16 / 20
愛とオルゴール
13. 弁解
しおりを挟む
「ジェシー、信じて。僕は他の女性に思わせぶりなことをしたりしない。
ましてや、あの令嬢のことなら、僕はきちんと対処していたんだ。もちろん、前に言ったように二人きりで会ったことすらない。
第二王子と一緒に王太子の仕事場に時々やってきていた関係で話をしたことがあるというだけだ。そのまま同じテーブルについてお茶を飲まされたとかそんな感じで」
翌日、侯爵家にやってきたアンソニーは庭に出ようと誘った私の手を離さずに、私の目を見て真剣な調子でそう説明してくれた。
「でも、あちらはそうは思っていないみたいだったわ。貴方に逢い続けられれば、心を傾けてもらえる。私より先に出逢えていれば、私ではなく自分が愛されたはずだって」
アンソニーは小さく舌打ちをした。
「ごめん。僕のせいで君に嫌な思いをさせたね。
でも、これで終わりだ。
実を言うと、フォンテーヌ伯爵令嬢と第二王子の言動についてはブロア公爵家から王家とフォンテーヌ伯爵家に既に一度非公式ながら苦情を申し入れているんだよ。
仕事場まで押しかけてきたり、無理矢理一緒にいられる状況を作ろうとしたりとかなり問題があったからね。
僕たちの婚約を機にこういうことはやめてもらうよう王からも言ってもらったはずなんだ。
それが裏目に出たみたいだな。これで王家は彼らを庇えなくなる……もう二度とこんなことがないように厳しい処罰を望んでやる」
アンソニーは本気で怒っていた。
「貴方はずっと迷惑をかけられていたの?」
「短い間とはいえ、かなりね」
「言ってくれれば良かったのに」
「言うほどのことじゃないと思っていたんだけど、まさか本当に君のところまで押しかけてくるなんて。
こんなことならきちんと言っておくべきだったよ。ごめん、ジェシカ。僕のミスだ」
私は彼の背を撫でた。
「きっと、いてもたってもいられなかったのね。貴方が婚約してしまって」
「さあね。とにかく、こんなことがあると君のことが心配でどうにかなってしまいそうだよ。
結婚式の予定をもっと早められないかもう一度皆に相談してみようと思うんだけど、どうかな?」
何度も遣り取りしたその言葉に笑ってしまう。
「準備が間に合わないわ。それでなくても皆大急ぎてやってくれているのよ」
「じゃあ、花嫁修業の時間をもっと増やすというのはどう? 式までの間、ずっとうちに泊まり込みでやるんだよ。母上達も喜ぶし、誰も反対しないと思うな」
もちろん、そんなことができるわけないのだけれど、私はそんなことを言うアンソニーを愛しく思った。
「お義母様たち、本当に私のことを気に入ってくださるかしら?」
「既に気に入っているさ。花嫁修業と言ったって、慣れてきたら着せ替え人形になったりいろんな場所へ連れまわされることを覚悟しなくちゃ駄目だけどね。
女の子が欲しかったんだよ母上は。とにかく、皆、君が嫁いできてくれるのを楽しみにしてるのは間違いない」
私は公爵夫人や前公爵夫人のことを思い、微笑んだ。
「私もとても楽しみにしているの。お義母様たちとドレスを選んだり、開催するお茶会のことを話あったりできるのが本当に楽しみ」
私には母がいないからとは言わなかったけれど、アンソニーは私の頬に触れてキスをしてくれた。
「そうだね。でも、僕のことを忘れてしまわないでほしいな。花嫁修業中も結婚してからも君の時間は一番に僕がもらうつもりなんだから」
「そうね、もちろんそうするつもりよ。未来の旦那様」
アンソニーは私がそう言うと私の体を引き寄せた。
彼は私を強く抱きしめてから少しだけ腕の力をゆるめ、私の目をのぞきこむようにして微笑んだ。そして私のおでこや頬、それから唇へと口づけた。
それから、私達はいつものように手を繋いでとりとめのない話をしながらのんびりと庭を散歩した。
私の心はそれだけで落ち着いていくようだった。昨日から感じていた妙な重苦しさやモヤモヤと曇っていた気持ちも徐々に晴れ、穏やかになっていった。
ましてや、あの令嬢のことなら、僕はきちんと対処していたんだ。もちろん、前に言ったように二人きりで会ったことすらない。
