿が見えるのですが気のせいですよね?
 脛っていらっしゃるとかないですわよね。
「ど、うしましたの? ルーシュリック様」
 恐る恐る声をかけてみました。ぷくっとほほを膨らませたルーシュリック様が私を見ます。五人も気づいたようでルーシュリック様をみてええ?と言うような顔をします。
 やっぱりどうみてもすねてますよね。これは何故ですの? 先生に言われていた女性優先のせいですか?
「なんか納得いかねえ」
「何がですか? もしかしてケーキですか? それなら食べていいのでは。私たちもそう多くは食べませんし。私は一切れで十分ですわよ」
「そうじゃなくて! それもあるけど、でもそうじゃなくて先生の態度が納得行かない! 俺がここに来ても掃除とかしたことないのに何でみんながきたらすんの!」
「それは……たんに遊びに来たではなくお茶をしに来ただからでは。あんな部屋で普通お茶会はしたくありませんわ」
 むしろ過ごしたくもない。何故あれでルーシュリック様や先生は普通に過ごせるのだろう。
「それに! 先生俺が最初に部屋に入ろうとしたときは馬鹿は入ってくるなって言って、俺のだす問題が解けたら入っていいって問題だしてきたくせにそれがないし!!」
「私たちバカではありませんから。成績の問題では」
「そうそう」
 私が言いたいことをずはり四人娘が言いました。うぐっとルーシュリック様は声を詰まらせました。それでもと弱々しい声を出します。そう言えばとティーラ様が声をあげました。
「ルーシュリック様って中等部の一時期から一気に成績上がりましたわよね。あれってたしか……」
「そう先生!! 馬鹿は部屋にいれないし魔法も授業以外では教えないって言われたから超頑張ったの。俺偉い!」
「へぇー。グリシーヌ先生って授業以外では話すこともないし、その授業も真面目なものだから知りませんでしたがそんな人なのですね」
 「ええ、先生のこと初めてよく知りました」
「でも馬鹿以外には優しいようですよ」
 四人娘が話すを聞きながら私もそうなんだと思いました。授業以外でも話す機会はありましたが初めて知りましたわ。あの先生そんなことを言う先生だったのですね。でも今思い出せば確かにセラフィード様たちのことを愚かだなんだと散々口にしてましたわね。
 つまりは先生の言う馬鹿とはそう言うことなんでしょうね。それなら四人娘は大丈夫ですし、さやかさんも最近は出来てきていますわ。それに一人だけ追い出すなどは出来ないでしょうしね。
 考えていたら、あーーとルーシュリック様が声をあげました。思い付いたとばかりの声にまた変なことではないだろうなと思ってしまいました。
「分かった! 先生女子が好きなんだな」
「「「いえ、それはないです」」」
 四人娘が声を被せました。私もそれだけはないと思いますし、さやかさんも首を振っています。
「何でだよ」
「何でてそれならもうちょっと気を使った見た目をしますわ。あんな姿はしません」
「そうです。どうやら女心は分かっているようですし……」
「ええ。今回出された装飾品といい、このケーキといい。女心をついてます。間違いないでしょう」
「あの見た目からは信じられないですが、でも人が見た目によらないと言うことは私たちの父でも立証されていますしね」
 ああと四人娘が頷き会うのに少し羨ましくなりました。あの幼馴染みならではの納得の仕方。私もそんな相手が欲しかったものです。
 何てちょっとの現実逃避をしてからルーシュリック様を見ます。ルーシュリック様は訳がわからないと言うような顔をしているのですが、此方が分かりません。確かに人を見た目で判断するなと言う言葉もありますし、そうだとも思いますけども限度と言うものがありますのよ。貧乏臭いならまだいいのですがあの先生のみためは不潔なのです。いくら素晴らしい人だとしてもあれはないです。
「先生の見た目の何がおかしいんだ?」
 不満げな顔でルーシュリック様が言います。えっと四人娘は固まりました。散々いっていますが直接口にするのは憚れるようで視線をずらします。それをじっと見つめていたかと思えばルーシュリック様はさやかさんをみて
「なあ、何がおかしいんだ?」
「えっ」
 ひきつった声をさやかさんは出しました。さやかさんも言えないのかよそを見つめて
「あ、私そろそろ勉強しなきゃ」
逃げました。ミルシェリー様の目がその一言で輝いたのでもうさやかさんに聞くことも出来ないでしょう。だとしたら……
「なあなあ、トレーフルブラン。先生の見た目の何がおかしいんだよ」
 まあ、私に回ってきますよね。いつつの目が私を見つめてくるのに私は笑いました。大丈夫。心配しなくとも完璧な答えを私は出します
