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愛とオルゴール
12. 報告
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私は二人の訪問者のことを帰宅した弟に話して聞かせた。
「うわっそれ本当の話? 怖いね。僕、そんな令嬢と結婚することにならなくて良かった。
全然仲良くなれそうにもないだけでなく、他の男のためにそこまで思い詰めてる人となんて仮面夫婦まっしぐらだったよね。
あと、第二王子殿下は……。
しかし、その人、アンソニー様が自分のことをちゃんと知ったら好きになってもらえるのにって言ってるわけだよね? ただの横恋慕してるだけの人なのに、姉さんのこと舐めてるよね」
ネイサンは憮然としてそう纏めた。
「そういうことよね? 知り合う時間が欲しいというのが最初、どういう意味なのか本当のところよくわからなかったのだけれど、後から考えていたら時間さえあればアンソニーの気が変わると言ってたのだと思いついたのよ。酷いわよね? 舐めている? わよね」
私はここぞとばかりに悪い口をきいてやった。だんだんと本当に腹が立つていたからだ。
「どこからそんな自信が持てるのかわからないけれど、そもそもアンソニー様はその令嬢の事どれくらい知ってるのかな? 姉さん知ってる?」
私は首を横に振った。
「わからないわ。貴方との話が出てた時に、それとなくフォンテーヌ伯爵のことを聞いたことがあったのだけれど、その時に何度か顔を合わせたり話をしたことがあるようなことを言っていたと思うのだけど」
確か、第二王子とよく一緒にいるとは言っていた。
「ふーん、とにかくちょっと怖い人みたいだからすぐにアンソニー様に知らせたほうがいいよ。
アンソニー様の身が女性である場合ほど危険なわけじゃないだろうけど、勢い余って既成事実とかつくられたら姉さんの婚約話が本当に危うくなる事だってあるし」
「既成事実!? ネイサン、貴方なんてこと言うの」
「だって、そういうことする人だって中にはいるだろう? それに王子殿下まで味方なんだよ。ありえない事じゃないって思うな」
「まさか、そんなこと」
私は途方にくれたような気持ちになった。
もちろんアンソニーに知らせるつもりでいたけれど、言い方というか、それがなんだか難しいような気にもなって、とりあえず保留にしていたのだが、既成事実などと言われると怖くなる。
「とにかく、アンソニー様にはすぐに知らせなくちゃ。そうすればブロア家のほうで対応してくれるよ」
「そうね、そうするわ」
「大丈夫? 姉さん」
「ええ、大丈夫よ。少し驚いたけれど、大丈夫」
ネイサンは私の顔をのぞき込んだ。
「心配ないよ。あったことを漏らさず伝えればいいだけだもの。
それにアンソニー様は姉さんに首ったけだから元からそんな怖い人のこと相手にしてないさ。
現にその人も言ってたんだろう? アンソニー様に話をすることも拒まれているって。
だからってうちに乗り込んできて姉さんに文句を言ってくるような人を相手にしてるんだ、早急に手を打ってもらわなくちゃ。
いくら第二王子殿下だってブロア家相手にそうそう好き勝手できないだろうしさ。
あとは、そうだな、万一、何らかのことが起きて婚約が上手くいかないようなことがあったとしても、姉さんのことは僕が一生守ってあげるからね。心配しないで」
私は弟のその言葉に弟を軽く睨んでから笑った。
「まあ、不吉なこと言わないで。でもその気持ちは嬉しいわ」
「姉さんならアンソニー様との事が駄目になっても大勢求婚者が殺到するだろうから僕の出番はないかもしれないけどね。
ちなみに僕の友人の兄とか従兄弟とかそんな人達に今までだってなんだかんだ言われていたんだよ。断るのに苦労したもんさ」
「私とアンソニーは駄目になったりしません。だから他の男性なんて必要ないわ。もう、心配してくれているんだかなんだかわからないわよ」
「ははっ今の話、アンソニー様には内緒にしておいてよ。あの人、こういう事を根に持ちそうだからさ」
私を気遣ってくれる弟の優しさによって、せっかくの幸せな気分を台無しにされたような気分も少しは上向きになったみたいだった。
アンソニーには簡単に経緯を説明し、なるべく早く会いたいのだけれどと書いて送った。
彼に余計な心配させたくないから深刻にならないよう事務的に。
でも書き上がったものをみると、それほど客観的に書けてはいないみたいだった。
それでも、ぐずぐずしないほうがいいと言われてそのまま送った。
アンソニーからはその日の夜には返事がきて、明日の朝、屋敷にきてくれると書いてあった。
「うわっそれ本当の話? 怖いね。僕、そんな令嬢と結婚することにならなくて良かった。
全然仲良くなれそうにもないだけでなく、他の男のためにそこまで思い詰めてる人となんて仮面夫婦まっしぐらだったよね。
あと、第二王子殿下は……。
しかし、その人、アンソニー様が自分のことをちゃんと知ったら好きになってもらえるのにって言ってるわけだよね? ただの横恋慕してるだけの人なのに、姉さんのこと舐めてるよね」
ネイサンは憮然としてそう纏めた。
「そういうことよね? 知り合う時間が欲しいというのが最初、どういう意味なのか本当のところよくわからなかったのだけれど、後から考えていたら時間さえあればアンソニーの気が変わると言ってたのだと思いついたのよ。酷いわよね? 舐めている? わよね」
私はここぞとばかりに悪い口をきいてやった。だんだんと本当に腹が立つていたからだ。
「どこからそんな自信が持てるのかわからないけれど、そもそもアンソニー様はその令嬢の事どれくらい知ってるのかな? 姉さん知ってる?」
私は首を横に振った。
「わからないわ。貴方との話が出てた時に、それとなくフォンテーヌ伯爵のことを聞いたことがあったのだけれど、その時に何度か顔を合わせたり話をしたことがあるようなことを言っていたと思うのだけど」
確か、第二王子とよく一緒にいるとは言っていた。
「ふーん、とにかくちょっと怖い人みたいだからすぐにアンソニー様に知らせたほうがいいよ。
アンソニー様の身が女性である場合ほど危険なわけじゃないだろうけど、勢い余って既成事実とかつくられたら姉さんの婚約話が本当に危うくなる事だってあるし」
「既成事実!? ネイサン、貴方なんてこと言うの」
「だって、そういうことする人だって中にはいるだろう? それに王子殿下まで味方なんだよ。ありえない事じゃないって思うな」
「まさか、そんなこと」
私は途方にくれたような気持ちになった。
もちろんアンソニーに知らせるつもりでいたけれど、言い方というか、それがなんだか難しいような気にもなって、とりあえず保留にしていたのだが、既成事実などと言われると怖くなる。
「とにかく、アンソニー様にはすぐに知らせなくちゃ。そうすればブロア家のほうで対応してくれるよ」
「そうね、そうするわ」
「大丈夫? 姉さん」
「ええ、大丈夫よ。少し驚いたけれど、大丈夫」
ネイサンは私の顔をのぞき込んだ。
「心配ないよ。あったことを漏らさず伝えればいいだけだもの。
それにアンソニー様は姉さんに首ったけだから元からそんな怖い人のこと相手にしてないさ。
現にその人も言ってたんだろう? アンソニー様に話をすることも拒まれているって。
だからってうちに乗り込んできて姉さんに文句を言ってくるような人を相手にしてるんだ、早急に手を打ってもらわなくちゃ。
いくら第二王子殿下だってブロア家相手にそうそう好き勝手できないだろうしさ。
あとは、そうだな、万一、何らかのことが起きて婚約が上手くいかないようなことがあったとしても、姉さんのことは僕が一生守ってあげるからね。心配しないで」
私は弟のその言葉に弟を軽く睨んでから笑った。
「まあ、不吉なこと言わないで。でもその気持ちは嬉しいわ」
「姉さんならアンソニー様との事が駄目になっても大勢求婚者が殺到するだろうから僕の出番はないかもしれないけどね。
ちなみに僕の友人の兄とか従兄弟とかそんな人達に今までだってなんだかんだ言われていたんだよ。断るのに苦労したもんさ」
「私とアンソニーは駄目になったりしません。だから他の男性なんて必要ないわ。もう、心配してくれているんだかなんだかわからないわよ」
「ははっ今の話、アンソニー様には内緒にしておいてよ。あの人、こういう事を根に持ちそうだからさ」
私を気遣ってくれる弟の優しさによって、せっかくの幸せな気分を台無しにされたような気分も少しは上向きになったみたいだった。
アンソニーには簡単に経緯を説明し、なるべく早く会いたいのだけれどと書いて送った。
彼に余計な心配させたくないから深刻にならないよう事務的に。
でも書き上がったものをみると、それほど客観的に書けてはいないみたいだった。
それでも、ぐずぐずしないほうがいいと言われてそのまま送った。
アンソニーからはその日の夜には返事がきて、明日の朝、屋敷にきてくれると書いてあった。
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