第二王子と一緒に王太子の仕事場に時々やってきていた関係で話をしたことがあるというだけだ。そのまま同じテーブルについてお茶を飲まされたとかそんな感じで」
翌日、侯爵家にやってきたアンソニーは庭に出ようと誘った私の手を離さずに、私の目を見て真剣な調子でそう説明してくれた。
「でも、あちらはそうは思っていないみたいだったわ。貴方に逢い続けられれば、心を傾けてもらえる。私より先に出逢えていれば、私ではなく自分が愛されたはずだって」
アンソニーは小さく舌打ちをした。
「ごめん。僕のせいで君に嫌な思いをさせたね。
でも、これで終わりだ。
実を言うと、フォンテーヌ伯爵令嬢と第二王子の言動についてはブロア公爵家から王家とフォンテーヌ伯爵家に既に一度非公式ながら苦情を申し入れているんだよ。
仕事場まで押しかけてきたり、無理矢理一緒にいられる状況を作ろうとしたりとかなり問題があったからね。
僕たちの婚約を機にこういうことはやめてもらうよう王からも言ってもらったはずなんだ。
それが裏目に出たみたいだな。これで王家は彼らを庇えなくなる……もう二度とこんなことがないように厳しい処罰を望んでやる」
アンソニーは本気で怒っていた。
「貴方はずっと迷惑をかけられていたの?」
「短い間とはいえ、かなりね」
「言ってくれれば良かったのに」
「言うほどのことじゃないと思っていたんだけど、まさか本当に君のところまで押しかけてくるなんて。
こんなことならきちんと言っておくべきだったよ。ごめん、ジェシカ。僕のミスだ」
私は彼の背を撫でた。
「きっと、いてもたってもいられなかったのね。貴方が婚約してしまって」
「さあね。とにかく、こんなことがあると君のことが心配でどうにかなってしまいそうだよ。
結婚式の予定をもっと早められないかもう一度皆に相談してみようと思うんだけど、どうかな?」
何度も遣り取りしたその言葉に笑ってしまう。
「準備が間に合わないわ。それでなくても皆大急ぎてやってくれているのよ」
「じゃあ、花嫁修業の時間をもっと増やすというのはどう? 式までの間、ずっとうちに泊まり込みでやるんだよ。母上達も喜ぶし、誰も反対しないと思うな」
もちろん、そんなことができるわけないのだけれど、私はそんなことを言うアンソニーを愛しく思った。
「お義母様たち、本当に私のことを気に入ってくださるかしら?」
「既に気に入っているさ。花嫁修業と言ったって、慣れてきたら着せ替え人形になったりいろんな場所へ連れまわされることを覚悟しなくちゃ駄目だけどね。
女の子が欲しかったんだよ母上は。とにかく、皆、君が嫁いできてくれるのを楽しみにしてるのは間違いない」
私は公爵夫人や前公爵夫人のことを思い、微笑んだ。
「私もとても楽しみにしているの。お義母様たちとドレスを選んだり、開催するお茶会のことを話あったりできるのが本当に楽しみ」
私には母がいないからとは言わなかったけれど、アンソニーは私の頬に触れてキスをしてくれた。
「そうだね。でも、僕のことを忘れてしまわないでほしいな。花嫁修業中も結婚してからも君の時間は一番に僕がもらうつもりなんだから」
「そうね、もちろんそうするつもりよ。未来の旦那様」
アンソニーは私がそう言うと私の体を引き寄せた。
彼は私を強く抱きしめてから少しだけ腕の力をゆるめ、私の目をのぞきこむようにして微笑んだ。そして私のおでこや頬、それから唇へと口づけた。
それから、私達はいつものように手を繋いでとりとめのない話をしながらのんびりと庭を散歩した。
私の心はそれだけで落ち着いていくようだった。昨日から感じていた妙な重苦しさやモヤモヤと曇っていた気持ちも徐々に晴れ、穏やかになっていった。
1
あなたにおすすめの小説
盲目公爵の過保護な溺愛
クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中
恋愛
伯爵家の長女として生まれたミレーヌ。平凡な容姿に生まれた彼女は、美しい妹エミリアと常に比べられ、実の両親から冷遇されて育った。
パーティーでは家族の輪に入れて貰えず、いてもいなくてもいい存在。
そんな現実から逃れようと逃げ出した先で、ミレーヌは美しい容姿をした目の不自由な男性と出会うが──
禁断の関係かもしれないが、それが?
