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オレは不思議だった――オメガのフォックスの香りに惹かれないことに。いい香りだとは思うのだけど、フォルテのときのような……息と鼓動があがり、その厚い胸板にすがりたくなる衝動はおきなかった。
「ねっ、タヤちゃん暇でしょう?」
「おやめください、タヤは暇ではありませんわ……それにタヤは、フォルテ殿下の"運命の番"なのです、フォックス殿下」
ロッサお嬢が立ちあがり震える手を隠して、オレに近付こうとしていたフォックスを止めた。止められたフォックスはロッサお嬢をみつめ、目を細めた。
「いまタヤちゃんといいところなんだ、邪魔しないでもらおうかな……フォルテ王子の婚約者ロッサ嬢」
「なっ、」
驚きで目を開き、口をつぐむロッサお嬢。驚いたことに、フォックスはロッサお嬢のことも知っていた。笑いながら、すばやく動いたフォックスに手を取られて、逃げられなくなる。
「フフ、タヤちゃん冒険に行こっ」
「い、行きません!」
「ええ――ボク、タヤちゃんの為に時間を作ったのに」
「そ、そんなことを言われても行かない!」
「フォルテ殿下は忙しそうだよ。ボクと冒険しょ」
こ、困った。
この人は今、フォルテが執務に追われていて、身動きが取れない事を知っているんだ。それに……この人、どさくさに紛れて「ごめんねぇ」と、オレの首を噛んできそうだ。
いまヒートじゃないから、フォックスと番いになりはしないけど――オレはフォルテだけに噛まれたい。
「タヤちゃん、どうしても無理なの?」
「無理です! ……オレはルテの恋人だから、冒険はルテとしか行きません!」
「そう。タヤちゃんはフォルテ王子の……恋人ね」
フォックスは細めを開き、オレをジッと見つめきた。
その瞳は何を考えているのかわからないが、握る手に力が込められたことだけわかった。力では勝てない、この人に無理やり連れていかれる? そんな予感がした。
「嫌だ、離して!」と言おうとしたとき。奥でことの成り行きを見ていたシンギが出てきて、フォックスに深く頭を下げた。
「おやめください! タヤはフォルテ様の恋人。フォックス殿下、タヤに手を出すのはおやめください!」
強めに伝えたシンギに、フォックスは。
「ちぇっ、フォルテ王子に連絡したのか……わかった、今日は退散するよ。またね、タヤちゃん――ボソッ(今度はヒートのときに会いにくるから、エロい下着つけて待っていてね)」
オレの耳元に唇を寄せ話した。
「だ、誰がするか!」
「頬が真っ赤だ、可愛い」
フォックスは目を細めて笑い、来た時と同じようにヒラヒラ手を振り、熊クマ食堂を出ていった。
熊クマ食堂の扉が閉まり――しばらくしてから、ロッサ、タヤ、シンギは息を深く吐いた。
「……ふうっ、フォックス殿下、侮れないわ」
「あー怖かった。……俺、あの人は無理だ。ルテとは違い、香りにも惹かれなかった」
「惹かれなかったか……よかった。タヤ、フォルテ殿下に、この事は伝えたから」
「え、ありがとう、シンギさん」
――ルテからのすぐに返事が届いた。その内容は側に入れなくてごめん。私の部屋は鍵がしっかりしているから、今日からそこで寝起きして欲しいと、書かれていた。
そして――ロッサは。
「タヤ、ごめん。私、急用を思い出したから帰るね。今日は送らなくていいから――またね」
と、あわてて帰っていった。
「ねっ、タヤちゃん暇でしょう?」
「おやめください、タヤは暇ではありませんわ……それにタヤは、フォルテ殿下の"運命の番"なのです、フォックス殿下」
ロッサお嬢が立ちあがり震える手を隠して、オレに近付こうとしていたフォックスを止めた。止められたフォックスはロッサお嬢をみつめ、目を細めた。
「いまタヤちゃんといいところなんだ、邪魔しないでもらおうかな……フォルテ王子の婚約者ロッサ嬢」
「なっ、」
驚きで目を開き、口をつぐむロッサお嬢。驚いたことに、フォックスはロッサお嬢のことも知っていた。笑いながら、すばやく動いたフォックスに手を取られて、逃げられなくなる。
「フフ、タヤちゃん冒険に行こっ」
「い、行きません!」
「ええ――ボク、タヤちゃんの為に時間を作ったのに」
「そ、そんなことを言われても行かない!」
「フォルテ殿下は忙しそうだよ。ボクと冒険しょ」
こ、困った。
この人は今、フォルテが執務に追われていて、身動きが取れない事を知っているんだ。それに……この人、どさくさに紛れて「ごめんねぇ」と、オレの首を噛んできそうだ。
いまヒートじゃないから、フォックスと番いになりはしないけど――オレはフォルテだけに噛まれたい。
「タヤちゃん、どうしても無理なの?」
「無理です! ……オレはルテの恋人だから、冒険はルテとしか行きません!」
「そう。タヤちゃんはフォルテ王子の……恋人ね」
フォックスは細めを開き、オレをジッと見つめきた。
その瞳は何を考えているのかわからないが、握る手に力が込められたことだけわかった。力では勝てない、この人に無理やり連れていかれる? そんな予感がした。
「嫌だ、離して!」と言おうとしたとき。奥でことの成り行きを見ていたシンギが出てきて、フォックスに深く頭を下げた。
「おやめください! タヤはフォルテ様の恋人。フォックス殿下、タヤに手を出すのはおやめください!」
強めに伝えたシンギに、フォックスは。
「ちぇっ、フォルテ王子に連絡したのか……わかった、今日は退散するよ。またね、タヤちゃん――ボソッ(今度はヒートのときに会いにくるから、エロい下着つけて待っていてね)」
オレの耳元に唇を寄せ話した。
「だ、誰がするか!」
「頬が真っ赤だ、可愛い」
フォックスは目を細めて笑い、来た時と同じようにヒラヒラ手を振り、熊クマ食堂を出ていった。
熊クマ食堂の扉が閉まり――しばらくしてから、ロッサ、タヤ、シンギは息を深く吐いた。
「……ふうっ、フォックス殿下、侮れないわ」
「あー怖かった。……俺、あの人は無理だ。ルテとは違い、香りにも惹かれなかった」
「惹かれなかったか……よかった。タヤ、フォルテ殿下に、この事は伝えたから」
「え、ありがとう、シンギさん」
――ルテからのすぐに返事が届いた。その内容は側に入れなくてごめん。私の部屋は鍵がしっかりしているから、今日からそこで寝起きして欲しいと、書かれていた。
そして――ロッサは。
「タヤ、ごめん。私、急用を思い出したから帰るね。今日は送らなくていいから――またね」
と、あわてて帰っていった。
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