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熊クマ食堂に連絡を伝えた側近が戻り、私に頭を下げた。
「フォルテ様、熊クマ食堂の店主に連絡いたしました」
「そうか、ありがとう。こちらもクエストを終わらせた、冒険者ギルドで報告をして向かおう」
冒険者ギルドでクエストを終わらせて、タヤを連れて熊クマ食堂に向かった。店で待っていた熊クマ食堂の店主シンギに、タヤを二階の自室に寝かせてもらい。2階から降りてきたシンギに話があると言われて、食堂のテーブルに向かい合って座った。
厳しい視線、シンギは元騎士団長の迫力は健在みたいだな。もう少し幼い頃、その瞳からよく逃げたな。
「姿は変えていますが、フォルテ殿下ですよね。ふうっ。殿下は冒険者ギルドで、気になっているタヤと会っていたのですか?」
「それは違う、シンギさん。私はタヤと会っていたのではない。数週間前、タヤに冒険者ギルドで同じ依頼を受けたいと言われただけ。そのあと、お互いの時間が合うときだけ、一緒に採取依頼に行く冒険仲間になったんだ」
「そうでしたか、タヤから話には聞いております。フォルテ殿下がタヤの冒険者仲間でしたか。今日はヒートを起こしたタヤを介抱してくださり、ありがとうございます」
「フォルテ殿下、ありがとうございます」
コトッと紅茶のはいったカップを、シンギの妻のマヤはテーブルに置いた。シンギは騎士団長の時にしていた考える仕草をしている、私になにか言いたくて言葉を選んでいるのか、それとも言いにくいことなのか。
しばらくして真剣な瞳を私に向けた。
「フォルテ殿下――本人がいない時にこの話をするのは気が引けますが。フォルテ殿下は知っておいたほうがいいでしょう。初め、タヤは自分がオメガだとは知りませんでした、ヒートを起こしたときに俺とマヤが気付き、サロンナの所に連れて行きました」
自分がオメガだと知らない⁉︎
「なんだと、この国では十歳を超えた辺りに貴族、平民関係なく検査は受けているはずだ」
シンギは私の言葉にコクリと頷いた。
「はい、規則でも決まっております。フォルテ殿下、タヤには両親がおりません」
「なに……?」
タヤに両親がいない? 私も国中をくまなく知っているわけではない。この国、外の国のどこかで生まれて……今まで自分がオメガだと知らずに暮らしていたのか? ……いままでオメガの知識がなく、よくアルファに襲われなかったな。
――まさか、ヒートが来る時期が遅かったのか?
シンギは眉をひそめて。
「フォルテ殿下、タヤの国では一夫一妻だと聞いております。しかし、この国は一夫多妻です。……殿下には陛下が選ばれた婚約者がおり、更に運命の番を探しておられると聞いております。それがタヤに似ているとも。――前にタヤは……たった一人だけの番を求めると話しておりました。タヤの匂い消しの腕をはずします。そのフェロモンを直に嗅ぎ、フォルテ殿下が求める運命の番とは違うのでしたら……今後、タヤと会わないようにしていただきたい」
香りが違えば……二度と、タヤに会うなと。
「それはどういうことだ、シンギ! 運命の番ではなくても同じ冒険者として、友として、タヤには会ってはならないのか」
シンギは拳を握り。
「フォルテ殿下、タヤは初めてアルファのフォルテ殿下と出会い、体が変化して、ヒートが起こる期間が短くなり困惑しております。あなた様に心が揺れて、このままでは……あなた様を愛してしまいます」
「タヤが私を愛する?……」
嬉しくて、口元が緩みそうになった。
「今なら、引き返せます……フォルテ殿下に運命の番が現れたとき、タヤの心が持つかどうかわかりません。俺達は息子の様にタヤを思い大切にしております、傷付く姿は見たくありません」
そうだな。私に運命の番が現れたら、私の気持ちがその番に向き、タヤと今まで通りに過ごせなくなるだろう。いま引き返せば、互いにわだかまりもなく終われるのか……胸が痛む。しかし、タヤを傷付けたくはない――ここは覚悟するしかないな。
「わかった、タヤのフェロモンを嗅ごうではないか」
と、言ったが。ホンネは行きたくない、怖い、重くのしかかる足を動かし、シンギの後に着いて階段を登り終えたすぐ私は感じた。
いつもタヤから香っていた、桃のような甘い香りとは違う、それを濃縮した蜜の様な香りが2階には充満していた。これがタヤの香り――ドクン、ドクンと鼓動が脈を撃つ。
今、この香りを嗅いで本能的にわかった――タヤは私の運命の番なのだと。
「大丈夫ですか? ……フォルテ殿下!」
シンギに言われてハッとする、私の瞳からは涙があふれていたのだ。
「あぁ、これ以上私は進めぬ。進めば、私は寝ているタヤを欲望のまま襲ってしまう」
タヤは私の運命の番であった。先程の可愛い姿が見られる。もっと先にもタヤの全てを我が者にできる。
「私はタヤを愛してもいいのだな」
「はい、愛してもいいと思われますが……タヤの気持ちを聞いた後にしてください」
「わかっている。タヤの気持ちを聞くまで待つ……運命の番が見つかったんだ我慢するさ」