「全てです。全て。あの曇った分厚い眼鏡。それに脂ぎったボサボサの髪。着ている服もボロボロな上埃まみれでいくら魔法が凄く女心を理解していてもあれでは全てが台無しです。マイナスになるのです」
 え~!! とルーシュリック様が叫びました。
 五人は私を吃驚したように見てきますが、やがて四人娘はそうですよね。ええ。そうですわと頷きあいました。さやかさんが何故か私をじっと見つめてくるのですがあの目は何なのでしょう。不気味です。まあ、気にしないことにしてルーシュリック様をみれば叫ぶのをやめてぶつぶつ言っていました。
「でもさーー格好よくね。先生。魔法すげぇぞ」
 言われるのに微妙な顔をしながらまあと四人娘は言います。流石に教師を侮蔑したままではいられないのでしょう。
「確かに魔法は凄いですわよね。今日のもどうやったんだろうって感じですし」
「だろだろ!! あれ空間魔法使ってやったんだぜ。俺の部屋に空間繋げて埃や汚れとか全部置いてきたの」
「「「え」」」
 全員の声が重なりました。私の声も重なりました。それに何を勘違いしたのかルーシュリック様は胸を張って誇らしげにします。
「なあ? 凄いだろ。こんな大規模な空間移動魔法使えるのなんてそういないぜ? しかもそれを指ぱちん一つでやるの! 呪文もなんにもなしで細かい作業まで全部やちまうの、凄くない!」
 確かにルーシュリック様の言う事は分かります。凄いです。私など小物を動かせる程度なのにこの部屋全部のものを先生は一度に移動させました。しかもかなり距離のあるルーシュリック様の家まで。とても凄いと思います。
 ですが今はそれどころではないのです。
 言われたところで素直に凄いとは言えないのです。冷たい目でルーシュリック様を見つめますがルーシュリック様は気付きません。私は同じようにルーシュリック様を見ている五人声をかけます。
「今の話は聞かなかったことにいたしましょう。それよりお茶を楽しみましょう」
「「「はい」」」
 ええ!! 何でとルーシュリック様が叫ぶのを全員で無視しました。
 
「どうした。何かようか」
 先生が聞いてくるのに私はキョトンとしてしまいました。お茶会が終わった後私は一人先生が帰ってくるのを待っていたのですが、帰ってきた先生はまるで驚くことなく聞いてきたのです。残ってるなど言わなかったのですが。
「私がいるの分かっていましたの」
「……ああ、まあ、な」
 気まずそうに目を剃らされました。それが何故かわからず余計首をかしげそうになるのですがそれはこらえました。気にはなりますが余計な詮索は止めておきましょう。早く用事をすませてしまいたいのです。
 先生と呼びます。何だと言われるのに私はお辞儀を一つしました。
「今日はありがとうございます。とても楽しいお茶会ができましたわ」
「そうか。だが礼はいい。最初に云ったが一応弟子的なあれが迷惑かけているようだからその詫びだ。いつも悪いな」
「いえ、それこそルーシュリック様にはいつも楽しませてもらっていますから気になさらないでください。
 それより、」
 一度言葉が止まってしまいます。言いにくいことと言うのは一度機械を逃してしまうと余計に言いにくくなってしまうのは何故なのでしょうか。
「もう一つお礼を申したいことがあるのですが」
 先生の黒い目が曇ったガラス越しに私を見つめてきます。不思議そうにされてさらに言いにくくなります。一度唾をのみこんでそれから口を開きました。
 「この前と言うには時間が経ちすぎてしまったのですが、前は色々とありがとうございました。
 きちんとしたお礼がまだでしたのでここで言わせてもらいます。本当に感謝していますわ。先生がいなければこんな日々を送ることも出来なかったと思います」
 すべてをいい終えるとほっと息がつけた。セラフィード様との婚約破棄の後に簡単なお礼なら言えていたのだが時間がなく手短なものになってしまっていたのていつかちゃんとしたものを言わなければとずっと思っていたまま。でも機会もないし何より時間が経つと言いにくくなってそのまま……。
 やっと重いものが下ろせましたわ。
 先生はそうかと言って黙りこむのですがここはもう帰らせてもらうことに。では、失礼しましたと言って立ち去ろうとします。ですが扉の所で呼び止められます。
「いつでもこい。俺が居ないときでもお前なら構わん」
 聞こえてきた言葉に少し考えてからはいと答えました。でも、来ることはもうないだろうとも思いました。
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