しゃーりん
恋愛
王太子カインロットにはラフィティという婚約者がいる。
公爵令嬢であるラフィティは可愛くて人気もあるのだが少し頭が悪く、カインロットはこのままラフィティと結婚していいものか、悩んでいた。
そんな時、ラフィティが自分の代わりに王太子妃の仕事をしてくれる人として連れて来たのが伯爵令嬢マリージュ。
カインロットはマリージュが自分の異母妹かもしれない令嬢だということを思い出す。
しかも初恋の女の子でもあり、マリージュを手に入れたいと思ったカインロットは自分の欲望のためにラフィティの頼みを受け入れる。
兄妹かもしれないが子供を生ませなければ問題ないだろう?というお話です。
将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!
翠月 瑠々奈
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。
侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。
そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。
私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。
この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。
それでは次の結婚は望めない。
その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。
愛なんか消えてしまえと願う私は悪くないと思う
ましろ
恋愛
「赤ちゃんができたの」
母の言葉に目眩がした。
我が家の両親は恋愛結婚。身分差から駆け落ち同然で一緒になった二人は未だにその愛は消えず、燃え上がり続けているのだからある意味凄いわ。
でもね? どうしてそんなにも子どもを作ってしまうの⁉
私を入れて子どもは七人。お父さんの給料ではお手伝いさんなんか雇えるわけもなく、おっとりしたお嬢様気質の抜けないお母さんだけで家事育児などできるはずもなく。
そうなると働き手は長女の私だ。
ずっと小さな頃から弟妹のお世話と家事に明け暮れ、それなのにまだ産むと言うの?
「……ねえ、お母さんにとって子どもって何?」
「うふふ。それはね、愛の結晶よ」
愛。愛って何? 私はあなたの愛のために働き詰めなのですけど?
自分達の手に余るなら、そんなモノなど捨ててしまえっ!
❦R-15は保険です。
連載中のものが止まったままのくせに!とは言わないで(泣)
現在、作業中のものがなかなか終わらなくて息抜きのための不定期連載です。
侯爵様の懺悔
宇野 肇
恋愛
女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。
そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。
侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。
その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。
おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。
――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。
お飾りの私と怖そうな隣国の王子様
mahiro
恋愛
お飾りの婚約者だった。
だって、私とあの人が出会う前からあの人には好きな人がいた。
その人は隣国の王女様で、昔から二人はお互いを思い合っているように見えた。
「エディス、今すぐ婚約を破棄してくれ」
そう言ってきた王子様は真剣そのもので、拒否は許さないと目がそう訴えていた。
いつかこの日が来るとは思っていた。
思い合っている二人が両思いになる日が来ればいつの日か、と。
思いが叶った彼に祝いの言葉と、破棄を受け入れるような発言をしたけれど、もう私には用はないと彼は一切私を見ることなどなく、部屋を出て行ってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる