ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。

南田 此仁

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1~10話

カプセルころりんすっとんとん【上】

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「白崎! こんなに遅刻してくるとは一体何様のつもりだ!? 昨日だって無断で早退しただろう!!」

「まだ就業五分前ですし、昨日も定時を過ぎていたので早退じゃありません」

 顔が赤くなっているときには頭皮まで赤くなるものなのだなぁと、すっかり前線を退しりぞいた生え際を眺めながら思う。

「屁理屈を捏ねるな! 若手なら二時間前には出社して準備しておくものだろう! おまえの勝手な行動のおかげで仕事が山積みだ、今日は飯を食う暇もないと思え!」

「私、もう辞めるので」

「……はっ、そんなことで脅しのつもりか?」

 心底馬鹿にしたような視線は無視して、懐から退職届を取り出す。
 デスクに叩きつけるはずが、勢い余って――そう、勢い余って――上司の顔面に思いっきり叩きつけた。

 ベシッ!

っ――」

「おっと手が滑りました。そこに書いた通り、自分は明日から有給消化に入ります。――あっ、いたたたたた急にお腹が……っ! ということで本日は早退させていただきますね! では、失礼します!!」

 くるりときびすを返し、一目散にオフィスを走り抜ける。

「おい、白崎! そんなことが許されると思ってるのかっ!? 腹はどうした! 止まれ白崎! 今すぐ戻って仕事をするんだ!! 白崎!! 白崎しろさき日菜ひなぁぁぁぁぁっ!!!」

 誰が止まるものか!
 元陸上部の脚力を舐めないでいただきたい。
 このために今日は、パンツスーツにランニングシューズで武装してきたのだから。

 胸元をぎゅっと握りしめる。
 貯まりに貯まった有給は一ヶ月分以上。
 自分で言うのもむなしいけれど、任されていた仕事だって誰にでもできるような雑用ばかりだ。
 ――そう、何も問題はない。

 追いつくこともできず廊下の彼方で激昂する上司の叫びを聞いていると、次第にふつふつと笑いが込み上げてきた。

「……っぷ、あっははははははは!」

 すれ違う社員たちは『とうとうアイツ壊れたか』と憐れみの目を向けてくるけれど、そんなのはもうどうだっていい!

 今まで閻魔大王のように絶対的な存在だと恐れていた上司は、私を捕まえることもできずわめくだけのただの中年だった。
 本人の手に渡らないタイムカードも、有給取得を親のかたきだとでも思っているようなパワハラ上司も、それを漫然と許容する社内体制もクソ食らえ!

 一段飛ばしに階段を駆け下り、これが最後になるだろう通用口を通って社外に出る。


 私は、自由になったのだ!!!!


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