と、このとき思ったのだがな。
「フォルテ様、熊クマ食堂の店主に連絡いたしました」
「そうか、ありがとう。こちらもクエストを終わらせた、冒険者ギルドで報告をして向かおう」
冒険者ギルドでクエストを終わらせて、タヤを連れて熊クマ食堂に向かった。店で待っていた熊クマ食堂の店主シンギに、タヤを二階の自室に寝かせてもらい。2階から降りてきたシンギに話があると言われて、食堂のテーブルに向かい合って座った。
厳しい視線、シンギは元騎士団長の迫力は健在みたいだな。もう少し幼い頃、その瞳からよく逃げたな。
「姿は変えていますが、フォルテ殿下ですよね。ふうっ。殿下は冒険者ギルドで、気になっているタヤと会っていたのですか?」
「それは違う、シンギさん。私はタヤと会っていたのではない。数週間前、タヤに冒険者ギルドで同じ依頼を受けたいと言われただけ。そのあと、お互いの時間が合うときだけ、一緒に採取依頼に行く冒険仲間になったんだ」
「そうでしたか、タヤから話には聞いております。フォルテ殿下がタヤの冒険者仲間でしたか。今日はヒートを起こしたタヤを介抱してくださり、ありがとうございます」
「フォルテ殿下、ありがとうございます」
コトッと紅茶のはいったカップを、シンギの妻のマヤはテーブルに置いた。シンギは騎士団長の時にしていた考える仕草をしている、私になにか言いたくて言葉を選んでいるのか、それとも言いにくいことなのか。
しばらくして真剣な瞳を私に向けた。
「フォルテ殿下――本人がいない時にこの話をするのは気が引けますが。フォルテ殿下は知っておいたほうがいいでしょう。初め、タヤは自分がオメガだとは知りませんでした、ヒートを起こしたときに俺とマヤが気付き、サロンナの所に連れて行きました」
自分がオメガだと知らない⁉︎
「なんだと、この国では十歳を超えた辺りに貴族、平民関係なく検査は受けているはずだ」
シンギは私の言葉にコクリと頷いた。
「はい、規則でも決まっております。フォルテ殿下、タヤには両親がおりません」
「なに……?」
タヤに両親がいない? 私も国中をくまなく知っているわけではない。この国、外の国のどこかで生まれて……今まで自分がオメガだと知らずに暮らしていたのか? ……いままでオメガの知識がなく、よくアルファに襲われなかったな。
――まさか、ヒートが来る時期が遅かったのか?
シンギは眉をひそめて。
「フォルテ殿下、タヤの国では一夫一妻だと聞いております。しかし、この国は一夫多妻です。……殿下には陛下が選ばれた婚約者がおり、更に運命の番を探しておられると聞いております。それがタヤに似ているとも。――前にタヤは……たった一人だけの番を求めると話しておりました。タヤの匂い消しの腕をはずします。そのフェロモンを直に嗅ぎ、フォルテ殿下が求める運命の番とは違うのでしたら……今後、タヤと会わないようにしていただきたい」
香りが違えば……二度と、タヤに会うなと。
「それはどういうことだ、シンギ! 運命の番ではなくても同じ冒険者として、友として、タヤには会ってはならないのか」
シンギは拳を握り。
「フォルテ殿下、タヤは初めてアルファのフォルテ殿下と出会い、体が変化して、ヒートが起こる期間が短くなり困惑しております。あなた様に心が揺れて、このままでは……あなた様を愛してしまいます」
「タヤが私を愛する?……」
嬉しくて、口元が緩みそうになった。
「今なら、引き返せます……フォルテ殿下に運命の番が現れたとき、タヤの心が持つかどうかわかりません。俺達は息子の様にタヤを思い大切にしております、傷付く姿は見たくありません」
そうだな。私に運命の番が現れたら、私の気持ちがその番に向き、タヤと今まで通りに過ごせなくなるだろう。いま引き返せば、互いにわだかまりもなく終われるのか……胸が痛む。しかし、タヤを傷付けたくはない――ここは覚悟するしかないな。
「わかった、タヤのフェロモンを嗅ごうではないか」
と、言ったが。ホンネは行きたくない、怖い、重くのしかかる足を動かし、シンギの後に着いて階段を登り終えたすぐ私は感じた。
いつもタヤから香っていた、桃のような甘い香りとは違う、それを濃縮した蜜の様な香りが2階には充満していた。これがタヤの香り――ドクン、ドクンと鼓動が脈を撃つ。
今、この香りを嗅いで本能的にわかった――タヤは私の運命の番なのだと。
「大丈夫ですか? ……フォルテ殿下!」
シンギに言われてハッとする、私の瞳からは涙があふれていたのだ。
「あぁ、これ以上私は進めぬ。進めば、私は寝ているタヤを欲望のまま襲ってしまう」
タヤは私の運命の番であった。先程の可愛い姿が見られる。もっと先にもタヤの全てを我が者にできる。
「私はタヤを愛してもいいのだな」
「はい、愛してもいいと思われますが……タヤの気持ちを聞いた後にしてください」
「わかっている。タヤの気持ちを聞くまで待つ……運命の番が見つかったんだ我慢するさ」
と、このとき思ったのだがな。
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